役員報酬の決め方・役員報酬の定期同額制度|役員報酬の変更手続き

組織・人材

役員とは?

まず役員とは何なのか詳しくご存じでしょうか。国税所のサイトでは以下のように説明してあります。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5200.htm

基本的には、取締役・監査役・会計参与が役員と呼ばれています。一般的な認識として、法律上関係なく、会社において責任のある立場の人達(社長、専務、常務など)も役員と呼ばれています。

社長と取締役は違うの?と疑問に思った人もいるでしょう。ほとんどの会社では、社長が代表取締役なので、同じ意味だと勘違いしてる人も多いです。「社長」というのは肩書で法律的には何も関係がありません。「取締役」とは、3人以上の役員で構成されていて、会社の執行業務の意思決定機関なのです。一般的に副社長や専務・常務とで構成されている会社が多いです。

役員報酬

では「役員報酬」とは何なのでしょうか。詳しく知っている人は少数だと思います。
役員が貰う給与を「役員報酬」と捉えている人が多いとは思いますが、役員報酬とは役員が受け取る給与だけではないのです。

会社から役員が受け取るものものは、全て「役員報酬」と呼ばれます。例えば、備品や会社の車など無料で受けとれば「役員報酬」に含まれます。また安く買い取った場合でもその差額が「役員報酬」になるのです。会社からお金を借りた場合や立て替えてもらった場合は「役員報酬」にはなりません。社長が個人的に支払わなければならないものを会社が支払った場合だと「役員報酬」になります。

役員が無償で会社から受け取ったものが役員報酬になるということを頭に入れておきましょう。

役員報酬と役員給与

実は「役員給与」という言葉も存在します。「役員報酬」がつまり「役員給与」のことだと認識している人にとっては混乱しやすいので整理していきましょう。

まず「役員報酬」の一部に「役員給与」が含まれています。「役員報酬」と「役員給与」はどんな違いがあるのか疑問に思った人もいると思います。では、税務署は「役員給与」をどのように判別しているのでしょうか。税務署は「同じ時期に同じ金額が支払われているお金」を役員給与と考えています。これは専門的な用語で「定期同額給与」と呼ばれています。

それに当てはまらないものは全て「役員報酬」として認識しているそうです。毎月、定期同額支払われているものを「役員給与」であると覚えておきましょう。

役員賞与

そして「役員賞与」という言葉もあります。「役員報酬」「役員給与」「役員賞与」などの言葉が出てきて混乱している人も多いと思います。

「役員報酬」と「役員給与」については分かっていただけたと思います。
「役員賞与」とは、「役員報酬」から「役員給与」を差し引いた部分のこと言います。
「役員賞与」=「役員報酬」-「役員給与」という図式が成り立ちます。

そもそも「賞与」とはボーナスのことを指しますよね。「給与」以外に支払われる特別な報酬のことです。従業員の賞与とは定義が違うので、混同しないように注意しましょう。
「役員給与」は「役員給与」以外の「役員報酬」の部分にあたるものです。

役員報酬の決め方

さて「役員報酬」の金額はどのように誰が決めるのでしょうか。役員報酬の金額によって、会社の利益や税金が大きく影響してきます。会社の死活問題になり得ますので、「役員報酬」の金額は、慎重に決めていかないといけません。

役員報酬は、会社設立から3カ月以内に決めないといけません。例えば、1月1日に会社を設立したのなら、3月31日までに役員報酬の金額を決めないといけないのです。

法律上、社長が役員報酬の金額を勝手に決めることはできません。「定款または株主総会の決議によって定める」と決まっています。

まず株主総会で「役員報酬」の総額を決めます。役員ごとの金額は取締役が「取締役会」で決めます。

定款

役員報酬は「定款」でも決められると上記で述べました。
「定款」とは何なのでしょうか。

「定款」とは会社設立時に決めたのルールのことです。会社設立のときに必要になってくる書類のひとつです。発起人が定款を作り、その書類に署名か捺印をし、公証人の認証が必要です。

定款の記載事項には、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」があります。

「絶対的記載事項」とは、定款に絶対記載ないといけない事項です。記載しないと定款が無効になります。
「相対的記載事項」は、記載しなくても定款が無効になることはないですが、定款に定めないと、その事項の効力が認められません。
「任意的記載事項」は、会社の基本事項として定款に敢えて記載する事項のことを言います。記載がなくても定款は無効になりませんし、その事項の効力が否定される訳ではありません。会社の根本規則として、その重要度が増すと言えます。

会社の利益と税金

役員報酬の金額が、会社の利益と税金に大きな影響を与えると説明しました。これは一体どういうことのなのでしょうか。詳しく紐解いて見ていきましょう。

役員報酬の金額が少ないと、会社の利益が増えます。しかし、そうすると法人税が多くなってしまいます。しかし、役員報酬の金額を多くすると、今度は会社の利益が減ってしまいます。金融機関から融資を受けている会社は、信用に関わってきます。金融機関はその会社に返済能力があるのか見る為に、資金を確認します。その資金が少ないと、返済能力がないと見なされてしまうのです。

株主総会と役員報酬

株主総会で役員報酬の総額を決めると説明しました。しかし、詳しく言えば株主総会に提出して決議するのです。予め、役員報酬の金額を算出しておいてそれを決議することもあります。また、金額が確定していないものは算出方法を提出することもできます。役員報酬はお金だけではないので、その具体的な内容も提出します。

しかし、中小企業は役員報酬を株主総会で決議してないところが多いのも事実です。事後的に株主総会で承認するといったケースも過去にありました。しかし、本来であれば、株主総会で決議することが決まっているので、このようなケースは無効とされる場合があります。注意しましょう。

株主総会とは?

そもそも株主総会とは何なのでしょうか。よく聞く言葉ではありますが、その意味をきちんとご存じでしょうか。何となく理解している人も今一度詳しく株主総会の意味を確認してみましょう。

株式会社にとっては必須の機関です。株主総会とは、株主が構成員となって、定款の変更や会社の役員の選出や解散、他の会社との合併など、「株式会社」の意思を決定する機関のことです。その会社の重要事項を決めるときに開かれます。取締役会が招集して、決算期ごとの「定時総会」とその他の「臨時総会」があります。株主総会の決議は多数決を持って行われることが原則をなっています。株主1人に1票ではなく持っている株の数に応じて複数票が与えられます。

役員報酬に関する議事録の扱い

役員報酬決議を株主総会でしますが、その際に欠かせないのが「株主総会議事録」です。
株主総会議事録は株主総会が開かれるときには作成が義務付けられています。株主総会議事録がないと、税務調査に対して証明が出来ません。役員報酬に関して言えば、会社設立時の役員報酬を決める時と役員報酬変更の際に必要になってくる書類です。

役員報酬は税金と関わってくる為、税務署はこの株主総会議事録を重要な資料として扱います。株主総会で決まった事項の証明として作成して保管することが義務付けられています。会社の重要事項を取り決める株主総会。その株主総会の結果を記す大事な書類になると同時に、会社を守ってくれる書類にもなりますので大事に保存しましょう。

株主総会議事録

株主総会議事録とは、株主総会の議事の経過や概要などを記した記録書面のことです。
以下の内容を記録することが決まっています。

・議事の経過と結果
・開催日と開催場所
・株主総会で述べられた意見の内容
・株主総会に出席した取締役、監査役などの名前
・株主総会の議長の名前
・議事録作成に関わる職務を行った取締役の名前

株主総会議事録は、株主総会が開かれた日から10年間本店に保管しないといけません。そして、その写しを支店でも5年間保管する義務があります。しかし、支店で株主総会議事録をパソコンなどで閲覧できるのであれば、写しを保管しておく義務はありません。税務調査などでいざ必要となったときに、すぐに提出できるように、保管場所などきちんと把握しておきましょう。

役員報酬の変更手続き

役員報酬は変更の際にも「株主総会議事録」が必要だと上記で述べましたが、役員報酬は変更が出来るのでしょうか。

原則、1年間は役員報酬の金額は固定でないといけません。
しかし、役員報酬の金額次第で会社の利益と税金に大きな影響を与えます。法人税を増えたり減ったり変動があるので、役員報酬もそれに応じて変更していかないと大変なことになります。
金融機関の融資を考えているなら、赤字は禁物です。ですが多額の税金は出来るだけ避けていきたいですね。

役員報酬の変更は出来ることは確かなのですが、変更できる時期が決まっています。この時期に最適な役員報酬を決めていかないといけません。

役員報酬の変更時期

では役員報酬の変更時期はいつなのでしょうか。
役員報酬が変更できるのは、事業年度開始日から3カ月以内と決まっています。この3カ月以内に株主総会を開いて、役員報酬を決定します。それから1年は変更することができません。

しかしある手続きをすれば、事業年度の途中で役員報酬を変更することができます。
臨時株主総会を開き、役員報酬の変更を決議した内容を株主総会議事録に記します。そして必要であれば、日本年金機構に「被保険者報酬月額変更届」を提出します。
定額の役員報酬であれば、税務署への届け出は不要です。

こうした手続きをすることで、年度途中の役員報酬の変更も可能になります。

役員報酬の減額

事業年度途中で、役員報酬の減額をしたいときは「経営状況の悪化に伴なって、株主や債権者、取引先等との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じている場合」のみ、特別に減額し、損金に算入することができます。
例えば、株主との関係上、業績や財務状況の悪化で役員としての責任として給与の額を減額しなくていけない場合や、取引先の利害関係から信頼を維持する為、多額の損害賠償の支出が発生した場合、売上の大半を占める得意先の手形不渡りを出した時、などが考えられます。

しかし、原則としては役員報酬の変更は1年間できないことになっています。やむを得ない状況を除き、出来る限り事業開始日から3カ月以内に、役員報酬の変更を決議しましょう。

役員報酬の増額

では、増額の場合はどうでしょうか。減額と同じでしょうか。詳しく調べていきたいと思いまし。

基本的に、事業年度途中での増額は損金不算入となります。何故かというと、役員報酬の増額は、税金をなるべく納めなくても良いように操作していると見なされるからです。
これは脱税と同等の行為と考えられます。ただ、損金にならなくても良いのなら、役員報酬を増やすことができます。利益はそのままなので、法人税は何も変わらないということです。

税金と利益のバランスを取るのも危うい行為です。利益操作と疑われない為にも税理士さんと相談をして、役員報酬を決めていった方が良いでしょう。そして、1年間は役員報酬を固定できるように、未来を見通す力を身に付けることも必要です。

被保険者報酬月額変更届

上記の説明に出てきた「被保険者報酬月額変更届」が何なのかご存じでしょうか。
被保険者報酬月額変更届とは、以下の場合に提出する届けのことを言います。

・被保険者の給与が昇給したり降給したり変動があったとき。
・変動月からの3か月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき。
・3か月とも支払基礎日数が17日以上であるとき。

提出は速やかに行いましょう。提出先は事業所在地を管轄する事務センターです。提出方法は、窓口に直接持参しても良いですが、郵送や電子申請なども出来ます。またデータをCDまたはDVDに焼いて提出することも可能です。

損金

「損金」という言葉も出てきましたが、意味はご存じでしょうか。「損金」とは費用の一部のことで、個人事業主で言うところの「経費」と同じ扱いをされます。法人税というのは、所得に対してかかる税金なのですが、所得は益金から「損金」を引いた額のことを言います。

つまり、損金が多ければ法人税はそれだけ少なくなるということなのです。なので、損金に算入できるかできないかによって、税金と利益に大きな影響が出てくるのです。役員報酬の増額で少し説明しましたが、損金不算入となれば、所得は変わらないですね。なので法人税として納める額は変わらないということなのです。損金不算入となるのは、交通費や接待費などの含まれます。

収益と益金

収益と益金は違います。似たような言葉で混乱している人は多いでしょう。少し難しい話になってくるのですが、役員報酬にも関わりがある言葉なので、ひとつずつ詳しく調べていきましょう。「収益」は企業会計上の収入のことで、「益金」は税務会計上の収入のことです。なぜわざわざ違う言い方をするのでしょう。

「利益」を計算するときは、収益から「費用」を引いて算出します。そして、「所得」を計算するときは、益金から「損金」を引いて算出します。この「利益」と「所得」は一致しません。何故なら「費用」と「損金」も一致しないからです。利益は企業会計上必要なもので、所得は税務会計上必要なものになります。

費用と損金

「費用」と「損金」も違うと説明しましたが、どう違うのか予想できている方は多いと思います。「費用」は企業会計上の支出のことで、「損金」は税務会計上の支出のことです。
費用は、交通費や接待費が含まれてきますが、「損金」は含まれません。

他には、減価償却の超過額も損金不算入とされます。しかし、少額の減価償却資産はそ損金に算入できます。使用可能期間が1年未満のものや、取得価額が10万円未満のものだと損金算入が可能です。事前に届出のない役員給与や多額の役員報酬も損金不算入となりますので注意しましょう。

一方、「費用」は営業に関わるかで決められます。なので交通費や接待費も「費用」として認められるのです。

企業会計

企業会計とは、会社の実力を分かりやすくする為の会計です。
利益があればあるほど、その会社の実力があると判定できます。なので、企業会計では「利益」を算出することが大事になってくるのです。

この利益によって、投資家や社内外の人に実力を判定してもらうのです。
企業会計には原則があります。

・真実性の原則
・正規の簿記の原則
・利益と資本の区分原則 (資本取引・損益取引区分の原則・剰余金区分の原則)
・明瞭性の原則
・継続性の原則
・保守主義の原則
・単一性の原則(実質一元、形式多元を要求)
・重要性の原則 一般原則ではないが、それに準ずる原則。

会社を管理する上でも重要な役割を果たしますが、会社の信頼にも関わってくるのが企業会計の特徴と言えるでしょう。

税務会計

税務会計ですが、目的が企業会計とは違います。企業会計は詳しくは管理会計と財務会計に分けられるのですが、税務会計は財務会計の中に含まれるのです。税務会計は「税金を正しく計算する」為に存在します。

法人税は、所得から算出されると説明しましたが、「所得」を正しく算出する為に、税務会計があるのです。「所得」は益金から「損金」を引いて算出すると上記で説明しましたが、「損金」も参入するのかしないのかの正しい判定をしなくていけません。

会社の存続にも関わる大事な税務会計ですが、その立場は責任が重いのです。そして節税などがないように、法人税法に基づき、毅然とした立場にないといけません。

法人税法

「法人税法」とは法人税について定められた法律のことです。1940年に「所得税法」から独立しました。1998年以降は、企業のグローバル化やIT化などの変化に対応する為に、改正がしばしば行われてきました。各種引当金、減価償却やリースなど所得計算の基本的な項目について、大幅な見直しが行われてきました。

平成12年度改正では、デリバティブや株式移転・株式交換に関する取扱いが定められました。平成13年度改正では、企業組織再編税制が整備され、合併、分割、現物出資及び事後設立について理論的統一性が図られるとともに、併せて株主に対するみなし配当課税や法人の利益積立金、資本積立金について整理が行われたのです。そして、平成14年度改正では、連結納税制度が導入されました。

役員報酬と源泉徴収

基本的に、役員報酬は源泉徴収されます。他の従業員と同じように「給与所得」として扱われるので、年末に確定申告する必要はありません。ただし「二か所給与」の場合は、確定申告をする必要が出てきます。

「二か所給与」とは、1つの会社からだけではなく他の会社からも給与を貰っている場合のことを言います。二か所給与だと、従業員よりも高い税率で源泉徴収を行い、年末調整は行わない為、確定申告が必要になってくるのです。

役員報酬が未払いになったときは、どうなるのでしょうか。未払いの場合は、原則源泉徴収はされません。納付もしなくて大丈夫です。支払われたときに源泉徴収をされます。

役員報酬未払いでも源泉徴収が必要な場合

しかし、役員報酬未払いでも源泉徴収が必要な場合もあります。役員報酬というのは税務調査からは厳しく取り扱われています。

利益が出たときだけ増額したり、利益が出ないときは減額したりなどは原則できないようにはなっていますが、税務署からみて、不自然な未払いがあれば、節税の疑いをかけられる場合があります。そういう疑いがかけられかねない状況のときに、税理士から源泉徴収するように指導が入ることがあるのです。疑いをかけられる前に、源泉徴収をして、納付に応じましょう。

原則として、未払いであれば源泉徴収はしなくて良いと定められているにも関わらず、源泉徴収をしなければならない状況があるのは、それだけ役員報酬が税務調査からとてもシビアに見られているということを頭に入れておきましょう。

源泉徴収

源泉徴収の意味は正しく理解していますか?何となく理解している人が多いと思われます。
源泉徴収とは何なのか詳しく見ていきましょう。「源泉徴収」とは、給与や報酬などに対して納めなければならない税を支払い者が差し引いて支払い、差し引いた金額を国に収める制度のことを言います。源泉徴収される対象は法律で決まっています。その代表的なものを見てみましょう。

■支払い先が個人の場合
・原稿料、デザイン料、講演料
・演出家、芸能人への報酬
・弁護士、会計士、税理士、などへの報酬
・ホステスへの報酬

■支払先が法人の場合
・利子、配当

■支払い先が海外居住者の場合
・利子、配当

一般的に源泉徴収は個人に対して行うものだという認識があるのですが、法人や海外居住者に対しても行うものです。頭に入れておきましょう。

所得税

「所得税」とは、個人の所得に対して課される税金のことです。
「法人税」は会社の所得に対して課されるものですね。

所得税はある一定の金額以上の所得が定期的にれば、全員に納付する義務が定められています。会社に勤めている人は、給与から源泉徴収され、会社が年末調整をしてくれます。フリーランスなど給与ではない人達は、源泉徴収はされますが年末調整は誰もしてくれないので、自分で税務署に行き確定申告をしなくてはいけません。

所得の内容を、給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得、一時所得、雑所得、退職所得、利子所得、譲渡所得、山林所得の10区分に分けた上で計算されます。

役員報酬の定期同額制度

上記で少し触れましたが、役員報酬で、定期的に同額の金額が支払われているものを「定期同額給与」と言われると説明しました。所謂この部分が役員報酬の給与の部分となるのです。

この制度は、2006年の税制改正により定められました。役員報酬の決議は、事業年度開始日から3カ月以内と決まっています。この3カ月以内に株主総会を開いて、役員報酬を決定します。それから1年は変更することができないと説明しました。

この目的は、利益によって役員報酬を増額したり、減額したりして、節税することを防止する為だと言えます。

役員報酬の事前確定届出給与

「事前確定届出給与」をご存じでしょうか。経営者にとって「事前確定届出給与」知らないと、とても大変なことになります。

役員報酬を支給するときには、事前に決められた届出を決められた期限までに税務署に提出します。それが「事前確定届出給与」のことです。そして、その届出どおりの金額を支給していないと、その支給した金額を損金に算入することができません。支給金額、支給時期とも届出内容と完全一致している場合には、問題なく支給額は損金算入が認められます。

この届出を提出していないと、損金算入が認められず、会計年度の所得をそれだけ押し上げてしまうことになります。そうすると法人税を多く支払わないといけなくなってくるのは、すでにお分かりだと思います。

損金と利益連動給与

利益連動給与という言葉をご存じでしょうか。民間企業であれば、景気や業績によって給与が変わったり、ボーナスが支給されたりすることがあると思いますが、この業績や景気によって連動する給与のことを「利益連動給与」と呼びます。

今までの法人税法では、臨時的な給与は損金に算入しないと定められていました。業績や利益によって連動する給与も該当するものとして、損金に算入されていませんでした。

しかし、平成18年度の税制改正で、一定の要件を満たす利益連動給与に関しては損金算入が認められるようになったのです。一定の要件は下記の通りです。

・有価証券報告書の提出法人
・確定額を限度としていること
・報酬委員会の決定などの適正手続
・その内容が遅滞なく開示されていること
・損金経理要件等

この改正で、法人税の支払う額が、以前よりも少なくなり得るということなのです。

会社法

会社法とは何なのかご存じでしょうか。
「会社法」とは、会社の設立・解散、組織、運営、資金調達、管理などについて規律する法分野、あるいはそのような名称を有する法律のことを言います。
2005年6月に会社法が国会で成立され、2006年5月に施行されました。それまでは商法という法律が日本にはありました。

旧商法においての役員賞与は「取締役の報酬取締役が受くべき報酬に付ての左に掲ぐる事項は定款に之を定めざりしときは株主総会の決議を以て之を定む(以下略)」と定められていて、明確な規定があった訳ではありませんでした。

しかし、会社法においては「取締役の報酬等取締役の報酬、賞与そのほかの職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下、この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。(以下略)」と定められ、職務執行の対価として整理されるようになりました。

起業を目指す人へ

起業を目指している人は、将来的には役員のポストに就くはずです。代表取締役となるまでには、色んなことを学んでいかないといけません。
ここで説明した「役員報酬」もほんの一部に過ぎません。

「役員報酬」の説明にも色んな専門用語が出てきて、そのたびにその用語の説明を載せてきましたが、まだまだ頭が痛くなることを勉強していかないといけません。
会社の存続の為には、「役員報酬」がいかに大事になってくるのかが、分かっていただけたと思います。

従業員の生活を守る

役員になると、自分のことだけではなく従業員のことも考えていかないといけません。代表取締役にもなると、全従業員の生活を守る義務があるのです。金銭的なことだけではなく、心の状態も見守っていくことも大切です。

会社が大きくなればなるほど、従業員との距離は大きく広がる傾向があります。しかし、その距離をできるだけ縮めて、従業員が今どんな状態で働いているのか管理する必要があります。

従業員が働きにくい環境だと、仕事を辞めていく人間が増えます。そうすると会社の死活問題へと発展していくのです。会社とは、一人ひとりの人間の努力によって成り立っているのです。従業員一人ひとりがどんな思いで働いているのか把握し、その従業員の生活を守ることが、役員の重大な仕事だと言えるでしょう。

社会的な信頼を得よう

従業員を守る為には、会社がしっかりしていないといけません。会社が存続していく上で大切なのは、社会的な信頼だとも言えます。会社を設立していきなり、社会的信頼を手に入れることは不可能です。続けていく中で誠実な対応をして勝ち取っていくものだからです。「役員報酬」ひとつを取っても、厳重に決めていかないと社会的信頼は得られません。

顧客に対しても、取引先に対しても、税務調査に対しても、従業員に対しても、示しがつかないようなことをすると、社会的信頼は急落していきます。民間企業は利益を稼ぐことを目的として存在してますが、その利益も社会的な信頼がないと得られないものなのです。誰に対しても誠実な対応をして、社会的な信頼を得て会社を成功へと導きましょう。

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