有限会社と株式会社の違い|有限会社から株式会社への変更方法

組織・人材

会社法における「会社」とは

会社とは、営利を目的とする社団法人です。さらに社団法人とは、人の集まりに対してい法人格が付与された存在のことです。また、営利とは事業活動によって利益を上げ、それを構成員に分配することと考えられています。現行会社法上、会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類が定められているのです。

現行会社法では有限会社は認められていない?

有限会社とは

旧商法のもとは、株式会社制度は大規模で公開型の企業を前提に作られ、小規模・非公開型の企業が利用するには必ずしも適さない面が多くありました。そこで、このような株式会社像を前提にした上で、非公開型の組織構造を基本としながらも、社員全員が有限責任を享受することができる会社形態として創設されていたのが有限会社です。

株式会社像の変更に伴う有限会社法の廃止

株式会社制度が、非公開型の企業にも利用しやすいように数々の制度設計の可能性を許すという形で規制の柔軟化を進めたことを踏まえて、平成17年に会社法が制定される際に、有限会社法は廃止されました。これにより従前の有限会社も、会社法上は株式会社とされることになったのです。現在の会社法における非取締役会設置会社は、有限会社の組織構造を実質的に踏襲したものです。(会社法制定以前は、株式会社は全て取締役会設置会社でした)

特例有限会社としての存続

有限会社法の廃止によって、それまでの有限会社が全て当然のように株式会社への移行を強制されたわけではありません。経営の継続性に支障を来さないように、商号については、「有限会社」を引き続き用いることは許され、その場合、廃止前の有限会社法の規律が多く引き続き適用されるものとされています。

現行会社法においては、これらの会社のことを「特例有限会社」と定義しています。これら特例有限会社は、定款の変更によって、通常の株式会社に移行することが可能です。もっとも現行法制化において、新たに有限会社を設立することは許されていません。

会社法制下における有限会社のニーズを発揮するには

持分会社制度

会社法では、株式会社のほかに、合名会社、合資会社、合同会社という3種の会社形態を用意しています。(会社法2条1号)これら3種の会社を総称して持分会社と言います。(会社法575条)持分会社の構成員は社員といい、社員の地位を持分と称します。この中で、社員全てが有限責任であるという点に鑑みて、従前の有限会社と類似するのが合同会社です。

合同会社

合同会社とは、平成17年の会社法制定時に新たに設定された会社形態です。その立法趣旨としては、当事者間で最適な利害状況を自由に設定することを可能にすることによって、その事業の実施の円滑化を図る会社類型を提示することが目的とされました。

しかし、現実の利用目的はこのような効率的な企業経営という当初の目的からは外れた場合が多いです。例えば、株式会社を設立する際には、登録免許税15万円、公証人による定款認証費用5万円、公証人保存原本に添付する印紙税4万円、合計24万円は最低限必要とされます。これに対して、合同会社は、登録免許税6万円のみで設立可能なのです。こういった設立費用を節約するという意味で、個人企業に利用される場合があります。また、合同会社には会社更生法の適用がないので、資産流動化の特別目的会社として便宜的に利用されることもあります。

合同会社法の規律内容

①全員一致原則

合同会社においては、内部関係について、原則として全員一致で決定されることになります。もっとも決議要件等を含め、それらは定款による変更が可能です。これによって、多数決原則を採用することもできるし、代表社員に一任することもできます。原子定款を作成する際に構成員全員の同意を得られれば、ほぼ完全な定款自治が可能なのです。

②社員の氏名

合同会社の社員が有限責任であることにより、当該社員の氏名または名称及び住所、出資の価額は定款の絶対的記載事項とされます。(会社法576条1項4号・6号)したがって、持分の譲渡等による社員の変動については、定款変更が必要となります。これにより、第三者割当増資によって会社乗っ取りにあうような事態は起こりにくくなり、株式会社より静的安全を確保することが可能となります。

③持分の譲渡

また、合同会社設立後の社員の入社及び持分の譲渡の承認に関しても、原則として全員一致によりますが、定款による変更は可能です。これにより、合同会社の社員には持分譲渡による投資資本の回収が保証されていないことになります。しかし他方で退社の自由が認められていることによって填補されています。(会社法606条3項)

④社員の出資

会社債権者への配慮という観点から、合同会社への出資は、金銭その他の財産のみに限定されて、全額払い込み主義が採用されています。この点は株式会社と同様の規制がされていますが、現物出資に関する検査役調査等の規制は設けられていない点で、規制は緩やかです。

⑤損益及び残余財産の分配

損益及び残余財産の分配に関しては、出資比率によるのが原則とされるが、これも定款による変更が可能です。出資比率に応じない利益の分配及び議決権等の分配が可能となり、柔軟な制度設計が許されます。

株式会社との比較における合同会社

株式会社の概要

会社は、営利企業の形態として最も広く利用されている組織ですが、特に経済社会における株式会社の重要性は圧倒的なものがあります。それは、株式会社という形態が、複数の者が共同で事業を営むための組織形態として優れているという点が挙げられます。株主が1人しかいない株式会社も存在することから、株式会社が常に共同事業に利用されるわけではないのですが、共同事業を前提とした場合に、株式会社の利点はより発揮されると言えます。

合同会社が劣る点

①株式会社が当然の世の中
株式会社制度があまりに定着しているあまり、取引先等も、株式会社形態をとっている企業に対して安心感を抱く傾向があります。株式会社という名称にブランド価値がある結果、新規参入的存在である合同会社は不利でしょう。

②株式会社の規制緩和
会社法制定により、株式会社においても広く定款自治が認められるようになりました。これによって、組織設計の自由度についての合同会社の優位性は薄れたと考えられます。

③合同会社の法制度上の問題点
合同会社においては業務執行者が社員でなければならない点、労務の出資が認められない点、そして、構成員課税の利益を受けることができない点が問題点として指摘されています。例えば会社債権者利益とのバランスの観点から労務の出資が認められていなかったり、一応の理由はあるのですが、合同会社制度があまり流行していない現状を踏まえると、これらもその停滞の一因となってしまっています。

④設計コスト
定款自治が広く許されるのが合同会社のメリットですが、これにより逆に設計コストがかかるという事態が考えられます。組織設計に対するコストをどのように捉えるかは会社の考え方次第ですが、現実問題としては切実な場合があるでしょう。

有限会社から株式会社に組織変更する方法

組織変更規制

会社法において、会社がその組織を変更することにより、その法人格の同一性を保ったまま別の類型の会社になることを組織変更と言います。合名会社から株式会社への変更をする場合には、この法規制に該当します。

組織変更の手続き

会社が組織変更をするには、
①組織変更計画を作成(会社法743条)
②効力発生日の前日までに、合同会社を構成する総社員の同意
(会社法781条1項。但し、定款で別段の定めをすることができる。)
以上が必要条件です。

そして、組織変更にあたっては、会社債権者保護の観点から、債権者異議手続を要します。(779条、781条2項)この結果、効力発生日(会社法744条1項9号、746条1項9号)に組織変更の効力が生じることになり、合同会社は株式会社になります。

組織変更の手続に瑕疵がある場合、その無効は、組織変更から6カ月以内に、組織変更の無効の訴えによってのみ、主張することができます。(会社法828条1項6号)当該訴えの原告は、2項6号に列挙される者に限定され、被告は組織変更後の会社とされます。(会社法834条6号)組織変更を無効とする判決の確定により、会社は将来に向かって、変更前の会社に復帰します。(遡及効はない。会社法839条。)組織変更を無効とする確定判決には、対世効があります。(会社法838条)

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