カンパニー制とは
カンパニー制とは、企業の組織形態の一つのことを言い、一つの企業でいくつかの事業を行っているというところで、その一つ一つの事業を独立して採算している形式のことを指します。
一つの事業を一つの会社と考え、事業を展開していきます。そして一つの事業のことをカンパニーと呼びます。
企業ではそれぞれのカンパニーに人材や物資、資金を渡し、それぞれのカンパニーが機能することで、会社全体がうまくいくようになっています。
持ち株会社とカンパニー制の違い
持ち株会社とは、株式を保有することで傘下企業や事業を支配し、実際には事業活動を行わないという形態の会社のことを言います。
持ち株会社とカンパニー制の違いは、持ち株会社は他社を支配することができる権限がある一方で、カンパニー制はあくまでも同じ企業内で運営されているというものがあります。
カンパニー制は法的にそれぞれのカンパニーは同じ法人という扱いになるのに対して、持ち株会社は別会社という扱いになります。
ホールディングス
ホールディングスとは、日本語で持ち株会社という意味を持つ言葉です。
ホールディングスは、傘下にある会社の株を保有、支配している会社のことを指し、実際には事業を運営しない形態をとっています。
また、ホールディングスには2種類の形態があり、純粋持ち株会社という事業を運営しない会社と、事業持ち株会社という子会社と同じように事業を行う会社があります。一般的には純粋持ち株会社がホールディングスと呼ばれています。
持ち株会社のメリットとリスク
持ち株会社にはさまざまなメリットがあります。
そのメリットとは、各会社の社長に権限が委譲されるため、迅速に意思決定ができるようになります。また、一つの子会社が倒産したとしても他の会社にはあまり影響が出ないようになっているため、リスクを分散することができます。
一方で持ち株会社であることのリスクには、一社が他の会社の足を引っ張るという可能性もあります。そのため、グループ全体での連携が必要となります。
カンパニー制のメリット3つ
カンパニー制を導入することにはいくつかのメリットがあります。
その中で、本記事では、責任が明確になるということ、企業内競争力の強化ができること、市場環境の変化に柔軟に対応することができるという3つのメリットについて説明していきます。
カンパニー制について理解するには、導入することによって得られるメリットを把握しておく必要があるため、ぜひ参考にしてください。
カンパニー制のメリット1:責任が明確になる
1つ目のカンパニー制のメリットは、責任が明確になるということです。
カンパニー制を導入することによって、人材の採用や経営方針など多くの権限はそれぞれのカンパニーに与えられる独立採算制になります。独立しているため、責任がどこにあるのかということが明確になります。
また、より事業を大きくするために、それぞれの事業で経営の効率化を図ることができるということもメリットの一つです。
カンパニー制のメリット2:企業内競争力の強化
2つ目のカンパニー制のメリットは、企業内競争力の強化をすることができるということです。
カンパニー制を導入することによって、事業の責任はカンパニーごとに委譲されることになります。そのため、それぞれのカンパニーが企業全体を盛り上げようとして、企業内での競争力が上がることが期待できます。
このように、それぞれのカンパニーが競争することによって、企業全体的な組織力が活発化することが見込めます。
カンパニー制のメリット3:市場環境の変化に柔軟に対応
3つ目のカンパニー制のメリットは、市場環境の変化に柔軟に対応することができるということです。
カンパニー制を導入することによって、会社を全体的にみると一つ一つの組織は小さくなります。このように、組織の小ささを活かすことで、市場環境の変化に柔軟に対応することが可能となります。
また、収益の管理はカンパニーごとに行っているため、収益が上がらない事業を撤廃させるなども迅速に行うことができます。
カンパニー制のデメリット3つ
本記事では、これまでカンパニー制を導入することのメリットについて説明してきましたが、カンパニー制にはデメリットもあります。
本記事で説明するカンパニー制のデメリットは、コストの面についてと、イノベーションを起こしにくいということ、意思決定が困難であるという3つのことについてです。
これらのデメリットを把握しておくことで、カンパニー制の理解を深めることができます。ぜひ参考にしてください。
カンパニー制のデメリット1:コスト
1つ目のカンパニー制のデメリットはコストの面についてです。
カンパニー制を導入することによって、事業が重複しコストが増大するという可能性が出てきます。カンパニー制の場合は、各カンパニーに社長や経理、人事といった人材が必要になるため、それの経費も必要になります。
このように、グループを全体的に見ると、人材や設備といった費用がかかることになります。
カンパニー制のデメリット2:イベーションを起こしにくい
2つ目のカンパニー制のデメリットは、イノベーションを起こしにくいということです。
カンパニー制を導入することで、それぞれのカンパニーは同じグループではあるものの、競争相手でもあります。そのため、カンパニー同士でもコラボレーションなどをして連携するということはほとんどなく、イノベーションが起こりにくくなります。
カンパニー制のデメリット3:意思決定が困難
3つ目のカンパニー制のデメリットは、意思決定が困難になるということです。
カンパニー制を導入することで、権限は各カンパニーごとで持つようになります。そのため、グループ全体で決めた判断に従わないというカンパニーが出てくるという可能性があります。
このように、カンパニー制を導入した場合、グループ全体で意思を統一するということが難しくなるため、意思決定が難しくなります。
カンパニー制導入企業事例6社
本記事では、これからカンパニー制を導入している企業の事例をご紹介していきます。
本記事でご紹介する企業は、ソニー、トヨタ、みずほ、JR西日本、楽天、パナソニックの6社です。
これらの企業で、カンパニー制がどのような目的で導入されているのか、どのような機能を果たしているのかということを具体的に説明していきます。どの企業も多くも人が知っている大企業であるため、ぜひ参考にしてください。
カンパニー制導入企業1:ソニー
1つ目のカンパニー制を導入している企業は、ソニーです。
ソニーは日本で初めてカンパニー制を導入した企業で、その目的には、ソニーの社長が株主の目線に立って各カンパニーの経営をチェックするためというものがあります。このような目的からこれまでの事業本部制を廃止してカンパニー制に移行しました。
カンパニー制に移行した背景には、1992年に創業以来の赤字に転落したというものがあると言われています。
カンパニー制導入企業2:トヨタ
2つ目のカンパニー制を導入している企業は、トヨタです。
トヨタでは、2016年4月からカンパニー制を導入していて、その目的は、意思決定を迅速化させることと次の世代の経営人材を育成するためというものがあります。
経営するカンパニーの数によって就任するクラスが異なり、7つのカンパニーを経営すると専務クラスに就任し、バイスプレジデントは常務クラスに就任することになります。このようにして人材を育成しています。
カンパニー制導入企業3:みずほ
3つ目もカンパニー制を導入している企業は、みずほです。
みずほでは、2016年からカンパニー制を導入しています。以前は事業を10個に分けて行ってきましたが、現在は5つのカンパニーと2つのユニットという組織形態で事業を進めています。
みずほがカンパニー制を導入した目的には、現場で意思決定をスピーディーに行い、収益を追求する体制を構築するために、顧客セグメントを一貫した体制にするというものがあります。
カンパニー制導入企業4:JR西日本
4つ目のカンパニー制を導入している企業は、JR西日本です。
JR西日本では、2019年6月から実質的な社内カンパニー制を導入しました。その目的には、責任と権限を持つことができる自主運営組織にして、成長の見込める非鉄道事業を拡充するというものがあります。
JR西日本は、物販飲食、ショッピングセンター、不動産、ホテルという4つの事業を社内カンパニーにしました。
カンパニー制導入企業5:楽天
5つ目のカンパニー制を導入している企業は、楽天です。
楽天は2016年6月からカンパニー制を導入していて、その目的には、組織と人員の配置を最低化することとグループの機能と役割、責務を明確にするというものがあります。また、イノベーションを創出し、顧客満足度の最大化を目指すという目的もあります。
楽天は、これまで60個以上あったビジネスユニットを13個のカンパニーに集約しました。
カンパニー制導入企業6:パナソニック
6つ目のカンパニー制を導入している企業は、パナソニックです。
パナソニックは、2017年からカンパニー制を導入していて、4つのカンパニーと2つの事業部門を併存させているという経営を行っています。
通常はパナソニックのようにカンパニー制と事業部門を併存させるということはありませんが、あえてカンパニー制と事業部門を併存させることによってイノベーションを起こすという可能性が生まれます。
カンパニー制を導入する理由
カンパニー制を導入する理由には、顧客ニーズに柔軟に対応するために、事業のスピードを加速させるというものがあります。
カンパニー制を導入することには、本記事でも説明したようにたくさんのメリットやデメリットがありますが、顧客ニーズに柔軟に対応するためには有効なものとなっています。
また、カンパニー制に向いている企業は大企業や中小企業などはあまり関係なく、どのような企業でも目的次第で活用することが可能です。
カンパニー制拡大の背景
カンパニー制が拡大した背景には、1994年に国内で初めてソニーで導入されたということがあります。カンパニー制はもともとアメリカで始まった制度でした。
ソニーは1992年に創業以来の赤字に転落しました。その時に、これまで行っていた事業部門を廃止してカンパニー制を導入したところ、業績を大幅に改善することができたことによって、他の企業からもカンパニー制が注目され、拡大するようになりました。
カンパニー制は正しく理解してから行う必要がある
本記事では、カンパニー制について、持ち株会社との違い、導入することのメリット、デメリット、企業がカンパニー制を導入する理由などについて詳しく説明してきました。また、カンパニー制を導入している企業を6つご紹介しました。
カンパニー制を導入して、実際に運営していくには、正しく理解することが大切です。そのため、これからカンパニー制を導入することを考えている方は、より理解を深めていきましょう。