「M&A」とは
ニュースや新聞でもよく耳にするM&A。ではM&Aとはいったい何なのでしょうか?
まずM&Aという言葉の略ですが元々は「merger and acquisition」という言葉の略です。
Mergersが「合併」という意味でAcquisitionsが「買収」という意味なので企業が合併したり、どこかの企業が別の企業を買収することを意味します。
M&Aの広義の意味として企業の提携を意味する場合もあります。
M&Aのために重要なこと
では、どんな企業でも資金があればM&Aできるのかというとそうではありません。
そこで重要となるのが以下のポイントです。ニュースでも話題になるM&Aの案件でも以下の条件を満たすものが多いことに気付くはずです。
では、M&Aをするのに重要なポイントをみていきたいと思います。
いいマッチング(組み合わせ)であること
まずは、M&Aをする企業同士がいいマッチング(組み合わせ)であることです。いいマッチングとは、いろいろとありますが、
・シナジー効果が発現しやすいこと。
・相互補完的であること。また戦略上重要な役割を果たすこと。
・企業文化が似ていること。
ざっとこのような点が挙げられます。
M&Aの条件交渉等のあり方
いくらいいマッチングの条件を満たしていてもM&Aの条件によっては合併や買収がうまくいかないことがあります。これではM&Aの本来の目的が果たせませんね。
ではM&Aのエグゼキューション(条件交渉等のありかた)ではどのような点がポイントになってくるのでしょうか?
まずはM&Aの買い手の企業はM&Aの相手先の企業に対して、買ってやるという高圧的な態度で臨むのではなく売っていただくという姿勢と相手先の企業文化に対して最大限の敬意を払うことが重要です。
また買い手の企業は売り手の企業の実態や経営状態をしっかりと把握し、今後の統合を踏まえても合わない高値の値段での買収は避けること。
M&A時のリスクはできるだけ早い段階で把握し、リスクは徹底的に避けること。専門家を雇い回避策を取るなどして、できるだけ許容できる範囲内に収めること。
M&A後の経営や企業統合を想定すること
M&A時のマッチングとエグゼキューションが完璧でも、M&A後の企業統合が必ずしもうまくいくとは限りません。
その際にポイントとなるのが、買い手企業が売り手企業に派遣する人材の選定や、M&A検討のフェーズからM&A後のアフターM&Aのプランニングをしっかりしているかどうかが大切になってきます。
またM&A後に売り手企業の社員のモチベーションを高められるかどうかが経営や売り上げの数字にも直接関係してくるのです。
M&Aの手法と形態
一口にM&Aといってもいろんな形態や手法があります。ここでは代表的なM&Aの手法と形態を紹介します。
まずは、企業提携について。企業提携は大きく2つに分けられます。資本を伴う企業提携が広義の意味でM&Aといわれます。
逆に資本のを伴わない提携は「業務提携」といわれます。これには研究開発部門の補填強化のための「共同開発・技術提携」、工場部門の補填強化のために行われる「OEM提携」、営業部門の強化のために行われる「販売提携」が含まれます。
資本の移動を伴う提携(広義のM&A)には狭義のM&Aである「企業買収」や業務提携の補強として行われる「株式の持ち合い」、リスク分散として行われる「合弁企業の設立」が含まれます。
企業買収とは?
では、狭義のM&Aとして知られる「企業買収」とは一体どのようなものなのでしょうか?
企業買収とは「買収」「合併」「分割」の3つに分けられます。
まずは「買収」についてですが、株式取得によるものと事業譲渡によるものの2つに分けられます。株式取得型の買収では「株式譲渡」「新株引受」「株式交換」の3つに分類されます。
これらは資本参加型の買収方式です。事業譲渡による買収は資産買収とされ「一部譲渡」と「全部譲渡」に分けられます。
合併と分割
買収の他に合併と分割という方法があります。合併は吸収合併と新設合併とに分けられます。また分割は新設分割と吸収分割とに分けられます。
M&Aにかかる経費
では、実際にM&Aを考えている企業の方々が一番きになる経費について紹介します。基本的にM&Aをするにあたって、M&Aを仲介する会社に払う仲介手数料、税金、専門家に支払う費用が主にM&Aにかかる経費です。
仲介手数料は5%が代表的なパーセンテージです。M&Aの相手探しに一番時間がかかるので、相手探しを代行してくれ、M&Aの条件等の交渉もやってくれるとなると、仲介手数料を支払っても割にあうと思われると思います。
また、M&Aには税金や法律の知識も必要となってきます。
税金や法律のプロにある程度のお金を支払うことになってもプロのアドバイスを受けることはM&Aを成功させる上での必要経費と言えるでしょう。
売り手が負担する経費
仲介手数料(5%程度)
弁護士費用
株券印刷費(数万円程度)
買い手が負担する経費
仲介手数料(5%程度)
弁護士費用
買収監査費用
登記費用
M&Aのメリットとデメリット
これまでM&Aとはなんなのか、M&Aの種類などについて説明してきましたが、実際にM&Aをするメリットとデメリットについて気になっている方も多いのではないでしょうか。
M&Aのメリットとデメリットについてしっかり理解しておくことで、他社のM&A案件も自社のM&Aを検討する上でもためになること間違いなしですよ。
M&Aをするメリット
では、M&Aをするメリットとは何でしょうか。
【1】事業規模とシェアを拡大できる
M&Aにより買い手の企業は売り手の企業買収の顧客や販売経路なども一緒に買収できるので一気に販売規模やシェアを伸ばすことができます。
実例として流通大手のイオンは、ダイエーを買収し、子会社化することで、一気に業界内のシェアを伸ばすことに成功しました。
流通業界では、現在でも、大手企業が中小以下の企業を次々と買収し、規模を拡大しています。
【2】事業の多角化ができる。異業種に進出できる
M&Aにより、今まで参入できていなかった市場や業界に進出することができます。自社内で新規事業を発足させて顧客もイチから開拓するものとは違い、M&Aを利用すればすでに顧客を持つサービスや事業をそのまま引き継ぐことができます。
それにより自社が今まで手を出してこなかった新しい市場に参入することができます。
楽天は、もともとネット小売り企業ですが、銀行・カード会社・旅行会社などの異業種を次々と買収し、業務範囲を広げていきました。ソフトバンクも元々はソフトウェア販売業者でしたが今では携帯事業から出版までM&Aを繰り返すことでさまざまな事業に進出しています。
IT関連企業では上場後の資金を利用してM&Aを繰り返して規模を大きくしていたので多角化という面では顕著ですね。
【3】自社の弱い部門の強化する
M&Aにより、今まで自社で参入できなかった市場や新たな技術や強みを取得することができます。
例えば最近は太陽光電池や2次電池で外資系の電気自動車の会社との業務提携がニュースでも取り上げられたパナソニックですが、もともと太陽電池や二次電池に強くありませんでした。
三洋電機を買収し、太陽電池や二次電池を本体に取り込み、同事業部門を強化したことで今日のようなビジネスに参入することが可能になったのです。
【4】新規事業や市場への参入
新規事業に参入するとなると、いちから技術や商品の開発、人材の育成、新規顧客の確保などのリスクが付いて回るものですが、すでに技術力や顧客を持っている会社を買収することで一気に新市場に開拓でき業界内のシェアを取得することが可能です。
それにより多岐にわたる事業展開を行えるのです。
HOYAも医療機器メーカーを買収し、内視鏡事業を強化しています。
本業が成熟化してきた企業は、積極的に、将来の優良事業の取り込みを目指しています。
また、現在においては、介護医療市場の急拡大に伴い、介護会社による医療法人の買収が多数行われています。
【5】新規事業成長に要する時間を買う
M&Aというのは、いちから事業を立ち上げるのではなく、ある程度成長した事業を買うというメリットがあります。事業成長や顧客の獲得には何年も時間がかかりますが、その時間を買うという考え方です。
また、新規事業を立ち上げるには莫大なコストがかかりますし、また、従業員教育や取引先の開拓、企業組織に構築にも非常に難しく時間がかかりますので、M&Aをすれば短期間でこれらを取得でき、速やかな事業展開を実現することができます。
M&Aのデメリット
M&Aのデメリットとしてまず挙げられるのが、M&Aによってある程度のシナジー効果を期待したのに、その期待値を上回らなかったという点です。
M&Aをすることで、新規事業の参入や売り手企と買い手企業の強みを合わせることで今まで以上の製品や技術、市場シェアの獲得などの期待されていた結果を生み出せなかったというパターンです。
次に挙げられるのが、買い手の企業から売り手の企業に経営者や社員を送り出した結果売り手企業と買い手企業の社員の間に軋轢が生まれ仕事がスムーズに進まないという場合です。
社員のモチベーションが下がることにより、M&A後の売上や社内業務にも軋轢をきたしてしまうというパターンです。
そのような違う文化の中で整合させるということは、とても困難です。
もともと別々の会社が一緒になるわけですが、企業文化の違いや、今までの社内の方針も全て違って来ます。
このような違う会社が一緒になることで生じる問題がデメリットとなります。
またM&A時によくあるのが、優秀な社員が辞めてしまうということです。このような問題を買い手企業は回避するために、あらかじめ合併や買収の条件として、優秀な社員をやめさせないという条件を提示する企業もあります。
M&Aに巨額の資金や時間を投入したにもかかわらず、実際に買収や合併をしてみても思ったような収益や事業の拡大が進まないというデメリットもあります。
以上のようにM&Aをすることで事業拡大やシェアの拡大などのメリットばかりに目が行きがちですが、きちんとデメリットも事前に把握しておくことがとても大切です。
M&A仲介業者の選び方
では、実際にM&Aをするにあたって仲介業者はどのように選べばいいのでしょうか?
M&Aを行う会社の規模によっていくつかに分類されます。M&Aといってもさまざまな規模の会社があり、時には専門性のあるM&Aも行うことがあります。
実際にどのような専門家にM&Aをお願いしたらいいのかをみていきたいと思います。
M&Aをするにあたって必要な専門家はM&Aアドバイザー、M&A仲介業者、フィナンシャルアドバイザー、M&Aスペシャリストの4種に分けられます。
では、実際にこれらの専門家集団が実際にどのようなものなのかをみていきたいと思います。
外資系銀行
まずは、外資系銀行です。モルガン・スタンレーやゴールドマンサックスなどニュースで取り上げられるM&Aの大型案件ではこのような外資系企業買収の名前を耳にしたことがあると思います。
基本的にこのような外資系の企業買収が取り扱うのは1000億円以上の超大型案件で、日本と海外の企業のM&Aなど国境をまたいでM&Aが行われる場合はなどです。
仲介手数料は基本的にパーセンテージなので仲介手数料が10億円以上になることもあります。
証券会社
次にニュースなどでよく耳にするのが証券会社です。証券会社がM&Aするのは基本的には上場後企業になります。
仲介手数料は数億円規模です。
メガバンク
メガバンクが基本的に取り扱うのは大企業のM&Aです。そして主にはメインバンクの会社同士のM&Aを取り扱います。
メガバンクはあくまで本業は融資業務ですので、他の銀行をメインバンクとする会社が買収をした結果、対象会社のメインバンクの地位を喪失することになっては意味が無いからです。
手数料は主に数千万円規模のようです。
独立系M&A業者
独立系M&A業者には、会計事務所・税理士事務所を母体とするところや、経営コンサルティング会社を母体とするところや、営業主体のM&Aマッチングに注力する業者などがあります。
企業規模としては中堅企業・中小企業に対するM&Aが中心となります。
手数料は数百万円から数千万円程度です。
M&Aスペシャリスト選びは実績を確認!
仲介業者を選ぶ際にはM&Aスペシャリストと名乗っていても実際にM&Aを仲介した案件が数社程度しかない会社もあります。必ず今までの実績を確認しましょう。
また、M&Aという長いプロセスの一部しか経験したことのないM&Aアドバイザーやスペシャリストもいます。この点にも注意しましょう。
M&Aは、法律・会計・税務・経営・交渉理論の総合格闘技と言われますが、会社同士のマッチングだけで、専門知識に欠けるM&Aアドバイザー・M&A仲介会社・FA(フィナンシャル・アドバイザー)・M&Aスペシャリストも多くいるところです。