忌明けと喪明けの違い
親族が亡くなると友人や知人にだす喪中はがきですが、その中の文章に「喪中につき」という言葉があります。喪中とか喪が明けるという言葉は耳にしますが、忌が明けるという言葉はあまり耳にする機会もないでしょう。
忌明けと喪明けとは似ている言葉ですが実際はきちんと違いがあります。ではどう違うのかをみる前に、まずは忌中について確認をしましょう。
忌中とは
忌中とは、家族や親族など近親者が亡くなった人がある期間、外出などを控え自宅などで喪に服す期間のことです。宗派によって考え方が違いますが、概ね、故人が亡くなられてから忌明けの法要を行う四十九日目までの期間となります。
昔は死を穢れたものと考えていましたので、死にふれた人はその穢れを外に出さないようにする期間を設けていました。今では穢れなどと考えたり気にする人も少なくなりましたし、日常生活にも支障が出ますので忌中だからといって外出を控える、ということは現実的ではありません。
とはいえ年配の人の中には気にする人もいるでしょう。そのような時はきちんと相談をしながら行動をおこすようにしましょう。
忌中札・忌中紙
テレビドラマなどで見かけることがある、忌中という張り紙ですが、最近の実生活ではあまり見かけることがなくなりました。この貼り紙は、忌中札もしくは忌中紙と呼ばれるもので、玄関などに貼ることで周囲に不幸があったことを知らせる手段ともなっていました。
ですが、最近ではご近所とのお付き合いがそこまで深くないため知らせなくていい、とか貼り紙をすると家が留守と思われ不用心である、などの理由で貼られることが少なくなりました。また、伝達の手段が大きく発達したことも理由の1つでしょう。
忌中札は故人が亡くなり、通夜や告別式の日時が決まってから玄関などに貼りだし、忌明けを迎えると取り外します。
忌明け
忌明けとは、前述した忌中の期間が満了した時期をいい、一般的には忌明けとして四十九日の法要を行った後のことを言います。ただし、宗派によっては五十日目を忌明けとします。
喪明け
喪中とは、故人を偲ぶ期間のことです。忌明けとは違い、宗派に関係なく大体1年をめどに喪明けとするケースが多いです。もともと、奈良時代や江戸時代の法律で期間を決められていましたが、今ではそのような法律はありません。
忌明けを迎えたからといって、すぐに遺族の気持ちが切り変えれるというわけではありません。喪中の期間は遺族が悲しい出来事から時間をかけて精神的に立ち直る期間でもあるといえるでしょう。
忌日法要と忌明けの法要
忌明けの法要の前に、忌中に営まれる法要があります。仏教では亡くなってから49日目までを中陰(ちゅういん)と呼び、七日ごとに行う忌日法要と祥月命日ごとに行う年忌法要があります。ここではまず、忌日法要について述べていきましょう。
宗派によってはこのような法要は行いませんが、いざという時に困らないためにも知っておくといいでしょう。また、地域によっては忌明けの法要を三十五日に行うこともあります。
忌日法要
忌明け前の忌日法要は以下の日数で行うものとされています。
・初七日→しょなのか。亡くなられてから七日目の法要。最近で改めて初七日法要を行うと遺族も慌ただしくなったり、遠方からの参列者に負担がかかることをふまえ、告別式当日に繰り上げて一緒に行うことが多くなりました。
・二七日→ふたなのか。亡くなられてから14日目。・三七日→みなのか。亡くなられてから21日目。・四七日→よなのか。亡くなられてから28日目。これらの忌日法要は遺族だけで行うケースが多いです。
・初月忌→しょがっき。亡くなられて初めての命日。
・五七日→いつなのか。宗派や地域によってはこの日を忌明けとし、親族や知人などを呼んで法要を行います。
・六七日→むなのか。亡くなられてから42日目。遺族だけで行うことが多いです。
忌明けの法要
忌明けの法要は七七日(なななのか)、故人が亡くなられてから49日目に行います。仏教では故人の霊が家から離れる日とされていて、満中陰(まんちゅういん)とも呼びます。
この呼び方は中陰が満了する、という意味合いもあります。またこの日を境に忌明けとなり、法要を行います。忌明けの法要を行うことが決まったら参列してもらう人達にお知らせをします。
お知らせの方法はいくつかありますが、メールやSNSでお伝えすることもあるでしょう。ですがやはりマナーとしてハガキや手紙などで送るようにしましょう。また早めに送らないと相手にも都合があります。なのでせめて1ヶ月前には相手の手元に届くようにして、準備ができたら速やかに発送しましょう。
忌明け法要と納骨式
忌明けの法要は、本来であれば納骨を行う納骨式も一緒に執り行うのが一般的とされています。午前中に忌明けの法要と納骨を行い、昼から会食をするという段取りです。しかしお墓が遠方にあるなどの理由で、忌明け法要の当日には納骨ができないケースもあります。そのような時は法要の席での挨拶の中で、別の日に納骨をする旨を述べれば良いでしょう。
忌明けの挨拶状の例文
忌明けの挨拶状とは、亡くなられた人の友人、知人に対して遺族から忌が明けたこと、故人との生前の付き合いに対するお礼、また通夜や告別式に参列していただいたことに対するお礼を述べる挨拶状のことです。
忌明けにはお香典をいただいた方へお返しをする香典返しを準備して相手にお届けします。忌明けの挨拶状はその時の品物につける場合が一般的です。しかし、故人と特に仲がよかった友人などには品物とは別に挨拶状を送りたいところです。
では、忌明けの挨拶状をハガキで送る場合と手紙で送る場合の文例をみていきます。なお、香典返しとともに送る挨拶状については後ほど解説します。
はがき
忌明けの挨拶状では句読点(、や。)をつけません。これは忌み事を流すという意味合いもあるからです。文章が長くなる時は改行をするなどの方法で相手が見やすいようにレイアウトをしてください。書く内容としては以下のことをお伝えすようにすれば良いでしょう。また、横書きではなく縦書きで書いてください。
1.故人の名前
2.お礼の言葉
3.忌が明けたという報告
4.簡単な挨拶状で申し訳ないという内容
5.差出人
以下は通夜や告別式に参列されていてお香典をいただいた相手に対する文例です。
文例
拝啓
先日は亡○○儀死去の折にはご多用にもかかわらずご会葬をいただき且つご芳志をいただき誠にありがとうございました
おかげをもちまして忌明けの法要を滞りなく営むことができました
本来であれば直接ご挨拶に伺うべきところ略儀ながら書面にてのご挨拶とさせていただきます
敬具
○○年○月
※敬具は本来、ハガキの末尾下部に書きますが、画面の都合上、上部になっています。自分で書く時には通常どおり、末尾下部に書いてください。また、差出人は忘れずに書いてください。
手紙
忌明けの挨拶状をだす相手が故人だけではなく、差出人もよく知っている友人や知人の場合、ハガキでは書ききれないこともあるでしょう。そのような時は手紙という形でお出ししても構いません。
主に書く内容はハガキの例と同じですが、その中に故人との思い出などを入れても良いでしょう。ただし、弔事では何事も重ねることは、忌み事が重なるという意味合いがあるとして避けられます。ですから便箋に書く場合も2枚にわたることの無いようにしてください。また、書く便箋も白地のものを選ぶようにするといいでしょう。
封筒
封筒も便箋と同じように白地のものを選びます。選ぶ時に気をつけたいのは1重の封筒を選ぶことです。通常の封筒は中のものが見えないように二重になっています。ですが、忌明けの挨拶状を入れるのに、二重になっている封筒はふさわしくありません。封筒は白地の一重のものでなおかつ、郵便番号を書く枠が無いものを選びましょう。
忌明け法要でのマナーや注意点
前述したように、四十九日目には忌明けを迎え法要を営みます。忌明けの法要は参列した人達が故人のことを偲び思い出を語り合いながら、遺族の気持ちを少しでも和ませることができるような法要になるようにしましょう。
また、忌明けの法要は葬儀や初七日以降でははじめて遺族だけではなく、親族や知人などにも参列してもらう法要です。マナーを守り失礼の無いようにしましょう。
日時
故人が亡くなられた日にちによっては、忌明けの法要を行う日が平日にあたったりします。そういった状況の時は、忌明けの法要の日にちをずらすこともあります。ただし、四十九日以降に行うのではなく、前倒しにして参列してもらう人が来やすい日曜日に行うなど遺族で話しあって決めましょう。
以前は日曜日であっても大安は避ける、といった風習がある地域もありましたが最近では六曜を気にすると日程が決まらないなどの理由で皆が参列しやすい日取りを決める傾向になっています。
同様に、時間についても参列してもらった人の帰宅にかかる時間を考慮して決めます。最近、多いのは忌明けの法要を午前中に行い、その後の会食はお昼ごはんを兼ねて行うといったケースが増えています。
また、法要の連絡をもらった人は遺族の準備をする日にちなど考慮して出来るだけ早く、参列するかしないかの返事をしましょう。
服装
忌明けの法要だけに限らず、施主は男性も女性も正礼装をするのが基本とされてきました。ですが最近では、施主も参列者も準礼装で行うことが多くなってきてます。
男性の準礼装は、ブラックスーツで上着はダブルでもシングルでも構いません。ネクタイやベルト、靴下は黒で揃え、Yシャツは白の無地のものを着用します。
女性の場合は男性よりも細かい部分で気をつけないといけないところが多くありますので次の項で解説します。
子供が参列する場合、就学している子供なら制服が正装になります。未就学の子供ならば、黒かグレーなど派手な色を避けたコーディネートにします。
女性の服装のマナー
女性は、黒のワンピース、アンサンブル、スーツを着用しストッキングの色も黒かベージュにします。冬にはタイツを履きたくなりますが控えます。この他、気をつけることは以下のとおりです。
・洋服はレースなど透けるや光沢のある素材は避ける
・アクセサリーは結婚指輪以外はつけない。結婚指輪に石がついている場合は石を手のひら側にむけるなど配慮する
・アクセサリーをつける場合は真珠の一連のプリンセスサイズのネックレスにする
・バッグや靴などはエナメル素材など、光沢のあるものや派手なものは避けブーツも履かない
・アイシャドーなどアイメイクは止め、口紅もベージュに近いものをつける
・髪形はロングやセミロングの場合、ハーフアップにするなどスッキリとまとめる
・マニキュアはしない
お化粧や髪形などで華やかさを出す必要はありません。オシャレをしたい気持ちをグッと堪えて大人としてのマナーを守りましょう。
挨拶
法要では施主が挨拶を必ずすることになっています。そう何度もあることではないので緊張する、という人もいるでしょう。そのような時は最低限、述べたほうがよい内容を押さえて、あとは自分の言葉で挨拶をしても参列者には伝わります。
述べたほうがよい内容とは
・参列していただいたことへの感謝
・法要が無事に済んだことなど報告
・故人を偲ぶ言葉と遺族の思い
以上の内容は挨拶のなかにいれるようにしましょう。
文例
本日はお忙しい中、亡き○○(続柄)○○(名前)の四十九日法要にご参列いただきありがとうございました。
葬儀の際には皆様に一方ならぬお世話をいただき、あらためてお礼を申し上げます。
おかげ様で無事に法要を執り行うことができ、○○も安心して私達を見守ってくれていることと思います。
○○を失い、いまだ悲しみは癒えませんが残された家族が心をあわせて前に進んでいくことが○○の供養になると考えております。
これからも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
ささやかではございますがお食事を用意させていただきました。
お時間の許す限り、ゆっくりとお過ごしいただき生前の○○の話などをお聞かせいただければと存じます。
本日はまことにありがとうございました。
食事
法事の時の食事のことをお斎(おとき)ともいいます。忌明けの法要を行った場所で仕出しのお弁当を振舞ったりというケースもありますが、最近では場所をレストランなどに移して会食を行うケースが増えてきました。この会食は必ずしなくてはならないというものではありませんが、故人を偲んで忌明けの法要に参列していただくので、準備はしたほうがいいでしょう。
レストランなどお店で会食を行う場合は、1ヶ月前には大体の人数でいいので予約をいれます。食事代の相場としては5,000円~10,000円くらいです。2週間前には、はっきりとした人数をお店側に伝えましょう。予約を入れる時には忌明けの法要であることを伝えると法事用のお料理を用意してくれますし、お酒なども足りなくなるといったことも避けられます。
引き出物
引出物はもともと婚姻など慶事の時に、相手への贈り物である馬を庭先に引き出したことが言葉の由来となっています。ですが今では慶事弔事にこだわらず、相手への感謝の意味を込めて引き出物という言葉を使います。
時間を割いて来ていただいた人に対して、感謝とお礼の意味合いを兼ねて品物を持って帰ってもらいますが、その時の品物にはのし紙をつけましょう。のし紙には地域によって違いがあります。西日本では満中陰志、そのほかの地域では志と書く場合が多いですし、水引も関西や山陰などでは黄色と白の結びきりのものを使用する地域があります。
品物を相手に渡すときには持ち運びがしやすいように紙袋に入れて渡します。基本的には白い紙袋ですが、自分で用意できない場合でも、お店で品物を注文する時に「法要用です」と伝えれば、法事用の紙袋に変更をしてくれますのでお店の人に頼んでみましょう。
お供え物
忌明けの法要に参列する場合、お供えをどうすればいいのか悩む人も多いでしょう。最近では品物を持参するのではなく、その分も含めた金額をお供物料として施主の方にお渡しするケースも増えています。
ですが、地域によっては参列する側もお供えの品物を持参するということもあります。また親族間の取り決めがあったりする場合、自分の判断だけで行動してしまうと自分だけが違う、などということになったりします。自分で判断がつかない場合は施主の方に相談するのがいいでしょう。
お供えを品物でする場合
お供えを品物でする場合に気をつけたいのは以下のことです。
・できれば外のしにして、表書きは御供と書く
・日持ちのする物にする→ケーキなどクリームが入っているものや要冷蔵のものは避ける
・お菓子などをする場合は個別包装になっているものをする
・お花をお供えする場合は匂いがキツイものや棘があるのもは避ける
・肉や魚など殺生につながるものは避ける
・昆布や鰹節など慶事につながるものは避ける
お供えの品物は勝手に仏前に供えるのではなく、持参した袋や風呂敷からだして遺族に渡します。受け取った遺族は、丁重にお礼を述べ、誰からのお供えなのかわかるように名前を前に向けてお供えをします。
選ぶのを注意しないといけないお供え物ですが、故人が好きだったという理由でソーセージのセットを持参したという例もあります。何をお供えにしたらいいのか迷った時には遺族や他の参列者に聞いて決めると良いでしょう。
忌明け後の香典返しでの書き方や注意点
通夜や告別式など葬儀に参列する人はお香典を持ってこられる人がほとんどです。香典返しはその時にいただいたお香典に対してお礼の意味合いを持って遺族からお返しを送ることをさします。この香典返しにもいくつか注意する点があります。
御礼状
本来であれば直接、お目にかかってお礼をいうのがマナーではありますが、実際はやらなければならないことも多いため、品物を送ります。その時には品物だけではなくお礼状も添えます。
香典返しに添えるお礼状でも文章には句読点をつけません。最近ではお店で品物を頼んだ時に一緒にお礼状も注文して添えてもらうように手配をするケースが増えています。ですが自分で品物を用意することもあるでしょう。その場合は忘れずにお礼状を添えましょう。
文例
拝啓
先日は亡き○○(続柄)○○(名前)儀死去の折にはご会葬をいただき且つご丁寧にご厚志をいただき有り難くお礼申しあげます
葬儀の際には万事不行き届きにて申し訳ございませんでした
おかげさまをもちまして○月○日に無事忌明けの法要を営むことができました
つきましては供養のしるしに心ばかりのものを送らせていただきますのでご受納くださいますようお願い申し上げます
生前のご厚情に御礼申し上げますとともに今後も変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます
本来であればお目にかかりお礼申しあげるところではございますが略儀ながら書中をもってお礼かたがたご挨拶とさせていただきます
敬具
○○年○○月○○日
お礼状は縦書きにします。結語の敬具は文末下部に書きますが構成上、文頭にきている形式になっています。実際に書く時は文末下部に書いてください。また日付の後には差出人の名前を書いてください。
品物
香典返しの品物は何でも良いというわけではありません。以前は残らない物を送っていました。残らない物を送ることで悲しみも残らないようにするという理由からです。品物としては石鹸や海苔など消費することによって消える物を選んでいました。
ですが最近は品物ではなく、カタログギフトを贈る人も増えています。これは送られた相手が自由に品物を選べるというメリットがありますし、送る側も何を送ればいいのか悩まなくて良いというメリットもあります。
金額
香典返しの金額は、湯人や知人の場合はいただいたお香典の半返し、もしくは3分の1の金額をお返しすることが一般的となっています。親族の場合は3分の1くらいの物をお返しします。
ただ親族などからは高額のお香典を受け取ることもあります。その時はお香典をいただいた人との付き合いの度合いなどを考慮して金額を決めるようにしましょう。
時期
香典返しは忌明けの法要をすませた2週間後位までをめどに送るようにします。忌明けになっているのにいつまでも送らないのは相手にも失礼にあたります。忌明けを無事に迎えました、という報告の意味合いもありますので、忌明けの時期を迎えたら早めに手配をしましょう。
柔軟に対応を!
社会で生きていく中で弔事は避けて通れません。かといって自分が喪主の立場になることもそう何回もあるわけではありません。なので実際に弔事に見舞われた時に慌ててしまうこともあるでしょう。ですが、そのような時は信頼できる人に相談するなど柔軟に対応をすることも大切です。
忌明けまでにやらなくてならないこともたくさん、あります。やるべきことを書きだすなど工夫して忌明けの時にはゆっくりと故人を偲んだ法要ができるよう、落ち着いてことをすすめてください。