時候の挨拶はどうして必要なの?
時候の挨拶とは、手紙やはがき、挨拶状などで用いる、季節を表す言葉です。文書や書き出しの冒頭で、天気・気候・季節の移り変わりなどを表します。相手に対する気遣いや想いを伝えるのに用いられます。
プライベートでもビジネスの場でも、時候の挨拶は大人のマナーでもあります。時季によって適切な時候の挨拶が決まっているので知っておきましょう。
〜の候・候・~のみぎり・~の折
時候の挨拶では、よく使われる言い回しとして「~の候」や「~のみぎり」、「~の折」といったものがあります。これは「~のように(〜を感じられるように、〜というふうに)季節もうつりかわってきましたが」という意味で使われています。
「~の候」では若干かしこまった硬い言い回しになるので、やわらかい表現として「~のみぎり」といった言葉が使われています。「~の候」はビジネスや公用、目上の人に対して使用します。
「〜の折」は、「~の候」と同じように季節や時節の意味と、ある一つの時点や何らかの機会を意味している場合があります。文脈によって使い分けをします。
2月に使う時候の挨拶の種類と意味
それでは、2月(如月)に使う時候の挨拶の種類とその意味についてご紹介します。
立春の意味と使い方
「立春」は、2月の時候の挨拶に良く使われる言葉です。二十四節気(1年間を24に分ける)の第1にあたり、暦の上では春が始まる日とされています。また、立春の日が1年間で最も寒い日と言われます。立春の1日前が節分なので、暦では2月4日ごろが立春となります。
2月の時候の挨拶で使用するときは次のようになります。
・立春の候
・立春とは名ばかりで寒さも厳しく
・立春を過ぎ
立春以外の「春」がつく言葉の意味と使い方
立春以外にも、2月の時候の挨拶に良く使用され、「春」がつく言葉があります。
・向春(こうしゅん)〜春が訪れようとしていること。2月4日の立春以降で2月中に使う。
・早春(そうしゅん)〜春のはじめごろ。春のきざしが見えてくる2月下旬頃に使う。
・春雪(しゅんせつ)〜春になってから降る雪。2月に使われる。
・春寒(しゅんかん)〜立春から後に残る寒さ、ぶりかえした寒さ。
それぞれ、向春の候、早春の候、春雪の候、春寒の候といった使い方をします。
「梅」のつく言葉の意味と使い方
2月の時候の挨拶には、「梅」のつく言葉も良く使用されます。梅は1月下旬から咲き始めるため、2月を代表する花でもあります。
・梅花(ばいか)〜梅の花のこと。
・紅梅(こうばい)〜濃い桃色の花が咲く梅のこと、もしくはその花のような色のことを指す。
・梅月(うめつき)〜2月の異名。「梅見月」とも言う。
・梅鴬(ばいおう)〜梅の花が咲いて鴬(うぐいす)が鳴く季節。
それぞれ、梅花の候、紅梅の候、梅月の候、梅鴬の候といった使い方をします。2月から3月初旬に使用される時候の挨拶です。
その他にも、梅そのものを時候の挨拶の中で使用することもあります。
・梅のつぼみもまだかたく
・梅のつぼみも膨らみはじめ
・梅の香りが春を運んでくる季節に
余寒
2月の時候の挨拶には、余寒という言葉も使用されることが多いです。
・余寒(よかん)〜寒さがいまだにのこること。立春を迎えた後にのこる寒さの意味。
「余寒の候」という言い方の他に、「余寒厳しき折」といった使い方もします。2月4日ごろから2月中に使用する時候の挨拶です。
その他の2月に使われる言葉
その他にも、2月の時候の挨拶に使われる言葉には次のようなものがあります。
・浅春(せんしゅん)〜春のはじめ、春浅し。
・残寒(ざんかん)〜立春を過ぎた時期に残る寒さ。余寒と同じ意味。
・寒明け(かんあけ)〜寒が終わって立春になること。
・三寒四温(さんかんしおん)〜三日間ぐらい寒い日が続き、その後四日間ぐらいが暖かくなるというように7日周期で寒暖が繰り返されること。
・残雪(ざんせつ)〜消えのこっている雪、春になっても雪解けせず残っている状態。
・雪解(ゆきげ)〜雪がとける。雪がとけて春が近づく。
・厳寒(げんかん)〜とても厳しい寒さ。
それぞれ、浅春の候、残寒の候、残雪の候、雪解の候、厳寒の候、寒明けの候、三寒四温の候といった使い方をします。また三寒四温の時節、三寒四温の時節柄などという言い回しもあります。
2月初旬に使う時候の挨拶の例
2月初旬に使う時候の挨拶の書き出しの例です。
・節分を迎えましたが、あい変わらずの厳しい寒さです。
・暦の上では立春となりましたが、あいも変わらぬ厳しい寒さが続いております。
・立春とは名ばかりでまだまだ寒い日が続いております
・余寒厳しい毎日が続いています
・残寒厳しき折から、皆様いかがおしのぎでしょうか
・立春と聞くだけで心が浮き立つようです
・暦の上では春となりましたが、相変わらず寒い日が続いております
・春に入ったとはいえ、骨身にしみる寒さが続いております
・雪深い当地では、立春とは言え真冬の寒さが続いています。
2月中旬に使う時候の挨拶の例
2月中旬に使う時候の挨拶の書き出しの例です。
・日差しに春の訪れを感じるようになりました
・梅のつぼみもようやくほころび始めました
・寒のもどりの激しいこの頃ですが、いかがお過ごしですか
・寒さの中にも早春の息吹が感じられるころとなりました
・日ざしもようやく春らしい輝きをおびてきたように感じられます
・梅のつぼみも膨らみ、日中はいくらか寒さもゆるんで参りました
・2月もなかばとなり、日脚が徐々に伸びてまいりました。
2月の下旬に使う時候の挨拶の例
2月下旬に使う時候の挨拶の書き出しの例です。
・三寒四温のうちに、季節は春へと移りつつあります。
・寒さの中にも、ようやく春の気配が感じられるようになりました。
・梅の香りが春を運んでくる季節となりました。
・雪解もすすみ、そこはかとなく春の予兆が感じられる時節となりました。
・日一日と春めいてくる今日この頃です。
2月下旬の時候の挨拶の書き出しは、春が近づいてくる様子を表す文が使われることが多いです。
結びの挨拶
手紙や文書を締めくくるため、最後に結びの挨拶をつけます。冒頭に使用する時候の挨拶と同じく、季節によって結びの挨拶も使える言葉があります。
2月に使える結びの挨拶の例をご紹介します。
・余寒なお去り難き折、風邪など召されませぬようご自愛ください。
・梅の便りが聞かれる昨今、皆々様の益々のご健勝を心よりお祈りいたしております。
・三寒四温の時節柄、どうかご自愛専一にてますますのご活躍をお祈り申し上げます。
・残寒の時節柄、ご自愛専一にてお願い申し上げます。
親しい人への結びの挨拶は、もう少し柔らかい感じの雰囲気の言葉遣いにします。
・春とは言え、厳しい寒さが続きます。どうぞお体を大切に。
・春の訪れを待ちわびながら、お互い元気に過ごしましょう。
・まだまだ寒い毎日です。風邪など引かれませんように。
・梅の薫る季節です。お体を大切にしてください。
時候の挨拶と安否の挨拶を組み合わせる
冒頭の時候の挨拶でも、結びに使う時候の挨拶でも、季節を感じさせる言葉と、相手の健康や安否を気遣う挨拶を組み合わせてひとまとめに書くことで、文章もよりまとまり丁寧な印象を与えることができます。
2月の時候の挨拶と安否の挨拶を組み合わせた例文です。
・暦の上に春は立ちながらも厳しい寒さが続いております。ご家族様には、お健やかにお過ごしのことと存じます。
・立春の候、貴社いよいよご清栄のこととお喜び申し上げます。
・雪解けの水もようやくぬるみ、春の訪れを感じる季節となりました。皆様におかれましてはお変わりございませんか。
シーン別2月時候の挨拶例文
時候の挨拶は、相手やそのシーンによって改まった言い方やうちとけた表現など、その場に適した使い分けをします。シーン別に2月に使える時候の挨拶の例文をご紹介します。
ビジネス
ビジネスの文書や手紙で使える2月の時候の挨拶の例文です。
・厳寒の候
・晩寒の候
・立春の候
・春寒の候
・向春の候
・立春とは名ばかりの寒さですが
・梅のつぼみもまだ堅いようですが
・長い冬もいよいよ終りに近づいてきましたが
・余寒なお去りがたき折りではございますが
「立春の候 貴社におかれましては益々御清祥のこととお慶び申し上げます」
「余寒の候 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」
など、組み合わせて冒頭の時候の挨拶の文にします。
季語などの使い間違えには充分注意します。2月は冬の季節とされる最後の月にあたります。冬の寒さがまだ残っている表現を用いたり、春を待ちわびる言葉を選ぶと良いでしょう。2月中旬から下旬には、春を意識した時候の挨拶もおすすめです。
招待状
結婚式など招待状で使える2月の時候の挨拶の例文です。
・立春の候
・向春の候
・梅花の候
・寒さの中にも春の訪れが感じられる頃
・格的な春の訪れが待ち遠しいこの頃でございますが
・梅のつぼみもふくらむころになってまいりました
・鶯の初音に春の訪れを感じるころ
結婚式などお祝い事の招待状は、2月の時候の挨拶は、寒い中でも近づいてくる春の訪れを楽しみにするような、明るさを感じる言葉を選ぶのがおすすめです。
添え状
添え状(送付状)とは、書類を郵送したりファックスで送信したりするときに、必要な書類とは別に、簡単な挨拶文を記載して同封する書類のことです。カバーレターとも言います。履歴書や職務経歴書、エントリーシートなど応募書類を郵送する際にも同封します。必ず添えなければならないという明確な規定はありませんが、ビジネスマナーとして添付した方が良いでしょう。より丁寧で誠実な印象を与えることにも繋がります。
添え状は、改まった言い方が適しています。
・時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
・時下、貴社におかれましてはますますご清栄のことと心よりお慶び申し上げます
時下は、一年中使える時候の挨拶の言葉です。2月に添え状を送る場合には、この時下の部分を2月にふさわしい言葉にかえて使います。
・向春の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
・梅花の候、貴社におかれましてはますますご清栄のことと心よりお慶び申し上げます
季節を意識した時候の挨拶にすることで、より丁寧で誠実な印象を与えることにも繋がります。
お礼状
お礼状は、、送る時期を守るのが大切です、お礼をする事柄があったその日のうちの日付か、2~3日中には書くことを心がけましょう。遅れてしまうと相手にも失礼にあたります。どうしても遅れてしまったときには、おわびの気持ちを添えて書きましょう。
また、添え状と同じく、説明会や面接、ビジネスシーンでもお礼状を出す機会も増えています。時候の挨拶を上手に使用して感謝の気持ちを込めましょう。
2月に送るお礼状に使用する時候の挨拶の例文です。
・立春の候、○○様におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
・寒さの中にも春の兆しが感じられる折、○○様におかれましてはなお一層ご活躍のことと拝察いたしております。
お礼状で気をつけたいこと
冒頭の時候の挨拶につづき、「このたびは〜誠にありがとうございました」など、お礼の事柄についての感謝の気持ちを伝えます。あまり長文になりすぎず、誠実に感謝の言葉を綴りましょう。
また、お礼状に他の用件を合わせて書くことは相手にとって失礼にあたります。用件のついでにお礼状を送ったと誤解を招きかねません。あくまでも礼儀正しい文面をこころがけて書くことが大事です。
頭語と結語
「拝啓」や「前略」など、手紙の一番最初にくる書き出しの言葉を「頭語」といいます。意味としては、こんにちは、など挨拶の代わりとして使われています。
また、手紙の文末に使う「敬具」などは「結語」といいます。結語はさようなら、などの挨拶の意味で使われています。
冒頭の時候の挨拶は、この頭語に続けて書きます。
・拝啓 寒さは依然退く気配を見せませんが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
結語は、結びの時候の挨拶の後に書きます。
・まだまだ寒い毎日が続きます。風邪など召されませぬようご自愛ください。 敬具
時候の挨拶と、頭語、結語を意識して文章を組み立てましょう。また、頭語と結語にはそれぞれ対応する組み合わせがあります。拝啓→敬具、拝呈→拝具、前略→草々など適切な組み合わせを選びましょう。
時候の挨拶で丁寧で礼儀正しい印象を
時候の挨拶を文章に加えることで、本文・本題だけをただ記すよりも丁寧で礼儀正しい印象を与えることができます。実際に文章を作成してみると、冒頭に時候の挨拶を入れることで体裁も整いやすく、本題に入る前のワンクッション置く役割を果たしていることがわかります。
また、必要な用件だけを延べてそのまま文書が終わるよりも、結びの挨拶を入れることで相手のことを気遣う気持ちが伝わります。
四季の移り変わりのはっきりとした日本ならではの長年の習慣を、社会人の時候のマナーとして上手に挨拶に使いましょう。