法人化のタイミング・個人事業主が法人化するときのタイミングは?

組織・人材

1.1ヶ月で50万円の利益が出たら?

個人事業主が法人化のタイミングを考える時、めやすとされるのは「1ヶ月で50万円の利益が出たら」です。1ヶ月で50万円の利益が出るようになると、個人事業主から法人化した方が、税金面で有利になることがあります。そこで、1ヶ月で50万円の利益が出たら、法人化することを検討した方が良いとされているのです。

逆に「そもそも法人化をめざして個人事業主をやっている」という人は、1ヶ月で50万円の利益を目指すと良いでしょう。

売り上げ50万円ではない

ここで言われている法人化のタイミングのめやすは、「1ヶ月で50万円の利益」です。
「1ヶ月で50万円の売り上げ」ではありません。

これは、法人化で節税できる税金が、所得を基準に算出されるからです。 売り上げから諸経費などを差し引いた利益が50万円を超えていて、しかもそれが毎月継続するようになったら、法人化したほうが良いでしょう。

2.1年間で500万円の利益が出た場合は?

1ヶ月の利益が50万円まで届かない個人事業主も、一年間の利益が500万円以上であれば、法人化した方が有利と考えられています。

法人化すると赤字でも納税?

さらに、毎年安定して500万円以上の利益を出せることも大切です。いったん法人化すると、赤字の年も税金を課されることがあります。 法人化したあとで利益が下がりすぎると「むしろ法人化しないほうがよかった」となることがあるのです。

3.個人事業主が法人化すると税金が有利?

個人事業主の多くが法人化に熱心なのは、所得税が有利だからです。 日本の法律では、累進課税制度(るいしんかぜいせいど)といって、個人事業主の所得金額が増えるのと同時に、税率も増えるしくみになっています。

「所得金額が195万円以下なら、5%が所得税」「195万円を超えたら10%」「330万円を超えたら・・・」というふうに、段階ごとにパーセンテージが決まっていて、「4,000万円を超えたら45%!」を納税しなければなりません。

個人事業主は最高税率を課される?

4,000万円の45%とは、1,800万円。 所得税の最高税率です。 個人住民税や事業税なども含めると、実際には55%以上、約2,200万円を納税する見込みになります。 個人事業主のままで働き続けると、頑張れば頑張るほど、所得税の最高税率が近づいてきます。 「4,000万円の利益が出るほど働いたのに、働いた人の手元に残るお金は1,800万円だけ」が実現するのです。

そこで個人事業主の多くは、所得税の有利な法人化をめざしたくなります。 法人の所得税はすべて23.4%と決められていて、どんなに利益を上げても、これ以上に税率が上がることはないからです。

4.法人化したら所得税が有利なのか?

法人の所得税は「一定税率(いっていぜいりつ)」といって、普通法人と中小法人が対象となっています。

普通法人の所得税は、23.4%のみ

このうち、普通法人であれば、所得税は23.4%と決められています。

いったん法人化すれば、どんなに大きな利益を上げても23.4%。
個人事業主と違って、「所得が4000万円を超えたから55%」と言われる心配がないのです。

また、中小法人の場合は、所得税率が2種類あります。

中小法人の所得税は、15.0%~23.4%

中小法人の一年間の所得が800万円以下なら、所得税率は15.0%。
個人事業主が約800万円の所得を得たら、所得税率23%なのに。

中小法人の一年間の所得が800万円を超えたら、所得税率は23.4%。
どんなに利益が高額でも23.4%です。
個人事業主が900万円を超える所得を得たら、所得税率33%なのに。

個人事業主と法人では、ふだん「所得税の計算は苦手で」と避けている人も、見逃せないほどの大差がついてしまうのです。

5.法人化すると、消費税が有利になる?

法人化のタイミングには「一年間の売り上げが1000万円を超えたら」という考え方もあります。

個人事業主の売り上げが1000万円を超えると、消費税の対象となり、納税義務が発生するからです。

法人化すると、消費税免除?!

個人事業主が法人化したとき、規定の基準を満たしていると、会社設立の1期目と2期目に消費税が免除されます。
これがもし、個人事業主のままでいたら、消費税が免除されません。

そこで、1期目と2期目の消費税免除をめざして、「一年間の売り上げが1000万円を超えたら法人化したほうがよい」と考えられているのです。

6.税金以外に、法人化のタイミングはある?

法人化のタイミングは「毎月の利益が50万円」、「一年の利益が500万円」、「一年の売り上げが1000万円」と言われています。

しかし、法人化のタイミングの基準は、税金だけとは限りません。
むしろ税金のことばかり考えていると、あとで思わぬ事態に陥り、「法人化するんじゃなかった」となることがあるのです。

利益や売り上げに関係なく課税される?

たとえば、法人化してすぐの何年かは、消費税の納税を免除されることがあります。

しかしそれは、会社設立の1期目と2期目だけ。
3期目以降に大赤字を出してしまった場合、会社の利益の多い少ないに関係なく、消費税は払わなければならないのです。

消費税は、消費者が会社に預けた形で納税する税金。
会社は消費者からお金を預かっているだけなので、消費税は原則、全額を納税しなけれはならないのです。

7.法人化のタイミングは、事業全体を検討する

個人事業主が法人化のタイミングを検討する時、節税のことだけ考えて決めると、選択を誤ることがあります。

法人化した時に節税できる金額だけを考えていると、法人化した後になって、思わぬカベにぶつかってしまうことがあるのです。

法人化は、「法人化したら終了」という作業ではありません。
法人化の後も仕事は続くし、税金を納め続けないといけないのです。

法人化は、お金がかかります

法人化をスタートすると、会社を設立するためのコストや、会社を運営するためのコストが拡大します。
会社の登記の手続きだけで、数十万円かかることになるのです。
社員を雇いたくなったり、会社をより良い環境に移転したくなることもあるでしょう。

ほんとうにそれを超えて、安定した利益を上げ続けることができるのか、冷静に検討した方が良いでしょう。

8.法人化のタイミングは、専門家におまかせ?

税理士や会計事務所、商工会議所などでは、法人化した方が良いかどうか、無料で診断してくれる場合があります。 今が法人化のタイミングかどうか、専門家の意見を聞くことができるのです。 個人事業主にとって、自分の事業内容が法人化に向いているどうかは、自分で判断しきれないところがあります。法人化したあとの会社がうまく行くかどうかは、会社の立地条件、事業内容など、いろいろな要素に影響されるからです。 会社設立の現場を何度も見ている専門家の意見は、大いに参考になることでしょう。

もっとも、専門家の意見を参考にするのは良いことですが、振り回されるのも良くありません。 法人化に挑むか、個人事業主をつらぬくか、最後に決断するのは自分です。頑張ってください。

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