企業が株式を上場するメリットとデメリット
企業は、株式を上場することにより、様々なメリットを享受できます。しかし、それと同時に上場することによるデメリットも生じてきます。そもそも企業の上場とは、その企業の株式を証券取引所という株式を売買する市場で公開し、社外の人たちにその企業の株式を購入してもらうことを指します。
こうすることにより、企業はより多くの資金を集めることが可能になりますし、株式を購入した株主たちは、その企業が業績を伸ばせば伸ばすほど、その株式の価値が上がりますので、そこで利益を得ることができます。お互いにメリットはありますが、企業は株主の求めに応じる必要がでてきますし、企業の業績がさがれば、株主は不利益を被ります。
証券取引所などについての説明
上場を行うには、起業の株式を証券取引所に公開する必要があります。証券取引所とは株を売買する市場。簡単にいうと、株のデパートと思えばいいでしょう。そのデパートにお客さんがやってきて、自分の好きな株式を購入していくわけです。
しかし、全ての企業が無条件で株式の売買ができるわけではなく、デパート内の売り場、すなわち証券取引所の各市場によって、一定の基準がもうけられており、その基準を満たさなければ株式の売買はできません。証券取引所の市場にも様々な種類があります。
証券取引所、市場の種類
日本の代表的な証券取引所は、東京証券取引所になります。日本で株式を上場するならば、ほぼ全ての企業が、東京証券取引所で上場することになります。証券取引所には、複数の市場が存在し、各市場ごとに特性、基準が存在します。主な種類は4種類。1部、2部、JASDAQ、マザーズの四種類です。
ニュースなどでよく耳にする日経平均は、1部に上場している企業225銘柄の平均株価です。株式のランクは1部がもっとも高く、基準が厳しいです。そして2部が続き、JASDAQ、マザーズといったベンチャー企業向けの市場が存在します。
社員にとっての上場メリット
企業が上場した場合のメリットは、経営者や株主だけにあるとは限りません。その企業で働く社員にもメリットがあります。その代表的な例が「ストックオプション」です。ストックオプションとは、社員などに予め定めた価格で自社株を買い取らせる権利を与えることです。企業の株価が上がれば上がるほど、社員の利益にも繋がっていきます。
そうなると、権利を得た社員は自社株の価値を上げるために、一生懸命働く可能性もあり、会社としてもメリットがあります。また、株式の上場で資金を得た会社の事業展開が拡大し、出世のチャンスや、業績の上昇による給与増の可能性もあります。
海外で上場を目指すメリット
日本で上場する場合は、東京証券取引所がメインとなりますが、海外で上場することもできます。海外で上場するメリットは複数あり、求められる内部統制の基準が緩かったり、業種によって上場を拒否されることも少ないです。また、上場のための検査期間が短いといったメリットが挙げられます。
香港での上場メリット
香港といえば、アジアでも上位に位置する経済発展地であり、中国本土との密接な関係もあります。香港で上場することにより、アジア地域での知名度の向上や、中国でのシェア拡大などのメリットが考えられます。また、比較的上場に対しての規制が緩く、日本では上場が難しいパチンコ業界から上場を果たしています。
シンガポールでの上場メリット
シンガポールは現在、アジアの経済を結ぶ「ハブ」であるとも言われています。東南アジアで事業展開を行いたい企業などにとっては、自社の知名度を上げていくにはうってつけの取引所であり、幅色い国から資金を調達できます。また、シンガポールは企業の税務に寛容で、法人税率が日本よりもかなり低く設定されています。
タイでの上場メリット
シンガポール同様、アジア地域、とくにASEAN地域での販路拡大、知名度向上に、タイでの上場はメリットがあります。また、タイに上場し、生産拠点を構えることにより、現地での優秀な社員を日本よりも安い賃金で雇用することも可能です。現在、タイ生産の商品は、日本製造の商品並みか、それ以上の品質であるともいわれており、労働市場としても期待が込められています。
ニューヨークでの上場メリット
ニューヨークは世界経済の中心地であり、上場するのも容易ではありません。上場での審査も厳しく、ニューヨーク市場で上場するということは、世界の一流企業であると認められたことになります。
また、世界中から資金が集まり、知名度の広がりも他の取引所とは比較にならないほど向上します。世界展開を狙えるという大きなメリットがありますが、そこに行きつくにはハードルはかなり高いです。
上場しないメリット
上場するメリットがあれば、上場しないメリットもあります。上場すれば、資金調達も容易となり、知名度アップ、販路拡大といったメリットがあるのですが、逆に企業が経営者や創業者だけのものではなくなることを意味します。株式を上場させると、様々な投資家がその企業の株式を取得しようとします。
純粋に、その企業の商品やサービスが好きで、その企業を応援しようと思って株主になる人もいれば、株主になることにより受けられる、株主優待の制度に魅力を感じ、株式を購入する人もいますが、基本的に投資家というのは株式を購入し、その企業の業績向上により、株価が上昇した時に株式を売却して利益を得る、または株式を保有したまま、配当利益を受ける人たちが多いです。
上場しなければ自由な経営ができる
多くの株主の目的が、企業業績の向上によって得られる利益であった場合、株主たちは様々な要求や改善を経営者側に突き付けてくることもあります。上場すると、企業の経営状況や売上、利益を公表する必要があります。経営者、創業者が自社株を大量保有しておかない限り、極端なはなし、企業は外部の株主たちの所有となります。
日本の大企業の中には「創業の精神を大事にしたい」という理由のために、あえて上場を行わない企業も存在します。自由な経営が行える。これが上場しない最大のメリットともいえます。
創業者にとって上場するメリット
企業創業者も、上場すれば大きなメリットが得られます。一番のメリットは、上場することによって、株の売却益で大きな利益を手にすることができることです。もちろん、その企業が投資家から注目を浴びている必要がありますが、その企業の株式を欲しがる投資家が多ければ多いほど、株式の価格は高騰します。
株主にとって上場するメリット
創業者ではなくても、非上場の頃からその企業の株式を保有している株主にも、もちろんメリットはあります。こちらも基本的には、上場した際に株価が大きく上がったならば、その時点で株式を売却すれば、大きな利益を得られます。
また、その時点では売却せず、株式を保有し続けることにより、配当金を受け取り続けるメリットもあります。配当金を受け取りつつ、タイミングを見計らって最良の状態で株式を売却できれば、更に大きなメリットを享受できます。
株式上場は様々なメリット、デメリットがある
企業が株式を上場するということは、企業が創業主の手から離れることを意味します。もちろん、そのまま創業者が自社株を買い取り、権力を掌握しつづけることも可能ですが、幅広く資金を多く調達するには、多くの投資家からお金を集めていく必要があります。
資金調達、事業拡大、知名度の向上など、上場には大きなメリットがありますが、「物言う株主」が多い現在、株式上場により、経営者は自らの思うような経営プランが実効できない可能性もでてきます。
経営者は、長期のプランを見込んで事業計画を設定しても、企業業績が利益に直結する株主からは否決され、最悪の場合は解任される可能性もあります。株式を上場することにより、経営者は顧客、社員と向き合うのと同時に、株主とも向き合う必要がでてきます。しかし、上場は大きな可能性を秘めており、一流企業への第一歩ともいえるのです。