おときとは何か・おときがある法要の種類・施主の挨拶の例文
昨今は新興宗教の台頭が顕著で、お葬式も「多種多様」になっていますが、お葬式の約35%は仏教式で行われているというデータもあります。いずれにしても、誰かが亡くなれば必ずお通夜やお葬式が行われ、その後も色々の「仏事」が行われます。
当事者として初めて「仏事」を執り行うことになった時、戸惑う事のないように、「忌」の意味や「法要」「法事」などについて、一とおりの知識を身に付けておくことは大事です。ここではそれらをくわしく解説してゆきます。
仏教における仏事とは?
仏教ではさまざまの仏事が行われます。人が亡くなるとまず通夜式、次に葬儀告別式、そしてさまざまな忌事が行われます。忌事は「法要」とも言い、僧侶による読経を指します。
仏教における「忌日」とは、七日毎に行われる閻魔大王による裁きの事をさします。亡くなってから四十九日目まで、極楽浄土に行けるかどうかの判断が繰り返され、四十九日目に判定が下されて「忌」が明けます。
「忌」が明けてからは、一年単位の「年忌」が行われ、年忌が明けるのは、地方によっても違いますが、三十三年を「といきり(弔い明け)」とする所が一般的です。
「といきり」を三十三年とするのは、どんなに重い罪を犯した人間でも、亡くなって32年経つと、罪が許されて極楽浄土に行く事が許される、と言われていることに由来していますが、「といきり」を50年目とする所もあります。
法事と法要の違い
ほとんどの人は「法要」と「法事」は同じものだと考えているようですが、厳密には同じではありません。似たような例に結婚の儀式があります。挙式はごく身内だけで二人の結婚の誓いを見届け、披露宴では食事会を含めて賑やかにお祝をします。
挙式と披露宴をひっくるめて「結婚式」と考えるのが一般常識になっていますが、挙式だけで披露宴なしということはほとんどありませんので、挙式と結婚式が同じと考える人は少なくありません。
「仏事」の場合の「法要」は僧侶による読経を指し、「法事」は読経とその後の食事会をも含めたものをいいます。「法要」にはたくさんの種類があり、「法要」だけで終わる場合もあります。その場合は「法事」とはいいませんので気をつけましょう。
おときの意味
おときは法要の後行う会食のこと
「法要」と「法事」の違いはご紹介しましたが、法要の後に行われる「食事会」のことを「おとき」といいます。
誰かが亡くなるとまずお通夜が営まれ、そのあと葬儀告別式があり、最近では「繰り上げ初七日」という「忌日」の法要が行われます。これが誰かが亡くなって最初に行われる「法要」です。
この後七回目の「法要」を「七七忌」とか「四十九日忌」と呼び、故人の身内や友人知人を招いて、読経と食事会が行われます。この時の読経の後の食事会の事を「おとき」といいます。
おときは僧侶や参列者に御礼の気持を込めた会食
誰かが亡くなると、「忌日法要」「年忌法要」と、遺族はさまざまな「仏事」を行わなくてはなりません。「初七日」~「四十九日」迄は、家によっては七日毎に僧侶を招いて読経を依頼することもありますが、四十九日以外は大抵は遺族だけで行います。
親族や友人知人に参列して貰うのは、四十九日の「忌日法要」が一番大勢になります。その後「年忌法要」となる「一周忌」「三年忌」は、身内だけで行われる事が多くなりますが、読経して貰う僧侶や、参列してくれた人には、御礼の意味も込めて食事が振る舞われます。
読経の後に振る舞われる食事のことを「おとき」と呼びますが、「おとき」にはいくつかの意味があります。
1、僧侶や参列者への感謝と御礼の意味。
2、故人をとおして結ばれた縁に対する畏敬の意味。
3、故人との別れを確認し気持の整理をつけるという意味。
4、故人への心からの供養を込めるという意味
などです。
おときは漢字ではどう書くの?
お斎
おときは漢字では「お斎」と書きます。もともとは僧の食事のことを「斎食(さいじき)」といいました。「斎食」は決まった時間に食事を摂るという意味もあり、仏教用語の一つです。「お斎」はこの「斎食」から来ているといわれています。
通夜の後のお斎は「通夜振る舞い」といい、「葬儀告別式」の後のお斎は「精進落とし」や「お清め」といったり、地方によっては出棺前に振る舞われる「出立ちの膳」と呼ばれる「おとき」もあります。
「お斎」の語源と由来
「法要」の後参列者全員で会食をすることを「おとき」といいますが、語源はインドにあるといわれています。インドでは僧侶が食事をして良い時間と、食事をしてはいけない時間があり、食事をしても良い時間を「時食」といいました。
この「時食」の習慣が日本にも伝わり、「時食」が「とき」になり、「とき」に「斎」という漢字が当てられて「お斎」になったという説があります。また「おとき」の意味合いも、僧侶の食事ではなく、法要の後の食事会になったのは、「時」の流れといえます。
日本においては仏教の普及とともに、僧侶の地位も高くなり、法要の後に感謝やお礼の意味も込めて、食事などが振る舞われるようになったと考えれば、現在の「お斎」に至った経緯も頷けるところです。
おときが行われる法要
初七日の法要と「おとき」
最近は斎場での葬儀がほとんどなので、斎場の都合や土地の風習もあって、火葬も「後焼き」か「前焼き」になります。後焼きは葬儀の前に火葬にすることで、「前焼き」は火葬にしてから葬儀を行います。
後焼きでも前焼きでも、初七日は「繰り上げ初七日」として、告別式の後に引き続いて行われます。告別式が終わると、僧侶はいったん退席して衣を着替えます。その間参列者は告別式の行われた席で僧侶の登壇をまちます。
衣替えをした僧侶による初七日の「読経(法要)」が終わると、後焼きの場合は出棺の準備に入ります。個人との最後のお別れをして火葬場へと出棺し、前焼きの場合はそのまま「おとき」の会場へと移動します。
最近の傾向としては、「初七日」の「おとき」はほとんどが告別式の「おとき」と併用で行われます。「精進落とし」「忌中ばらい」など、呼び方は土地によって違いますが、「おとき」の料理として、施主が用意します。
四十九日迄の忌日法要
四十九日の法要は「忌日法要」の最後の「法事」になります。遺体をそのまま埋葬(土葬)した時代と違い、最近は葬儀の当日墓地に納骨される事は少なく、たいていは四十九日迄はお骨は自宅に置かれる事が多くなりました。
初七日も告別式の後に行われる事がほとんどなので、自宅で「忌日法要」するのは「二七日(ふたなのか)」~「六七日(むなのか)」までです。七日毎の法要も、僧侶による読経は行われないことが多く、たいていは遺族による焼香と、ご飯やお茶の供養のみになります。
四十九日の法要と「おとき」
葬儀が終わった後の遺骨は、四十九日迄は自宅に置かれる事が多く、四十九日の法要は、骨壺に納められた故人が、自宅を離れてお墓に入る日でもあります。法要は地方によっては自宅で行われますが、マンション暮らしが多い都会では、ほとんど菩提寺で行われます。
四十九日の法要の後の「おとき」は、喪主の意向で会場が決められますが、参列者のほとんどが「おとき」にも出席します。菩提寺で法要をした場合、別会場への移動が面倒なこともあり、お寺に席を設けて「おとき」をする場合も増えています。
四十九日の法要の費用と注意点:呼ぶ側のマナー
四十九日の法要は忌日法要の最後ですから、ただの法要でなく、「おとき」も用意する法事として準備しなくいてはなりません。呼ぶ側としての注意点とマナーは次のとおりです。故人への真心込めた供養になるようしっかり準備しましょう。
1、菩提寺の都合を聞き早めに期日を決める。
2、参列していただく名簿リストも早めに作る。
3、期日が決まったら「おとき」の会場を決定する。
4、リストの名簿宛てに法事の案内を郵送する。(往復ハガキで)
5、往復ハガキには、返信の期限を明記する。(おときの出席者の人数確認のため)
6、「おとき」の料理を決定する。(相場は3,000~6,000円)
7、返礼品を用意する。(気持ですが2,000円~3,000円が相場)
8、菩提寺へのお布施を用意する。(相場は30,000円~)
9、土地によっては「御膳料」「お車代」を用意する所もある。(3,000円~5,000円)
10、施主は「おとき」での挨拶も用意しておいた方が良い。
納骨式用のお花・線香も忘れないようにしましょう。
四十九の法要の相場と注意点:呼ばれる側のマナー
四十九日の法事に参列する場合、「てぶら」という訳にはゆきません。特に「おとき」にも出席する場合は、それなりの気遣いが必要です。「おとき」の料理は、喪主の意向で決められますが、一人3,000円~6,000円というのが相場です。
「おとき」に出席した人には、葬式に参列してくれた人へのお礼の意も含めて、「返礼品」も用意されるので、不祝儀袋の中身は一人5,000円以上は用意した方がよいでしょう。
友人知人でも四十九日の「法事」に招かれる人でしたら、生前に故人とかなり親しかった人でしょうから、親族と同じ位の金額を用意する人が多いです。
親族の場合一人10,000円~20,000円、二人で参列の場合は20,000円~30,000円といったところが妥当でしょう。
注意点としては、四十九日の法事には、不祝儀袋の表書きは「御仏前」と書きます。「御霊前」は四十九日の法事前まで、と覚えておきましょう。
初盆(新盆)とおとき
葬式(通夜式と告別式)や四十九日の法事が終わって、遺族が次に行うのが、最初の「初盆(新盆)」か「初彼岸(新彼岸)」の法要です。初盆(新盆)や初彼岸(新彼岸)は「はつぼん(にいぼん・しんぼん)」や「はつひがん(にいびがん・しんびがん)」と呼ばれます。
家によっては「法要」だけという場合もあり、「おとき」も用意する「法事」の場合もあります。葬式や四十九日の法事に続き、遺族は色々と大変ですが、故人への供養とおもって頑張りましょう。
初盆(新盆)や初彼岸(新彼岸)の費用と注意点:受ける側のマナー前半部
初盆(新盆)や初彼岸(新彼岸)で遺族が準備することはたくさんあります。法要だけで済ませる場合は、「おとき」の用意は要りませんが、僧侶へのお布施は用意しなくてはなりません。
1、菩提寺との付き合いもありますが、永代院号(先祖代々から院号を受け継いでいる家柄)ですと、30,000円というのが相場です。家の事情であれば、20,000円でも失礼には当たりません。
2、法要だけの場合はお布施と気持での返礼品を用意します。僧侶以外の参列者の場合は、一般の人への返礼品でOKでしょう。
3、法事(法要とおとき)にする場合、自宅以外での「おとき」なら、早めに会場を予約したり、その旨の案内状も出しましょう。この場合の返礼品は、1,000円~2,000円位が相場です。
初盆(新盆)や初彼岸(新彼岸)の費用と注意点:受ける側のマナー後半部
4、日頃の付き合いで一般の人のお参りもあるので、返礼品の用意も必要です。地方では大体300円~500円位の物を用意している所が多いです。
5、法要の後別会場での「おとき」をする場合、食事の費用は3,000円~5,000円が相場です。
初盆(新盆)や初彼岸(新彼岸)の費用と注意点:供える側のマナー
初盆(新盆)や初彼岸(新彼岸)については、最近は生活改善などで、地方でもどちらか一回と決めている所もありますが、故人に近しい人はどちらへも「香料」を持参します。一般の人の相場は、1回だけという人は2,000円~3,000円というのが相場です。
故人と親しくしていた人や、日頃の付き合いでお盆もお彼岸も、という人の相場は2,000円~3,000円というところです。
法要の案内を受け取っている場合の相場は、3,000円~5,000円というところですが、「おとき」が別会場でという場合の相場は5,000円~10,000円というところです。
また不祝儀袋の表書きは「御仏前」「御佛前」「御供物料」となります。中身のお札も「ピン札」は入れないようにしますしょう。名前はフルネームで書きます。
一周忌の法要・法事とおとき
一周忌は故人が亡くなって一年目にする「法要」の事を言い、三回忌は二年目に行います。六年目が「七回忌」、十二年目が「十三回忌」、十六年目が「十七回忌」、二十二年目が「二十三回忌」、二十四年目が「二十五回忌」二十六年目が「二十七回忌」です。
三十二年目の「三十三回忌」を「といきり(弔い切り)」とするのが一般的ですが、所によっては四十九年目の「五十回忌」を持って「といきり(弔い切り)」とする所もあります。
一周忌の法要・法事は、四十九日の法要・法事とほぼ同じ形式で執り行われます。ただ参列者は、ほとんど身内だけというケースが多くなります。
三回忌以降の法要・法事はさらに少人数だけになり、親の法要・法事ですと親の兄弟と子供とか、子供だけで行うケースがほとんどになります。「おとき」も身内だけの会食会的なものになります。ただしお布施だけは20,000円~30,000円は用意が必要です。
おときの流れ
施主の挨拶
「おとき」は法要の後に行われる食事会の事ですが、冒頭で施主は挨拶をしなくてはなりません。葬式(お通夜と告別式を含めた儀式)では、「おとき」に出席してくれている方々には、色々の面でことさらお世話になったでしょう。
「おとき」の席での挨拶は、故人になり変わった積りで、心からのお礼を言いましょう。余り難しい言葉でなく、分りやすく簡潔に挨拶するのが良いでしょう。
会食(おとき)の料理:施主としての注意点
最近では法事の時の料理も、昔のように徹底した精進料理ということは無くなりました。会場も施主の意向で色々です。飲食店や小料理屋、お寿司やファミリーレストラン、セレモホールやホテルなどさまざまです。
この場合会場はどこであれ、施主としては事前に必ず「おとき」であることは伝えなくてはなりません。会場でも「おとき」であると事前に聞いていれば、それなりの料理を用意してくれるはずです。
「おとき」での施主の挨拶:例文
おときでの施主の挨拶例文:前半部
「おとき」における施主の挨拶は、故人の生前のお付き合いの御礼と、残された遺族との変わらないお付き合いをお願いする場でもあります。余り堅苦しい言葉ではなく故人の気持を汲みながら簡潔に述べましょう。ここでは長男が施主である場合の例文をご紹介します。
例文:本日はお忙しい中またお寒い中、父○○の四十九日の法要にご参列いただき、本当に有難うございます。父も懐かしい皆様のお顔をきっとどこかで見ていることとおもいます。
私も生前父の親しかった皆様のお話を時々聞いておりまして、父は友人知人には本当に恵まれているんだなと、大変羨ましく思ったものでございます。今日こうしてお逢いできましたご縁も、父からの贈り物とおもっております。
おときの施主の挨拶例文:後半部
私も父の生きてきた道を汚さぬよう一生懸命頑張りますので、どうかこれからも、残された私ども遺族にも、変わらないご厚情を心よりお願い申し上げます。
ささやかな御膳を用意させていただきました。どうぞお時間の許す限り、父の思い出などお話いただけたら嬉しくおもいます。本日は本当に有難うございました。
「おとき」は法要の後で故人を偲びながらいただく食事です
「おとき」故人を偲びながら法要の後でいただく食事会の事です。最近は世相も反映して、故人の思い出や、故人につかりのある話以外で盛り上がるケースもありますが、遺族への配慮も必要です。
故人が高齢である場合は、盛り上がることも少しは多めに見て貰えるでしょうが、できるだけ故人と関係のない話は控えましょう。