事業主借と事業主貸とは|事業主借の返済方法・マイナスの場合

組織・人材

事業主借と事業主貸

事業主の財布と事業の資金

経営というのは個人とは分離されている必要があります。少なくとも企業体であれば経営陣であろうとも会社の金を個人的に使うことなんかは許されないことになっています。

しかし、自営業者であればそのあたりがかなり曖昧となっていることもあります。ただし、曖昧といってもそれは会計的にはしっかりと区別されている必要があります。そのための勘定科目としてあるのが事業主借と事業主貸という科目になります。

ちなみにこの勘定科目は『法人』では使うことはないです。自分はしっかりと自営業者であろうとも会社のお金と自分の使ったお金を区別している、と考えるかもしれませんが、仕分けにおいて確実に必要になってくる項目であるのです。

個人事業主において、事業主貸とは、事業用の口座から現金を個人の生活費などに使った時に使うことになります。これはわかりやすくいいますと『事業主が貸した』ということになります。そのため、事業主貸という勘定科目になります。

この場合の事業主というのは会社そのもの、ということになります。
事業主=自分、ということであってもあくまで貸したのは自分ではなく、事業主、ということになります。事業主が個人(自分)の生活費の支払いをした、或いは事業用口座から生活費を出した、ということがこの科目を使うときになります。

もう一つの事業主借というのは、個人が事業のためのお金を支払ったときなどに使うことになります。事業主が借りた、という認識です。事業主借の主なパターンとしては、個人のクレジットカードを用いて事業の経費を支払う、個人の生活費用の口座から事業用口座に入金をした、ということなどになります。

こんなこと、一々わけて考えるのか、と思うかもしれませんが自営業においてはこの割合がとても大事になります。たとえば家賃がない自宅であろうともそれは事務所として使っていればそこにかかる様々な費用を経費として計上することが許されています。それでは、全部そうなのか、といえばそれは違います。

その割合を決める必要があるのです。たとえば電気代であれば、部屋の一室が事務所になっているであれば電気代の総額ではなく、何部屋あるのか、ということから考えて、5部屋ある1室であったら、25%を経費として計上、とやるわけです。

その際、電気代自体はそのまま丸々金額を一度計上するわけですが、その時に『事業主借』が出て来るわけです。

水道光熱費○○ / 事業主借 (事業割合を計上)

とします。これが基本的なやり方になります。

事業主借の返済方法

処理の仕方

事業主借の返済ですが、まずどんなことを借りたのか、ということによります。
多くの場合、それは現金、ということになります。そう仮定して、まずは借りた時の仕訳です。

現金 ○○ / 事業主借 ○○
となります。

これで会社の現金が増えて、事業主(個人)から借りた分も増えた、ということになります。
これを返済するのですが、基本的に逆にすればよいことです。
つまり、事業主借 ○○ / 現金 ○○
となります。

これで返済したことになります。帳簿というのは借方、貸方が同じであれば相殺されて釣り合いが取れることになります。もちろん、この場合、借りた金額と返した金額が同じであることが釣り合う条件になりますが、こうすれば返済はできるようになっています。

しかし、別にこれはしなくてもよいことになっています。そもそも決済、つまりは締めのときに元入金勘定に入れることになっていますから、そこですっきりとすることになります。

下手に返済の仕訳をしていると混乱することが多いですから、そこまでお勧めできる行為ではないです。やってはいけないわけではありませんから、やるのは自由です。

事業主借がマイナスの場合

事業主貸も事業主借も金額が膨らむことはあっても正しく処理していればマイナスになることはないです。つまり、マイナスになっている、というのは間違っている可能性が大です。貸しと借りの考え方がややこしく、書くほうを間違っていることが本当によくあります。特に返済処理をしているとややこしくなり、そこでミスをしている可能性が極めて高いです。

会計ソフトを使っていてもこれは間違えることがあります。なぜなら仕訳自体にはミスがないからです。そこで会計ソフト側で間違っています、というメッセージがでないからです。

一仕訳において、借方と貸方の金額が合っていないなどであれば間違っていると警告がでるのですが、事業主借の勘定が借方にあろうが貸方にあろうがそれは有り得ることになりますから、まずはその点から確認して、マイナスになっている原因を突き止めることです。

事業主借と元入金

元入金との関係

元入金とは個人が事業の為に入れたお金、ということになります。そのため、あくまで事業主から借りている、ということになります。たとえば100万円で事業を開始する、となりますとまず最初にする仕訳として、

現金 100万円 / 元入金 100万円 となります。

これを或いは事業主借、という勘定にしてもよい、ということになっています。つまり、元入金は、=事業主借 のようなものである、という認識でよいです。では、最初から事業主借の勘定を使っていれば元入金勘定は使うことがないのか、といえばそうではないです。

決算のときに確実に使うことになるのが元入金勘定になります。これで事業主借、事業主貸の締めを行うことになっているのです。

決算の際の事業主借

締めのとき

事業主借も事業主貸も最終的に決算のときに締めることになります。確定申告の際、最終的に事業主貸が多かった場合は、事業の元入金から事業主貸の分だけ減らすことになります。

逆に、事業主借の方が多かったときには、事業の元入金から事業主借の分だけ増やすのです。これで決算の締めは完了になります。事業主借も事業主貸も何も難しい会計の処理をしているわけではありません。むしろ、法人の帳簿処理よりも遥かに楽であるといえます。最終的には『元入金』に組み込む、ということを覚えておけば上手く処理をすることができるようになります。

自営業者の勘定科目

事業主借と事業主貸はなんといっても自営業者にとってとても重要な勘定科目になります。そのため、しっかりとその使い方を理解しておくことです。これは複式簿記において必要不可欠な勘定科目になります。自営業者では青色申告をするときには複式簿記が求められます。そうしますと控除として65万円を入れることができるようになります。これが非常に大きなことになりますから、会計ソフトを使って構わないのですから、しっかりと複式簿記で帳簿をつけるようにしたほうがよいでしょう。

自営業者にとって、帳簿をつけることはなかなか難しいことです。しかし、昔よりは遥かに楽になっています。それは事実上、コンピュータで自動的にやってもらうことができるような時代になっているからです。

最低限、簿記に関する知識があれば帳簿を書くこと、転記をすることは自動でやってもらうことができます。事業主借、事業主貸に関してはどちらの方向で書き込むのか、ということを間違えないのであれば特に問題はないのです。事業と個人の会計が曖昧なようになっている自営業者であるからこそ、区別をしっかりとして帳簿を書く必要性があるのです。これができれば税金的にお得になるのですから、多少勉強をする覚悟で身につけることにしましょう。

ちなみに事業主借も事業主貸も多くても問題ないですし、少なくとも別に構わないのです。問題はキチンと記帳されているのか、という一点に尽きるのです。

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