絵馬とは
絵馬は寺社へ奉納する小さな木の板
「絵馬」は、神社や寺院で売られている小さな木の板で、家型など様々な形のものがあり、ひもがついています。願いごとや氏名を書き、寺社内の絵馬所にぶら下げて奉納できるようになっています。かつては生きた馬を奉納していましたが、今は「絵馬」で代用しています。
地方、寺社で形がちがう絵馬
一般的な絵馬は、関東の主流で家型のものでしょう。上部が三角で、五角形絵馬と言います。昔は、小さな屋根が付いていました。関西では四角形絵馬が多いです。京都では横長の絵馬に枠をつけた額縁付き絵馬、奈良では黒い枠で塗り囲んである絵馬も多く見られます。
各地にある珍しい絵馬
白狐絵馬
京都の伏見稲荷大社では、信仰の対象である白狐の絵馬があります。縦長の逆三角形の絵馬で、表が細い目の白いきつねの顔だけ書かれています。参拝者は、このきつねの顔に自由に絵を書き入れて奉納しています。
和同開珎絵馬
埼玉の聖神社の絵馬は、和同開珎の形です。お金儲けの神様と地元で言われており、銭神様の愛称で親しまれています。絵馬には、切なるお金にまつわる様々な願いごとが書かれているのは、言うまでもありません。
おっぱい絵馬
愛知の龍音寺にある絵馬です。龍音寺の本尊である千手観音は、「間々乳観音」(ままちちかんのん)と呼ばれており、授乳の願いが叶うと言われる日本唯一の神社です。女性の乳房を型取った絵馬が奉納できます。
下駄絵馬
東京の高尾山薬王院には、下駄の形の絵馬があります。薬王院は山伏が高尾山中で登山を含めた厳しい修行をする場所です。足腰の強い山伏にあやかるために、下駄絵馬が誕生しました。
ペット用絵馬
いくつかの神社でペット用絵馬がありますが、静岡の神祇(じんぎ)大社のものも有名なひとつです。犬の形をした絵馬ですが、飼い主が絵を加えているので、犬以外のペットになっている絵馬もあります。参拝はペット同伴も可能です。
絵馬の発祥
寺社での馬の存在
日本では神様の乗り物と言えば馬であり、その馬は「神馬」(しんめ)と言います。寺社の神事には神馬が不可欠で、参拝者が生きた馬を奉納する風習がありました。しかし、各々の参拝者から馬が奉納されると飼育が大変ですし、奉納する方も毎回かなりの出費になります。
馬の代用品の絵馬
そこで、生きた馬の代用品として馬の像が奉納されるようになったのです。木製、土製、紙製、大きな銅像のこともありました。その馬の代用品が一般参拝者にも広く奉納できるようにだんだんと形を変え、小型の板に描いた馬の絵に至ったのです。
それが現在の絵馬です。
絵馬発祥の社
絵馬の風習は、京都の貴船神社が発祥です。貴船神社は雨乞いの神として有名で、日照りの時には黒馬、長雨の時には白馬を奉納して祈願していました。その後、生きた馬が、馬の形をした板に色を付けた「板立馬」の奉納に、板立馬は木や紙に書いた馬の奉納になりました。
意外と知らない絵馬の書き方
願いごと、お礼は絵馬の裏面に
絵馬には表裏があります。絵が書いてある方が表、通常は裏面には何も書いていません。最近は、氏名や住所などを書く欄が入れてある絵馬もあります。
願いごと、お礼は裏面に書きましょう。必ず裏との決まりはありませんが、余白の広さや絵があるので、やはり裏面がおすすめです。
油性ペンでしっかりした書き方で
絵馬を書いても、雨で消えては台無しです。神様に伝わるような書き方がいいので、黒の油性ペンでしっかりと書きましょう。
絵馬を奉納する場所=絵馬所近くにペンが用意されています。数が不足したり、綺麗に書けない時もあるので、黒の油性ペンを持参するのもいいですね。
願いごと、お礼はひとつだけ
せっかくだから…といろいろ願いごとを書きたくなってしまう気持ちもわかります。しかし、絵馬には本当に叶えたい願いごと、または本当に伝えたいお礼をひとつだけ書くのが正しい書き方です。ひとつの方が真剣さが神様に伝わると思いませんか? いろいろ書いてしまうと、どれを叶えるべきか神様も迷ってしまいます。
願いごとは宣言する書き方を
願いごとは言い切る書き方にしましょう。合格祈願なら、「○○に合格しますように」ではなく、「○○大学に合格する!」という宣言した書き方にします。
言い切るのは容易ではないかも知れませんが、なりたい自分を想像して書いてみてください。
名前だけでなく住所も書く
神様にどこの誰がお願い、お礼に来ているのかわかるように、名前と住所も伝えましょう。絵馬の裏面に、住所、氏名を書きます。
プライバシーが気になる人は、住所は○○市など大まかなところまで、名前はイニシャルまでの書き方でもいいでしょう。
絵馬所にかけて祈願
絵馬を正しい書き方で書き終えたら、しっかり思いを込めましょう。書くだけ書いて奉納するのではなく、真剣さが伝わりません。
絵馬は絵馬所に奉納するのが一般的です。家に持ち帰ることもできますが、その際には家での飾り方があるので注意してください。
具体的な絵馬の書き方
合格祈願の書き方
絵馬の中でも、この祈願が圧倒的に多いです。お願いは宣言する形で、具体的な志望校名をあげて「○○ 合格祈願」「○○に絶対に合格する」と迷いない書き方を! 「○○か○○に合格!」や「○○に合格しますように」などのはっきりしない書き方は避けてください。
安産祈願の書き方
安産祈願は、妊娠五か月の戌の日がベストと言われていますが、神社は混みあうのでママの体調に合わせていきましょう。絵馬の名前は夫婦連名で、出産予定日も書きましょう。「安産祈願」「母子ともに健康に出産!」などがいいのでは?
縁結びの書き方
女子なら気になる縁結びの祈願。これは、相手がすでにいるかいないかでも異なります。まだ特定の相手がいない人は、いい縁に恵まれるように「良縁成就」になります。すでに特定の相手がいる人は、その人と結ばれるよう「恋愛成就」です。
お宮参りの書き方
地元の神社で、その土地の神様のご加護があるよう生まれた赤ちゃんを披露して、健やかな成長を祈願します。その際には、「○○ちゃんが健やかに成長する!」とか「○○ちゃんが健康に大きくなる。」と書くのがいいでしょう。
絵馬を書くタイミング
絵馬を書く機会は最低2回ある
ひとつのお願いごとに対し、絵馬を奉納する機会は最低でも2回はあります。
1回は、願いごとをする時です。もう1回は、お礼参りの時です。
人間同士は、お願いを聞いてもらった時にはお礼を言うのは当たり前ですよね。神様にも同様です。祈願とお礼はセットです。
祈願の絵馬を書くタイミング
祈願するには、絵馬には言い切りで願いごとを書くので、自分の中で願いごとがしっかりと固まった時がその時です。
ただし、安産祈願では、妊娠五か月の戌の日に祈願すると縁起がよいとされています。1日1日に干支があるので、妊娠五か月の間に戌の日は2~3回あります。
御礼絵馬の書くタイミング
御礼絵馬の奉納は、祈願達成から1年以内が目安です。良し悪しに関係なく、報告と感謝の絵馬奉納なので、すぐに行く人もいれば、落ち着いて先の決意まで伝えられるようになってから行く人もいます。
お宮参りや無病息災の御礼は、節目に報告と感謝を伝えるのがいいでしょう。
絵馬は何ヶ月かけてあるのか?
お焚き上げされるのでは?
絵馬はある程度の期間を経て、お焚き上げされるイメージがありますよね? 実は、神道にお焚き上げの習慣はありません。現在の絵馬は、密教の護摩札の影響もあります。お焚き上げと願いごとを4文字(無病息災、家内安全など)で表現する書き方が、それにあたります。
絵馬はどうなるのか?保管期間は?
今では、絵馬はある程度の期間、絵馬所につり下げられ、お祓いを受けた後、保管されるか処分(産業廃棄物)されるか、お焚き上げされます。保管される期間に決まりはありません。それぞれの寺社の絵馬所や保管場所の広さの問題、参拝者の数などにより、保管期間はまちまちです。
現存する古い絵馬とは?
寺社によっては、絵馬をできる限り保存するところもあります。大阪にある江坂神社では、1704年、300年以上前に奉納された絵馬が現存しています。また、日本各地の古墳などの遺跡から、かなり古い絵馬も出土されています。