目上の人への「ご苦労様」はなぜ間違いなのか
日本人は日本語をもちろん使う人種ではありますが、この日本語はかなりいろんな意味で難易度が高くちょっとした認識の違いや言葉の不足によって仲がこじれてしまうことすらあります。
特に困るのが、こちらが善意の気持ちを込めていった言葉がなぜか皮肉といったマイナスイメージとなってしまったときです。本人がわからしたらそんな気持ちは全くないので、非常に困惑してしまいます。
このようなトラブルに頻繁になる言葉が「ご苦労様」です。この言葉を目上の人に使うのは悪い印象となってしまうことが多々あります。その理由はいったい何なのでしょうか。
目下の人に使うものとなっている
このご苦労様という言葉は目上の人が目下の人に使うものという認識に現代日本がなっているのが実状です。意味は「ご苦労様」と「お疲れ様でした」はほとんど同じなのですが、現代人の認識として目上の人がこの「ご苦労様」という言葉を使われると失礼だと感じてしまうので使ってはいけないと考えましょう。
ご苦労様の嘘について
しかし、昔の広辞苑や辞書などを調べてみると「目上の人に使ってはいけない」とか「年上が年下にかける言葉」といった書き込みはほとんどされておらず、身分や立場を考えることなく当たり前のように使える言葉という認識でした。つまり、現代日本のこのような「しばり」のような状況は色々とおかしいのが実状といえるでしょう。
それがなぜか目上の人に対して使うのは失礼という認識になってしまった言葉となってしまったので、この流れを受け入れるしかありません。辞書的な意味として問題なく用いることができる言葉であったとしても、マイナスイメージがくっついてしまうような言葉ならば使わない方がいいです。
どんなにねぎらう意味を持たせて使う言葉であっても、悪印象を対象となる相手に与えるのなら使うことはできないと考えて行動する必要があります。
失礼と感じる人がいるなら使わないこと
「ご苦労様でした」という言葉がねぎらいの意味を持たせて使う言葉であるという認識はほとんどの方が理解しておりますし、わかっていることではありますが目上の人が使われると「失礼だ」と感じる風潮ができあがっているのなら、その地雷をあえて踏む必要はありませんので封印した方が安全でしょう。
相手を攻撃する意味で「ご苦労様」を使ったのならば問題ありませんが、ねぎらうつもりなのに逆効果になってしまうのならば使わない方がいいと考えましょう。
この「ご苦労様でした」と言われた目上の人すべてがいやがっている訳ではないでしょうが、それを確認する術は言葉を発する側の人間には直接確認する以外ありませんので、ちょっとでも危険な要素があるのならば他の言葉に置き換えるようにしてください。
目上の人への「ご苦労様」の代わりの言葉
目上の人に「ご苦労様」と使うとマイナスイメージになってしまうのならば、かわりの言葉を用いることが大切になります。いったいどのような言葉で代用できるのか確認して行きましょう。
「お疲れ様でした」で代用する
「ご苦労様でした」を目上の人に使えないのならば「お疲れ様でした」という言葉をねぎらいの意味を込めて目上の人に使いましょう。意味はほとんど同じなのですが、この「お疲れ様でした」の方は目上の人たちもすんなり受け入れられる言葉になっているので、悪い印象を与えにくい言葉となっています。
社会人になるとこの「お疲れ様です」とか「お疲れ様でした」という言葉を使う頻度が急速に上昇するので、問題なく使うことができるでしょう。「ご苦労様でした」という言葉が出てきそうになったのなら、グッとこらえて「お疲れ様です」か「お疲れ様でした」と目上の人に使うようにすればほぼ安心できます。
しかし、「確実」に安心できるわけではなく「ほぼ」安心できるだけなので、もう少し考慮する必要がでてしまうでしょう。
「お疲れ様でした」も受け入れない目上の人もいる
先ほどの「確実に安心できるわけではなくほぼ安心できるだけ」という言葉は、「お疲れ様です」という言葉を言われるとカチンときてしまう目上の人がいるからです。ここまでくると訳がわからないと思ってしまう方が出てきてしまうのも仕方ないでしょう。
「ご苦労様でした」という言葉を目上の人が使われると受け入れられないと感じる人が多いのは、現代日本の風潮ではありますが、この「お疲れ様です」を受け入れられない目上の人も少数ながら存在しています。
某テレビ番組でも話題に
この「お疲れ様」という言葉が目上の人に対して失礼に当たると発言して大きな波紋を呼んだのが、超有名人のタモリさんです。とあるテレビ番組においてタモリさんが「お疲れ様というのは、元来、目上の者が目下の者にいう言葉」と発言したことでこのお話もヒートアップしました。
この話がヒートアップして日本語教育研究者の意見なども登場して話題となったのですが、それらの意見を統括すると「ご苦労様」も「お疲れ様」も目上の人が使うのが伝統的で、目下の人が目上の人に使うのは失礼となってしまうとなります。
どうやって目上の人をねぎらうのか
このように問題ないと言われているはずの「お疲れ様です」というワードが一部の目上の人から見ると不愉快に感じてしまうという状態なのですが、この「お疲れ様」も「ご苦労様」も使えないのならばねぎらいの言葉を目下の人が発することが非常に困難になります。
実際にこの「お疲れ様」という言葉を否定していた人は目下の人が目上の人に使う場合には「ありがとうございました」にするべきと記載しておりましたが、はっきり言ってこの「ありがとうございました」は感謝の言葉の一種なので使う場面は非常に限られます。
つまり、状況に合った使い分けを考えながらしないといけないということになってしまいます。先に帰る時には「お疲れ様でした」ではなく「お先に失礼します」となりますし、感謝を使える場面ならば「ありがとうございました」となります。
「お疲れ様」や「ご苦労様」は便利な言葉
「お疲れ様」や「ご苦労様」という言葉は非常に便利であり、多方面で使える言葉なのですが、これを封印されると語彙力が急激に求められるようになります。実際に外出や出張から帰ってきた目上の人をねぎらうときには高確率でこの「お疲れ様でした」という言葉が出てきてしまいます。この言葉が使えないと対応する力が否応なしに試されるでしょう。
たとえば、イライラしながら無言で帰ってきた場合には無難に「おはようございいます」といった挨拶の言葉を使うことになるでしょうし、「色々あって疲れた」と会話に出てきたのなら「大変でしたね」といたわることになるなど、そのときの状況に合わせて言葉を使い分ける必要が出てきます。
メールでの目上の人への「ご苦労様」の使い方
基本的に「ご苦労様」は目上の人には使えないと考えてください。これはメールであっても同じで「ご苦労様」という言葉が出てきそうになったのなら、すべて「お疲れ様」に置き換えましょう。あくまでご苦労様は目上の人が目下の人をねぎらうときに使うと考えましょう。
目上の人への言葉遣いは難しい
基本的に「ご苦労様」という言葉は目上の人には使えないので、すべて「お疲れ様」に代用するのがほとんど正解となっているのですが、この「お疲れ様」という言葉すら毛嫌いする人がいるので、「ご苦労様」も「お疲れ様」も使えない状態での目上の人との会話はかなり難易度が高いです。
「ご苦労様」のようなねぎらいの言葉は使い勝手が非常に良いので封印されてしまうことで返答に困ってしまうシーンが劇的に増えます。何も言えないくらいならば「お疲れ様です」の一言くらい言えないと顰蹙を買ってしまう恐れもありますので、語彙力を高めて対応するしかないでしょう。
便利すぎる言葉で社会人になった人ならばすぐに身につけられる言葉なのですが、頼りすぎるのは危険である言葉とも考えられます。