お食い初めとは
お食い初めとは、生後100日〜120日目頃の赤ちゃんの健やかな成長を願い、お祝いの料理を与える日本古来の伝統行事のことです。
無事生後100日の節目を迎えることができたことを神様に感謝し、我が子の健やかなる成長を祝い願うと共に、この頃の赤ちゃんに歯が生え始めることから「子どもが一生食べることに困らないように」という願いが込められています。
ご馳走を与える儀式を「お食い初め」といい、「百日祝い(ももかいわい)」、「真魚初め(まなはじめ)」、「箸揃え(はしぞろえ)」、「箸祝い(はしいわい)」「お箸初め(おはしはじめ)」、「歯固め」とも呼ばれています。
お食い初めのやり方
お食い初めは、下記のやり方で進めていただくとスムーズに執り行うことができます。
■お食い初めを行う日を決める
お食い初めは生後100日〜120日目に行うのが一般的ですが、ぴったりその日に行う必要はありません。赤ちゃんの健康状態を見て決める事が大切です。また、当日は父母両家の両親を自宅に招き、赤ちゃんのためのお祝いをするので、家族の予定が合う日を選ぶと良いでしょう。祖父母が遠方にすんでいるなどで都合が合わないような時には、赤ちゃんと両親だけで大丈夫です。その場合は、記念写真を祖父母に送ってあげると喜ばれます。
■食べさせる真似役は年長者に
赤ちゃんにご馳走を食べさせる真似をする役は「養い親」が行うやり方がほとんどのようです。また、「養い親」とは年長者の長寿にあやかることから、身内の最年長者が行うやり方が一般的とされていますが、近年では祖父母に頼むやり方がほとんどのようです。男の子なら祖父が、女の子なら祖母が「養い親」となり、養い親の膝の上に赤ちゃんを乗せて食べさせる真似をします。
ご馳走を食べさせる順番とやり方
お食い初めの儀式には、赤ちゃんにご馳走を食べさせる順番とやり方があります。しかし、赤ちゃんはまだ実際に食べることができませんので、口元にお料理を近づけて「食べさせる真似」をしてあげるやり方でかまいません。その後「歯固めの石」で、赤ちゃんに丈夫な歯が生えることを願う「歯固めの儀式」を行います。
ご馳走を食べさせるやり方は下記の通りです。
「ごはん→お吸い物→ごはん→お魚→ごはん→お吸い物」×3回
お食い初め膳を1品ずつ順番に「食べさせる真似」を3回繰り返してお食い初めの儀式は完了となり、続いて歯固めの儀式を行います。「歯固めの石」にお箸を軽くあててから「石のように丈夫な歯が生えますように」という願いを込め、そのお箸を赤ちゃんの歯ぐきに優しく、そっとあててあげます。
※誤飲の恐れがあるので、赤ちゃんの歯ぐきに石を直接あてることは避けてください。
お食い初めの食器の使い分け
お食い初めではお椀は漆器や素焼きのものを、お箸は柳の白木で両端が細くなっている祝い箸を使います。お椀には鶴や松などの蒔絵模様の描かれているものが良いとされています。
しかし、お食い初め膳で使用する食器は、男の子用と女の子用で色が異なるので、準備をする時に間違えないようにしましょう。男の子用には朱塗りを、女の子用は外側が黒塗りで内側が朱塗りのものを用意するのが基本です。
このお膳は母方の実家から贈るやり方が一般的とされ、家紋は婚家(嫁ぎ先)のものを入れることが多いようです。しかし、地方にやり方が異なりますので、わからない場合は確認をしてください。
近年、昔ながらの正式な漆器やお膳を使ったやり方は大変少なくなってきており、食器に関しても強くこだわりすぎる必要はないようです。赤ちゃん用のベビー食器、既に家庭にある食器をお祝いの気持ちを持って使用してあげるだけでも十分です。
お食い初めの簡単なやり方も浸透してきています
各家庭で尾頭付きの鯛や数種類のご馳走、歯固めの石などを用意するのは案外大変なものです。手間暇をかけ、心のこもったお祝い膳を用意することも大切ですが、赤ちゃんの体調やご機嫌を考えると、負担になることも少なからずあります。
気持ち良くお食い初めのお祝いしたい方には、お食い初め料理をお取寄せできる宅配・通販を利用するやり方もおすすめです。
今はインターネットで気軽に注文ができ、お食い初めに必要なお食い初めセットやお食い初め用食器だけでなく、ご親族のおもてなし料理なども自宅に届けてくれるサービスが増えています。お食い初めを簡単に気持ちよくできるやり方として、こういったサービスを利用するもの良いようです。
お食い初めの献立
お食い初め膳の献立は一汁三菜とされています。これは、赤ちゃんが生きていく上で必要な食材である「穀物、海のもの、山のもの、飲み物、塩を与える」という意味が込められており、赤飯、焼き魚(鯛)、煮物、汁物、香の物を用意するのが一般的です。
また、合わせて用意する歯固めの石は、お宮参りの際に神社からいただいてくるやり方が最も良いとされています。
鯛に込められた意味
赤い色が「めでたい」として、鯛お祝いごとでは欠かせない魚なのです。福をもたらすとされる七福神の恵比寿様が釣っている魚も鯛で、日本では古からお祝いの席で食されている魚です。
梅干しのようにシワシワになるまで長生きできますように
乳幼児の生存率が低かった昔は、食べるものやお食い初めの儀式に用意するご馳走にも「元気に健やかに育ち、長生きしてほしい」という願いを込めていました。
梅干しには、「梅干しのようにシワシワになるまで長生きできますように」という願いが込められているそうです。また、寒い冬の時期を越して梅の実を付けることから、「辛抱強い子に育つ」という説もあるようです。
多幸を願うためのタコ
関西、主に大阪・兵庫・四国ではタコがお祝い膳に使われることが多いようです。タコには「固いタコでも食べられる丈夫な歯」という意味と、「食べることに困らないようにの頭文字「た」と「こ」から取った」という説、「タコに「多幸」という漢字を当て、多くの幸せを願う」といった由来があるそうです。
お食い初めの石、歯固めの石
お食い初めでは「歯固め」と呼ばれる儀式も行います。歯固めの石には、赤ちゃんに丈夫な歯が生えてくるようにという願いを込めて行われる儀式です。この歯固めの福石は、お宮参りの際に産土神社でいただくのが最も良いやり方ではありますが、近所の川原などにあるものでも十分です。
■歯固めの福石に込められた思い
昔は、歯が丈夫であることが長寿のもとだと考えられていました。歯が丈夫で食べ物をよく噛めることは、年齢を重ねる(=長生きする)ことと深く関わりがあると考えられていたためです。このことから、歯固めの福石には「石のように丈夫な歯が生え、長生きができますように」という願いが込められているのです。
■神社や河原で小石を拾うやり方
石を拾う時は、人があまり歩かなさそうな場所から小石を1,2個を選び、お食い初めで使用する時は事前に煮沸湯消毒をし、乾かしてから使います。儀式後には洗い、感謝の気持ちを込めて、拾った場所にお戻しするやり方が一般的です。
地域別でのお食い初めの特徴とやり方の違い
ここまでは、お食い初め儀式に込められた思いや意味、一般的な献立ややり方などをご紹介してまいりました。ここからは、地域別でのお食い初めの特徴とやり方の違いをご紹介します。
関東の場合
関東エリアの場合、今までにご紹介してきたやり方で行うのが一般的です。ここで改めて整理しながらご紹介します。
■生後100日~120日目に行う
■食器は男の子用と女の子用で色分けをする
■食べさせる真似役は年長者にお願いする
■お食い初め膳の献立は一汁三菜で、赤飯、焼き魚(鯛)、煮物、汁物、香の物を用意する
■食べさせる真似の順は「ごはん→お吸い物→ごはん→お魚→ごはん→お吸い物×3回」
■お食い初め儀式の後には、歯固めの儀式を行う
■歯固めの福石は感謝の気持ちを込めてお戻しする
こちらの内容でお食い初めの儀式を行っていただければ、関東エリアのやり方としては間違いないです。
東京の場合
東京の場合も「関東の場合と同じ」お食い初めの儀式のやり方で問題ないようです。
名古屋の場合
名古屋の場合も「関東の場合と同じ」お食い初めの儀式のやり方で問題ないようです。
関西の場合
お食い初めのやり方は地域によって異なりますが、特に異なることが多いのが、魚の種類や歯固め石のようです。本物の石を歯固め石として使う地域が多い中、関西ではタコを使う習慣もあります。
関西のお食い初めで、歯固め石の代わりにタコを使う時は、茹でるだけ・煮物・酢の物など、地域によって更に使い方が異なるようです。
また、魚に関してはお祝いの代表ともいえる尾頭つきの鯛を使う地域が多いのですが、関西ではホウボウ科の「金頭」という赤い魚を使うこともあります。
関西と一言でいっても地域や教えてくれる世代によっても、やり方が異なります。どちらの実家の習慣に合わせるのか、一般的な方法で行うのかを事前に夫婦でも話し合っておくと安心です。
広島の場合
広島の場合も「関東の場合と同じ」お食い初めの儀式のやり方で問題ないようです。
福岡の場合
福岡の場合、一般的やお食い初めの儀式のやり方でおおよそ問題ないようですが、大きく変わるのは食器です。九州、主に博多エリアでは「ぽっぽ膳」という博多曲物(まげもの)という薄くした樹木を丸く曲げて形を作り、底を付けた足付きの容器を使うので、漆塗りの御膳を使うやり方はあまり用いられていないようです。
この「ぽっぽ膳」は子どもの健やかな成長を願うものなので、七五三のお祝い膳でも使われています。
赤ちゃんの健やかな成長を願う親の心
お食い初めは、平安時代から始まったとされている日本の伝統行事です。昔は乳幼児の生存率が低く、赤ちゃんが無事に健やかに育つことが大変難しかったので、乳歯が生え始める100日目頃を目安に「生涯で食べることに困らないように」と願いを込めて、赤ちゃんが食事をする真似をさせる儀式を行っていたそうで、これがお食い初めのはじまりとされています。
室町時代に書かれた文献「河海抄」には「冷泉天皇の生後百日に御餅を供す」という記述があり、当時はお食い初めの儀式にお餅を使用していたことがうかがえます。
また、鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」には、源実朝が生後百十日目にお食い初めをしたという記述が残っているなど、お食い初めの儀式の歴史は古く、その儀式に込められた人々の願いを重く感じ取ることができます。
古くから伝わるお食い初めの儀式が今も尚、赤ちゃんの成長を願うための日本伝統のお祝い事として受け継がれているのは、今も昔も変わらない「赤ちゃんの健やかな成長を願う親の心」があるからのようです。