胡蝶蘭の特徴
胡蝶蘭はランの一種で東南アジアなどの熱帯や亜熱帯地域に自生する植物です。自生の胡蝶蘭は大きな木の幹や枝に根を張って成長しますが、日本では植物園以外で自生する胡蝶蘭を見ることはないでしょう。胡蝶蘭というと鉢植えで支柱に仕立てられた姿を想像する人がほとんどです。
一本の茎の先端にたくさんつぼみをつけて次々に花を咲かせますが、その花の形が蝶が舞うように見えることが胡蝶蘭と言う名前の由来です。大輪の白い胡蝶蘭は開店祝いや当選祝いなどで贈られることが多く、胡蝶蘭がずらりと並ぶ姿は壮観です。小ぶりの胡蝶蘭やピンク色の胡蝶蘭もあり、ちょっとしたお祝い事やプレゼントにも華やかで人気があります。
胡蝶蘭は花が終わったら終わりと考えている人もいますが、きちんと管理すればまた花を咲かせることができます。胡蝶蘭を長く楽しむために、ここではその上手な植え替え方法についてご紹介していきます。
胡蝶蘭を育てるポイントとは
胡蝶蘭はその生育環境から、風通しが良く直射日光にあたらない場所を好みます。また寒さを苦手とします。特に日本の冬の寒さでは育たないので、冬は暖房の効いた室内で管理するなどの注意が必要です。
胡蝶蘭は、他の植物と違って土ではなく水苔などの植込み材で育てます。土と同じように水苔などに水を含ませるように水やりをしますが、水の与えすぎは根腐れを起こしてしまいます。夏場は植込み材が乾いたらたっぷりと、冬場は植込み材が乾いて数日置いてから水を与えるようにするなど水やりの管理も大切です。
胡蝶蘭のベストな植え替え時期
胡蝶蘭は季節によって成長具合が変わりますが、植え替えもそれによってベストな時期と植え替えを避けた方がいい時期があります。ここでは季節で区切った胡蝶蘭の植え替え時期についてご紹介していきます。
春は胡蝶蘭の植え替えに最適な時期
胡蝶蘭は季節問わず咲いた状態で贈答用に売っていますが、実際の胡蝶蘭の開花時期は1月から3月の冬から春です。胡蝶蘭は開花してから長く開花状態を維持するので、花が終わるまで約1ヶ月くらいは楽しむことができます。胡蝶蘭は花が終わってから成長期に入る前が植え替えの時期なので、植え替えに一番ベストな時期は4月頃になります。
胡蝶蘭は毎年植え替える必要はありませんが、できれば2年ごとに植え替えるのが最適です。胡蝶蘭をいただいたり購入したら、2年後の春に植え替えと覚えておくとよいでしょう。ただしそれ以前に株が弱ったり根腐れしそうなら、速やかに植え替えをした方がいい場合もあります。
胡蝶蘭の植え替えは初夏までに
胡蝶蘭は熱帯や亜熱帯が原産ですが、自生している環境は風通しが良く直射日光がほとんど当たらない場所です。そのため日本の夏の暑さや日当たりは胡蝶蘭には強すぎます。暑い時期に植え替えをしてしまうと株が弱ってしまう可能性があるので、胡蝶蘭の植え替えは暑くなる前の6月の初夏までに行うようにしましょう。
秋に胡蝶蘭を植え替えする場合
胡蝶蘭は冬に花を咲かせますが、秋はそのための準備期間になります。この時期に植え替えをして株が傷ついたり、しっかり着生しないと花を咲かせることができないばかりか枯らす原因にもなります。
秋は春と同じく気候が安定しているので植え替えには向いている時期ですが、寒さが近づいてくると植え替えに株が耐えられなくなってしまいます。秋に植え替えをする場合は夏が終わったら早めに行うようにして、植え替えが胡蝶蘭になるべく負担を掛けないように気を配る必要があります。
冬の胡蝶蘭の植え替えは避ける
冬は胡蝶蘭の花芽が伸びてきて開花していく時期で、株の生育は緩やかになる時期です。胡蝶蘭は冬の寒さに弱いこともありますが、この時期の植え替えは株を弱らせる原因になりますので避けた方がいいでしょう。冬でも植え替えをした方がいいケースは、胡蝶蘭がいちじるしく弱っていたり根や植込み材が腐ってしまった場合に限ります。
胡蝶蘭の上手な植え替え方法
前項で胡蝶蘭の植え替えに適した時期をご紹介しましたが、ここでは実際に植え替えをしていく上での上手な方法やポイントをご紹介していきます。胡蝶蘭も育てていれば成長していくので、できれば2年に1度のペースで植え替えを行います。
贈り物の胡蝶蘭であれば陶器などの鉢に植えられていますが、自宅用に購入する小さなものだとビニールのポットに植えられていることもあります。胡蝶蘭を植え替える際には、植え替える器と中の植込み材を考える必要があります。
胡蝶蘭の植え替えに使う用土とは?
胡蝶蘭は、木の枝や幹に根を張り着生することで自生しています。一般的な植物を植える時は培養土などの土に植えますが、胡蝶蘭の根は土に覆われていると根腐れを起こしてしまいます。胡蝶蘭を植え替えるのにおすすめは、水苔やバーグの土ではない植込み材です。
水苔とバーグのどちらがおすすめか?
水苔とバーグのどちらが良いかというと、どちらもメリットやデメリットがあるのでそれを考えた上で選ぶとよいでしょう。水苔は長く胡蝶蘭の生育に使われていた植込み材で、胡蝶蘭の植え替え用には一般的な材料です。最近では100均ショップでも売っているので手に入れやすいですが、水苔自体に保水力があるため根腐れを防ぐためには水の管理が大切です。
バーグとは木のチップですが、胡蝶蘭はもともと木に根を張る植物なので生育環境を考えるとバーグは胡蝶蘭の根が張りやすく植え替えにおすすめです。一方でバーグは乾きやすいという性質を持っています。植え替えの仕方によっては水不足で枯れる原因になるので注意が必要です。
植え替え用の鉢のおすすめは?
胡蝶蘭は土に植えてしまうと根腐れする原因になってしまうので、地植えはできません。胡蝶蘭は鉢から鉢に植え替えを行います。植え替えに使う鉢も植込み材を水苔にするかバーグにするかで変わってきます。水苔とバーグはそれぞれ性質が違うからです。
植え替えに水苔を使う場合は、素焼きの鉢を用意しましょう。水苔は保水力があり、胡蝶蘭はずっと根が湿った状態だと根腐れしてしまいます。乾きやすい性質をもつ素焼きの鉢は水苔と相性がいいということです。
植え替えにバーグを使う場合は素焼き以外の鉢がおすすめです。普通の陶器の鉢やプラスチック鉢、またビニール製のポリポットを使います。バーグは乾きやすい性質のため、鉢は水を乾燥させにくい性質のものが合います。
水苔を使った上手な植え替え方法
水苔は乾燥した物がかたまりで売っていますので、鉢の大きさに合わせて必要な量を用意します。乾燥した状態で植え替えをしてしまうと上手く水を吸ってくれないこともあるので、植え替えをする前に水苔はしっかりと水に浸しておきましょう。
胡蝶蘭の株を鉢からはずしたら、古い植込み材を全て取り除き古い根なども処理してから水苔を巻いていきます。水苔は軽く絞りながら根と根の間に入れて鉢の大きさ程度になるまで巻いていき、鉢に入れたら隙間をさらに水苔で埋めて完成です。
バーグを使った上手な植え替え方法
水苔は苔同士が絡まって根に巻き付けやすくなっていますが、バーグはチップ状なので植え替え方が違います。バーグの場合はきれいに整えた株をまず鉢に入れ、上からバーグを入れ込んでいきます。割りばしなどの棒を使って隙間を埋めるように根と根の間にもバーグを入れていきます。
バーグで植え替えをする時の注意点は、鉢にバーグを入れる時に根を傷つけないことです。無理に押し込んだり、雑に扱ったりすると根を傷つけて枯れる原因になります。優しく丁寧に根の付け根までバーグで覆っていきます。でき上がったらたっぷりの水を与えて完成です。
植え替え時の根の処理は?
植え替えの時に鉢から株を抜いて植込み材を全て取り除いたら、根をきれいに整えます。胡蝶蘭の健康な根は太く緑色をしています。黒っぽい根はカビなどに侵されているサインで、細くしおしおの根は古かったり成長が悪いサインです。
古い根や傷んだ根は全て取り除かないと、植え替えた後に枯れたり病気になる原因になります。胡蝶蘭の根は繊細なので使用するハサミからカビや病気などが移ることがあります。根の処理をする時は、こまめにハサミを殺菌するなど注意する必要があります。
鉢の底の発砲スチロールは何のため?
胡蝶蘭を植え替えする時に、底に発泡スチロールが入っている場合があります。これは水はけを良くするためですが、必ず必要というわけではありません。水苔を植込み材とする場合に株に対して鉢が大きいと、使用する水苔の量が多くなります。水苔は保水力があり量が多いと水をためやすく根腐れの原因になってしまうので、発砲スチロールで調整しています。
植え替える時に鉢が大きい場合は、水はけをよくするために水苔の量を調整する必要があります。軽石も同じ効果が得られるので、植え替えの時には軽石を鉢の底に入れるとよいでしょう。
植え替え時に肥料は与えた方がいい?
胡蝶蘭は元気な株であれば、生育期でも肥料をあげずに育てることができます。適切な水やりだけで育てることができるので、あまりやりすぎない方がいいでしょう。弱っている時は根から栄養を吸収しにくくなりますし、肥料がさらに根を弱らせる原因にもなります。
植え替えの時も基本的には肥料はなくて大丈夫ですが、株の様子を観察しつつ必要なら固形肥料を入れることもあります。その時に注意するのは、根が肥料に触れないようにすることです。根と水苔やバーグの間に肥料が入らないように植え替えをしましょう。
胡蝶蘭の植え替え後に気を付けたいポイント
胡蝶蘭は適切な植え替えを行わないと株が弱ってしまいますが、植え替え後の管理にも注意が必要です。適切な管理ができていないと、せっかくきれいに整えて植え替えをした胡蝶蘭が元気に育ってくれません。ここでは植え替えをした後の管理で気を付けたいポイントをご紹介していきます。
植え替え後の胡蝶蘭の育て方
植え替え後の胡蝶蘭の育て方として大切なポイントは水やりと環境です。植え替えをした後すぐは、胡蝶蘭の根も新しい環境にまだ馴染んでいません。ここで胡蝶蘭にストレスを掛けたり必要以上に与えたりしてしまうと、健康な株も馴染めず弱っていってしまいます。
植え替え後の胡蝶蘭を育てる環境
胡蝶蘭に最適な場所は、直射日光が当たらず風通しの良い場所です。屋外であれば、日陰で風当たりの強くない場所が良いでしょう。屋内の場合は、窓際や開け閉めの多いドアの近くが風の流れがあるのでおすすめです。窓際であればレースカーテン越しなど、日光を遮るようにします。
屋内のエアコンや扇風機に屋外の室外機の近くなど、風が強く当たる場所は避けましょう。強い風にさらされてしまうと、胡蝶蘭の呼吸を遮ってしまうためです。また胡蝶蘭は暑さや寒さに弱いので、季節に応じて移動させる必要があります。
水やりの量やタイミング
胡蝶蘭は植え替えてからその環境に根が馴染むまで、しばらく落ち着かせる必要があります。そのため植え替え後の水やりは1,2週間は行わず、様子を見た方がいいでしょう。根が弱っていると水を吸収せず、水苔が湿ったままの場合もあります。その場合は水苔が乾くまで様子見に徹しましょう。
1,2週間ほど様子を見て水苔やバーグが乾き株が元気そうなら、ここから水やりをスタートします。根を乾燥させすぎないように植込み材が乾いたら夏場は水をたっぷりと、冬場は控えめに水を与えるようにします。
参考になる胡蝶蘭の植え替えの失敗例
胡蝶蘭を育てるのは簡単ではありませんが、適切な育て方と植え替えを行えば何年も花を咲かせて楽しむことができます。胡蝶蘭は植え替えで株を弱らせてしまうことも多いですが、ここでは植え替えの失敗例を参考に挙げておきましょう。
植え替えで根腐れする原因は水の与えすぎ
植え替えで失敗する例として多いのは、水の与えすぎが考えられます。一般的に植物を植え替えた時は土にしっかり根付くようにたっぷり水を与えますが、胡蝶蘭は植え替えした直後に水を与えすぎると弱ってしまいます。植え替え自体で負担がかかっていて、根が水を十分吸収できるまで元気になるのに時間が掛かるからです。
ポリポットを使った植え替えでの失敗
胡蝶蘭は小さい株だとビニール製のポリポットに植えられ売っていることも多いですし、植え替える時に鉢から抜くと鉢の中でポリポットに入っていたということもあります。そう考えると胡蝶蘭の植え替えはポリポットを使ってもいいように思えますが、必ずしもそうとは限りません。
ポリポットはビニール製であるため、中が乾きにくい性質を持っています。乾きやすいバーグとは相性が良いですが、水苔の場合は与える水の量によっては水が切れずに根腐れをおこすことがあります。水苔にポリポットがだめなわけではないですが、水の管理に注意しないと枯らす原因になってしまいます。
胡蝶蘭を育てる楽しみ
せっかくの胡蝶蘭を、1回の開花で終わらせてはもったいないです。それなりに手を掛けなければ毎年花を咲かせることは難しいですが、開花すれば長く花を楽しめますし手を掛けた分だけ育てた喜びも感じられるでしょう。
環境と水やりさえ管理できれば、植え替えは園芸店や100均ショップで手軽に揃えられる材料で行えます。胡蝶蘭を買って楽しむだけでなく、ぜひ自分で育てて花を咲かせてみましょう。