「存じます」を意味や使い方を理解していますか?
「存じます」は、ビジネスで目上の人や取引相手に対してよく使われる言葉で、親しい人に話すときには使われない言葉です。ずっと使い続ける言葉ではないからこそ、使わなければならない場面になったときに、正しく使えるようになっておく必要があります。
「存じます」の意味や使い方の理解が不十分だと、いざというときに困ってしまいます。これを読んで意味や使い方をマスターしましょう。
「存じます」の意味は?
そもそも「存じます」は、「思う」の謙譲語である「存じる」と丁寧語の「ます」が合わさってできた言葉です。謙譲語なので自分が思うとき、考えるときに自分のことをへりくだって使います。よく間違えやすい例として、次の例文のように相手の思うことや考えることに使ってしまうことです。
・部長は新しいプランについて、どのように存じられますか。
この文章を正しくすると、「部長は新しいプランについて、どのようにお考えですか」となります。「存じる」に尊敬語の「れる」を付けたとしても、この言葉は間違った表現です。敬う相手の動作に対しては尊敬語を使うので、「存じます」は尊敬語としては使うことができません。
「存じます」の意味① 思う
先ほど、「存じる」は「思う」の謙譲語だと話したとおり、「存じます」の意味は「思う」になります。自分がどう思っているかを目上の人に説明するときに使います。例文を交えて確認しましょう。
・メイン料理をお出ししたいと存じますが、よろしいでしょうか。
・新たな人事育成制度を導入する件に関しましては、私もそのように存じます。
「存じます」の意味② 知っている
「知っている」を謙譲語に直しても「存じる」という言葉になります。相手に敬意を示しながら「私はこれを知っていますよ」ということを意味するときに使います。
・人事異動の件については存じていますが、人事異動に至った経緯を教えてください。
・私は御社の新商品の特徴やターゲット層について、もちろん存じています。
「思う」、「知っている」の敬語表現について確認しよう
先ほど「存じる」は謙譲語なので、自分が思うことや知っていることにしか使えないことを説明しました。目上の人に対して「思う」や「知っている」を使いたいときは、どんな表現を使えばよいでしょうか。
「思う」の尊敬語は?
「思う」の尊敬語は、「お思いになる」、「思われる」、「思召す(おぼしめす)」です。この中で聞き慣れない言葉の「思召す」は、「思ってくださる」という意味を持つ言葉です。昔に身分が低い者に対して地位の高い者が身を案じるときや、神様のお告げや幸運が舞い降りたときに使う「思し召し」が語源だと言われています。
しかし、「思召す」は最近ではほとんど使われなくなったので、「お思いになる」、「思われる」でも意味は通じます。
「思う」の尊敬語の使い方を例文で確認しよう
実際に「お思いになる」、「思われる」をどのように使うか、例文を交えて確認しましょう。
・みなさまがお思いになられていることを、こちらで十分に踏まえて取引を進めて参ります。
・部長は部下の発言について、どのように思われますか。
また、「思う」を尊敬語に直す方法の他にも、「お考えになる」を使っても良いでしょう。先ほどの例文で確認しましょう。
・みなさまがお考えになられていることを、こちらで十分に踏まえて取引を進めて参ります。
・部長は部下の発言について、どのようにお考えでしょうか。
「知っている」の尊敬語は?
「知っている」の尊敬語は「ご存知」です。相手に知っているかどうか尋ねるときは、相手に失礼がないかどうか聞きにくくなってしまいますが、この言葉を使うことで丁寧な言い回しができます。尊敬語なので取引先や上司に使う言葉です。自分に対して使わないように注意しましょう。
「知っている」尊敬語の使い方を例文で確認しよう
実際に「ご存知」をどのように使うか、例文を交えて確認しましょう。
・みなさまもご存じのとおり、我社はこれを主力製品として事業を展開しております。
・彼女と音信不通で今すぐ連絡を取りたいのですが、彼女について何かご存知でしょうか。
なお、「お知りになる」という言葉も、「知っている」の尊敬語になります。しかし、この言葉は「お尻になる」と聞こえて別の意味の言葉を連想してしまいます。相手に不快な思いをさせてしまわないためにも、別の意味にとらえられてしまう言葉は使わない方が良いでしょう。
「存じます」の使い方を確認しよう
ここで、「存じます」という言葉に戻って、「存じます」の使い方を確認しましょう。基本的な方法は「~と思います」、「~と知っています」という文章にある「思います」と「知っている」の部分を「存じます」に置き換えるだけです。
・「~していただきたく存じます」
・「誠にありがたく存じます」
・「~でよろしいかと存じます」
ビジネスメールにおける「存じます」の使い方は?
「存じます」の基本的な使い方を確認したところで、ビジネスのメールでどのように使うか具体的に確認しましょう。
「存じます」をそのまま使う場合
「存じます」は普段の会話では堅苦しくなってしまう表現ですが、文章で「存じます」を使うことによって丁寧な印象を与えることができます。
相手の発展を願うときに使う
ビジネスのメールでは、冒頭の挨拶として相手の発展や繁栄、盛栄を称える言葉を使います。このときに、「存じます」を含んだフレーズがよく使われます。
・貴社ますますご清栄上のことと存じます。
・貴社におかれましては、益々ご盛栄のことと存じます。
相手に物事を依頼するときに使う
また、「存じます」は相手に何かを頼むときにも使う言葉です。「存じます」を使うことによって、「~してもらえると助かります」という意味を含み、柔らかい言い方になります。
・このたびは大変お世話になったので、近日中にご挨拶にお伺いしたいと存じます。
・お忙しいとは存じますが、添付の資料に目を通していただけないでしょうか。
相手に感謝の気持ちを伝えるときに使う
「存じます」をつけることによって、相手に敬意を払って感謝の意味を込めて自分の気持ちを伝えることができます。
・先日はご配慮いただき、誠にありがたく存じます。
・このたびは皆様からお祝いのお品をいただき、誠に嬉しく存じます。
「存じております」を使う場合
謙譲語の「おる」と丁寧語の「ます」を付ける、「存じております」もビジネスではよく使われる表現です。「存じます」と「存じております」の意味における違いは、「存じます」が「思う」の意味が強いのに対して、「存じております」は「知っている」の意味が強いです。
・社長がこれまで受賞した多くの上については、かねてより存じております。
・〇〇選手のご高名はかねてより存じております。
「存じ上げております」を使う場合
「存じ上げております」は、「存ず」に謙譲語「おる」、丁寧表現の「上げる」、丁寧語「ます」を使った言葉です。「存じます」と「存じております」と比べると、「存じ上げております」が最も丁寧な言い方です。
「存じ上げております」の意味は、「知っている」の意味が強いです。先ほど「存じております」で紹介した例文の「存じております」を、「存じ上げております」と書き換えることができます。
「存じます」を別の言葉で言い換えると?
「存じます」は、自分の考えや知っていることを伝えるときに使える便利な言葉です。他の単語で同じような表現はあるのでしょうか。
「所存」とは「思う」という意味の謙譲語
所存も「思う、考える」の謙譲語です。「~と思う所存です」という使い方の人もいますが、これでは意味が重複してしまうので、この使い方は間違いです。
・これからは気を引き締めて仕事に邁進する所存です。
・この新しい仲間たちで、良いチームワークを築いていく所存です。
文の意味から違う謙譲語を選ぶ
文章の意味を考えて違う言葉を謙譲語に直すのも1つの方法です。
・部長が海外出向される件については、伺っておりませんでした。(知らなかった理由は、聞いていなかったから)
・この資料に関しては、私は拝見しておりませんでした。(知らなかった理由は、資料を見ていなかったから)
このように、「知っている」、「思う」という言葉そのものを、謙譲語に直すことだけにとらわれてはいけません。自分がどの状態でそうなったかを考えて、それに近い意味を持つ言葉を敬語に直してみましょう。
「存じます」を正しく使おう
いかがでしたか。「存じます」は自分の考えや思い、知識を相手に伝えるときに使う言葉として、とても便利な言葉です。便利な言葉こそ、きちんと意味を覚えて正しく使うことが求められます。円滑なコミニケーションを取るために、敬語について意味や使い方の理解を深めておきましょう。