合同会社設立のメリットとデメリット|個人事業主や株式会社との違い

組織・人材

1.合同会社のメリットを理解するためにまず合同会社を理解する

合同会社とは

合同会社とは会社設立にあたり全ての出資者が社員(有限責任)として従事する法人です。現在、個人事業主である方はあまり違和感がないかもしれません。株式会社では「出資者」と「取締役」、つまりお金を出す人と、実際に経営をする人を分けて考えています。

合同会社を選択する理由

合同会社を選択するメリットは主に下記の点があげられます。
① 設立時の費用が安く設立までにかかる時間が短い
② 株式会社と同様の節税メリットが受けられる
③ 出資者が有限責任であるためリスクが少ない
など、会社設立時のハードルが株式会社に比べると低いにも関わらず、株式会社と同様の税務メリットが受けられる上、有限責任であるためこれから起業しようとする方にとっては有力な選択肢の一つになり得ます。

2.合同会社に関する最近の動向を知る

合同会社の設立件数の動向

近年、合同会社の設立件数は右肩上がりの増加傾向にあり、法務省統計によると平成26年度の合同会社設立総件数は約30,000社で前年対比32%増、この年に新設された合同会社は19,808社となっています。
この数字から見ても、合同会社に魅力を感じている起業家、経営者が着実に増加してきているといえます。合同会社にはそれなりのメリットがあることが多くの人たちに知られるようになってきています。
しかしながら、会社法が改正された後、今になってなぜ合同会社が注目され始めているのか疑問が残ります。実は会社法改正時の狙いと、現在の合同会社形態の選択の狙いは、日本における経営の成熟とともに少し異なってきているのです。

合同会社は小さい会社ばかりではない

合同会社が会社法に加えられたのは2006年ですから、すでに10年以上経過しています。
特に最近になって注目され始めたきっかけとして下記の企業の動きが影響しているのではないでしょうか?

アマゾンジャパン合同会社
アップルジャパン合同会社
シスコシステムズ合同会社
西友合同会社

各社は、株式会社から相次いで合同会社化しているわけですが、その狙いはなんでしょうか?前述の「合同会社を理解する」では、設立費用が安い、株式会社と同様の節税メリットが受けられると書きましたが、アップルジャパンやアマゾンジャパンは既に設立されていた会社なのでわざわざ合同会社に移行する必要はないはずです。

その理由は、ズバリ「経営の自由度」にあります。会社法改正時には、米国の会社形態の一つであったLLC(Limited Liability Company)をモデルとして導入され産業の発展と活発化に寄与することが狙いでした。しかしながら現代においては外資系企業の日本進出拡大により経営効率化やスピードアップが求められるようになった背景から、合同会社という仕組みが利用されるようになってきたと言えます。

3.合同会社と株式会社との違いを理解する

株式会社の仕組み

株式会社は設立にあたり、株主総会、取締役、監査役の設置が必須です。発起人である出資者(つまり株主)と、実際に業務を執行する取締役(つまり経営者)、業務の適正さを評価する監査役がそれぞれ責任を分離して会社が運営される仕組みになっています。従業員(一般的には社員)は取締役の使用人(代理人)として業務に従事します。このように株式会社では仕組み上、出資者の発言力が強いため実際に業務を執行する経営者は、出資者の意見に従わざるを得ない建付けになっています。

合同会社の仕組み

一方、合同会社の仕組みは非常にシンプルで、出資者と経営者を区別せず出資者全員が社員として業務の執行にあたります。ここで言う社員とは株式会社で言うところの経営者を意味しており従業員とは異なります。つまり合同会社では出資した本人が自らの意志ですべての経営判断を行うことができる点が、両者の最も大きな仕組み上の違いであるといえます。

株式会社の仕組み上の問題点

株式会社の特徴である、株主、経営、監査の3権分立は会社の経営を適切に行うためには重要である反面、会社の意思決定には時間を要するため現代のような変化の激しい時代には逆に外部環境への適用が遅れるという問題につながり企業の成長の足かせとなる企業もあるようです。

4.合同会社と個人事業主との違いを理解する

個人事業主

個人事業主に関しては多くの説明は必要ないと思いますが、毎年3月までに最寄の税務署に申告することにより誰でも費用をかけずに個人事業主登録が可能です。税務申告(確定申告)には2種類あり、白色申告と青色申告があります。白色申告は特に事前の届け出なく申告することができますが、青色申告は個人事業主登録の際に届け出が必要です。

個人事業主の場合は、会社というより家族経営なので意思決定の仕組みなどよりも、税務面や事業の責任範囲に着目して合同会社を比較してみる事が重要です。

5.合同会社を設立するメリットの概要

ここまで合同会社のメリットを理解するために従来からの変化、株式会社・個人事業主との違いについて見てきました。以降は実際のメリットについて整理します。

合同会社のメリット① 設立コストが安い

起業を考えている人からすると、最初の障壁となる会社登記。株式会社の場合は最低でも登記時 には登録免許税15万円、定款認証費5万円で合計20万円はかかります。
一方、合同会社では、最低で登録免許税は6万円(資本金×0.7%)程度で済みますし定款の認証は必要なく費用はかかりません。

合同会社のメリット② 税務面は株式会社と同様

合同会社の税務は株式会社と同様です。そのため、事業を行う最少単位である個人事業主と比較して経費として認められる範囲が広いと言えます。
一般的に株式会社で認められているような経費、例えば、業務用車両の購入費やガソリン代、携帯電話などの通信費、生命保険料など法人名義で契約・購入されたものは全て会社の経費として処理することができます。また、不動産の取得・売却にかかる損益も会社の経費として処理することができます。

合同会社のメリット③ 信用

現在、個人事業主としてビジネスをされている方にとっての最大の悩みは、取引先が限定されるという事なのではないでしょうか?最近は企業コンプライアンスが厳格化されているため、新規顧客を獲得しようとしても「個人事業主では契約できない」と言われてしまい、なかなか事業を拡大できないのが現状です。しかしながら合同会社は会社法でも規定されている立派な法人格であるため、これまで取引できなかった得意先や仕入先とも取引し易くなります。また昨今は合同会社の認知度も高まっているため今後は追い風となるのではないでしょうか。

合同会社のメリット④ 利益配分

合同会社では利益配分を社員同士(役員同士)の合議によって自由に設定することができます。
株式会社の場合は株を多く保有している人が、より多くの利益配分得ることができます。
たとえば、ある株主が取締役でもある場合、その取締役の業績が悪くても保有株数が多ければ高い配当を受けることができることになります。
確かに出資比率が高ければ高い配当を受けられるのは当然のことではありますが、業務執行責任を兼ねているのであれば業績と合わせた利益配分が望ましいところです。
合同会社では業績次第で利益配分を変えることを定款に定めておくことにより実現することができます。

6.合同会社のデメリット

合同会社のメリットでもあり、デメリットでもあるのですが、合同会社では株式が存在しないので、株式の保有数によって議決権が決まることはありません。あくまで業務執行権のある役員の力量で重要事項が決定されます。しかし逆に役員の間で意見がまとまらない、またはもめごとが生じた場合には歯止めが効かず経営の混乱が生じる可能性があります。業務執行役員間の自律的な統制力が大変重要です。

7.個人事業主、合同会社、株式会社の選択は事業規模に応じて

これから先のビジネス計画と照らし合わせて選択する

これまで合同会社と個人事業主、株式会社について整理してきましたが、設立時のハードル、税務、業務執行統制などこれから始めるビジネスの規模によって判断が大きく異なることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
今後、3年~5年程度の先の事業規模を見据え判断することが重要です。

合同会社にはメリットがたくさん!

いかがでしょうか?
今回合同会社についてお話ししていきました。
ぜひメリットとデメリットを照らし合わせて行動してみてください。

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