カンパニー制とは?|相違点7つとカンパニー制を導入した企業4社

組織・人材

カンパニー制と事業部制について

カンパニー制とは、社内の各事業を独立した会社のように扱い、権限や責任を移譲して経営させる組織形態のことをいいます。カンパニー制では各事業が独立採算制のもとで経営され、まるで一つの会社内に複数の会社が存在するかのような形態に特徴があります。

一方、事業部制とは、「○○事業部」という形で各事業部に権限が与えられ、複数の事業部で構成される組織形態のことをいいます。

以下、両者の違いを詳しく見ていきましょう。

カンパニー制と事業部制の相違点7つ

カンパニー制と事業部制はいずれも企業の組織形態を表しますが、両者には違いがあります。ビジネスパーソンとして企業の組織形態を知っておくにあたり、カンパニー制と事業部制の違いもしっかり理解しておきましょう。以下、代表的な相違点についてご紹介します。

カンパニー制と事業部制の相違点1:責任の所在

カンパニー制と事業部制は、責任の所在にいくつか違いが見られます。

事業部制では、事業運営に必要な権限が各事業部に与えられますが、人事権や投資権といった重要な意思決定の権限までは与えられません。一方、カンパニー制は各事業が独立した会社のように扱われるため、人事権や投資権も含めて権限が譲渡されます。

このように、カンパニー制と事業部制では各事業が持つ権限に違いがあり、その点における責任の所在も異なります。

カンパニー制と事業部制の相違点2:ニーズに合わせた事業展開

事業部制は基本的に一つの企業単位で事業展開が行われますが、カンパニー制は各事業が独立して事業を展開するため、ニーズに沿った柔軟な事業展開が実現しやすくなります。

カンパニー制では各事業が独立した会社のように扱われるので、いわば小規模の独立した会社が集まっているような形態です。そして、各事業の組織規模が小さい分、柔軟な事業展開をしやすくなります。そのため、変化するニーズへの対応も実現しやすいです。

カンパニー制と事業部制の相違点3:組織力の向上

カンパニー制では各事業が独立しているため、それぞれの事業の組織力も向上しやすくなります。各事業がそれぞれ人事権や投資権といった重要な意思決定の権限を持つため、独立した組織としての力は強くなります。

もちろん事業部制の会社でも、それぞれの事業の組織力が強い会社もあります。ただ、カンパニー制の会社と比べると各事業の独立度は弱いため、必ずしも事業部としての組織力が向上しやすいとは言えません。

カンパニー制と事業部制の相違点4:事業展開のスピード感

カンパニー制では各事業に重要な意思決定の権限が与えられているので、迅速な意思決定によるスピード感のある事業展開が可能になります。

事業部制の場合、基本的に上層部が重要な意思決定を下すため、場合によっては各事業部で迅速な意思決定ができない可能性があります。結果として事業展開のスピードが遅くなるおそれもあります。

一方、カンパニー制は各事業で重要な意思決定ができ、事業展開が迅速に行われるケースが多いです。

カンパニー制と事業部制の相違点5:人材の育成

カンパニー制では、各事業の責任者に重要な意思決定の権限を委ねることで、それぞれの責任者をリーダー候補として育成することができます。

カンパニー制の各事業の責任者は重要な意思決定に携わるので、経営者としての目線を持つことになります。

つまり、各責任者に経営者としての体験を積ませることで、将来的なリーダー人材を育成する形になります。この点も、基本的に上層部が重要な意思決定を行う事業部制との違いです。

カンパニー制と事業部制の相違点6:本社との繋がり

事業部制の場合、重要な意思決定には本社の意向が深く関係しますが、カンパニー制では各事業が重要な意思決定をすることができます。つまり、カンパニー制より事業部制の方が、本社と各事業の繋がりは深くなります。

事業部制はカンパニー制ほど事業が独立していないので、各事業部の人事などにも本社の意向が大いに関係します。一方、こうした本社との繋がりはカンパニー制では少なく、各事業の独立がより重要視されています。

カンパニー制と事業部制の相違点7:予算

カンパニー制も事業部制も事業単位で予算の策定が行われますが、カンパニー制の場合は各事業が独立採算制のもとで経営されるという点が特徴です。そのため、各事業の予算に関する権限はカンパニー制の方が強いと言えるでしょう。

また、それぞれの事業で独立採算制となるカンパニー制は、事業ごとの予算と業績の関係がより明確になります。具体的にどの事業が業績を上げたのか、予算との兼ね合いも踏まえて把握しやすくなります。

カンパニー制のメリット3つとデメリット3つ

ここまで、カンパニー制と事業部制の相違点についてご紹介しました。次に、これらの点も踏まえ、カンパニー制のメリットとデメリットについて整理しておきましょう。

カンパニー制はメリットのほかデメリットもあるので、事業部制との違いも踏まえ、それぞれを比較検討し総合的に判断することが大切です。

カンパニー制のメリット1:責任の明確化

カンパニー制では、各事業が独立採算制のもとで経営され、重要な意思決定の権限まで与えられるので、それぞれの事業で責任が明確化します。簡単に言うと、ある事業の業績が悪ければ、本社や上層部の責任というよりも各事業の責任となる、ということです。

責任が明確化されると、問題に対する対処が早くなります。ある事業の業績が悪化しても、責任の所在がすぐにわかるので、業績を好転させる対処法を早急に検討できます。

カンパニー制のメリット2:後人の育成

カンパニー制では、各事業の責任者が経営者としての目線を養うことができ、後進の育成にもつながります。各責任者が将来的なリーダー候補として育成される状態になるので、企業を任せることのできる後継者が育成されます。

事業部制でも後進の育成はもちろん行われますが、カンパニー制と比べると各事業部の責任者は経営者の目線が少ない可能性があります。後継者の育成としてはカンパニー制の方がメリットがあると言えるでしょう。

カンパニー制のメリット3:市場動向に合わせた事業展開が可能

カンパニー制は各事業の組織規模が小さく、事業を柔軟に進めやすいため、市場動向に合わせて柔軟な事業展開ができます。市場の動向を踏まえ、それぞれの事業でどの部分を強化するか、またどの部分から撤退するかなど、効率的な判断をスムーズに行うことができます。

もちろん事業部制でも、各事業が市場動向に沿って事業を展開しますが、カンパニー制の方が市場動向に対する迅速な対応がしやすいと言えます。

カンパニー制のデメリット1:コストがかかる

カンパニー制は各事業に人事権などの権利も委ねるため、どうしてもコストはかかります。人事権を例に簡単に説明すると、事業ごとに人事部門が存在するような状態になるので、その分だけコストがかかるということです。

それぞれの事業が独立していることは確かにメリットも多いですが、もともと一つの部門でよかったものが事業ごとに複数存在する状態になるので、結果としてさまざまなコストは発生します。

カンパニー制のデメリット2:結果至上主義

カンパニー制では、各事業の責任で事業展開を進めるので、過度な結果至上主義になるおそれがあります。責任が明確化されることはカンパニー制のメリットでもありますが、損益に関する責任も明確化される以上、どうしても成果主義に陥りやすいです。

結果至上主義があまりに浸透してしまえば、事業同士で対立を招くおそれもあります。こうしたデメリットも踏まえ、業績評価の基準などを統一しなくてはなりません。

カンパニー制のデメリット3:カンパニー同士の繋がりが弱くなる

各事業が独立しているカンパニー制では、事業(カンパニー)同士の繋がりが弱まる可能性もあります。カンパニー制といっても、あくまで企業としては一つです。一つの企業の中で事業同士の繋がりが弱くなると、場合によっては企業そのものの力を弱めることにもなりかねません。

各事業が独立していても、それぞれで共有すべきノウハウなどがあれば、事業同士が繋がってお互いを高め合う必要があるでしょう。

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カンパニー制導入事例4つ

それでは、実際にカンパニー制を導入した企業について4つご紹介していきます。カンパニー制と事業部制との違いや、カンパニー制のメリット・デメリットを踏まえたうえで、実際の事例を検討していくことが大切です。

カンパニー制導入事例1:楽天株式会社

楽天株式会社は2016年7月、カンパニー制への移行を完了しています。楽天株式会社はカンパニー制に移行することで、変化の著しい事業環境を踏まえ、ニーズへの迅速な対応、品質の向上や顧客満足度の最大化などを目指すとしています。

カンパニー制への移行にあたり、業務執行を行う12のカンパニーが置かれています。

カンパニー制導入事例2:トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は、2016年4月にカンパニー制を導入しています。トヨタ自動車株式会社はカンパニー制の導入によって迅速な意思決定などを図り、組織を7つのカンパニーに分けています。

トヨタ自動車株式会社のカンパニー制の導入は、「機能」軸ではなく「製品」を軸とする体制を構築し、製品軸のカンパニーを設置、そして製品群ごとに7つのカンパニー体制に移行するというものになっています。

カンパニー制導入事例3:パナソニック株式会社

パナソニックは日本で最初に事業部制を導入したと言われています。また、カンパニー制も導入していることでも知られています。

パナソニックは2019年2月、同年4月1日付で社内カンパニー体制を変更し、社内カンパニーを従来の4社から7社体制にすることを発表しました。パナソニックは中国や北東アジア、アメリカに社内カンパニーを新設する形となり、海外での事業展開の加速にも期待されます。

カンパニー制導入事例4:みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループは2016年4月、カンパニー制を導入しています。みずほフィナンシャルグループはカンパニー制の導入により、ニーズに即した金融サービスの迅速な提供などを図るとしています。

このカンパニー制導入により、みずほフィナンシャルグループは10のユニット体制から5つのカンパニーと2つのユニットに再編されています。

事業部制とカンパニー制の違いを理解しよう

カンパニー制と事業部制は、各事業に与えられる権限、各事業の独立度、本社との繋がりなど、いくつか違いが存在します。

カンパニー制は事業部制よりも各事業に与えられる権限が広く、それぞれの事業が独立した会社のような形で経営を行うことができます。

一方で、カンパニー制はメリットのほかデメリットもありますので、事業部制とも比較しつつ、事業部制との違いも含めてさまざまな視点から検討することが大切です。

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