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2019年09月21日

負ののれんの発生原因4つと処理方法3つ|負ののれんの6つの発生事例

M&A取引の際に発生する可能性のある負ののれんについて、具体例と対策、取るべき対応を交えながらご説明しました。企業間の信用にも関わる暖簾について、この記事を参考にして、負ののれんについて十分に理解した上で適正な経営を行いましょう。

負ののれんの発生原因4つと処理方法3つ|負ののれんの6つの発生事例

負ののれんとは?

皆さんはM&Aおいて生じるのれんについてご存じでしょうか。ほとんどのM&A取引において、対象の企業が持つ既存事業などのシナジー区化に期待して対象企業の純資産にプレミアを上乗せして買収します。このときに発生する被買収企業の公正純資産額と買収価格の差額の事を一般的にはのれんと言います。

負ののれんとは、買収した企業の純資産額よりも低い金額で買収した場合の金額の事を指します。

のれんと呼ばれる理由

漢字で書くと暖簾ですが、もともとは店先にかかっている布のことを指します。この暖簾というものそのものにはほとんど価値がありませんが、店のことを想起させるときに思い浮かぶイメージとしては店先の暖簾と店構えでしょう。

つまり、暖簾とはお店の象徴として定着している看板のようなものです。のれんとは、知名度などのブランド価値を示す象徴で、会計用語としてののれんとは、目に見えないブランドの価値として定着しています。

負ののれんの発生原因4つ

のれんとは、被買収企業の公正純資産額と買収価格の差額のこととさきほど表記しました。負ののれんとはそののれんがマイナスになったものですが、負ののれんが発生することはめったにはありません。基本的には負ののれんは対象企業に何かしらのマイナスになる要素がある場合に発生します。

負ののれんが発生する原因は大きく分けて4つあります。ここではその原因を大きく4つに分けてご説明しますので、M&Aの取引を行う方はぜひこの記事を参考にしてみてください。

負ののれんの発生原因1:簿外債務が存在している

なぜ負ののれんが発生するのか、その発生原因の一つに簿外債務の存在があります。簿外債権とは、貸借対照表上に載っていない債務のことです。具体的には債務保証や株式や債券などのデリバティブ取引、未払い給与や退職金などさまざまな要素によって簿外債務が発生します。

貸借対照表上に載っていない債務とはいっても、簿外債務自体があることは珍しいことではなく中小企業が抱えていることの多い債務は以下のものがあります。

中小企業のかかえる簿外債務例1:債務保証

債務保証制度とは、ある特定の法律に基づいた認定を受けた個人事業や、または法律に基づいた事業者において民間金融企業からの借り入れによって事業資金の調達を行う際に、中小機構が債務保証を行う制度のことです。

債務保証も中小企業の場合は簿外債務の一例となります。

企業会計では偶発債務の内容や金額や貸借対照表に記載することが原作として義務付けられており、保証債務などの中期を行われなかったり、資産の含み損を隠すために損失を他の会社に移動する飛ばしなどによって意図的に債務を隠す行為は粉飾決済とみなされます。

中小企業のかかえる簿外債務例2:デリバティブ

金融商品の中には、株式や債券、郵貯金、ローン、外国為替などさまざまなものがあります。デリバティブとは、金融商品のリスクを低下させたり、リスクを覚悟して高い収益性を求める手法として考案されたの手段のことです。

一昔前には簿外取引の典型であった先物取引やオプション取引やスワップ取引などのデリバティブ取引は2000年以降に貸借対照表に計上されるようになりました。先物取引やオプション掲載などにも代表され、リスクヘッジや効率的な資金運用の手段として幅広く活用されるデリバティブ取引も中小企業が抱える簿外債権の一つです。

中小企業のかかえる簿外債務例3:未払い給与や退職金

未払い給与とは、あらかじめ就業規則で定められた賃金を所定の日に支払われないことです。定期賃金や退職金、賞与やボーナスを含む一時金、休業手当、割増賃金、年次有給休暇の賃金などさまざまな賃金が対象となります。

未払い給与や退職金なども中小企業の簿外債務に含まれます。

退職金制度を導入している企業では、従業員に対して将来支払うことを予定している退職金という債権を抱えています。実際に退職金を支払うときに費用計上をする処理を行う企業が多いため、退職給付引当金が簿外債権になっているケースがあります。

負ののれんの発生原因2:損害賠償のリスクがある

負ののれんが発生することはまれですが、基本的に対象の企業が損害賠償請求などマイナスの要素がある場合に今後行われるリスクがある場合があります。

M&Aにより会社を売却すると買取側が簿外債権なども含めてすべて肩代わりする形になります。簿外債権の存在により取引解消になることはほとんどありませんが、売却側は簿外債権を隠そうとすると相手の不信感を招き、のちのち大きな問題となってしまいます。

負ののれんの発生原因3:赤字経営である

赤字経営の会社が買収を受けるときに受ける評価価格についてその赤字会社がもつ純資産よりも低くなり、その結果負ののれんが発生することがあります。通常ののれんとは逆に、買収される赤字会社の経営状況などから将来的に会社の資産価値が減少する可能性があると評価されるために発生します。

買収後のリストラや退職などで多額の費用が発生する可能性などがある場合にこのような評価を下されます。

負ののれんの発生原因4:経済合理性だけで動くものでない

経済合理性を検討していない買収を行っている企業も中にはあります。経営者としては企業の財産を守るために動くものですので、めったに起こることではないですが、そのような取引を行う場合もあります。

経済合理性をある程度考慮した上で他の要素も鑑みて取引を行うこともあるので、経済合理性だけで動くという訳ではありません。

負ののれんの会計処理と税務処理のやり方3つ

通常ののれんや正ののれんは無形固定資産に計上され、日本会計基準にのっとると、その後20年以内の一定期間で償却を行います。負ののれんの場合は通常ののれんや正ののれんとは異なった会計処理や税務処理を行う必要があります。

ここでは負ののれんの場合の会計処理の方法について詳しくご説明します。

負ののれんの会計処理と税務処理のやり方1:負ののれんの発生益

通常ののれんや正ののれんに関しては会計処理は同じで、通常ののれんは無形固定資産に計上され、日本海系基準の場合に20年以内の期間で償却されます。

負ののれん場合、通常ののれんと処理は異なり、生じた事業年度の利益として計上されます。負ののれんは原則として特別利益として計上されます。

負ののれんの会計処理と税務処理のやり方2:負ののれんの仕訳

負ののれんの仕訳は、日本の会計基準とIFRSで違いはなく、負ののれんは一括利益計上処理として発生します。

しかし負ののれんは事業年度ごとに一括して発生益仕訳をしますが、一年に何度も負ののれんの発生益仕訳をするような買収を行い、年度をまたいで繰り返している企業の場合は事業リスクが分かりにくくなってしまいます。

その結果粉飾とは違いますが、負ののれんの場合には貸借対照表から読み取れるものからはかけ離れた実態になる可能性があります。

負ののれんの会計処理と税務処理のやり方3:負ののれんの税務

まず正ののれんの場合には、税務会計上では資産調整勘定という資産の項目に計上し、これを5年間で償却することになっていますが、負ののれんの場合には税務会計上の処理は異なります。

税務会計上の負ののれんで得た利益に対する課税は5年かけて支払うことになります。どういうことかというと、まず差額負債調整勘定という負債の項目に計上してから5年の年月をかけて益金にするということです。

負ののれんの6つの発生事例

どういった状況で負ののれんが発生し、どのように会計処理や税務処理を行うのか理解していただけたでしょう。

負ののれんが今後発生すると見込まれる事例、またはすでに発生した事例を6つご紹介しますので参考にしてください。

負ののれんの発生事例1:RIZAP

ここ数年の負ののれんの事例で最もトピックになってくるのがRIZAPの事例ともいえるでしょう。さまざまな分野に幅広く事業を展開しているRIZAPの事業の中でも最も有名なものは減量ジムです。今でもこれが最も大きな事業であると言えますが、近年ではM&Aによるさまざまな業種の買収を繰り返しています。

業績の悪い企業の買収を繰り返してきたため、負ののれんによる一括利益計上処理の積み重ねを繰り返し、結果的に2019年度3月の決算見通しを最終損益で70億円と発表しました。

負ののれんの発生事例2:伊勢丹と三越

株式会社三越と株式会社伊勢丹が共同株式移転を行って誕生した持株会社・株式会社三越伊勢丹ホールディングスですが、このM&Aでは伊勢丹が三越を買収する形で700臆円の負ののれんが発生しました。

三越の評価額をDCF法で算出したことにより三越の純資産額が高くなっていたこともあり、巨額の負ののれんが発生しました。2008年当時はIFRSの会計基準は負ののれんにおいて採用していなかったので、一括利益計上処理はされていません。

負ののれんの発生事例3:日本郵政

日本郵政も負ののれんの事例がありました。

オーストラリアの物流子会社であるトータルル・ホールディングスへの投資で4000億円もの巨額の減損が発生したことが原因で発生した負ののれんでした。2017年3月期の決算で、3200億円の黒字決算の見込みから一転して、マイナス400億円の純損失を計上する見通しを発表しました。

負ののれんの発生事例4:角川とドワンゴ

2014年には角川とドワンゴが経営統合し、株式会社KADOKAWA・DWANGOが設立されました。これもM&A株式移転も統合で223億円の負ののれんを計上していました。現在のIFRS基準に則った一括利益計上処理で判別された負ののれんでした。


ドワンゴが角川を買収する形で行われた経営統合は、成長著しいIT企業であったドワンゴに対して角川が譲歩した形で行われました。

負ののれんの発生事例5:出光石油と昭和シェル石油

2018年12月には出光石油と昭和シェル石油が経営統合することが発表されました。出光石油が親会社、昭和シェル石油が子会社となる見込みで、この株式で発生が予想されるのれんの金額に関しては現時点では未定です。

出光石油と昭和シェル石油の経営統合は株式交換のM&Aのスキームですが、株式交換の取引でも負ののれんが発生する事例はありますので、今回も負ののれんが発生する可能性は大いにあります。

負ののれんの発生事例6:三重銀行と第三銀行

2018年には三重銀行と第三銀行が株式移転の形で経営統合しました。統合によって三十三フィナンシャルグループが設立され、統合後初の決算とされる2019年3月期の決算において負ののれんを520億円と見込みました。

正確な負ののれんの額は確定ではありませんが、旧2行の単純合算80億円を大きく上回り、特別利益となる見込みです。

負ののれんを理解して適切な対処を行い経営に取り組もう!

いかがだったでしょうか。ここではM&Aにおいて生じる通常ののれんと負ののれんについてご紹介しました。

負ののれんは買収した企業の純資産額よりも低い金額で買収した場合に発生するもので、これが発生する原因は買収される企業側における見えないリスクによるものです。企業間における信頼関係にも大きく影響してきますので、負ののれんをよく理解して適正な処理を行い経営に取り組みましょう。

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