社会保険上の配偶者の扶養義務・履歴書の扶養義務の書き方

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配偶者の扶養義務の2つの種類

まず配偶者の扶養義務とは一体何なのでしょうか。配偶者というのは、結婚しているパートナーのことです。妻からみて夫、夫からみて妻のことを指します。

扶養義務とは、生活保持義務と理解されていて、扶養される人が自分の生活水準と同じくらいの生活ができるように保障しなければならない義務のことです。つまり配偶者の扶養義務とは、配偶者が自分と同じ程度の生活ができるようにしなければならない義務のことです。

一言で配偶者の扶養義務と言っても、民法上・社会保険上での扶養義務があり、一見あまり違いがなさそうですが、意味合いや定義が変わってきます。民法上・社会保険上それぞれの配偶者の扶養義務の意味や定義など二つの違いを見ていきます。

民法上の扶養義務

民法には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。つまり民法上では、配偶者が収入が少なく生活費を分担できる状態でない場合、収入が多いほうが養わなければなりません。これが民法上の配偶者の扶養義務です。

民法上の扶養義務が一般的にあるのは「夫婦、直系血族、兄弟姉妹」の範囲です。このうち直系血族というのは、親、子、祖父母、孫といった縦の関係です。つまり夫婦には民法上の扶養義務があります。

民法上の扶養義務の中でも夫婦と未成熟の子の親には強い扶養義務があります。扶養義務者と同等の生活を保障する義務があります。ただし、条件を満たさない場合は扶養義務は発生しません。発生しない場合はどんなときなのかその条件をみていきます。

配偶者に扶養が必要な状態であること

上記に書いたように配偶者に収入がない、または少ない場合には扶養が必要な状態であるということになります。配偶者が専業主婦であったり、小さい子供がいて働きに出れないなどの理由で無収入あるいは収入が少ない場合は扶養が必要な状態です。その場合、収入の多い方に扶養義務が生じます。

しかし、民法上の扶養義務は基本的には当事者間の問題であり第三者がどうにかできるものではありません。収入が少なく生活に困っている方は扶養義務者に対して扶養を請求する権利を持ちます。

自分に扶養する能力があること

次の条件として、自分に扶養するだけの収入があるということです。その目安としては、最低生活保護基準程度の生活費あるいは、標準家計費を上回る収入があることが必要となってきます。その目安を下回る場合は扶養する能力がないので配偶者の扶養義務はありません。

社会保険上の扶養義務

社会保険に加入する際に配偶者を扶養家族として届け出る場合や、履歴書に配偶者の扶養義務があるかどうかを書く場合は、民法上の扶養義務ではなく社会保険に加入する際に配偶者が扶養者かどうかが問題になってきます。

つまり履歴書の「配偶者の扶養義務の有無」の欄の扶養義務というのは社会保険上の配偶者の扶養義務です。

社会保険上の扶養家族と認められるかどうかで年金と保険に影響が出てきます。配偶者を扶養家族とすることができると保険料などの点でメリットがあります。

社会保険上の扶養義務が生じる場合はどんな時?

そもそも扶養とは収入が多い人が、無収入や収入の少ない人の生活の面倒をみることですが、被保険者の収入によって生計を維持していて、被扶養者になる親族の範囲に含まれている75歳未満の人がいる場合、社会保険上の扶養義務が生じます。

家族を扶養するためには被扶養者になる親族の範囲というのがあります。被扶養者の範囲は法律で決められていています。どんな人が被扶養者になるのか、それには2つの条件があるのでみていきましょう。

被扶養者になれる範囲って?

被保険者の配偶者(戸籍上の婚姻関係がなくとも事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄姉、弟妹で、主として被保険者に生計をい維持されている人のことをいいます。この際、必ずしも被保険者と一緒に生活していなくても構いません。

もう一つの条件として、被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持していることがあります。この場合「同一の世帯」とあるので、一緒に住んで生活をしていないといけません。この条件を満たした次の人が範囲になります。

・被保険者の三親等以内の親族(上記の親族は除く)
・被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届け出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
・配偶者が無くなった後の父母および子

以上が被扶養者になれる範囲ですが、それに加えて被扶養者には収入面での条件があります。次はその収入の条件をみていきます。

年収が130万円未満

社会保険上の扶養が義務が生じる場合として、被扶養者の年収の見込み収入が130万円未満(60歳以上、または障碍者の場合は180万円未満)であれば扶養に入り、被保険者に扶養義務が生じます。

年収が130万円以上になると、被保険者の扶養からはずれることになり国民健康保険に加入して、自分で健康保険料を支払う必要があります。よく「130万円の壁」といわれているのがこのことです。

被保険者の年間収入の二分の一未満

もう一つの収入の条件として被扶養者の年収が被保険者の年収の二分の一未満というのがあります。ちなみにこの年収というのは、過去の年収のことではありません。被扶養者になるには、被扶養者として認定される日以降の見込みの年収が130万円未満であり、被保険者の二分の一未満でなければなりません。

履歴書での書きかたルール

新しく仕事を始めるときや転職をするとき、必ずと言っていいほど就職希望先に履歴書を提出します。履歴書を書く上での扶養人数や配偶者の扶養義務や配偶者の有無の書きかたなどをわかりやすくまとめてみました。

あまり聞きなれない言葉が出てくると書くときに頭の中で迷ってしまいますが、書きかたのルールを知って書いていけば難しくありませんのでみていきましょう。

扶養家族の人数

扶養家族の人数は扶養に入っている人数を書きます。例えば、自分の扶養に妻と子供(1人)が自分の扶養に入っている場合は、扶養家族の人数は2人です。ただし履歴書の扶養家族欄に「扶養家族(配偶者を除く)」と記載されている場合は、配偶者を除いた扶養家族人数を記入します。

共働きで配偶者の扶養に子供が入っている場合は子供は扶養人数には入れません子供は扶養している方に扶養人数として数えます。75歳以上の人も扶養人数には含めません。75歳になるとすべての人が後期高齢者医療制度に移行し、たとえ同居していても家族の保険から切り離されるからです。

主婦がパートで働く場合、夫の収入で生活している場合は扶養人数は0ですが、夫が無職で就職活動中などの場合は扶養人数1人となります。

配偶者の扶養義務

生活を支えている方が働く場合の履歴書の配偶者の扶養義務の有無の欄ですが、扶養義務があるため、配偶者の扶養義務の有無の欄は有の○をつけます。逆に扶養を受けている方が働く場合の履歴書には配偶者の扶養義務の有無の欄は無に○をつけます。

配偶者よりも収入が多く主に自分の収入で生計を維持しているひとは配偶者の扶養義務有無の欄の有に○をつけます。パートなどで働く場合、配偶者の収入で生計を維持している場合は配偶者の扶養義務の欄の無に○をつけます。

配偶者の有無

配偶者というのは前にも述べましたが、結婚をしているパートナーのことをいいます。最近では同棲や事実婚でも配偶者とみなされ、配偶者有無の欄の有に○をつける場合もあります。しかしその場合でも配偶者控除は受けられません。

分かりやすくいうと、結婚をしている(同棲や事実婚でもよい場合もあり)は、配偶者有無の欄は「有」に○をつけます。未婚・独身は、配偶者の有無の欄は「無」に○をつけます。

履歴書の書き方の例

履歴書を書くときに「配偶者の扶養義務」のところは、有に〇をつけるのか無に〇をつけるのか迷ったことはありませんか。書く側としてはあまり気にしていない部分ですが、面接をする側は以外にそこをよく見ています。

なぜならば、あなたが会社に入社した後の社会保険の手続きを考えたり、会社によっては家族手当などがあるところもあるので、あなたが配偶者の扶養義務があるのかないのかを会社側としては知っておきたい部分です。

あまり聞きなれない「配偶者の扶養義務」という言葉ですが、言葉の意味をよく理解して履歴書の書き方を知っておきましょう。

配偶者の扶養義務あり

収入が多く生活を支えている方が働く場合配偶者の扶養義務ありとなります。働く人の配偶者が専業主婦・主夫の場合などです。またそれ以外にも扶養される人の収入の金額により配偶者の扶養義務があるかどうかが決まります。

また共働きの家庭であっても自分の方が配偶者よりも収入が多い場合は配偶者の扶養義務ありになります。入社を希望する企業での見込み年収と現在のパートナーとの年収を比較してみてください。

配偶者の扶養義務なし

逆に扶養をうけている方は配偶者の扶養義務なしとなります。ここで間違えやすいのが、独身の方(同棲しておらず配偶者もいない)は未記入で構いません。無に〇はつけません。離婚した場合もそうです。配偶者の有無には無に〇をつけましょう。

独身の方が配偶者の扶養義務の有無の欄に無に○をつけてしまうと「配偶者はいるけれど、扶養する義務はありません。」という意味になってしまいますので気をつけてください。配偶者の扶養義務の有無の欄は何も記入せずに未記入のままにします。

パートで履歴書を書く場合や共働きだけれど配偶者の収入で生活している場合は、配偶者の扶養義務なしとなります。

配偶者の扶養義務や履歴書の書き方

いかがだったでしょうか。普段あまり馴染みのない言葉も多く少し戸惑います。しかし私たちが生活していく上で必ず関係してくる事柄でもあります。

扶養家族数や、配偶者や配偶者の扶養義務の有無が採用に影響を与えることはありません。しかし、採用後の社会保険の手続きや、企業によっては家族手当に関する項目なので正確に記入することが大切です。

一つ一つの意味をしっかり理解して違いが分かれば、自分自身の生活のためにもこの先役に立つこと間違いなしです。仕事を始めるとき、結婚してパートナーができたときに必ず関わってくる事柄を知っておいてぜひ豊かな人生のために役立ててください。

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