事業所を開設するために必要な手続きとは?
最低資本金制度の廃止に伴い事業所の開設が増えてきましたが、手続きの煩雑さは昔も今も変わりません。
事業所を開設することは社会的な責任を負うことであり、法律は必要な手続きを義務付けています。
手続きの煩雑さが面倒で法人格にしない事業家はいますが、法人格を選択する人が大半です。法人格にする理由には社会的な信用があり、税制面でも法人格の方が有利です。
事業所の開設に必要な手続きは場合によって異なる
事業所の開設に必要な手続きは事業内容によって異なり、書類の提出先も異なります。書類の提出先がわからなければ右往左往します。
事業内容によっては許認可が必要で、許認可を取るのを怠ると法律で罰せられます。許認可が必要な事業の一部を紹介しますが、認可の手続きは関係先でわかります。
・有料駐車場業
・旅行業
・ペットショップ
・警備業
・薬局・ドラッグストア
事業所開設の際に必ず提出しなくてはいけない8点の書類
事業所を開設するときの手続きは事業内容によって異なります。以下では一般的な手続き内容を紹介します。
手続きをするときは煩雑さが伴いますが、事業所を開設する人は根気強く手続きを進めなければいけません。
事業所開設の手続きに不備があれば、最悪の場合は事業停止になり関係者に迷惑をかけます。事業所開設の手続きがまったくわからない人は、税理士に相談することをおすすめします。
事業所開設に必要な書類1:労働保険関係成立届
労働保険関係成立届は、従業員を雇用し労働保険に加入するときに必要になります。事業所開設後一人も雇用しなければ提出義務はありませんが、1人でも雇用する場合は必ず提出しなければいけません。
労働保険関係成立届の提出先は労働基準監督署で、紙で申請する場合は専用の用紙が必要です。専用の用紙は所轄の労働基準監督署か、ハローワークに請求してください。
事業所開設に必要な書類2:雇用保険適用事業所設置届
事業所開設には、雇用保険適用事業所設置届の手続きが必要で、管轄はハローワークです。この手続きは労働保険関係成立届の提出後です。専用の用紙はインターネットからダウンロードできます。
雇用保険適用事業所設置届の手続きは電子申請でも可能ですが、インターネットができるパソコンが必要です。
基本的に雇用保険は労働者を1人でも雇えば加入義務があります。加入の詳しい条件は以下です。
(1) 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。期間の定めがなく雇用される場合雇用期間が31日以上である場合雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 ( 注 )[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。](2)1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
事業所開設に必要な書類3:労働保険概算保険料申告書
事業所開設には労働保険概算保険料申告書の手続きが必要で、提出時期は保険関係が成立した日から50日以内です。提出先は以下のいずれかです。
・所轄の労働基準監督署
・都道府県労働局
・日本銀行(本店、支店、代理店および歳入代理店)
労働保険概算保険料申告書も電子申請ができるので、忙しい人は助かるでしょう。電子申請の受付時間は24時間365日なので、都合のよい時間帯に手続きができます。
事業所開設に必要な書類4:法人設立届出書
法人設立届出書 | 項目内容 | 項目内容 |
---|---|---|
1 | 届出先 | 資本金または出資金の額 |
2 | 法人名 | 消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日 |
3 | 本店又は主たる事務所の所在地 | 事業の目的 |
4 | 納税地 | 設立の形態 |
5 | 代表者氏名 | 事業開始(見込み)年月日 |
6 | 代表者住所 | 「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無 |
7 | 設立年月日 | 関与税理士 |
8 | 事業年度 | 添付書類等 |
事業所開設には法人設立届出書の手続きが必要で、提出期限は会社設立から2ヶ月以内です。法人設立届出書は、定款と謄本を参考にすれば空白を埋めやすいです。
法人設立届出書の提出先は納税地の税務署で、郵送も受け付けています。法人設立届出書は納税地の税務署だけではなく、以下の関係先にも提出しなければいけません。
・都道府県税事務所の法人事業税課もしくは法人住民税課
・市町村の法人住民税担当部署
事業所開設に必要な書類5:法人税の青色申告の承認申請書
事業所開設には法人税の青色申告の承認申請書の手続きが必要で、提出先は所轄の税務署です。申告書には青色申告と白色申告があり、一般的に法人は青色申告を選択します。
青色申告を選択するときは、法人税の青色申告の承認申請書を提出しなければいけません。法人税の青色申告の承認申請書の記入はさほど難しくなく、迷うことはないでしょう。
事業所開設に必要な書類6:給与支払事務所等の開設届出書
事業所開設には給与支払事務所等の開設届出書の手続きが必要で、提出期限は事業所の開設から1ヶ月以内です。提出先は所轄の税務署で郵送も受け付けています。
給与支払事務所等の開設届出書を提出する目的には、源泉徴収制度があります。源泉徴収とは雇用主が従業員に代わって国に税金を納める制度で、最近は在宅ワーカーも源泉徴収されています。
事業所開設に必要な書類7:棚卸資産の評価方法の届出書
事業所開設には棚卸資産の評価方法の届出書の手続きが必要で、期限は第1期の法人税の確定申告書の提出期限までです。
棚卸資産の評価方法の届出書を提出する目的には、評価方法の確定があります。
棚卸し作業で利益操作することは可能ですが、事業所は利益操作しないことを届出書で伝えなくてはいけません。棚卸資産の評価方法は大きく分けて、「原価法」と「低価法」に分類できます。
事業所開設に必要な書類8:減価償却資産の償却方法の届出書
事業所開設には減価償却資産の償却方法の届出書の手続きが必要で、確定申告書の提出期限までに済ますようにしましょう。
償却方法の届出書を提出する目的には、減価償却資産の償却方法を確定があります。
建物・機械・車などが減価償却資産に該当しますが、経費にするときは分割でしなくてはいけません。また購入時点では経費にすることができません。
他の事業所がない都道府県や市町村に開設する場合
本店とは別に他の地域に事業所を開設することはあるでしょう。以下ではその際の手続き方法を紹介します。なおモデルは、他の事業所がない都道府県や市町村とします。この手続き方法は日本国内のみ通用し、海外支店では通用しません。
法人設立届出書を自治体に提出
他の都道府県や市町村に新たな事業所を開設する場合は、法人設立届出書を所轄の自治体に提出しなければいけません。
税金も所轄の関係機関に支払う必要がありますが、法人税に関しては本店の所轄の関係機関のみです。法人税は国に納める税金なので本店でまとめて処理できますが、以下の税金は支店の所轄の関係先に支払います。
・法人都道府県民税および法人事業税
・法人市町村民税
定款と登記簿謄本の写しを添付する必要がある
他の都道府県や市町村に新たな事業所を開設する場合は、定款と登記簿謄本の写しを添付しなければいけません。
写しとはコピーではなく公的な機関から発行される書類で、原本と相違ない旨の認証文言が不可欠です。認証文言がない書類はコピーとして扱われ、却下される可能性が高いです。
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事務処理機能のない事業所を開設する場合
事務処理機能のない事業所の定義を出張所とします。この場合は独立した事務所としての手続きは不要ですが、無条件ではありません。以下では、事務処理機能のない事業所を開設する方法を紹介します。
雇用保険事業所非該当承認申請書をハローワークに提出
事務処理機能のない事業所を開設する場合は、管轄するハローワークに事業所非該当承認申請書を提出しなければいけません。しかし許可をもらう場合は、以下の条件が必要です。
以下の条件を満たしていない場合は、提出しても却下される可能性があります。自ら判断できない場合はハローワークで相談することをおすすめしますが、後でトラブルにならないように正確な情報を伝えなければいけません。
(1)それぞれの事業が継続事業であること(2)指定事業と被一括事業の事業主が同じであること(3)それぞれの事業について成立している保険関係が同一であること(4)それぞれの事業が労災保険料率による事業の種類が同じであること
事業所の開設には必要な書類と必要な手続きを忘れずに!
事業所を開設する金銭的な敷居はだいぶ低くなりましたが、手続きの煩雑さは昔も今も変わりないのが実情です。しかし定められた法律は守らなければいけないので、手続きに抜けがないように何度もチェックしてください。
必要な書類の手続きを怠れば最悪業務ができなくなる可能性があるので、慎重に手続きを進めましょう。自力で手続きをするのが難しい場合は、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。