喪服には意味がある
大人になるにつれて避けて通れなくなるお悔やみの席。その際には「喪服」を着る必要がありますが、みなさんはきちんとした喪服のマナーをご存知でしょうか?
喪服とは葬儀や法事などの場で着る礼服のことで、昔は白が喪服とされていましたが現在では黒が一般的となっています。ブラックフォーマルとも呼ばれ基本的には男性の場合は黒のスーツ、女性の場合は黒のスーツやワンピースが主流です。
お通夜と葬儀では求められる喪服も違ってきます。葬儀や告別式に参列する際には正しいブラックフォーマルを着ることが決まりです。一方でお通夜の場合は親しかった知人・友人が「急ぎ駆けつける」という意味も含まれているので、一般的にはブラックフォーマルが好ましいですが、必ずしも黒でないといけないというわけではありません。
喪服は、故人にとって誰が着るかによっても決まりがあります。遺族や親族が着る喪服は「生喪服」と言われお通夜の場合もブラックフォーマルが基本です。露出を避け、トレンド感のでないスタイルの喪服を着る必要があります。遺族・親族以外の一般弔問客が着る喪服は「略喪服」と言われ遺族よりも格を下げる必要があります。よって黒だけでなく紺色やダークグレーの服を喪服として着てもよりとされています。
このように喪服には着る人や着る場所によっても細かくルールがあるのが、難しいところ。さらに暑い夏でのお通夜で着る服装だとより着るものに困ってしまいます。今回はそんな夏のお通夜での喪服について女性と男性ではどのような服装をしていけばいいのかについてご紹介していきます。
お通夜の服装「男性の正しい喪服」
男性がお通夜で着ていく喪服として好まれる服装は「スーツ」です。遺族や親族がお通夜でくるスーツは、必ずブラックスーツを選びましょう。ブラックスーツとは黒無地で、シングル・ダブルスーツどちらでもいいとされています。
ブラックスーツと言っても、黒のビジネススーツとは違います。必ず礼服売り場で正しいスーツを買っておきましょう。ブラックスーツは基本的には準喪服と言われ、遺族・親族が着るべき生喪服とは違いますが、最近ではブラックスーツをお通夜での服装として着る方が多く、準喪服でもいいとされています。夏や冬などの季節に関係なく男性がお通夜で着る服装として喪服のスーツは揃えておきたいところです。
男性が一般弔問客としてお通夜に来ていける服装の色
男性が、一般弔問客としてお通夜にいく際、基本的にはブラックスーツかダークスーツが好ましいとされています。スーツはダブルでもシングルでも良しとされていて、スーツの色は黒無地が基本ですが、お通夜には急ぎ駆けつけるという意味もあるので黒以外にもダークグレーやダーク系の紺色のスーツを着ることもできます。スーツは無地が好ましいですが、無い場合は薄くストライプが入ったものを着てもかまいません。
夏のお通夜に着ていく服装としても、基本的にブラックスーツかダークスーツであれば夏用の素材でも大丈夫です。最近では夏用の喪服としてブラックスーツも売られているので、季節に分けて購入してもいいですね。
お通夜に行く時に気をつけたいアクセサリーやバッグ
男性がお通夜に着ていく服装として気をつけたいのはスーツの色だけではありません。喪服と一緒に身につけるバッグなどのアクセサリーやネクタイにも決まりがあります。
一般的にお通夜の席では結婚指輪以外のアクセサリーは外すのがマナーです。特にゴールドの時計やブレスレットは外しておきましょう。ネクタイピンはつけ無いのが無難です。お通夜の場合仕事が終わっってそのまま駆けつける場合もあります。
仕事の帰りにやむなくショルダーバッグを持っていくこともありますが、その場合は肩にかけずストラップ部分を手に持って歩くなど持ち方に気をつけましょう。バッグは黒無地が好ましいとされています。持っていくバッグをあらかじめ自宅で選べる際には、黒無地のシンプルなバッグを持っていくのがおすすめです。
防寒着を着る冬のお通夜と比べて夏に弔問するお通夜は、着る服装も少なく限られているので逆に間違ったマナーが目立ちやすくなります。どのようなバックがお通夜での失礼にならないのかをきちんとチェックしておきましょう。どうしても揃えられない場合は、思い切ってお通夜にバッグを持っていかないと決めておいてもいいですね。
お通夜に履いていく靴は素材に気をつけよう
男性の場合特に気をつけ無いといけないアクセサリーは「靴の素材」です。お通夜に限らず葬儀の場では「殺生」をイメージさせるものは身につけてはいけません。男性の中には本革の靴を履いている方も多くいますが、お通夜に着ていく服装として「革」は好ましくありません。できれば本革は避けましょう。難しい場合はできるだけエナメル素材や金具がついたものを避けた革靴を選び、ご遺族に失礼のないようにしましょう。
ネクタイは黒のものを
男性がお通夜で着ていく服装として必須なアクセサリーは「ネクタイ」です。お通夜の場合急ぎで黒のネクタイが用意できないこともありますが、基本的に弔問する際には黒無地のネクタイが正しいとされています。最近ではコンビニなどですぐに黒ネクタイを購入できる場合もあるので、お通夜に向かう前に立ち寄るのもいいでしょう。
最近ではクールビズが流行り、夏は仕事場でネクタイをしないという方も増えてきました。ですが、お通夜の場合は別。いくら夏の暑い季節であっても正しい服装として、お通夜の際には必ずネクタイをはめて弔問しましょう。
夏のお通夜に上着は必要?
ネクタイと同じく、夏のお通夜に着ていく服装として、上着を着なければいけないかと疑問に思う方もいます。急ぎ駆けつけるという意味でのお通夜ですが、やはり第一に考えなければいけないのは故人とご遺族です。お通夜に弔問客として失礼がないような服装をと考えると、スーツの上着は暑い夏のお通夜であっても着ていくべきでしょう。
どうしても夏に上着を着るのが苦手な方は、せめてお通夜が行われている場所になってからでも上着を着用しておきましょう。
実は喪服の黒と普段の黒スーツは違う
喪服としてのスーツは普段の黒スーツとは違います。お通夜に着ていく服装として、どうしても急ぎで間に合わないときにはスーツの色だけでも気をつけたいところですが、きちんとした服装で弔問できる場合には、喪服としてのスーツを選んで着ていくのがマナーです。
喪服のブラックフォーマルのスーツとビジネス用の黒スーツの違いは「生地」です。スーツの上着を着ると一目でわかってしまうのですが、ビジネス用の黒スーツは光を反射する生地で作られているのに対し、喪服のスーツはテカリがなく漆黒の生地で作られています。
さらにブラックフォーマルは、生地の織り方もちがい厚みがあるためスーツの上着の色も濃く、ビジネス用の黒スーツを着ている人が中にいるとその人だけダークグレーのようなスーツを着ているように見え、一目でブラックフォーマルではないことがわかってしまうのです。
お通夜に着ていく服装をあらかじめ選べる際には、黒スーツがあるからとビジネススーツを服装として選ぶのではなく、必ずブラックフォーマルの喪服を用意して弔問するのがおすすめです。
夏用の半袖ワイシャツはいいが上着は必須
お通夜は、葬儀場で行うところも多いですが自宅で行う方もいます。夏の暑い中で一般宅でのお通夜は人が集まるということもあり、普段よりも暑く感じやすいこともあります。夏のお通夜ではせめて半袖のワイシャツを着ていきたくなるのものです。
基本的にお通夜でも葬儀でも、男性が着る服装としては長袖のワイシャツにネクタイがマナーですが、上着を脱がないのであれば夏用の半袖のワイシャツを着ても問題ありません。ただし、露出を避けるためスーツの上着は必ず着用したまま弔問しましょう。
お通夜の服装「女性の正しい喪服」
ここまでは男性がお通夜に着て行く服装について学んできました。では、女性の場合どのような服装でお通夜に行くべきなのでしょうか?女性の服装についても学んでいきましょう。さらに、夏に女性が喪服として着ていけない服装についてもご紹介します。
女性のお通夜での喪服とは?
女性が通常お通夜に喪服として着ていける服装は黒んワンピースやアンサンブル、そしてスーツです。女性の服装の場合「露出をしない」というのがマナーで、どのような服装であっても肌が余計に見えないものが好まれます。
夏であっても露出は極力控え袖は長めに、スカートの丈が短いときはストッキングを履くなど男性と比べると夏のお通夜の場合も冬場と同じような格好が求められます。
女性がお通夜に来ていける服装の色
女性がお通夜に着ていく服装の色は、一般の弔問客であっても遺族であっても黒の無地とされています。お通夜でどうしても急ぎの場合は、黒以外でもダークグレーや濃紺色ならば良しとされています。
ストッキングは基本的に黒無地がマナーですが遺族ではない場合や、急ぎで間に合わない場合や、夏場は肌色のストッキングでもマナー違反ではありません。お通夜ではある程度の色選択の自由はあるので、喪服がどうしても間に合わない場合は、手持ちの黒無地の服装で弔問することができます。
女性は特にアクセサリーやバッグに注意
女性がお通夜に着ていく服装として気をつけたいのがアクセサリーやバッグ。男性と同じく結婚指輪以外は基本的に外しておくのがマナーです。ネックレスをしたい場合は黒が白のパールのネックレスが無難。その場合は1連のものにしましょう。2連のネックレスは「重なる」という意味があり弔事ではよくないとされています。
香水も控えめにつけましょう。最近ではカラフルなネイルをしている方もいますが弔事の席ではマナー違反です。外国では手袋をはめる習慣がありますが、日本では手袋は適しません。もったいないですが、色味が強い場合はネイルを落とすか、ベージュや淡いピンク色など肌色に近い色にネイルを変えましょう。
夏は特にカラフルでさまざまな素材のアクセサリーやバッグを使うことが多いですが、夏の場合に限らず喪服のアクセサリーを選ぶ際には、本革ものや金具、エナメルや毛皮などは避けましょう。
お通夜の服装と合わせる髪型
お通夜の服装と合わせる髪型にもマナーがあります。髪の長い女性は黒のヘアゴムでシンプルに結ぶのがおすすめです。夏のお通夜の席では特に人が集まり気温も上がるので、髪型はすっきりとまとめておくといいでしょう。
最近では、たいていの方が髪の毛を茶色く染めています。多少髪の毛の色が明るくても周りから目立たないのであれば良いでしょう。逆に茶色よりも明るく髪の色が目立つ場合は、1日だけでもスプレーで黒く染め髪の色を暗くするのがマナーです。
どうしても時間がなくそのままの髪の色でいかなければならない場合は、服装の身だしなみとして髪の毛をお団子にしできるだけ目立たないようにして弔問しましょう。
女性のパンツスーツは喪服として着ていける?
女性が喪服として着るものは、一般的には黒無地のワンピースかアンサンブルがいいとされています。ですが、最近ではパンツスーツを仕事に着ていく方も多いですよね。仕事帰りにやむなくお通夜に向かわなければいけない場合などもあります。
最近ではパンツスーツでもいいとされている傾向にありますが、お通夜は基本的に遺族がどう思うかです。地域やご遺族によってはパンツスーツを着ていくとよく思われない場合もあります。止むを得ずパンツスーツを履いていかなければいけない場合以外は、基本的にワンピースやスカートを選びましょう。
夏のお通夜にワンピースはOK?
お通夜の喪服として基本的に黒無地であれば手持ちのワンピースでもいいとされています。気をつけたいのは夏のお通夜です。露出が多くなる夏の服装ではワンピースも素材が薄かったり露出が多めのデザインが多かったりします。喪服としてワンピースを着る場合生地が厚めで漆黒のものや、首もとがしっかり隠れるものを選びましょう。
夏のお通夜のワンピースはスカートの丈に注意
基本的に夏でも女性が喪服としてワンピースを着る場合、男性と比べると自由に選ぶことができます。ですがワンピースを着る際に気をつけたいのが「スカートの丈」です。
喪服としてスカートやワンピースを着るとき膝が見えるのはマナー違反です。膝が隠れるくらいの丈であれば多少刺繍やディテールが入っていてもいいでしょう。膝がギリギリ隠れるような丈は、お辞儀をしたり座ったりすることが多いお通夜の席では適しません。しっかりと膝が隠れるかどうか確認をしてから出かけましょう。
首元の露出にも気を配ろう
ワンピースは丈に気をつければたいていのデザインのものは喪服として着れますが、首元の露出にも気をつけましょう。さ骨が見えるネックラインのものや、Vネックのラインのワンピースは避け、首元がしっかりとつまっているものがおすすめです。
夏のお通夜は、外は暑く室内は冷房が効いていて少し肌寒く感じることもあります。アンサンブルのワンピースなら、外ではジャケットを脱いでおけますし、ご遺族に会う際にはジャケットを羽織りより失礼のないような服装をすることもできます。ワンピースを着ていく際には夏場もジャケットを持っていくことがおすすめです。
夏のお通夜の服装に半袖は?
夏でも肩や腕が見える半袖はNG
夏のお通夜の席では、いくら暑いからといってもノースリーブのワンピースや短すぎる袖のワンピースは好まれません。夏でも冬での弔事の席では露出は極力控えます。パフスリーブやバタフライスリーブなど肩が見えるような袖のワンピースは避けましょう。どうしてもそのようなワンピースしかない場合はジャケットやボレロを羽織るのがおすすめです。お通夜の席では上着は脱がないようにしましょう。夏のワンピースであっても袖は最低でも五分丈ほどはあったほうが無難です。
最近では喪服としてワンピースを買う際にも、夏用の素材で作られている喪服があります。ポリエステルだと熱がこもりやすく汗を吸収しないため夏のお通夜で着ていくには暑い場合があります。コットン素材の通気性のよい喪服ワンピースなら、袖が長くても暑く感じることなく快適に着こなせるので、夏用の喪服を買おうと考えている方はできるだけ素材にも気をつけましょう。
正しい喪服で参列しよう
いかがでしたでしょうか?今回はマナーが気になるお通夜の席での服装について女性と男性の場合に分けてご紹介しました。お通夜の場合は「急ぎ駆けつける」という意味が込めらているので告別式や葬儀での服装と比べると多少の自由はあります。基本的には黒無地の服装がよいとされていますが、どうしても急ぎで時間がない場合は黒以外のダークグレーや紺色のものを喪服として着ていくことができます。
男性は基本的にブラックフォーマルで喪服用のスーツがマナーです。どうしても無い場合は黒やダークグレーのスーツでもいいでしょう。女性の場合は黒無地のワンピースやスーツが好まれます。女性は喪服を必ず着なければいけないというわけではなく、お通夜の際は手持ちのワンピースやスカートでもいいとされています。その場合はかならず露出が少なくスカートの丈が膝が隠れるくらいのものを選びましょう。
女性、男性ともにタブーなアイテムは革製品や、キラキラした金具そして派手な色のアクセサリーやバッグです。
服装がマナー違反のまま弔問すると、周りの目が気になり弔事どころではなくなってしまいます。弔事に心から参列できるように正しい喪服を着ていきましょう。