クレーン現象の特徴
子どもの「クレーン現象」という行動を耳にしたことがあるでしょうか。子育てをしている親ならば「クレーン現象」の子どもの行動をどこかで聞いて気になったこともあるのではないでしょうか。「クレーン現象」は、自閉症の子どもに見られる特徴的な行動のひとつです。
しかし、クレーン現象の行動があるからと言ってすべての子どもが自閉症ということはなく、健常児でも上手く言葉が伝えられなかったり、気持ちを表現できない時にクレーン現象の行動は現れます。クレーン現象の行動をするからといって、すぐに不安になるらずに子どものクレーン現象を見守り観察することが重要です。
クレーン現象というものは、どのような行動なのかどんな場面でクレーン現象が現れるのか具体的にご紹介するとともに、クレーン現象が現れる時期や年齢別の行動を実際にクレーン現象が現れてきてしまった時の対処法なども説明していきます。
クレーン現象の定義
「クレーン現象」とは、子どもが気持ちを伝える場合や意思表示をする際に自身の手を使わないで周りにいる人の手を使って代わりにする行動です。例えば、デーブルに置いてある果物を子どもが食べたいという意思表示を近くにいる親の手をつかんで、親の手を使ってみかんとってもらう行動です。
まるでクレーンで「もの」を運ぶ動作にそっくりなことから「クレーン現象」といわれています。しかし、この「クレーン現象」の行動は、成長過程においてどの子どもにも当てはまる行動でもあります。クレーンのような行動は、赤ちゃんにとって特別に変わった行動ではないので冷静になって見守ることも大切です。
クレーン現象は、いつまで
クレーン現象は、言葉が上手くつたえられない時期に多くみられる行動でもあります。おしゃべりがまだできない1歳や2歳ぐらいまでは、ごく普通の行動になります。クレーン現象は、2歳ぐらいの子どもにとっては、コミュニケーションのツールのひとつとしてクレーン現象が現れると考えていいのではないのでしょうか。
3歳ぐらいの子どもは、おしゃべりも上手になります。感情表現も豊かにになり、子どもなりの感情を表情にだすことにうより、言葉と表情でコミュニケーションがスムースになります。子どもが意思表示を相手に上手く伝えられる時期になればクレーン現象は、コミュニケーションツールとしては、必要なくなっていき少なくなっていく傾向です。
自閉症とは?
自閉症とは
自閉症(自閉性障害)とは、先天的な脳の発達障害といわれています。脳の発達の遅れから3歳までに発症することが多い病気です。自閉症の原因は、遺伝的要因から妊婦による喫煙・喘息などさまざまなが原因がいわれていますが、はっきりとした自閉症の原因わかっていないのが現状です。
自閉症の行動は、言葉の話す時期が極端に遅かったり、言葉使い方が独特だったりします。また、音などに敏感に反応するともいわれている反面、痛さなどに鈍感だったりとさまざまな特徴的な行動がみられます。時には、物事の理解に苦しみパニックを起こしてしまう場合もあります。
さまざまな自閉症の症状は、健常児の赤ちゃんにも現れるといわれています。生まれてから3か月ぐらいから症状は現れ始めます。症状としては、赤ちゃんが抱っこを極端に嫌がることや目を合わせる様子がないなど赤ちゃんの表情から感じるようなことがあれば注意いて見守ることが重要です。
自閉症の特徴的な症状
自閉症の子どもは、視線を合わせることができなかったり、周りの同世代の子どもがいても興味がなくまったく遊ぼうとしない特徴などがあります。また、落ち着きのないことや光るものや動きのあるものに強い興味を持つなどある特定のごだわりがあります。自閉症の特徴的な症状や特徴は多様です。
自閉症の子どもは、何かをしてほしいという気持ちがとても強いです。その意思表示が言葉や気持ちを人に伝えることではなく、「もの」に対して強い関心が向きます。相手の気持ちを気にせずに、相手の手を使い「もの」を取ったり、動かしたりという行動を満たそうとすることがクレーン現象を引き起こしています。
クレーン現象は、自閉症の子どもに見られる特徴的な行動のひとつといわれています。自閉症の子どもは、人とのコミュニケーションが苦手であったり、言葉の発達が遅かったりと社会性に乏しい傾向があります。また、女性より男性に自閉症の症状が現れやすいといわれています。
クレーン現象が見られる時期
クレーン現象は、赤ちゃんであればよく現れる行動です。クレーン現象があるからといって発達障害や自閉症だとすぐに判断することがないように注意しましょう。子どもの成長とともにクレーン現象は、落ち着いてくることもあります。子どもの成長をゆっくりとよく観察して見守っていくことが重要です。クレーン現象が現れる時期の年齢別の特徴をご紹介します。
1歳
クレーン現象の行動は、言葉が話せない赤ちゃんに多く見られるのが特徴です。1歳という時期は、クレーン現象が最も現れる時期といえるでしょう。例えば、赤ちゃんが自身の手を使わずに親の手を使って積み木を積ませることなどがクレーン現象のひとつです。
1歳を過ぎると少し簡単な言葉がでてくる時期でもあります。「はい」「ばいばい」「ないない」などは、言葉として伝えることができている時期でしょう。言葉の発達以外でも1歳半ごろになると「もの」などを指差しして意思表示できるようになります。
2歳
2歳になると2語の言葉を話始める時期です。言葉の発達が早い子は、3語をしゃべっている子もいるでしょう。この時期に言葉を2語、3語をしゃべらないからといって焦る必要もありません。子どもは、頭の引き出しに言葉を溜め込んでから言葉を一気に吐き出す言葉の爆発期という時期があり、その言葉の爆発期に個人差があるからです。
クレーン現象の行動は、相手に言葉で伝えることができてくることで2歳になると少なくなっていることが多いでしょう。相手に言葉で上手く伝えられずに癇癪などをおこしてしまったり、クレーン現象が頻繁に現れるような様子が見られる場合は、注意して見守りましょう。
3歳
3歳になるとクレーン現象の行動は、言葉の発達によりスムーズに会話でき意思疎通ができるのでほぼ消滅します。3歳になってクレーン現象の頻繁にみられる場合は、まずは、子どもの様子を気をつけて観察していくことが重要です。また、近くの子どもの専門機関に相談にいってみることもいいでしょう。
3歳になってクレーン現象に代わる指差しの動作があるかどうか日常生活のなかで確認できるでしょうか。指差しの動作ができることによってクレーン現象は、落ち着いてきます。言葉の発達や指差し行動の時期などは、個人差もあります。3歳に時期は、親が子どもをよく観察して見守もって親として見極めをする時期でもあるでしょう。
クレーン現象以外で見られる行動
クレーン現象の行動は、3歳までには少なくなります。クレーン現象がみられて、3歳ぐらいまでに自閉症傾向の子どもの特徴が多くみられる場合は、自閉症に気付くことが多いようなので十分に子どもの行動を理解して判断していくことが重要です。
自閉症傾向の子どもの特徴は、3歳になると言葉の発達や行動の場面にも多く現れてきます。子どもの発達障害など早期に発見して親が向き合うことによって、自閉症などの脳機能障害のひとつである発達障害は、緩和することができます。
子どもの発達を身近に見守ることで少しの子どもの変化に気づくことができます。クレーン現象の行動や自閉症傾向の子どもの特徴を知ることで日常生活から子どもに対する対応は、変わってきます。発達障害や自閉的傾向の子どもの行動をご紹介します。
自閉的傾向の子どもの特徴
指差し
生後10か月ごろから指差しをする赤ちゃんが多くなるといわれています。これは、クレーン現象と変わる行動とされています。言葉の代わりに指差しをすることで周りの人とのコミュニケーションをはかります。指差しは、赤ちゃんの発達のひとつの指標となっていす。
なかなか指差しをしない赤ちゃんに不安を感じてしまうこともあるでしょう。2歳ぐらいまでは、個人差もありますのでクレーン現象があって指差しをしない赤ちゃんもいます。指差しをしないからといって無理に教えることもありませんが、赤ちゃんが指差しするよう誘導してみるのもいいでしょう。
指差しをするように誘導する方法としては、おもちゃなどをいくつか用意します。おもちゃを親が指差して「好きなおもちゃは、どれ?」などと問いかけて指差しの見本をみせてあげてもいいでしょう。また、絵本を指差しの動作を取り入れながら読み聞かせことなどが有効的です。
手を引っ張る
子どもが親の手や足を引っ張るというのもクレーン現象のひとつです。手や足を引っ張ることによって言葉で伝えられない気持ちを子どもが意思表示しています。親の手を使って積木を置くというクレーン現象より、強い要求を現わしています。
赤ちゃんの年齢によって、興味の引く「もの」が広範囲に広がっていきます。引っ張るという行動は、赤ちゃんが興味を持った場所やものへ親を連れていきたいということを言葉ではなく、引っ張ることで表現しています。クレーン現象に親は付き合って子どもが何を求めているか感じることも大切です。
手や足を引っ張るクレーン現象の行動によって、目的の場所やものがわかったら、親が「ぬいぐるみが欲しかったのね」「プリンが食べたかったのね」と積極的に言葉でコミュニケーションをとっていくことがいいでしょう。日常会話の中から言葉がスムーズにでてくるような子どもへの語りかけも重要です。
言葉が遅い
親にとっては、子どもの言葉の発達はとても気になり、悩むことでもあります。言葉の発達は、個人差が大きいと言われています。2歳で3語を話す子どももいれば、まだ、「バイバイ」や「くるま」などの軽い挨拶や単語のみしか言葉にできない子どももいます。
言葉の発達は、他の子と比べるということはしないほうがいいでしょう。ただ、言葉がでてこないといつまでもクレーン現象を続ける要因ともなってしまいます。コミュニケーション次第で言葉は、発達していきます。親は、子ども言葉の発達を促すことを心がけていくといいでしょう。
言葉の発達を促すポイントとしては、子どもの考えていることや気持ちを子どもの代わりに話をしてみることも大切です。また、子どもがジャンプをしている時などに親が「ジャンプ、ジャンプ」などといって動きに合った言葉を楽しく代弁してあげることも効果的です。
オウム返し
オウム返しとは、自閉症の傾向のある子どもの特徴といわれています。オウム返しは、相手にいわれた言葉をすぐにそのまま何も考えずに返すパターンと相手が伝えている意味が分からずに少し間が空いたあとに、その言葉を返すパターンがあります。
オウム返しは、1歳から2歳の言葉が未発達の時期に多いといわれています。健常児の子どもにもよくオウム返しは現れます。3歳過を過ぎ会話が少しずつ成り立っていくあたりからオウム返しは減少していきます。オウム返しの時期は、親が焦らず冷静になって見守ることも重要です。
クレーン現象・自閉症の子どもの対処法
診察
健常児でも発達障害の特徴や自閉症などの症状は、少なからず現れる場合もあります。日常生活で親が子どもの発達がかなり遅れているなど自閉症の傾向があると感じた場合は、悩みを抱え込まずに自己判断ぜずにまず、発達専門機関へ相談することをおすすめします。
身近な子どもの発達を相談できる場所は、市や町の保健センターや小児神経科などがいいでしょう。そして相談機関のアドバイスを受けながら、早期の療育などを始めていければ子どもにとって良い方向へ将来を導いていけるでしょう。
コミュニケーション
発達障害や自閉症傾向の子どもは、コミュニケーションをとることが苦手です。子どもも年齢を重ねていくことによって言葉の遅れなどによっての人とコミュニケーションをはかることが困難になったりとさまざまな社会的障害が増えてきます。また、じっとしていることができなかったりパニックに陥ったりしてしまうこともありますので注意は必要です。
3歳までに上手く感情を表情で表すことができなかったり、目を合わさないなどの目に見えたコミュニケーションなどができないことが多いようでしたら、発達の専門機関に相談をするのもいいでしょう。また、子どもが言葉の遅れで少しコミュニケーションがとりづらくなっているようでしたら、言葉の発達を促すように心がけて様子を見てみることもいいでしょう。
クレーン現象・自閉症の子どもの接し方
感じ方の相違を理解する
発達障害や自閉症の子どもは、物事のとらえ方が独特だったりします。頭で考えていることや感じ方など親が感じて考えていることとの相違があります。考えや感じ方の相違は、健常児にもよくあることです。親が自身の考えていることや気持ちなどが正しいと決めつけて子どもに接すことがないように気をつけましょう。
人の考え方や感情は、さまざまです。基本的に子どもは、自身とは違う人格ということを心にとめて子どもに接することが大切です。まずは、子どもの考えや気持ちを聞いて受け入れましょう。子どもの考えや行動、気持ちが一般的に少しずれがあるようでしたら、正しい方向に少しずつ焦らずに時間をかけて良い方向へ微調整していくことが重要です。
分かりやすく具体的に
コミュニケーションが苦手な発達障害や自閉症の子どもは、言葉の意味をよく理解することも苦手です。言葉を並べて物事を理解させることはとても難しいことです。理解させようとする側も大変になりますし、理解しようとする子どもは、なかなか言葉を理解できない自身にイライラしてパニックを起こしてしまう可能性もあります。
物事を説明するときは、分かりやすく具体的に説明することが大切です。短めな言葉で順序立てて切り分けてゆっくりと指示をしたり説明をするとよいでしょう。また、言葉では、伝わりづらい場合には、写真や絵を見せるなどの工夫をして伝えたいことを目を通して感じてもらうことも有効です。
急な予定変更は避ける
発達障害や自閉症の子どもは、敏感に不安を感じてしまうことがあります。予定が急に変更になったりすると不安が一気に増大してパニックになってしまう場合もあるので注意しましょう。ストレスが溜まってしまうと爪を噛む仕草や頭を意味もなく壁にぶつけたりと自傷行為なども誘発してしまう要因にもなります。
日程や物事が急に変更になってしまった場合は、予定が変更になったらなるべく早くに子どもが不安にならないように伝えるようにしましょう。こだわりなどがあったら、認められるこだわりは認めてあげつつ分かりやすく短く変更になった事柄を説明するようにして不安な気持ちを解消できるようにすることが大切です。
子どもの個性を伸ばす
子どもには、さまざまな可能性があります。親なら子どもには、なにかに秀でてほしいなどという気持ちがあります。しかし、そんなことは親のえごなのでしょう。子どもは、親とは違う別の人格です。人間は長所もあれば短所もり十人十色です。さまざまな考えや感情があって当然なのでしょう。
個性を伸ばすということは、どんな子どもにも当てはまる教育です。子どもと親が向き合って分かりあっていくことで個性を見つけ伸ばしていく教育をしていくことで、子どもの将来をよい方向へ導いていけるのではないのでしょうか。