ハリケーンと台風の違いとは?
日本では台風が発生しますが、ハリケーンが発生したことは聞いたことがありません。逆にアメリカなどではハリケーンが発生しますが台風は発生しません。一体なぜなのか、その違いをご紹介します。
ハリケーンと台風の最も大きな違いは発生した場所です。そもそもハリケーンも台風も両方とも同じ熱帯低気圧の事なのですが、「発生場所」と「規模」によって呼び方が変わります。さらには似たような言葉に、タイフーンやサイクロン、モンスーンや竜巻などが挙げられます。これらの言葉も発生場所や規模の他に、基準が決められた国や発生してから移動した先によって呼び方が変わってきます。
どうやって区別するの?
ハリケーンは発生場所が西経180度より東の太平洋や北大西洋、カリブ海、メキシコ湾上で、規模が最大風速約33m/s以上の熱帯低気圧のことです。台風は発生場所が東経180度より西の北西太平洋や南シナ海で、規模が最大風速約17m/s以上の熱帯低気圧のことです。
しかし、熱帯低気圧は移動するので、ハリケーンが台風に変わる事もあります。例えば、平成18年8月に発生したイケオというハリケーンは北太平洋の西経域で発生しましたが、東経域に移動した為台風となり日本では台風12号と呼ばれるようになりました。
どこで発生するの?
台風やハリケーンのような熱帯低気圧は、基本的に海の上で発生します。海水は温度が26度以上になると水蒸気を多く発生させるようになります。発生した水蒸気が気温の低い上空に達し冷やされると水に変わり、雲が発達していきます。水蒸気が水に変わる時に周りの空気を温める現象が起こるようになります。この現象が繰り返され、大きな渦が発達することで熱帯低気圧が生まれます。一度熱帯低気圧になると、移動している間も上記の現象が起こり、それを吸収してさらに大きく成長していきます。
よく台風は突然発生しているように思われますが、上記のような現象が起き、風速16m/sまではただの熱帯低気圧だったものが、風速17m/sになった途端台風と呼ばれるようになるので、急に発生したように見えるのです。
台風の強さはどうやって表すの?
熱帯低気圧は中心気圧を表す単位のヘクトパスカル(hPa)で表し、数字が大きいと弱く、数字が小さいと強くなります。しかし、台風やハリケーンは気圧ではなく最大風速で決まるので、中心気圧が低くても風が弱ければ台風やハリケーンではなくただの熱帯低気圧なのです。
台風は風の強さが風速33m/s~44m/s未満を「強い」、風速44m/s~54m/s未満を「非常に強い」、風速54m/s以上を「猛烈な」と表します。さらに風速15m/s以上の半径が500km以上~800km未満を「大型」や「大きい」、800km以上を「超大型」や「非常に大きい」と表します。つまり、風速54m/s以上で範囲が800km以上の場合は「猛烈な超大型の台風」と表し、風速44m/s未満で範囲が800km未満の場合は「強い大型の台風」と表すのです。
ハリケーンの強さはどうやって表すの?
ハリケーンの強さは風速、潮の高さ、中心気圧、洪水の影響を解りやすい尺度で表したサファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケールによって等級が5段階に分けられます。
最も弱いカテゴリー1が風速33m/s~42m/s、潮の高さ1.2m~1.5m、中心気圧980hPa、洪水の影響は、建造物への被害はないが、固定されていない移動式住宅や植え込みや樹木などに被害が見られ、沿岸部では多少の浸水や桟橋の被害があるハリケーンとなります。
最も強いカテゴリー5が風速70m/s以上、潮の高さ5.5m以上、中心気圧920hPa、洪水の影響は、多くの住宅や建造物で屋根が全損して全壊する建物があり、小屋が吹き飛ばされ、高潮は、海岸線に近いすべての構造物の低層階に大きな被害をもたらし、居住地域からの避難が必要とされる場合があるハリケーンとなります。
このスケールは、ハーバート・サファという土木工学技術者がハリケーンの尺度が無いことに気付き、地震の規模のマグニチュードを参考にして風速を基準に5段階に分け、これに国立ハリケーンセンター長官のボブ・シンプソンが高潮と洪水の影響を加え、1969年に開発されました。
コリオリの力と台風の関係性とは?
台風は左回りです。これはコリオリの力が関係しています。コリオリの力とは、慣性力の一つで、北半球では左に回転する物の上で移動する物は右に回り、右に回転する物の上で移動する物は左に回ります。つまり、台風は右に自転する地球上で移動しているので左回りなのです。
サイクロン・モンスーン・竜巻との違いは?
サイクロンも台風やハリケーンと同じ熱帯低気圧の一つですが、発生場所がインド洋、太平洋南部のものだけをサイクロンと呼びます。
モンスーンは台風やハリケーンとは全く違うもので、季節風の事です。アラビア海では6月~9月に南西の風が吹き10月~5月に北東の風が吹いていました。元々はこのように季節によって方向が変わるアラビア海の風の事をモンスーンと呼んでいましたが、やがて世界中で季節風の事を指す気象用語となりました。
竜巻も台風やハリケーンとは違い、突風の一つです。高速な渦巻き状の上昇気流で積乱雲に伴って発生します。トルネードとも呼ばれます。
史上最強の台風とハリケーンがこちら!
観測史上最強のハリケーンは2005年8月23日に発生したカトリーナです。最低気圧902hPa、最大風速78m/s、シンプソンスケールは最高のカテゴリー5を記録しました。死者数は453~1,335名とされています。
観測史上最強の台風は1959年9月21日に発生した伊勢湾台風です。最低気圧895hPa、最大風速75m/s、死者数は4,697名、行方不明者数401名、負傷者数38,921名に上り被害の大きさにおいては最強の台風です。また、第二宮古島台風は最大風速85.3m/sを記録し、風の強さでは日本の観測史上1位を記録しました。その他にも第二室戸台風は中心気圧が最も低い925hPaを記録しています。
観測史上最強のサイクロンは2008年4月27日に発生したナルギスです。最低気圧962hPa、最大風速60m/s、死者・行方不明者数は13万8,366名となりました。
風速が強くても、範囲が狭い為被害が少なかったり、風速が弱くても発生してから消滅するまでの期間が長い為被害が大きくなるなど、数字の大きさに関わらず予測が難しいのが台風やハリケーンの怖いところです。
ハリケーンの名前の由来は?
日本では特定の台風を指す時、その年の台風の発生順に1号、2号と番号が付けられます。その後大きな被害の出た台風は、伊勢湾台風や室戸台風のようにその被害が最も大きかった地域の名前で呼ばれたりもします。
一方ハリケーンは、カトリーナやサンディなど人の名前が付けられています。なぜハリケーンには人の名前が付けられているのでしょう。その説は様々ですが、一つは20世紀の初め頃に気象予報士が嫌いな政治家の名前を付けたことから始まったと言われています。他には、気象学者の恋人や奥さんの名前から付けられたとされています。女性の名前が多いのはこの理由だからです。その後は女性と男性の名前を交互に使用するようになり、先々までの名前のリストが作られそこから名付けられるようになりました。
日本=台風、アメリカ=ハリケーン!
簡単に言うと日本の近くで発生したものを台風、アメリカの近くで発生したものをハリケーンと呼ぶと覚えておきましょう。
大きな自然災害の一つである台風やハリケーンですが、世界の歴史を知る上でもぜひ参考にしてみてください。