リストラされると再就職が困難になるのか
会社の倒産危機や経営再建のために、会社側としては会社都合として早期退職者を募るケースがあります。これには、中小企業のみならず、多くの社員を雇っている大手企業であっても経営が危ぶまれると大規模リストラに発展するケースも珍しくありません。本記事ではリストラから再就職の現実と、リストラから再就職の方法、そして年代別の再就職のコツをご紹介します。
リストラの実態と現実
まず最初に、リストラの現状をお伝えしたいと思います。2015年の大規模なリストラとしては、2月にはソニーが2015年度中にモバイル・コミュニケーション分野で2100人の人員削減を行うと発表しました。ソニーは1999年3月以降に公表されただけで8万人以上をリストラしていますし、8月にはシャープが45歳~59歳を対象に募っていた希望退職に3234人の応募があったと発表しました。
その他にも多くの企業が大規模リストラを発表しています。ほかにも2015年にリストラを発表した企業には、横河電機 、日立建機 、日本たばこ産業(JT) 、ルネサスエレクトロニクス 、アシックス、損保ジャパン日本興亜ホールディングス、ニッセンホールディングスなど誰もが知る企業が並んでいます。
企業側としても早期退職者に対しては、「早期退職優遇制度」として退職金の割り増しであったり、再就職のあっせんを行いリストラ対象者を募ります。そうでない限りは、40代~50代といえば子供の養育費や住宅ローン返済等、お金がかかる時期に退職などしません。
企業は人を雇っている以上は、その人の生活を守る義務がありますが、会社が倒産したのでは全ての社員に迷惑がかかります。そのため、「早期退職優遇制度」で退職する側にもしっかりと割り増し退職金を渡すことで、会社の存続と退職者の生活を守ることを目的としています。
しかしながら、現実はそう甘くはありません。40代~50代での退職は、現実的に正社員での再就職は厳しく、給料も希望通りの金額は難しいことがほとんどです。なぜそれほどまでに厳しい現実が待っているのでしょうか。
中高年ほど再就職が厳しい現実
早期退職でリストラによる再就職は「希望退職者のうち、1年以内に就職出来なかった人数は2割にも上る」という様に、予想以上に厳しい現実が待ち受けています。もちろんそれはデータ上のものであり、全てがそうではないかもしれません。
特に再就職というのは、企業が欲しいと考えるスキルや経験と、企業が欲しいと考えるタイミングが合わなければ難しいため運の部分も多いでしょう。しかし、だからといって自分は大丈夫と楽観視して対策もせずに再就職に臨もうとすると、痛い目に合うかもしれません。
再就職は別の業種も視野に
特に40代~50代におけるリストラによる再就職において、他の企業で同業種を受けようとしても、それらの企業は「35歳までの実務を最前線で活躍できる社員」を望むケースが多く、管理職に落ち着いて高給取りの40代~50代を雇おうとはしません。そのため、例えばサービス業や営業といった業種を視野に入れた就職活動を行わないと、再就職は厳しいのかもしれません。「業種を選ぶ余裕は無い」という声も多く聞かれます。
アルバイトの面接にすら落ちるケースも
40代や50代にとってリストラからの再就職はもはや身近な問題かもしれません。例として、リストラから再就職をしていく中で、履歴書を企業に送るものの面接にすら進めないという現実を突きつけられるということもあるでしょう。
とにかく働かないと収入がゼロという現実を直視し、これまで大手企業に勤めていたプライドを捨てて、アルバイトに応募するも、それすら落ちるというケースもSNSに報告されています。
「IT系企業をリストラ。結局仕事は見つからずバイトの面接も数件落ちた。」
「リストラされて履歴書を送るも全て書類選考で落ちる。面接すらさせてもらえない。」
リストラから再就職まで6カ月以上は珍しくない
リストラから再就職までの転職活動期間において、20代であれば1か月半~3か月以内が9割、30代であっても8割以上となっています。一方、50代では6カ月以内、60代までいくと7カ月以上となっており、「50歳でリストラし、次の仕事が見つかるまで8カ月の期間を要した。最後は自分の希望職種ではない異業種で再就職をした」というように、転職活動期間は、年齢が上がるほど長くなるケースが多いようです。
とはいえ、最初から年齢によって合否を判断する企業は以前より少なくなっており、年齢が高くなるほど企業から求められる能力のハードルは高くなる傾向にあります。特に人脈を武器に出来る人を募集していたりするため、企業にプラスになるような人脈を築いてきた人は再就職は厳しくないかもしれません。
総じて中高年を採用することに対する企業のハードルは高く、割り増しの退職金に魅力を感じて「辞めてからなんとかなる」と考えられるほど甘くは無く、早期退職には相当な覚悟が必要となります。
リストラから再就職出来る年齢によるボーダーライン
筆者である私自身も中小企業から大手企業へ転職経験がありますが、30代前半でのキャリア採用であったため、それほど転職への絶望感はありませんでした。しかしながら、友人の話を聞くと、35歳での転職は相当の業務スキルと実績が無いと厳しいでしょう。
35歳までは、実務経験による正社員募集が多く、40代からは相当の能力がなければ厳しくなり、50代は早期退職を一番募られる年齢のため、企業への正社員はとても難しくなります。
リストラから50代の再就職の厳しさ
高年齢になればなるほどリストラ対象となるだけでなく、給与カットされてしまうケースもあります。企業へ利益を生み出してきた存在であれば、管理職として人材を育てる側として会社としても必要な人間となっていますが全てがそうではありません。そのような中高年が早期退職からリストラした場合、再度自分の価値を考えてみたとき、新たな会社に対して何が出来るでしょうか。
会社側も同じ事を考えるに違いありません。中高年が新たに企業へ雇われるということは、並大抵のことではないでしょう。何か特殊な能力、資格、経験、実績が無いとまず厳しく、前職の年収を上回るどころか、半分以下になることも少なくありません。それほどリストラから50代以降の再就職は厳しいのです。
50代からの再就職で雇用形態や業種を選ぶことは甘え
50代のリストラから再就職において、「正社員で雇用されたい」、「同業種で慣れた仕事をしたい」等の希望通りに採用されることは、よほどの人脈や実績が無いと難しい事は上記でご紹介してきました。
これから50代で再就職を目指すという人は、自分をもう一度見つめ直してみてください。企業としては自分よりも若者を育てていきたいと思うのは自然だし、自分を雇ってくれる企業は自分のどのあたりを評価してくるのか等々客観的に考えることが重要です。
確かにこれまで行ってきた慣れた仕事をしていきたいという気持ちはわかります。しかしながら、席がなければ働く事も出来ないため、自分が座れる席を探すしかないでしょう。そのためにも、雇用形態や業種に拘ることなく、再就職して賃金を得るという一番の目標に向けて頑張っていくしかないのです。
リストラからの再就職方法
景気の先行きが不透明な現代社会において、誰もが耳にしたことのある大手企業が数百名、あるいは数千名単位で早期退職を募るリストラは、他人事では無い時代に突入しています。
上場企業であったとしても、生涯安定とは限りません。もしも、自分が勤めている会社でリストラにあってしまった場合、不測の事態に備える必要があります。今回はそのような危機的状況から切り抜けるために、リストラから再就職の方法についてご紹介します。
まずは会社都合による失業保険を受けること
リストラとなってしまった場合に最初に行うことは、「会社都合退職による失業保険」の給付手続きを行ってください。失業保険というのは、「自己都合退職」と「会社都合退職」の2種類が存在します。その2種類では、給付制限から最大支給額まで相当待遇が異なってきますので、リストラ=会社都合ということを念頭において、しっかり失業保険を受けてください。
●自己都合退職
給付日数 :90日~150日
給付制限 :あり
最短支給開始日:3か月と7日後
国民健康保険 :通常納付
最大支給額 :約118万円
●会社都合退職
給付日数 :90日~330日
給付制限 :なし
最短支給開始日:7日後
国民健康保険 :最長2年間軽減
最大支給額 :約260万円
会社を辞めると離職票が届きます。その離職票を元に失業保険を受けることができますが、しっかりと「会社都合」と記載されている必要があります。もし記載されていなかった場合、会社に連絡を取りその旨を記載した離職票をもらいましょう。もらえない場合は、近所のハローワークに相談しましょう。
人生をやり直すためにポジティブシンキングで挑む
最初は誰しも「リストラされてしまった」と落ち込んでしまうかもしれません。落ち込むと、自分は運が悪かったと落ち込み、再就職活動も捗らないでしょう。暗いと全てが悪い方向に進みやすくなります。
リストラされたことで、逆に今まで仕事づめだった生活も一旦リセットされて、ゆっくりリフレッシュできたと考えてみては如何でしょう。もしお金に余裕があるのであれば、今まで行けなかった海外旅行でリフレッシュしてみたり等々、ポジティブシンキングで挑むことが重要です。
「新しい人生が体験できる」、「未経験の職種に挑戦できる」、「チャレンジしてみよう」と、どれだけでも気持ちをポジティブに切り替えられる考え方はあるはずです。
現実を見直してプライドを捨てること
大手企業へ20年務めて、リストラされたというケースがあったとします。大手企業で働いてきたプライドから、中小企業への転職や、他業種への転職は抵抗があると思います。その抵抗感から、再就職まで6カ月以上かかってしまうのかもしれません。それでも、再就職までの期間が長ければ長いほど、条件はもっと悪くなっていくため、異業種への決断は早めにしていきましょう。業種の幅を広げるほど再就職への道は開けます。
転職サイトや転職エージェントで効率の良い再就職を
リストラから再就職をする際に、自分一人で頑張ったとしても、どうしても再就職へのやり方がわからない人も多いでしょう。自分だけで企業を探すということは限界があるため、転職サイトや転職エージェントの登録がお勧めです。まずは自分一人で企業研究や自己分析をしたいという方は、転職サイトのみの登録で良いですし、転職エージェントに登録すると、履歴書や職務経歴書の書き方から面接の仕方、そして非公開の求人まで様々なアドバイスを無料で直接聞くことが出来ます。
履歴書や職務経歴書の書き方
リストラから再就職をする際にも、履歴書や職務経歴書は必須です。それらを書く際に特に困るのは、「退職理由」でしょう。ここはあえて退職理由は書かない、という訳にもいきませんのでしっかりと退職理由は書く必要があります。
リストラからの退職理由は、ずばり簡潔に「会社都合による退職」とだけ書くようにしましょう。そこで、詳細に会社が早期退職者を募って云々と書く必要はありません。採用担当者が知りたいのは、あくまでどれだけ自社に貢献してくれるかです。
面接での退職理由は明確に
再就職の面接では当然「退職理由」について聞かれます。聞かれた際には、業績不振、倒産等の退職に至った理由を素直に伝えましょう。その後には、気持ちを切り替えてしっかりと頑張りたいと「やる気」と「意欲」を企業に伝えましょう。とにかく前向きに気持ちを切り替えるということが大事です。
年代別のリストラからの再就職のコツ(20代〜50代)
リストラからの再就職は、年齢が上がれば上がるほど厳しくなっていくということを伝えてきました。とはいえ、中高年であったとしても、雇用形態や異業種への転職を考えていけば、道は開かれるということもご紹介しました。最後は年代別に再就職のコツをご紹介します。
20代~30代からの再就職のコツ
20代~30代からの再就職としては、容易ではないものの中高年と比べれば、「1カ月半~3か月で8割以上」と比較的早く転職が決まるケースが多いです。20代半ばまでであれば、第二新卒と同様に、職歴はさほど重視されず転職は可能ですし、20代後半~30代は、職歴及び実績があれば同業種でのキャリア採用は十分可能です。
40代からの再就職のコツ
40代からの再就職については、大変であると伝えてきましたが、業種を選ばず一から頑張れる人にとっては、正社員で転職の可能性は十分にあります。
例えば、40代であったとしても、営業の仕事は正社員として採用される企業は多くあります。特に住宅営業等に関しては、年齢が高い方が説得力が増して成約率が高まるというケースもあるため、中高年で営業として活躍する場は少なくありません。電化製品や家具等に関しても、豊富な知識を持っていそうな中高年の需要は高いです。商品アドバイザーとしての仕事は、人の話を聞き出すことも重要になってくるため、大人の話し方を熟知している人は、そういった営業に向いているのです。また、訪問販売のような自宅訪問のセールスに関しては、怒鳴られたりして、頑張っても営業としての成績が上がらない、結果が出ないというケースも多々あるため体力仕事と変わらず中高年にはよほどの気力が無いと厳しいかもしれません。
飲食業やサービス業では、店舗数を拡大しているチェーン店は常に管理職不足に悩まされています。アルバイトによる学生は集まるものの、しっかりとお店経営をまかせることが出来る中間管理職を目指すことは、未経験であったとしても十分に可能です。新たな人生として挑戦するのであれば料理の勉強をして、職人になるというのも面白いかもしれません。
また、求人広告として意外に穴場なのが、ハローワークです。もちろん転職サイトや転職エージェントも活用していくべきですが、ハローワークに関しては、地元に強い就職先を多く掲載しています。特に営業所だったり工場を新設させて、事務員、営業所員を新しく採用したいというケースがあり、技術職を補充したいという狙いから40代であったとしても、十分にチャンスはあります。
正社員を目指すあまり、正社員に固執して就職活動をするものの、6カ月もの間就職出来なかったという場合もあるため、職無し期間を短くするためにも正社員以外で幅広く就職活動をしてみるのも手です。派遣社員や契約社員から正社員になれるというケースもあることを忘れないでください。
50代からの再就職のコツ
50代からの再就職は厳しいと伝えてきましたが、厳しい厳しいと言う事は誰でも出来ます。働くのは自分なので、自分が出来ることを最大限脳をフル回転して考えてみましょう。基本的に、40代からの再就職と同じ事を50代であっても実践すれば良いのです。
逆に中高年だからこそ説得力がある業種もあるのです。新規出店の店長候補として募集している企業は多くありますし、マクドナルドなどは「シニアクルー」として年齢制限無しで募集しています。80代まで活躍することが出来るとのことです。他にもシニアを積極的に採用する企業として探すと、多くの企業があります。それらはサービス業がほとんどではありますが、中高年の「大人で安心感のある対応・接客」が必要とされる業界でもあるのです。
リストラと再就職
いかがでしたでしょうか。
今回はリストラされた際の対処法や再就職に関するポイントについてご紹介してきました。
リストラされてしまった方も、再就職でつまずいてしまった方も、今回の記事がお役に立てれば幸いです。