戸籍謄本と戸籍抄本の違い・目的別の選び方

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戸籍謄本と戸籍抄本の違い

「戸籍謄本」「戸籍抄本」という書類をご存知ですか?名前の違いからでは、どこがどのように違うものなのかわかりません。ですが、さまざまな場面でこの「戸籍謄本」「戸籍抄本」を提出しなければならないときがあります。

どのようなときに「戸籍謄本」が必要なのか、「戸籍抄本」でもよいのか、わからないときもあります。そこで、「戸籍謄本」「戸籍抄本」の違いや、どのようなときに必要になるのかなどを詳しく紹介していきたいと思います。

戸籍

「戸籍」は、日本国民であることの証明のようなものです。「戸籍」には、その人が出生してから死亡するまでのさまざまな事項が記載されています。これを「戸籍原本」といいます。「戸籍原本」には、いつどこで出生したか、誰と誰の子供なのか、いつ婚姻したのか、子どもは誰なのか、いつ死亡したのか、などその人の記録が細かく記載されています。

この「戸籍原本」は、本籍地の役所で管理されています。「戸籍原本」は役所から持ち出すことができないため、私たちが手続き等に「戸籍」が必要になったときには、この「戸籍原本」の写しを交付してもらうことになります。それが「戸籍謄本」「戸籍抄本」です。

戸籍謄本・戸籍抄本の原本

時々、必要書類に『「戸籍謄本」の原本』などと書かれていることがありますが、少しわかりにくいので説明します。もともと「戸籍謄本」「戸籍抄本」自体が「戸籍原本」の「写し」のことです。なので実際には「戸籍謄本」「戸籍抄本」の「原本」は存在しません。「原本」の意味は、「コピーしたものではない」ということです。

手続きの中には「住民票のコピー」などでも行えるものもあるため、こうした表記になっているようです。このように紛らわしい表記もあるため、「戸籍謄本」「戸籍抄本」は「戸籍原本」の「写し」という言い方をします。

記載事項

「戸籍謄本」と「戸籍抄本」で違うのは、記載されている内容です。「戸籍謄本」は、その戸籍に入っている全員に関する事項が記載されたものです。一方「戸籍抄本」は、戸籍に記載された一個人の部分を抜粋したものになります。簡単に言うと、「家族全員分か、1人分か」ということです。

また、戸籍の電算化(戸籍情報を磁気ディスクに記録すること)が済んでいる自治体では「戸籍謄本」を「戸籍全部事項証明書」ともいいます。「戸籍抄本」は「戸籍個人事項証明書」といいます。

取得方法

戸籍の内容が記載されている「戸籍原本」は本籍地の役所が管理しているため、本籍地の役所で交付してもらうことになります。本籍地と現住所が違い、離れいる場合は、郵送で取り寄せることもできますので、役所に問い合わせるようにしてください。

費用

「戸籍謄本」「戸籍抄本」ともに、一通交付してもらうのに、450円の費用がかかります。

目的別の戸籍謄本と戸籍抄本の選び方

「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の違いが分かったところで、目的別にどちらを用意したらいいのかなどを見ていきましょう。

パスポート申請

パスポートを申請するさいに、「戸籍謄本」「戸籍抄本」どちらか一通が必要になります。ただし、6ヶ月以内に発行されたもの、となっていますので注意してください。同一戸籍内の家族が同時にパスポート発行を申請する際には、「戸籍謄本」または、申請者本人の「戸籍抄本」一通で全員分が申請することができます。

また、申請するパスポートセンターの管轄区域に本籍と住所がある場合、戸籍抄本を交付してくれるパスポートセンターもあるので事前に調べておくといいでしょう。

婚姻届

婚姻届を提出する際には、基本的に「戸籍謄本」が必要になります。市町村の役所によっては「戸籍抄本」でもよい、とされているところもありますので、婚姻届を提出する役所に問い合わせるか、心配なようでしたら「戸籍謄本」を用意しておいた方が安心です。

ちなみに、婚姻届を提出する役所がふたりとも本籍地である場合には「戸籍謄本」「戸籍抄本」は必要ありません。どちらか、あるいはふたりとも本籍地が違う場合には、「戸籍謄本」「戸籍抄本」が必要になります。

就職

就職に関しても提出しなくてはならない書類がたくさんあります。応募に関しては「戸籍謄本」「戸籍抄本」の提出は必要ありません。ですが、就職後に関しては、提出を求められる場合があります。入社時提出する書類の中に「戸籍謄本」「戸籍抄本」はありません。

「戸籍謄本」「戸籍抄本」の取り扱いは厚生労働省の通達によって、入社前に提出を求めることはできないことになっています。ただし入社後であれば、本当にその情報の必要性ある場合、そのときに限って提出を求めることができます。

例えば、労働者の権利義務確認のために必要な時点(冠婚葬祭等特別給付があるとき等)に、本人にその内容・目的を十分説明の上、提出を求め、確認後速やかに返却するように、とされています。入社後であっても、必要性に納得がいかない場合は、提出を拒否することもできます。

相続

不動産の相続に関しては「戸籍謄本」が必要になってきます。不動産を相続するのに「相続登記」をしなくてはいけません。「相続登記」とは、不動産の所有者が亡くなった場合、その不動産の登記名義を被相続人(亡くなられた方)から相続人への名義変更を行うことをいいます。

その「相続登記」の際には、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの「戸籍謄本」と、相続人の現在の「戸籍謄本」が必要になります。

本籍

「本籍」とは、戸籍の原本が保管されているところです。戸籍原本は、本籍地の役所で管理されています。そもそも「戸籍」は、「出生してから死亡するまでのすべての事項」が記載されているものです。また、「戸籍謄本」の前に「現在の・出生してから死亡するまでの」など、注意書きがされていることがあります。

これは本籍地で管理されている戸籍原本に理由があります。本籍は現住所でなくても、日本中どこにでも移動することができます。そのため本籍地と現住所がちがう、という人が出てくるわけです。本籍を移動すると、それまで戸籍原本を管理していた本籍地の役所では戸籍原本は「除籍簿」というものに移されます。

そうすると、新たな本籍地で「戸籍謄本」「戸籍抄本」を交付してもらうと、前に本籍をおいていた場所が記載されるのですが、一つ前の本籍地までしか記載されません。つまり、何度も本籍を移動していると、最初の本籍地までを順に辿らなければならなくなる、というわけです。

養子

養子縁組には「養子縁組届」の提出が必要になります。届出地は「養親または養子の本籍地、もしくは所在地」となっています。「養子縁組届」の提出には「戸籍謄本」が必要ですが、養親・養子の本籍地に届を提出する場合は、本籍地の人の「戸籍謄本」は必要ありません。

届の提出地が所在地で、養親・養子のどちらの本籍地でもない場合は、どちらも「戸籍謄本」が必要になってきます。養子縁組をすると、戸籍にその旨が記載されることになります。養子縁組後の戸籍にはいくつかのパターンがあり、少々複雑です。現在の戸籍を出て養親の戸籍に入ったり、夫婦の場合は新戸籍を作ったりなどいろいろあるでしょう。

戸籍謄本と戸籍抄本について

「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の違いについて、ご理解いただけましたか?手続きの内容によって「戸籍謄本」「戸籍抄本」のどちらが必要になるかなど、かなり複雑ですが、記載事項の違いが分かっていれば、どちらがいいのかの見当はつくでしょう。どちらか一通、などの表記があっても、手続きの内容次第で使い分けられます。

手続きに際して書類を準備するときには、「戸籍謄本」「戸籍抄本」の違いを踏まえ、注意深く確認するようにしましょう。

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