御香典に関する基本的なマナー
報を知り、お通夜または葬儀に参列できる場合は御香典を持参しますが、お通夜などに参列できない場合は喪主に連絡し、お悔やみの言葉を伝えたうえで欠席をお詫びします。お通夜と葬儀のどちらにも参列できない場合、後日弔問した際に手渡しするか、郵送にて御香典を届けることになります。
御香典を渡す際は、御香典袋(不祝儀袋)と呼ばれる袋に現金を入れて、会場まで持参します。一般的なお通夜や葬儀の会場には受付があるので、受付係に「この度はご愁傷さまでした」と挨拶をしながら、御香典を手渡しします。
その際、多くの受付では「芳名帳」に記帳を求められます。御香典を渡した人の住所・氏名を書くのが一般的ですが、現代では整理・分類しやすく、遺族が御香典返しのリストを作るのに便利なカード形式になっている所もあります。
御香典には新札を使ってはいけない
御香典を包む際に、新札を包んではいけません。これは「故人の死に備えてあらかじめ用意していた」と考えられて嫌われるからです。急な訃報でお通夜に駆けつける場合などで、たまたま新札しかない場合は、一度折り曲げてから袋に入れます。
また反対に、あまりにも汚れたお札も失礼にあたります。お札に書き込みなどがある場合はできるだけ消し、やむを得ない場合は受付などで一言お詫びしましょう。
お通夜や葬儀に参列できない場合
お通夜や葬儀に参列できない場合は、当然ながらその日に御香典を渡すことはできません。その場合、まずは参列できないことを電話などで喪主や遺族に伝えましょう。喪主や遺族は式の準備などで忙しく、心身ともに疲れています。そのため話は手短にします。
お通夜や葬儀への欠礼をお詫びする際、最初にお悔やみを伝えます。さらに参列できない理由を簡潔に述べましょう。その後、お通夜や葬儀に間に合うように弔電を打ったり供花を送るといいでしょう。
御香典は、後日に故人宅を弔問した際に手渡しするか、お悔やみの手紙を添えて郵送します。ただし弔問する際にはあらかじめ遺族に許可を取る必要があります。また諸事情で弔問を断る遺族も増えているため、よほど親しい間柄でなければ郵送の方が無難です。
御香典を郵送する場合のマナー
お通夜や葬儀に参列できず御香典を郵送する場合は、現金書留用の封筒に入れて郵送しなければなりません。現金書留用の封筒は大・小2サイズあります。御香典袋の厚みに合わせて選びましょう。
現金書留用の封筒は郵便局でしか扱っていません。コンビニなどでは売っていないので注意しましょう。また現金を郵送するという性質上、そのままポストに投函できません。必ず郵便局の窓口で手続きをします。大きな郵便局では24時間受け付けている所もあります。
御香典を郵送する場合も、現金を不祝儀袋に入れます。表書きや中袋の氏名なども御香典んを手渡しする場合と同じように記載します。御香典は必ず袋から出して中身を確認するからです。
御香典に添える手紙の文例
郵送の場合は御香典だけではなく、お悔やみの手紙を添えましょう。文面は「この度は謹んでお悔み申し上げます。あいにく○○のため御葬儀に参列できず大変失礼いたしました。同封のもの、わずかですが○○様のご霊前にお供えください」など簡潔なものにします。
お悔やみの手紙を添える場合は、時候の挨拶や「拝啓」「敬具」などの頭語・結語は省きます。また不幸を繰り返すとして嫌われる「またまた」「なお」といった繰り返しの言葉や、直接的な表現など「忌み言葉」は避けましょう。死因や闘病など故人のプライベートに関わることも書いてはいけません。
御香典を郵送する場合には、できるだけ早く出すのがマナーです。
御香典はいつまでに渡したらいい?
お通夜や葬儀に参列できず、後から御香典を渡す場合にはできるだけ早く渡すのがマナーです。基本的には初七日までには出すのがマナーですが、葬儀後に故人の死を知った場合などで郵送が遅れる場合には四十九日を目安にします。
とはいえ四十九日では遅すぎるという意見があります。なぜかというと御香典を受け取った遺族はお返しをしなければなりません。またお返しは四十九日までにするのが一般的なため御香典返しの品物をすでに手配していたり、場合によっては発送や手渡しも済んでいることが多いからです。
そのため御香典返しのことを考慮するなら、初七日をすぎた御香典は葬儀の10日から1か月後までに郵送するといいでしょう。四十九日を過ぎて御香典を渡す場合表書きは「御仏前」とします。
御香典の袋・封筒に関する基本的なマナー
御香典を渡す際は、御香典袋(不祝儀袋)に入れて手渡します。香典袋は宗派によって違いますが、一般的には白黒で結び切りの水引、または水引が印刷されたものを使用します。
ただし関西や北陸地方の一部など、地域によっては黄白の水引を使う所があるので、できれば事前に地域の葬儀社や年長の親族に確認するといいでしょう。
御香典袋に現金を包む際、中袋があれば中袋に現金を入れます。現金を入れる際には肖像画のある部分を下にします。またお札には裏表があるので、中袋を開けた際に肖像画の書かれていない裏面が見えるようにしましょう。
御香典袋の表には、水引の上に「御霊前」「御花料」などそれぞれの宗派に合った表書きを薄墨で書きます。水引の下には自分の名前、もしくは御香典の送り主の名前を書きます。中袋には御香典の金額と住所氏名を記載しましょう。
金額別・御香典袋の選び方
御香典袋は入れる金額に合わせたものを使用します。一般的に御香典が5,000以下であれば白黒・結び切りの水引が印刷された袋を使用し、1万円から2万円の御香典であれば実際の水引が使われた袋にします。
それ以上の金額であれば御香典袋も見栄えのあるものにします。御香典の金額が3万円から5万円程度なら、10本以上の水引が使われた袋にしましょう。さらに御香典が高額になる場合は高級和紙を使った袋にしたり、水引も豪華なものに変えます。
御香典袋は一般的に文具店やコンビニなどで購入できますが、急なお通夜などで高額の御香典を包んだ場合、金額に合った袋が見つからないことがあります。そういった場合にはいわゆる「100均」に行くと多少見栄えのする御香典袋が買えることが多いです。
相手の宗派が分からない!御香典袋はどうする?
一般的に日本の葬儀では仏式が多いですが、神道やキリスト教での葬儀も時々あります。また最近では無宗教での葬儀や、まれに新興宗教での葬儀もあります。
そういった場合、蓮の花など仏教のモチーフが印刷された御香典袋は使えません。また同様に十字架など他宗教のモチーフが印刷されているものも使えません。お通夜や葬儀に参列する場合に宗派や宗教が分からない場合には、白黒の水引だけがついたシンプルな袋を用意します。
白黒の水引だけはどの宗派や宗教でも共通です。ただし新興宗教の葬儀には当てはまらないことがあるため、服装や注意点などの参列する場合のマナーも含めて、袋についても喪主に確認するといいでしょう。
宗派を問わない表書きの書き方
御香典袋には相手の宗派や宗教に合わせて「御霊前」「御仏前」などの表書きをします。ただしこの表書き、同じ仏教でも宗派によって異なるので注意が必要です。
一般的に仏教では四十九日までは「御霊前」と書きます。しかし浄土真宗では、人は亡くなると「あの世」での旅をせず裁き設けることなく、まっすぐに仏の世界に行くと言われています。そのため浄土真宗では、亡くなってすぐのお通夜でも「御仏前」と書きます。
またキリスト教では「御花料」、神道では「御玉串料」が御香典袋に記載する一般的な表書きです。とはいえ本当に正しいのか迷うことがあるでしょう。
そういった場合、相手の宗派や宗教が分からなければ「御霊前」と書くのが無難です。ちなみに「御香典」というのは、お線香のかわりにお金を渡すといったニュアンスの表書きのため仏教でしか使えません。
御香典袋の裏には住所を書かなければいけない?
御香典袋にお金を入れる際、中袋の裏面に住所と氏名を書くようになっています。これは会計の際に、誰からいくら受け取ったかを明確にするという目的があります。
現代では個人情報を悪用されたくないという思いなどから、住所氏名を記載しない人も増えています。しかし喪主にも住所を明かさないのは失礼にあたります。
なぜなら御香典を受け取った相手にはお返しをしなければならないからです。その際に住所氏名と金額が確認できなければお返しができず、また会計などの事務作業も困難になり迷惑をかけるからです。
そのため個人情報を多数に見られたくない場合は、中袋に住所氏名を書いた紙を同数するといいでしょう。そうすれば受付で見られることがなく、喪主も住所を確認できます。
御香典の相場と失礼にならない金額
御香典の相場は、御香典を渡す人の年齢や故人との関係性によって変わります。例えば渡す側が20代で故人が祖父母にあたるなら1万円、父母や配偶者の父母なら3万円から10万円などといった相場があります。故人が友人・知人や会社関係なら5,000円から1万円程度などの目安があるので確認しましょう。
相場や関係性などで迷った場合、父母や兄弟姉妹・祖父母などの近縁でない限り、1万円を御香典として包めば失礼にあたりません。ただしあくまで一般的な例です。地域や家庭、会社など状況によって異なることがあるので、まずは年長者などに尋ねるのが無難です。
その他、会社やサークルなどの関係者が亡くなった場合には、連名で御香典を出すことがあります。その際は一人が勝手に御香典を渡すと後からもめることがあるので、事前にいくら包むか、誰がどこからお金を出すかなどを話し合っておきましょう。
御香典を出す人の年齢・関係性による相場の違い
ここで一般的な御香典の相場を紹介します。御香典は渡す人の年齢と故人との関係性によって金額が変わりますが、よほど近縁でない相手、友人・知人や親戚や会社関係に渡す御香典であれば1万円程度が無難です。
20代の御香典は故人が実父母・儀父母であれば3万円から10万円、祖父母であれば1万円、兄弟姉妹であれば3万円から5万円が相場です。これは義理の兄弟姉妹も同様です。さらに故人が叔父・叔母やいとこなど親族では3,000円から10,000円が相場です。
これが30代になると、兄弟姉妹の御香典額は変わりませんが、その他の相手に渡す金額が少し高くなります。故人が祖父母・叔父・叔母だった場合に渡す金額が1万円から3万円程度となり、父母に至っては最低額が5万円からになります。
その他・会社関係などでの御香典の相場
その他、御香典を渡す人が40代以上であれば、故人が祖父母の場合の御香典が5万円から10万円、兄弟姉妹や父母では10万円が相場になります。またその他の親族の葬儀で渡す御香典も、1万円から3万円程度と金額が大きくなります。
また会社関係・友人や知人・恩師や近所の人など、親族でなければ目安は1万円程度です。最低額は3,000円から5,000円程度が多いですが、これも年齢によって異なります。
連名での御香典はいくら包めばいいの?
会社関係やサークル関係の葬儀では御香典を連名で包むことがよくあります。その場合は御香典を渡すメンバーで話し合い、代表者や金額などを決めておきましょう。連名の場合は特に、状況によっても相場が異なるため金額は決まっていません。
連名で御香典を渡す場合は、一般的な御香典の相場を人数で割った金額を集めるか、もしくは1人1,000など負担のない金額を集め、合計で3万円など端数の出ない数字にしたうえで御香典として包む方法もあります。
連名で御香典を出す場合は、会社やサークルなど集団での慣習や規定があることがあります。そのあたりも考慮してトラブルのないようにしましょう。また連名にする人数が多くて御香典袋に名前が書ききれない場合は、「社員一同」「○○有志」などにします。
お金がない!御香典の最低金額っていくらなの?
御香典はお悔やみの気持ちを表すものですが、最低額はある程度決まっています。御香典を渡す人の年齢にもよりますが、3,000円から5,000円が最低額となっています。
これは故人が知人や友人・会社関係などの他人であった場合や、さほど近くない親族の場合です。故人が父母や祖父母などごく近しい場合は特に、相場どおりの額が必要です。一般的には知人の葬儀でも3,000以下を包むのは失礼にあたります。
ちなみに、お金がなくて御香典を包めない時には最低額の3,000円でも包むか、もしくは誰かに頼んで連名にしてもらうなどの方法があります。故人がほとんど会わなかった遠い親戚などであれば、かえって欠席した方が先方にとっても負担が少ないでしょう。
御香典の包み方・入れ方
御香典を包む際には、中袋と呼ばれる付属の白い封筒に現金を入れます。現金には表裏がありますが、中袋を開けた際にお札に書かれた金額が見えるように、肖像画の部分を下にして入れるのがマナーです。中袋はすぐに開くためのり付けはしません。
中袋に御香典を入れたら、中袋の正面に包んだ金額を明記します。袋の裏面・左下に渡す人の住所・氏名を明記します。連名の場合はそれぞれの住所・氏名を書きます。
中袋の用意ができたら、御香典を包んだ中袋を外袋に包みます。外袋が一枚に開ける場合は開いた中央に、正面を上にした中袋を置きます。次に外袋の左から右の順番で包み、下部分を包んだ後、上部分をかぶせて水引を結びます。
また一般的にお通夜・葬儀での御香典袋の表書きは薄墨で書くのがマナーです。ただし中袋だけは金額を確認する必要があるため、黒いペンで書いてもかまいません。
中袋がない御香典袋に包む際のマナー
御香典を包む際は、中袋に現金を入れるのが一般的なマナーです。しかし御香典袋によっては中袋がないものもあります。その場合は外袋に直接お金を入れてもかまいません。「不幸を繰り返さない」という意味で封筒を二重にしない人もいるため、中袋がなくても失礼には当たりません。
中袋がなく御香典を直接外袋に入れた場合は、裏面左下に住所と包んだ御香典の金額を記載します。御香典の金額は不正防止のため、あえて難しい表記の漢数字を使って記載します。記載例は後述しますので参考にしてください。
この場合も表書き・名前は薄墨で書きます。ただし金額や住所・氏名などは薄墨では読みにくいと判断した場合、黒にしてもかまいません。
御香典袋に記載する漢数字の一例
御香典袋に記載する金額は漢数字を使います。また漢数字は「壱」や「参」などの難しい表記で書くのが一般的です。これは「一」や「二」などの単純な表記ではいくらでも書き換えることができるため、不正につながる恐れがあるからです。また急いでいると読み間違いなどもあります。
そのため御香典の金額は難しい漢字で書きます。よく使われるのは壱・弐・参・伍・拾・萬(1・2・3・5・10・万)といった数字です。また「円」を圓と書くこともあります。
さらに御香典の金額を書く場合には「金○○円」と書きますが、なかには「金○○円也」と也の字をつける人もいます。これは特にマナーとして決まっていないため、特に書かなくても問題ありません。
御香典の読み方と他宗派・宗教別の表書き
御香典は「おこうでん」と読む人が多いですが、後に続く漢字が音読みであれば御は「ご」と読むという日本語のルールに則ると、「ごこうでん」と読めます。香の字が音読みの「こう」だからです。ただし読み方にはどちらの説もあり、はっきりしていないのが事実です。
また御の読み方にも例外があり、例えば「御天気」「御掃除」などは続く漢字が音読みであっても、「お」と読まれています。さらに現代では「おこうでん」という読み方が一般化しているため、おこうでん・ごこうでんのどちらの読み方でも誤りではありません。
しかし多くの人が「おこうでん」という読み方をしているため、どちらかというと「ごこうでん」よりも「おこうでん」の方が無難な読み方ではあります。
他宗派・宗教・その他の表書きの読み方
表書きによく使われる御香典または御香料(おこうりょう)は、お線香や抹香を焚くのに使ってください、という意味で渡すお金を指しています。そのため仏教でしか使えず、他宗教では他の書き方にしなくてはなりません。
それでは他の宗派で御香典にあたる言葉、御香典袋の表書きに使う言葉は何かというと、まずは宗派を選ばない「御霊前」(ごれいぜん)があります。これはどの宗派でも使えるほか、一般的な仏教徒は仏の解釈が異なる浄土真宗でも使えます。
その他、神道では「御玉串料」、キリスト教では「御花料」「御ミサ料」が表書きとしてよく使われます。御花料はキリスト教全般に使われますが、御ミサ料はカトリックで使われる表書きです。それぞれ読み方は、おたまぐしりょう・おはなりょう・おみさりょうです。
葬儀や法要でよく使う表書きの読み方
仏式のお通夜や葬儀・法要で多く使われる表書きの読み方を紹介します。御香典・御香料・御霊前の他によく使われるのは「御仏前」(ごぶつぜん)です。これは主に四十九日を過ぎた故人の法要に使われる表書きですが、浄土真宗ではお通夜から御仏前を使います。
その他、お通夜のみで使える「御悔」(おくやみ)、法要で使う「御供」(おそなえ)「御供物料」(おくもつりょう)といったものがあります。
目上の人には「御香奠」と書かなければならない?
現代ではあまり見かけませんが、時々御香典袋の表書きに「御香奠」と書いたものがあります。これも読み方は「おこうでん」または「ごこうでん」で、御香典と同じく仏式のお通夜や葬儀での表書きとして使います。
この奠(てん・でん)という字には「お供えをする」「祭りごとをする」といった意味があり、本来の意味からみても御香奠と書くのが正式でした。そのため目上の人には正式な書き方をするのがマナーという考え方から、御香奠と書くようになりました。
とはいえ漢字が難しいこともあり、今日ではあまり一般的なマナーとは言えません。そのため目上の人であっても御香典と書くことは失礼には当たりません。
御香典の渡し方
御香典はお通夜や葬儀・または法要の席で渡します。御香典を渡すタイミングは、受付があれば受付係に渡すので会場に着いてすぐの段階が多いでしょう。また葬儀の規模によっては一般参列者と関係者などに受付が分かれていることがあります。
そのため会場でスムーズに御香典を渡すためには、受付を待っている間に御香典や御香典を入れたふくさをバッグから取り出して用意しておく必要があります。受付の順番が来たら「この度はお悔やみ申し上げます」といった挨拶をします。
挨拶をした後に御香典を受付に手渡しますが、無理に何か話す必要はありません。渡し終えたら芳名帳もしくは芳名カードに記帳します。御香典が連名の場合は全員分の名前を書けないことがあるので、受付で確認してから指示に従いましょう。
受付がない場合の御香典の渡し方
受付がない場合は、遺族にお悔やみの挨拶をしてから直接手渡すか、焼香の際に祭壇にお供えします。祭壇にお供えする場合は焼香の直前に、御香典袋の表書きは自分が読める向きにして祭壇に置きます。
御香典を渡す時の言葉遣いや挨拶は?
受付などで御香典を渡す際、「この度はご愁傷さまでした」「お悔やみ申し上げます」といった挨拶が一般的です。挨拶の際には声を潜めて語尾を濁すように言うといいでしょう。特に地声の大きい人は、普通に話すだけでも元気よく聞こえてしまうからです。
また御香典を渡す際にも、忌み言葉の類は使ってはいけません。特に「ご冥福」「成仏」「天国」といった一般的な会話で使うような言葉にも、宗教用語が含まれています。できれば事前に無難な言葉使いを覚えておきましょう。
御香典を渡す際にうっかり他宗教の言葉を使わないために、どの宗教や宗派にも使える挨拶を紹介します。「この度は大変驚きました。謹んで哀悼申し上げます」これには特定の用語が含まれていません。
御香典にふくさは必要なの?
御香典をふくさに包んで渡す場合、ふくさの色は紫やグレーなど寒色系のものを選びます。特に紫のふくさは慶弔どちらにも使えるので便利です。また御香典の金額によって包むふくさの種類が異なります。金額が3万円以上では台付きのふくさを使うようにします。
不祝儀にふくさを使う場合は、ふくさの開きが左側にくるように御香典袋を包みます。御香典袋の表書きが見えるように包み、渡す際には受付で挨拶した後にふくさを開き、表書きが相手に読めるようにし、両手で手渡します。
とはいえ、御香典を渡すのにふくさは必ずしも必要ではありません。ふくさの種類や色、作法は複雑なので慣れない席で失敗するよりも、ふくさがない方が安心できるでしょう。
会社関係の葬儀で御香典を渡す場合
会社関係者や、取引先の社長の葬儀など、仕事として葬儀やお通夜に参列することがあります。そういった場合に御香典を渡す場合は、事前に直属の上司に相談します。特に相手先の企業の葬儀などに、自分で勝手に判断して参列するとトラブルになるからです。
相談したうえで葬儀やお通夜に参列するか、御香典をいくら包むか、または郵送などにするかを決めましょう。御香典を渡す場合の相場は会社によって左右されます。
また会社関係で御香典をいただいた場合は、御香典の送り主が会社であるか、連名か故人かを確認します。連名または個人名だった場合、個人のポケットマネーや有志の積み立て金などで御香典がまかなわれていることが多いです。
そのため個人や連名であれば、御香典のお返しが必要になります。しかし送り主が会社名になっていれば会社の経費を御香典にしていることがあります。そういった場合はお返しは必要ありません。
御香典を辞退された場合にはどうするか
家族葬などで身内だけの葬儀をした場合など、何らかの事情で遺族から御香典をお断りされるケースもあります。そういった場合は無理に御香典を渡してはいけません。
御香典を辞退される理由の一つに、経済的なものがあげられるからです。御香典を受け取れば御返しの品を用意するのが負担になることがあります。経済的に困っている家庭ではいただいた御香典を葬儀費用に充て、その後は余裕がなくなってしまう場合もあります。
全てのケースが経済的理由ではありませんが、もし御香典を辞退されたら、事情があるのだとおもって詳しくは訊かず、遺族の意向に従いましょう。そのうえでお供えや弔問をしてもいい場合は心を込めて対応します。
御香典のお礼の仕方
御香典をいただいた相手には、お礼としてお返しの品物を送らなければいけません。「香典返し」と呼ばれるものです。香典返しは御香典としていただいた金額の半額から、3分の1相当の品物を返礼品として贈るのが一般的です。
返礼品として選ばれるのは、お茶やお菓子などの日持ちのする食べ物、タオルやハンカチなどの消耗品の他、「悲しみを洗い流す」といった意味のある石鹸や洗濯用洗剤などがよく選ばれます。またいただいた御香典の金額によっても品物は変わります。
御香典のお返しは地域などによっても変わりますが、「当日返し」といって御香典をいただいたその場で返礼品を渡す場合と、四十九日後に法要が無事に済んだお礼を兼ねて行う場合があります。また状況や慣習によって相手の家を直接訪ねてお礼する場合と、返礼品を郵送する場合があります。
御香典のお返しに送ってはいけないものはあるか?
御香典のお返しとして選んではいけないものがあります。まず御香典をいただくのはお通夜や葬儀などの不祝儀です。そのため悲しみが後まで残るという意味を避け、基本的には食べ物や日用品などの「消えもの」を贈ります。
そのため後に残る置物や食器などはいけません。また四十九日前に贈る場合は、肉や魚などの「なまぐさもの」も避けます。さらに神道では特に、お祝い事を連想させる酒類や昆布などの海藻類も贈ってはいけません。
また金額が露骨にわかってしまう商品券などの金券類も避けましょう。ただし金券は他の品物と一緒にして贈る分には問題ないとも言われています。
お返しとお礼はいつまでにしたらいい?
御香典のお返しは本来ならば、四十九日の法要が終わった後に忌明けのお礼と報告を兼ねて行います。ただし現代、とくに関東地方などでは葬儀やお通夜で御香典と引きかえに返礼品を手渡す「当日返し」が主流です。
いっぽう関西地方では、これまでの慣習どおりに四十九日後に御香典のお礼をする「後返し」という方法が多いと言われています。御香典のお返しは地域や家庭の慣習に従ったほうが無難でしょう。
また御香典のお返しをいつまでにするかは、当日もしくは四十九日を目安に考えます。その他に御香典のお礼をするタイミングとしては、忌引明けに会社などに行く初七日過ぎ、もしくは故人の納骨を済ませたタイミングなどがあります。
高額な御香典をいただいた場合はどうする?
一般的に御香典の返礼品の相場は頂いた金額の半額から3分の1ですが、親族などから高額な御香典をいただくことがあります。その場合はお返ししなくてもかまいません。なぜなら高額な御香典は、遺族を援助する目的で渡していることがあるからです。
また御香典の額があまりにも高額だと、それに見合った返礼品が見つからないことが多々あります。お菓子やお茶、消耗品では金額が知れているからです。
もし気になるようなら、カタログギフトを贈るという方法があります。三越や高島屋など大きな百貨店では5万円や10万円相当の品物が選べるカタログギフトを用意しています。その他、ギフト担当の店員と相談して品物を選ぶといいでしょう。
御香典を当日持参できなかった場合は?
御香典は基本的にお通夜や葬儀、もしくは法要に参列する際に持参します。もし何らかの事情で欠席する場合は事前に連絡し、後日持参できなければ郵送で御香典を贈りましょう。その際には手紙をつけるのを忘れてはいけません。
また御香典の金額は、渡す人の年齢と故人との関係性によって決まります。その他には地域や家庭、状況によっても相場が変わってくるため、迷ったら年長者などに相談しましょう。会社などで連名にする際には特に上司などに連絡・相談します。
その他、御香典袋の表書きも注意しましょう。御香典だけではなく葬儀のマナーを確かめるためにも、事前に相手の宗派や宗教を確認しておくことは大切です。
事前に確認しておけば何も不安になることはありません。大切なのは故人を悼み、遺族を思いやる気持ちです。