信用金庫と銀行の違い
信用金庫と銀行は、一見似ているようで微妙に違うものです。今回は、信用金庫と銀行の違いや、日本の金融の状態をご説明します。一番の信用金庫と銀行の違いは、銀行は営利目的の株式会社なのに対して、信用金庫は会員の出資金で成り立っている、非営利法人であることです。
信用金庫に出資をすると、出資先の信用金庫の会員になれます。会員になると、信用金庫の運営について決定する総会に参加し、投票をすることができるようになります。
比較
銀行と信用金庫は、非常に似たサービスをお客さんに提供していますが、その目的は微妙に異なります。銀行の目的は、国民に金融サービスを提供し、日本国内のお金の循環を良くすることです。それに対し、信用金庫の目的は、お金の循環を良くすると同時に、日本国民の貯蓄を増大させることです。
銀行も信用金庫も、口座を開設することは誰でもできます。しかし、銀行と信用金庫では、お金を借りることができる人に、大きな違いがあります。銀行では、審査を通過すれば、誰でもお金を借りることができます。それに対して信用金庫では、出資して会員になった人のみが、ローンの対象になります。
振込
振込に関しては、銀行も信用金庫のどちらもATMと窓口で行うことができます。ただ、インターネットバンキングで振込をする場合、一部の信用金庫では対応していないところがあります。インターネットバンキングの方が、振込手数料は安いことが通常です。インターネットバンキングに対応していない信用金庫から振込をする場合、高めの手数料を負担する必要があります。
ローン
ほとんど銀行ローンの種類は似たようなもので、教育ローン、マイカーローン、住宅ローン、カードローンなどが代表的な商品です。信用金庫でも、銀行とほぼ同じローンが用意されています。信用金庫のローンとして特徴的なのは、地元密着型の事業者向けローンがあることです。
多くの信用金庫では、営業区域内で新たに事業を始める法人や個人に、行政と連携した事業者向けローンを提供しています。また、他にもユニークな事業者向けローンは多く、例えば兵庫県明石市や神戸市を中心として展開している日新信用金庫では、知的資産経営に対して1,000万円の融資を受けることができます。
知的資産経営とは、ネットワークやリーダーシップ、アイディアなど、財務諸表には表れない資産を重視する経営です。
利子
かつては、銀行と信用金庫の預金金利を比較すると、信用金庫の方が高い傾向がありました。信用金庫は、ネームバリューでは銀行に劣るので、金利を高くして預金高を増やす戦略を採用していました。
しかし、日本銀行がゼロ金利政策を実施してから、預金金利は大きく下がりました。2017年前半から中盤にかけては、銀行と信用金庫の金利の違いはなく、定期預金は0.01%、普通預金は0.001%の金利がつくことが一般的です。
しかし、実店舗にかける経費が必要ない、ネット銀行では金利が少し高くなります。例えば、楽天銀行の場合、2017年9月10日現在で、普通預金の金利は0.02%、1000万円を3年間預ける定期預金の金利は0.03%です。
手数料
ATMの利用手数料に関しては、各銀行や信用金庫によって、大きく異なります。大手の銀行では、三菱東京UFJ銀行のように平日だけではなく、土日祝日も夜間9時まで時間外手数料が発生しないところがあります。しかしその一方で、三井住友銀行では平日夕方6時以降、もしく土日祝日ではどの時間帯でも、ATM利用手数料が108円発生します。
信用金庫でも、多くのところはATMの時間外手数料が発生します。しかし、一部の信用金庫では、出資者はATM利用手数料をいつでも支払う必要がありません。
営業時間
銀行と信用金庫を比較すると、銀行の方が営業時間が長く、休日でも開いていることが多いです。信用金庫の場合、本店であっても土日祝日は稼働していないことが通常です。銀行の場合、特に大手の都市銀行になると、土日祝日でもローンの相談を受付けているところがあります。ただ、窓口が閉まる時間は銀行も信用金庫も同じで15時です。
ATMを使える時間帯は、銀行の方が長いです。特に都市銀行では、24時間使用できるATMコーナーが多いので、夜勤の人でもATMでお金を下ろしたり、振込をすることができます。生活時間帯がばらばらであったり、夜勤が多い人は、大きな都市銀行に口座を持つ方が便利です。
信用金庫や銀行と信託銀行との違い
銀行や信用金庫と信託銀行は異なるものです。信託銀行では銀行業務の他に、顧客からお金を預かり、顧客の代わりに運用する信託業務が行われています。信託銀行を経営するためには、銀行業務の免許の他に「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」によって、信託業務の許可も受ける必要があります。
代表的な信託銀行としては、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行などがあります。信託銀行では、銀行と同じように預金をしつつ、小額から投資信託をすることが可能です。
信用金庫と銀行の各種支店
都市銀行は多くの支店を持ち、全国各地で展開しています。また、地方銀行に関しても、ほとんどのところが東京や大阪に支店を持っており広く展開しています。それに対して、信用金庫が活動できる場所は法律で定められており、特定の地域外で金融サービスを提供することができません。
東京や大阪などの都市部では、多くの潜在顧客がいます。しかし、信用金庫では法律の縛りがあるので、特定の地域外にある都市部では活動することができません。
東京
東京を活動区域にしている信用金庫は非常に多く、2017年9月10日現在で、23もの信用金庫が都内で運営されています。また、東京にある信用金庫は、大規模なものが数多いです。代表的な信用金庫としては、城南信用金庫、多摩信用金庫、城北信用金庫があります。これらの信用金庫は、東京の各地で支店を保有しています。
東京にある信用金庫では、城南信用金庫が特に大規模で、預金残高は2017年3月31日時点で、3兆5000億円を超えています。この額は、一般的な地方銀行と同じぐらいで、非常に大きな金額です。都市銀行や信託銀行も東京に機能を集中させており、都内には数多くの支店があります。
また、メリルリンチやパリバ証券など、外資系の証券会社も、東京に支店を置いているものがあります。
地方
金融に関しては、東京以外は地方と見なせるほどで、大阪や名古屋でも規模は非常に小さいです。日本銀行が公表している、2017年3月末の都道府県別預金・現金・貸出金によると、全国の預金残高のうち、東京に3分の1が集中しています。また、事業を行ううえで重要な貸出金については、半分弱の金額が東京で貸出されています。
ただ、信用金庫の支店数については、地方も東京とそん色はありません。特に、面積が広い北海道では、各地で信用金庫が活動をしています。また、都市銀行は、地方にも数多くの支店やATMを設置しています。関西以外を本拠地としている地方銀行でも、大阪に支店を置いている場合があります。
金融の一極集中
預金や貸出金だけではなく、銀行や証券会社の本店も東京に集中しています。現状では、東京以外の地域は、金融に関して置いて行かれてしまっています。しかし、事業をするにあたっては、この状況を利用することができます。貸出が減少している、地方の信用金庫や銀行では、顧客を獲得するために、融資の条件を非常に良くしているところが多くあります。
さらに、地方の信用金庫から受ける融資は、日本政策金融公庫と連携していることが多く、担保は要求されません。金融は東京に集中していますが、その状況を利用して、良い条件でビジネスを開始することは十分に可能です。