アメリカのグリーンカード|申請条件と更新方法・抽選で選ばれる確率

ビジネスマナー

グリーンカードに詳しくなろう

この記事ではアメリカの永住ビザ、グリーンカードについてその具体的な取得方法や、メリットとデメリットを紹介していきます。なんとなくアメリカへの移住に憧れている人や将来的に留学を考えている人から、結婚や仕事の都合で実際に移住することになった人へも、今後の人生計画をする上で参考になるとうれしいです。

グリーンカードとは

世界最大の多民族国家、アメリカ。勉強、仕事、移住などを目的に、世界中から様々な人が集い暮らしています。日本人の場合、3か月以内であればビザなしでアメリカに入国・滞在することができます。一方、3か月を超える期間の留学、就業をする場合にはビザの取得が必要です。アメリカのビザは大きく学生ビザ、就労ビザ、永住ビザの3つに分類されます。学生ビザ、就労ビザを非移民ビザと呼ぶのに対して移民ビザと呼ばれ、アメリカに移住したい、という人が取得するのが永住ビザ ”グリーンカード” です。グリーンカードと呼ばれる由来は、1940年当初の永住権ビザカードの色がグリーンだったことに起因します。現在はクリームがかった白色に変更されています。

メリット

グリーンカードの最大の魅力は、滞在期間・仕事・勉強に制限がない、ということです。学生ビザや就労ビザでは、学校を卒業したり、会社を辞めた場合にはビザの期間が切れると同時にアメリカを離れなくてはなりません。また、就学状況、就労状況によってはビザが無効になることもあるため多くの制限があるのに対し、グリーンカードの自由度はビザの中では最も高く、多くの面でアメリカ市民とほぼ同等の権利が得られるのです。

グリーンカードの取得方法

グリーンカードという言葉は聞いたことがある、という人は多いのではないでしょうか。では、実際にどうやったら取得できるのか、知っていますか?

世界的にみても狭き門といわれるアメリカの永住権取得。具体的には以下の5つの方法があります。

①配偶者(結婚)、家族
②アメリカへの投資
③自己の才能、能力
④米国の雇用先のサポート
⑤DVプログラム

次は、それぞれの方法についてもう少し具体的に見ていきましょう。

(1)配偶者、家族

これは、すでにグリーンカードを取得している人、またはアメリカ国籍を持っている人との関係性によってグリーンカードを取得する方法です。アメリカの国籍者の直近親族を持つ配偶者、子供、両親、兄弟姉妹、または永住権保持者の親族を持つ配偶者と未婚の子供に適用されます。

例えば、アメリカ国籍の方と結婚した場合です。偽装結婚防止のため、最初は2年間有効の限定ビザが発給されますが、その期間後問題なければ通常のグリーンカードを取得することができます。

また、すでにグリーンカードを持っている人と結婚した場合も、同様にグリーンカード取得の資格を得ることができます。アメリカ国籍、つまり市民権所有者と結婚した場合と比べると取得までにかかる時間は長くなり、平均で5,6年と言われています。

(2)アメリカへの投資

これは ”EB-5投資家永住権プログラム” といい、アメリカ国内における企業の発展と雇用の促進を目的として作られました。そのため、このプログラムを通してグリーンカードを取得するためには、
 ・アメリカ国内の新規企業または再建企業に100万ドル以上の投資
 ・2年以内に10名以上のアメリカ人従業員の直接雇用
の条件を満たさなければいけません。

もしアメリカでの起業を考えていて、資金に余力がある方はこちらのプログラムを通してまず永住権を取得するのも方法のひとつではないでしょうか。

EB-5地域センタープログラム

また現在では上記のEB-5プログラムの規定を緩和し、ハードルを下げた、”EB-5地域センタープログラム”も運営されています。通常のEB-5投資家プログラムとの違いは、移民局に認められた地域センター内の投資であれば投資額50万ドルでいい点、アメリカ人の雇用が直接雇用だけでなく間接雇用も条件として認められている点です。

EB-5ビザはもともと期間限定で作られた法律に基づく方法で、本来終了予定であった2012年9月より何度かの短期更新を重ね、現在は2017年4月28日までが有効期間となっています。それまでに更新または終了が決議され、終了した場合にはこの方法での申請は不可能となりますのでご注意ください。

(3)自己の才能、能力

個人の能力、特殊な技術がアメリカに利益をもたらすと推定、認定された場合、この方法を通してグリーンカードの取得が可能です。

このビザは、EB-1ビザからEB-3ビザまで分類され、それぞれ対象が指定されています。

・EB-1ビザ
 科学、芸術、教育、事業、スポーツにおいて並外れた才能を持つ人や、傑出した教授、研究者が該当します。簡単にいえばノーベル賞クラスの科学者やオリンピックの金メダルクラスのスポーツ選手などはこのカテゴリーの対象となります。また、企業の役員として雇用され、同様の業務をアメリカ国内の関連会社に提供するためにアメリカに移転する人も当てはまります。

・EB-2ビザ
 修士、博士などの高等学位を持った専門家を対象に、科学、芸術、事業のいずれかにと特殊能力をもつ人が該当します。

・EB-3ビザ
 一般のアメリカ人ではできない仕事として認められた職業につく人が当てはまります。該当する専門分野において学士号を持つ専門的職業の人や、特殊職業の訓練、経験を持つ人を対象としています。   

(4)アメリカの雇用先のサポート

グリーンカード申請者をサポートしてくれるアメリカの会社を通して申請する方法です。その対象は、”自己の才能、能力”カテゴリーのEB-2、EB-3の該当者が当てはまります。ある特殊な技術をもっていて、その分野で世界的に有名であれば個人での申請が可能ですが、そうでない場合はアメリカの会社のサポートを受けて申請する方法が一般的となっています。

就労ビザでアメリカ国内の企業に勤めながら、その企業にスポンサーとなってもらいグリーンカードを申請する方法も可能です。グリーンカード申請は受理されるまで時間がかかることが多いため、就労ビザが切れるまでにグリーンカードが発給されないことも考えられます。

(5)DVプログラム

DVプログラムとは、1年に1度、コンピューターによる完全無作為抽選によってグリーンカードが取得できる抽選永住権プログラムのことです。正式には移民多様化プログラムといい、抽選の対象国で生まれていること、高校を卒業していること、の2点を満たせば誰でも申請することができます。また、応募するのに費用はかからないので、挑戦するハードルはとても低いといえます。永住権を抽選で、という発想が自由の国アメリカらしいですよね。

DVプログラムの申請方法

グリーンカード取得方法のひとつとして紹介したDVプログラムは、他の取得方法に比べて条件が少なく、日本に生まれ、高校さえ卒業した人であれば、ほぼすべての人が申請資格を満たしています。また選定においても完全無作為なので、現時点で言語や経済的な面で不安があったとしても、誰にでも平等に当選のチャンスが与えられるため、毎年多くの人が申請しているプログラムです。
極端にいえば、アメリカに知り合いがいない、働いた経験がない、英語ができない、お金がない、アメリカについてよく知らない、という人でも、アメリカへの移住の意思さえあれば誰にでも永住権取得の可能性がある、ということです。

DVプログラムは毎年10月初めから1か月ほどの短い期間、インターネット上で募集されます。具体的にはアメリカ大使館の抽選応募申請ページにアクセスし、エントリーフォームに自分の情報を入れ、写真をアップロードすれば完了です。エントリーフォームの英語が読めること、細かい規定に則った自分の写真の準備さえクリアできれば、業者に頼まなくても自分で応募することができます。

当選確率

このプログラムはもともと、世界各国からの移民の分散化を目的としているので、その目的に基づき、世界を6つの地域に分け、移民の少ない地域には発給の割合が増える、というシステムをとっています。毎年全世界合計して10万人に当選通知が届きますが、当選者全員にグリーンカードが発給されるわけではありません。実際にアメリカ政府が発給する枠は5万人に限られています。10万人という数は、当選したものの、実際に移住するという人ばかりではない事、また当選後に申請資格が無いことが判明する場合などを想定しているためです。また当選後は振り当てられた番号順に面接を行い、当選者本人と一緒に申請された家族も含めてビザ発給数が5万人に達した時点でその年の発給は終了となります。

プログラムの設立目的に則り、日本のみの当選枠ではなく、アジア枠の中で選定されます。アジア地域枠内での当選確率は平等です。直近の3年分のデータをみると、アジア枠の中での出生が日本である人の当選割合は3パーセントから2パーセント、そして1.5パーセントへと推移しています。
結婚している場合、夫婦それぞれ応募することによって当選確率を2倍にすることができます。DVプログラムを通して当選した場合、申請すれば同時にその配偶者もグリーンカードを取得できるためです。

グリーンカード所有による制限

アメリカへの移住を考えている人にとってグリーンカードの取得は、クリアしなくてはならない必須項目のひとつです。アメリカでの生活において多くのメリットがありますが、あくまでグリーンカードはビザでありアメリカの市民権とは異なるため、やはり制限が存在します。

代表的なのは選挙権がない点、就けない職業がある点、アメリカにいなくても課税対象になる点、またグリーンカードの維持に一定の条件を満たさなければいけない点があげられます。あまり知られていませんが、永住権といっても取得後2年で更新が必要で、その後は10年ごとに更新することが求められます。

選挙権がない

グリーンカードを持っているだけでは、選挙権・被選挙権ともにありません。また、陪審員任務への権利もありません。

グリーンカードを維持するには

グリーンカードは市民権とは別のものなので、アメリカに住む意思がないとみなされた場合、簡単に剥奪されてしまいます。アメリカ永住が前提となって発給されたものなので、アメリカに年間180日以上滞在しなければなりません。もし長期でアメリカ国外に滞在する場合は2年間有効の再入国証を取得する必要があります。

また、アメリカに本拠地となる住所を持っていること、アメリカの銀行口座、クレジットカードを持っていることなども条件になります。アメリカは税制において属人制をとっているため、たとえアメリカ以外の国にいたとしても、アメリカの課税対象になります。これはグリーンカード保持者にも適応され、グリーンカードが有効である限り納税申告の義務が発生します。

グリーンカードと税金について

永住権を取得した場合、アメリカに対する納税義務が発生することを前述しました。ただし日本で所得があった場合は二重課税防止のため、日米租税条例に基づき日本で徴税されるべき所得についてはアメリカでは非課税となります。

またアメリカで会社に勤めている場合、日本と同様に所得から税金が源泉徴収され、企業が代行して支払う方式をとっています。ただし確定申告については個人がするのが一般的です。

グリーンカードと遺産税

アメリカには、遺産に対する税として贈与税と遺産税が課せられます。通常、配偶者間の相続の場合は贈与税も遺産税もともに非課税ですが、相続する側の人が市民権ではなくグリーンカード保有者だった場合、その対応が異なります。アメリカ国籍の人が配偶者間相続をする場合、全額に婚姻控除が適応されますが、グリーンカードを持っているだけでは一定の非課税枠を超えると遺産税がかかることになります。

アメリカ、日本の年金

日本年金の最低必要加入月数を満たしていれば、アメリカに移住後も年金受給対象になることができます。たとえば、日本で年金を納めていた人が会社をリタイアし、永住権を獲得して移住した場合、アメリカにいながらでも日本からの年金の受給が可能です。これは同時にアメリカの年金にもあてはまり、グリーンカードを利用してアメリカで働いた後、日本に帰国して過ごす場合も、アメリカからの年金を受け取ることができます。

アメリカの永住権と市民権

永住権と市民権の違いについて、ご存知ですか?

永住権を保有していれば、アメリカでの日常生活を送るうえではアメリカ人とほとんど違いはありません。滞在期間に制限もなく、仕事につくことも可能です。働きながらきちんと税金を納めれば市民と同様に年金を受け取ることもできます。また大学に通う際も、外国人の場合はアメリカ市民より高額の学費がかかるのに対して、グリーンカード所有者は市民と同額で通うことができます。

アメリカ市民権とは

市民権とは簡単に言えば国籍のことをいいます。つまりアメリカの市民権を得るということは、アメリカ国籍を得る、”アメリカ人”になるということを意味します。逆にいえば、グリーンカードを所有するということは”日本人として”アメリカに住む権利を得るということなのです。その観点からみると、グリーンカード所有者には選挙権がないことや公務員になれないことなども納得できますよね。同時に市民権は国籍なので、グリーンカードのように更新する必要はなく、ほかの国に帰化しない限り有効です。

市民権は、グリーンカード取得後アメリカに5年以上住んでいれば申請資格を得ることができます。アメリカは二重国籍を禁止してはいませんが、日本では認められていないため、市民権を取得した場合は日本の国籍は失われることになります。

アメリカに住むということ

ここまでアメリカに移住するということを前提に、アメリカ永住権”グリーンカード”についてみてきました。どうだったでしょうか?

ハワイやグアム、ニューヨークに憧れて、いつか住んでみたい!と思っている方もいらっしゃると思います。実際にグリーンカード抽選プログラムには、そんな夢を見ながら毎年多くの人が応募しています。ところが当選した人の中には辞退する人も少なくありません。また夢のグリーンカードを手にしアメリカで生活してみたものの、結局その権利を放棄して日本に戻る、という人も多いのが現状です。

その原因として多くあげられるのが、言語の問題です。実際にアメリカで暮らすとなれば、当然英語が必要になります。コミュニケーションをとることは生活する上で必須であり、それは仕事をするにあたっても求められるからです。また、アメリカで生活していくための経済力の問題もあげられます。英語ができないと仕事を見つけるのも難しい場合が多い、ということになります。

アメリカに住みたい!グリーンカードが欲しい!と思った方は、その時からでもいいので充分な準備をすることをおすすめします。

日本での生活の中では当たり前だったことも、アメリカではそうでないかもしれません。日本では許されることが、アメリカでは禁止事項かもしれません。わたしたちは日本に住みながら、自分では無意識的に日本の文化、日本の習慣、日本の常識を身につけています。

アメリカは人種、宗教、国をこえた様々な人がともに暮らす多民族国家です。アメリカで暮らすということは、その在り方を尊重し、ともに生きるということです。そんな素敵な環境を楽しめるなら、きっとあなたのアメリカ生活は実りの多いものになるでしょう。

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