「ご苦労様」の意味と使い方
働いている人であれば「ご苦労様」という言葉を耳にしたことはあるでしょう。自ら使ったことがあるという人も少なくないでしょう。社会に出てみると、「ご苦労様」という言葉が使われるシチュエーションがたくさんあることがわかります。また、まだ社会に出ていない学生であっても「ご苦労様」という言葉に出会う場面はたくさんあります。
意味
「ご苦労様です」という言葉は、相手に対してのねぎらいを示す意味があります。世界的に見ても相手をねぎらう気持ちは一般的ですが、日本においては何かしてくれた人に対し「ご苦労様です」とねぎらいの言葉をかけるのは常識のように考えられています。また日本のねぎらいの気持ちが海外で注目を集め始めていることも事実です。
ねぎらい
「ご苦労様です」がねぎらいの意味を持っていることは多くの人がニュアンスとして理解しているでしょう。では「ねぎらう」という意味を正確に理解しているでしょうか。「ねぐらう」は相手の行動に対し、感謝の行動を表すことを意味しています。ただ相手に感謝するだけでなく、相手の行動も思慮に入れた感情であることがポイントです。
使い方
日常において「ご苦労様です」という言葉を頻繁に使う機会として、配達物を受け取る時が代表的です。配達員の方の「ものを運んでくれた」という労力に対し、ねぎらいの意味を込めて「ご苦労様です」という言葉を使う人は多いでしょう。配達員にとっても、「ご苦労様です」と声をかけられることが嬉しいことであることに間違いはないでしょう。
ドラマでよく見る「ご苦労様です」
警察が登場するドラマでは「ご苦労様です」という言葉が頻繁に登場します。例えば主人公が張り込みをしているシーンで、別の人と張り込みを交代する時「ご苦労様です」という言葉とともに任務を交代します。ドラマやアニメの影響で「ご苦労様です」がねぎらいの意味を持つことを知ったという人も少なくないでしょう。
また執事や使用人といった立場の人は、主人に対して「ご苦労様です」という表現を使うことがよくあります。雇い主と雇われた人という立場の上下はありますが、生活を共にしているという関係性から「ご苦労様です」という言葉がよくつかわれます。年配の執事の老人が「ご苦労様です」と言っている姿を想像できるという人も多いでしょう。
海外での「ご苦労様」
海外においても相手をねぎらう表現は多く存在します。「ご苦労様です」は海外では「Good Job」という表現を使います。意味合い的には「ありがとうございます」という感謝の気持ちより、「よくやってくれた」という褒め称える気持ちの方が強いです。「Good Job」は日本でもよく知られている言葉です。
海外で使われる「Good Job」は何か特別な成果を上げた時や、プロジェクトが成功した時など大きな動きがあった時に使われることが多いです。日本のように日常的な労務に感謝をする文化は世界においても珍しいといっていいでしょう。
「ご苦労様」の敬語
「ご苦労様」という言葉は敬語表現ではありません。そもそも「ご苦労様」という言葉の語源は、目上の人が目下の人に対し「ご苦労」と労をねぎらったことに起因します。「ご苦労」という言葉に「様」という言葉をつけても、目上の人が目下の人にいう言葉であることに変わりはありません。よって敬語を使うべき場面で使ってしまうと失礼に当たってしまいます。
また「ご苦労様」という言葉を使うのは直接会っている時に限った方が良いでしょう。手紙やメールでは相手の顔が見えないため、できるだけ丁寧な言葉を使うことをおすすめします。しかし親から子への手紙のような、明確に相手の気持ちがわかっている場面ではその限りではありません。
立場の上限関係
「ご苦労様」「ご苦労様です」といった言葉は、立場の上下関係がない時に使われることが多い言葉です。前にあげた例の、配達員と荷物を受け取る人の間には、明確な上下関係がありません。立場の上下関係を気にせず労をねぎらう言葉として「ご苦労様」という言葉が使われます。
また関わりの無い、または薄い関係の人に対しても「ご苦労様です」という言葉が使われることがあります。例えばボランティアでゴミ拾いをしている人に対してや、地域の安全管理を行っている人に対して、明確に関わりが無い場合であっても、「ご苦労様です」という言葉を使うことは不自然ではありません。
「ご苦労様」は目上の人に使っても良いのか
「ご苦労様」という言葉は目上の人に使ってはいけません。面と向かってであってもメールや手紙であっても、失礼になってしまいます。そもそも「ご苦労様」の意味に含まれる「ねぎらう」という言葉は、同等または下の人に対して使われる言葉です。また立場が下の人であっても年齢が上の人に対しては使わないことが常識とされています。
例外
「ご苦労様」という言葉が目下の人から目上の人に対して使われる例外的なシチュエーションがあります。それは、「ご苦労様」という言葉を子供が使う場合です。例えば母親と家にいる時、荷物を届けに来た配達員に対して、母親の真似をして「ご苦労様です」と言うのは許されるシチュエーションでしょう。しかし、社会に出てからは絶対に使わないようにしましょう。
もう一つの例外は子供が親に使う場合です。こちらは社会に出た後でも当てはまります。親子や家族の関係は一般に社会の関係より深いと考えられるので、「ご苦労様」という言葉を使っても問題ないでしょう。兄弟に対してや親しい親戚に対しても同様です。
「ご苦労様」の言い換え方法
「ご苦労様」や「ご苦労様です」という言葉が、目上の人に使ってはいけない表現だということはわかりましたが、では具体的にどんな言葉を使えばいいのでしょうか。社会に出ると、目上の人であっても仕事を分担したり、同じ仕事を引き継ぐシチュエーションは多くあります。間違った言葉は相手に対して失礼になってしまう可能性もあります。
お疲れ様でした
目上の人の労をねぎらうシチュエーションにおいては、「ご苦労様です」の代わりに、「お疲れ様でした」という言葉を使うようにしましょう。例えば、自分が外回りをして深夜に会社に帰ってきた時、まだ上司も仕事をしていたとしましょう。そういった場合は「お疲れ様です」と声をかけると良いでしょう。
またチームとして関わったプロジェクトが無事完了した時、チーム内の人たちと「お疲れ様でした」と労をねぎらうのも良いでしょう。自分自信も労を呈したことはもちろんですが、それを表に出さず、あくまでも周りの人間の労をねぎらうことが日本人の美的な心と言えます。
ありがとうございました
シチュエーションによっては、「ご苦労様です」という言葉を使わずシンプルに「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えた方がいい場合もあります。労をねぎらう気持ちも感謝をする気持ちも、受け取った相手が不快な思いになることはないでしょう。むしろストレートな感謝の気持ちに好感を持つ人もいるはずです。
例えばお世話になった上司が定年退職する時、どんな言葉をかければ感謝の思いが伝わりやすいでしょうか。「ご苦労様でした」は絶対にやめましょう。「お疲れ様でした」または「ありがとうございました」という表現を使えば、相手に対しての感謝や敬意の思いがより伝わるでしょう。
「ご苦労様」と「お疲れ様」の違い
「ご苦労様」と「お疲れ様」は使うべき立場は違えど、持っている意味合いはほぼ同じであることがわかります。しかしどちらを使っても問題ないシチュエーションにおいては、どちらの言葉を選ぶかで、相手が受け取る気持ちのニュアンスは微妙に異なります。また、伝え方によってもニュアンスは大きく異なります。
ともに動いているかどうか
「ご苦労様」と「お疲れ様」のニュアンスの違いは、自分が一緒に動いているかどうかに現れます。「ご苦労様」は自分は監督の立場にいたり別の場所にいて、声をかけた相手と行動をともにしていないニュアンスが伝わります。ゆえに、目上の人に対しては失礼に当たってしまうことがあります。
「お疲れ様」は自分も同じ立場にいて、ともに頑張っていたニュアンスが伝わります。なので目上の人に対しても、同等の人に対しても、目下の人に対しても立場を問わず使うことができます。またメールや手紙などで直接伝えることができない場合にも「お疲れ様」という言葉はよく使われます。
「ご苦労様」の類語
「ご苦労様」という言葉には多くの類語が存在します。語尾を変えるだけで相手に与える印象が変わるので注意が必要です。また「ご苦労様」の敬語表現である「お疲れ様」にも多kの類語があります。こちらも異なる語尾を使い分ける必要があります。
ご苦労
「ご苦労様」の類語の中でも、「ご苦労」は最も立場の差が大きい人に向ける言葉です。社長から新入社員へ、チームリーダーから下っ端へなど、敬意を払わなくても良いくらい立場が開いている時に限られます。しかし、現代においてはたとえ立場が下の人に対しても「ご苦労様です」と丁寧な言葉遣いをすることが一般的です。
ご苦労さん
「ご苦労さん」という言葉は体育会系のシチュエーションでよく使われる言葉です。スポーツチームにおいてキャプテンが新入部員に使ったり、工場において工場長が新入社員に使ったりします。「ご苦労様」に比べてより親しみやすく、使う人の人間性が感じとれるような暖かい印象を受けます。
ご苦労様
「ご苦労様」は最もポピュラーに使われる表現です。「ご苦労様です」「ご苦労様でした」のように時系列の変化によって語尾は変化するものの、相手に与える印象は変わりません。優しい表情で言えば優しい印象を、真面目な表情で言えば真面目な印象を相手に与えることができます。
お疲れ
「お疲れ」は「ご苦労様」と同様に、立場が下の人に向けて使われる言葉です。また相手がなにか労力を使っていたことが明確である場合はもちろん、そうとは限らなくとも出会った時の挨拶として「お疲れ」という言葉が使われることがあります。同様に電話の第一声で「お疲れ」という言葉を使う人も少なくありません。
お疲れさん
「お疲れさん」は「ご苦労さん」同様に、使う人の人間性を感じることができる表現です。さらに砕けたシチュエーションでは「お疲れちゃん」のようにふざけるように言う場合もあります。ふざけていても相手に対してのねぎらいを忘れない日本人の謙虚さが表れています。
「ご苦労様」の例文
配達を受け取る時「ご苦労様です。暑い中ありがとうございます」と配達員に伝えれば、自分も相手もいい気持ちになるでしょう。「ご苦労様です」という言葉を使うことでそれ以降の会話をつなげやすくなります。ただ無言で荷物を受け取る人より印象が良いことは言うまでもありません。
清掃ボランティア
清掃のボランティアの人に対して「ご苦労様です。毎日ありがとうございます」と声をかければ、次からは掃除の負担が少なくなるように綺麗にするように努めようという気持ちが生まれることもあるでしょう。感謝の気持ちを伝えることは相手だけでなく自分の感情を動かすこともあります。
地域の見回り員
子供の登下校時など、地域を見回っているボランティアスタッフの人がいます。そういった人たちに「ご苦労様です。ただいま帰りました」と声をかけることで、コミュニケーションが深まります。コミュニケーションが強くなることは信頼性を生み、より地域の安全性を高めることにもつながります。
退社
会社の目上の人が目下の人に対して「ご苦労様。明日もよろしく」と声をかければ、会社内の雰囲気はさらに良くなるでしょう。会社では円滑なコミュニケーションが必要となる場面が多くあるので、「ご苦労様」という言葉はそれの足がかりになりうる素晴らしい言葉だと言えます。
ご苦労様から生まれるコミュニケーション
相手の仕事や労働をねぎらう言葉は必ずしも必要なものではありません。しかし、だからこそ、何か物事をしてもらった時に「ご苦労様」と労をねぎらうことはとても重要なことです。労をねぎらうことは、相手のことをより深く知ろうと考えることであり、より良いコミュニケーションを作る上で欠かすことはできません。
また「ご苦労様」という言葉と共にどんなアクションを起こすかによっても相手に与える印象は変わってきます。肩をポンと叩いたり、肩を揉んであげたり、拍手を送ったり、握手をしたり、飲み物やお菓子を差し出したり、言葉と共に行動を付け加えることで相手への感謝と敬意をより示すことができます。
コミュニケーションが希薄になったといわれる現在において、「ご苦労様」から生まれるコミュニケーションは重要視すべきでしょう。相手の苦労を知ることで相手のことをよく知る良いきっかけになります。