報告連絡相談はビジネスの基本
ビジネスでは「ホウレンソウ」が大切だ、といわれます。「ホウレンソウ」とは、職場で風通しのよいコミュニケーションを目指すために大切な「報告」「連絡」「相談」の頭の文字をとって並べた略語です。
上司・部下・同僚の間で、報告や連絡、相談を活発に行うことで、情報共有も行え、1人の考えで間違った方向に突き進んでしまうことも防げます。それぞれのコミュニケーション方法にはどのような違いがあるか、ご存じでしょうか。
意外と分からない「報告」と「連絡」の違い
「報告」と「連絡」の違いを聞かれたときに、「違いがあるとは認識しているものの、その違いを明確に説明することができない」という人は多いでしょう。
「報・連・相(ホウレンソウ)」に含まれる、「報告」と「連絡」は、意味も使用する目的に違いがあります。なんとなく違いを認識しているだけではなく、他人にも説明できるようにはっきりと違いを理解しておきましょう。
報告と連絡の違いは?
「報告」と「連絡」の違いをしっかりと認識するために、ここではそれぞれの言葉の意味と、使用する際の目的の違いをご紹介します。
意味を理解したうえで、実際に使う局面での「報告」と「連絡」の違いと使い分けについても覚えておきましょう。
報告とは
「報告」には、「告げ知らせる」という意味があります。ビジネスの中では特に、「任務・調査などを行った状況や結果について述べること」という意味で使われます。
ビジネスで必要とされる「報告」とは、現地点までの状況を把握して、包み隠さず伝えることを指しています。
「包み隠さず」ということがポイントで、自分にとって都合の悪いことや、自分の判断で「不要」と考えたことを省いてしまうと、正しい「報告」になりません。
連絡とは
「連絡」には、「別々のものの間のつながりあい」「つながりをつけること」という意味があります。一般的にビジネスなどで使われている「連絡」は、「発生した事実や予定などを関係各位に知らせること」という意味で使われています。
「報告」も「連絡」も「他者に知らせる」という点では似ていますが、「連絡」の目的が「事実の周知」だという点が違います。「連絡」では、意見や感情は含めず、事実のみが告げられます。
報告連絡相談の違いと使い分け
「報告」と「連絡」はどちらも「他者に告げること」を意味していますが、告げる内容と相手に違いがあります。
「報告」は、限られた特定の相手に対しての行為で、相手は上司・部下など狭い範囲の関係者になります。「報告」と違い「連絡」は多数を対象とする場合もあり、予定やスケジュール、事務通知などを周知させる目的で行います。
仕事の結果など重要なことは「報告」し、情報共有が必要な事務事項は「連絡」します。
報告する際の留意点7つ
仕事などの重要事項を「報告」しなければならないとき、何か注意しておかなければならないことはあるのでしょうか。
ここでは、「報告」する際に留意すべき事項を7つご紹介します。
- 直接報告する
- 結論を先に簡潔に報告する
- 直属の上司に一番に報告
- 事実と意見を分ける
- 頻繁に報告する
- 書面に残す
- 重要な報告はなるべく早く
報告する際の留意点1:直接報告する
ビジネスにおいて、「報告」が必要とされる場合は、報告相手も明確に決まっています。例えば、会社の人事上の報告であれば職制上の上司に、プロジェクトの報告であればプロジェクトの上司にといった形になります。
報告相手が不在の場合でも、他人を介して報告することはルール違反です。報告したいときに上司が不在な場合などは、メールなどで報告を入れておき、口頭でのフォローを誰かに頼む形にします。
報告する際の留意点2:結論を先に簡潔に報告する
報告は、忙しい相手に対して行うことも多いので、結論を見失わないためにも、最初に結論を告げるようにします。メールの場合も、まず結論を記述し、詳細内容は結論の続きとして記述します。
主文と理由で構成される裁判の判決文をイメージすると、良い報告書の形式になります。「結論」「原因や結論を導き出した経緯など」という順番で報告を行いましょう。
報告する際の留意点3:直属の上司に一番に報告
「報告」を行う相手は、必ず直属の上司にしましょう。上司が不在で、かつ、報告に急を要する場合は、直属の上司を飛び越え、さらに上の上司に報告することもありますが、その際も、直属の上司にメールなどで前もって報告した跡を残しておくようにしましょう。
直属の上司を飛び越えて報告したり、直属の上司ではない上司や関係者に報告することは、報告に関するルールを破ることにつながります。
報告する際の留意点4:事実と意見を分ける
「報告」は「連絡」と違い、事実関係だけでなく、報告者の意見や感情も含めて伝えることができます。しかし、事実と意見を一緒に伝えると、報告を受けた相手としては事実関係の把握が難しくなります。
報告の際は、事実は事実として伝え、自分の所見は「わたしの思うところ」とか「わたしは~と受け取りました」などの言葉を加えて伝えるようにしましょう。
報告する際の留意点5:頻繁に報告する
「報告」とは、必ずしも報告書にまとめ、かしこまって伝えるという儀式を伴うものではありません。大切だと思われる事象が発生したら、できる限り速やかに「報告」を行うことが理想的です。
ただし、速やかに報告するというのと、思い付きで報告するというのは違います。きちんと事実関係を把握して、自分の考えをまとえた上で上司とコミュニケーションをとりましょう。
報告する際の留意点6:書面に残す
「報告」は、適宜迅速に行うべきもので、必ずしも報告書を携えてするものではありません。トラブルが発生したときなど、緊急を要する場合は、まず「報告」をして、上司の指示を仰ぎ、トラブルに対処する必要があります。
しかし、トラブルなどの緊急事態が収まった段階で、トラブルの内容や、トラブル発生時に行った報告の内容、対処などをまとめて、「報告書」という書面を残しておくことも必要です。
報告する際の留意点7:重要な報告はなるべく早く
トラブルが発生したときなど、内容を見極めてから報告をあげようとしているうちに、事態がどんどん悪化していくということが起こりがちです。
報告のタイミングを間違うことのないよう、報告すべきことの発生に気づいた段階で第一報としての「報告」だけでもあげるようにしましょう。一報をあげて、上司の指示を仰ぐことも、こちらからの詳細な報告を待ってもらうこともできます。
連絡する際の留意点8つ
仕事などで関係者の意識を統一したり、情報共有をするために「連絡」しなければならないとき、何か注意しておかなければならないことはあるのでしょうか。
ここでは、「連絡」する際に留意すべき事項を8つご紹介します。
- はっきり簡潔に伝える
- なるべく早く連絡する
- 連絡する順番を考慮する
- 関係者全員に伝える
- 直接伝える
- 期間的余裕をもって連絡する
- わかりやすい言葉で伝える
- 連絡内容と連絡した関係者のリストを残す
連絡する際の留意点1:はっきり簡潔に伝える
「連絡」は相手に情報を正確に伝えることが大切です。報告と違い、伝える情報は、「事実」のみが必要で話者の感情や意見は不要です。
連絡する必要がある場合は、事実をしっかりと把握し、事実のみを伝えることを心がけましょう。事実を伝える際の言葉の選択にも配慮が必要です。
難しい言葉や表現は排除し、誰にでも理解できる言葉と表現を用いて、事実内容が誤解されることなく伝わるようにします。
連絡する際の留意点2:なるべく早く連絡する
連絡しなければならない事項が手元にあるときに、「まだ締め切りが遠いから」とか、「連絡が早すぎると、相手がいざというときまでに連絡内容を忘れてしまうかもしれないから」などの理由で、なかなか伝えない人も多く見受けられます。
連絡を出し渋っていると、結果的に連絡が遅くて相手や自分が窮地に陥ることも少なくありません。手元にある連絡が必要な情報は迅速に伝えるようにしましょう。
連絡する際の留意点3:連絡する順番を考慮する
連絡内容が複数ある場合や、連絡相手が複数ある場合など、連絡する順番を考慮しましょう。報告と違い、連絡の場合は相手が多数の場合も多く、メールの一斉送信が便利です。しかし、中には一斉に全員が知るべきではない情報もあります。
例えば、人事情報の場合は、関係者に多段階で通知するのが一般的です。情報の順番についても、通知順に指定がある場合などは、連絡に順番をつけ、順次連絡するようにします。
連絡する際の留意点4:関係者全員に伝える
連絡相手が複数ある場合、連絡の順番を考慮しなければいけない場合でも、最終的な連絡期限までには、関係者全員に連絡が完了しなければなりません。
報告と違い、連絡は複数の相手を対象とすることが多いので、連絡内容と連絡の対象者をリストアップし、確実に連絡が網羅できているか確認するようにしましょう。
連絡する際の留意点5:直接伝える
連絡が必要な場合は、人づてにすることなく、自ら伝えることが必要です。直接口頭で伝えることがベストですが、報告と違い相手が多い場合は、連絡書面をメール送付したり、回覧するという手段でも構いません。
相手に連絡が届いたことが不確かなメール一斉送信などの場合は、回答メールを促して確認したり、複数回連絡メールを配信するなどの工夫も必要です。
連絡する際の留意点6:期間的余裕をもって連絡する
連絡の多くは、「〇月〇日までに周知」といった期限があります。中には「〇月〇日に〇〇を実施」という通知もあり、その日付を忘れられないよう、わざと期日直前に連絡しようと考える人もいます。
しかし、期日直前の連絡では、都合をつけられない場合もあります。「失念」に対する配慮は別途行い、連絡自体は迅速にしましょう。期日を失念される懸念があるのなら、期日直前にリマインダーとして再度連絡をすればよいでしょう。
連絡する際の留意点7:わかりやすい言葉で伝える
連絡は報告と違い、事実をそのまま伝えることが大切です。相手が連絡内容を理解できなかったり、誤解して受け止めてしまうようでは目的が達せられません。
相手にきちんと伝えるためには、誰でも理解できる平易な言葉を使うことが大切です。伝わりにくい内容の場合は、多段階で説明するなど、誤解が入り込むことがないよう細部まで注意しましょう。
連絡する際の留意点8:連絡内容と連絡した関係者のリストを残す
報告と違い連絡では対象が多数に及ぶため、連絡漏れが発生しないよう、連絡すべき内容と、連絡すべき関係者をリストアップし、連絡したことをチェックしておきましょう。連絡漏れが発覚した場合の確証としても使えます。
メールで報告連絡をしても良い?
ビジネスで報告や連絡が必要な場合に、メールを利用することが増えていますが、報告や連絡は対面でなくても許されるのでしょうか。
ここでは、報告と連絡をメールで行うことに対する許容範囲の違いについてご紹介します。
メールで報告連絡をしても良いケース
報告や連絡にメールを活用することは、基本的に問題ありません。どちらもメールが相手に届いていること、相手に見てもらえていることまでを確認するのがベストという点で違いはありません。
詳細内容はメールに記載して送っておき、電話や対面で「報告や連絡をメールしたので、内容を確認してほしい」ということを伝えましょう。
メールで報告連絡しない方が良いケース
報告や連絡の内容によっては、メール送信後に口頭によるフォローが必要な場合があります。流出が懸念される事項についても、メール利用は一考が必要です。緊急性の高い報告や連絡は口頭などの直接的な方法で行いましょう。
ミスなどの対面で言いにくい報告をメールで済ますのは好ましくありません。きちんと対面で報告すべき事項なので、メール報告は「一報」か「報告書」の扱いにしましょう。
メールで報告連絡をする際の留意点3つ
メールで報告や連絡を行う際に、気を付けるべきポイントをご存じでしょうか。対面などの口頭報告や連絡と違い、メールならではの留意点もあります。
報告と連絡の目的の違いを踏まえ、各留意点を考慮して、報告や連絡を完結させましょう。
メールで報告連絡をする際の留意点1:内容を簡潔に
報告や連絡の内容を簡潔に伝えるというポイントは口頭の場合と違いありませんが、メールの場合はさらに言葉の修飾などを極力排除し、シンプルに仕上げましょう。
長文のメールは斜め読みされやすく、重要事項を読み落とされがちです。口頭の場合と違い、重要ポイントを強調するのが難しいので、文章を短くし、大切な内容に凝縮した文書にしましょう。
メールで報告連絡をする際の留意点2:受信確認を必ずする
メール送信した場合、口頭で伝えるときと違い、相手の反応がわかりません。メールの場合はシステムエラーなど不測の事態で相手に到達していない可能性さえあります。
メールが届いているかの確認と、相手にメール閲覧を促す意味も込めて、受信確認をしましょう。電話など口頭で確認するのがベストですが、受信確認メールを返信してもらうという方法でも目的は達せられます。
メールで報告連絡をする際の留意点3:送信先に注意する
会社で扱う情報はたとえ機密情報でなくても、社外に漏らしてはならない情報です。社内であっても、関係者以外に知られることを避けなければならない情報もたくさんあります。
メールを利用する際の一番のリスクは誤送信です。報告や連絡の手段としてメールを使う場合は、口頭の場合と違い、相手の確認を二重三重に行うようにしましょう。
報告と連絡の違いを知ってビジネスを円滑に進めよう
報告と連絡の位置づけの違いについて、理解していただけたでしょうか。ビジネス社会では、毎日が報告と連絡で成り立っているといえるほど、頻繁に行われているコミュニケーションです。
報告と連絡の違いを理解し、意識したうえで、「報告」が的確なのか、「連絡」が的確なのか判断し、円滑なコミュニケーションをとれるようにしましょう。