「分かる」の意味と由来
「分かる」という言葉は、私たちの日常生活でとても使う頻度が高い言葉です。本や文書では、ひらがなの「わかる」や、漢字の「分かる」が使われているのを目にすることが多いですが、「判る」「解る」という漢字を使うこともあります。「分かる」「解る」「判る」それぞれの意味の違いが「わかる」人は意外と少ないでしょう。
この記事では、「分かる」の意味、「分かる」「解る」「判る」の違い、「分かる」の言い換え、敬語表現などをを解説しました。この記事を読み終えたら、「分かる」の意味がより深く分かるようになるでしょう。
そもそも「分かる」の意味は
「分かる」には、「物事の意味・価値などが理解できる。」、「はっきりしなかった物事が明らかになる。知れる。」、「相手の事情などに理解・同情を示す。」「離れる。分かれる。」という意味があります。また、「分かりました」「分かった」という形では、「承知した」という意味になります。
「分かる」の由来
「分」という漢字は、分割・分断・分けるなど、1つのものを二つ以上の数にバラバラにするというイメージが強く、「理解する」「明らかになる」という意味と結びつかない人もいるでしょう。
「分」は分けるという意味ですが、混とんとした物事が分けられることにより明確になることから、「分かる」という意味になったという説があります。また、小さな子どもは物事の名前を覚えることにより、その物事とそれ以外の物事を区別することができ、「わかる」につながる、とも言われています。
「わかる」「分かる」がよく使われる理由
新聞・雑誌や文書では「わかる」「分かる」が圧倒的に多く、「解る」は「判る」はあまり見かけることがありません。それは「常用漢字表」で、「分」の訓として「分かる」があげられていますが、「解」の訓として「解る」や「判」の訓として「判る」はあげられていないからです。
常用漢字表は、「一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示す」もので、公用文書・新聞・雑誌などで書き表すときの目安となっているので、私たちが目にする文書や新聞・雑誌などでは、「わかる」「分かる」が使われることがほとんどです。
「分かる」が正解で「解る」や「判る」は間違い?
では、「わかる」を漢字で書く場合、「分かる」だけが正解で「解る」や「判る」は間違いなのかというと、間違いではありません。常用漢字はあくまでも、一般的に使う漢字の目安となるものなので、専門分野や芸術・文学、個人の好みで「解る」や「判る」を使うことを制限するものではありません。
しかし、仕事で作成する文書や、公共性の高い文書では「わかる」か「分かる」を使いましょう。
「分かる」の類語・言い換え
「分かる」という言葉は、意味の範囲が広く、使用頻度の高い言葉です。「分かる」の類語を知っておくと、伝えたい内容に合わせて表現を変えることができます。「分かる」の類語をあげてみました。
「分かる」の類語「知る」
「知る」も、とても使用頻度の高い言葉で、「分かる」と同じ意味を表現できます。例を挙げてみましょう。「あの店のラーメンが不味いと分かっていたら行かなかったのに」という文章は「あの店のラーメンが不味いと知っていたら」に置き換えることができます。
「知る」は物事全体にわたって支配し認識することが基本の意味です。一方「分かる」は物事に筋道を立て、分析的に理解することが基本の意味です。「あの人は道理を知っている」と「あの人は道理を分かっている」では、「知っている」を使う方が道理のすべてを認識しているというニュアンスを出せます。
「分かる」の類語「承知」「了解」
人から頼まれごとをした時や、指示をされた時、「分かりました」と返事をしますが、「了解しました」「承知しました」と言い換えることができます。相手が目上の人だと「わかりました」はふさわしくありません。「分かりました」と「承知しました」「了解しました」はどのように違うのでしょうか。
目上の人からの頼まれごとには「承知」
「承知しました」は、目上の人からの命令などをうけたまわる、相手の願いなどを聞き入れること、わかっていることなどを意味します。会社の上司や、客への返答には「承知しました」が適しています。
理解したことを表したい時は「了解」
「了解しました」は、物事の意味・内容・事情などを理解すること、はっきりとよくわかること、理解した上で承認することを意味するので、手順や内容などを理解したというニュアンスを含んだ返答をしたい場合は「了解しました」を使うといいでしょう。
例えば、その指示に関する複雑な事情や、何ステップもある作業の手順を詳しく説明され、理解したかどうかを尋ねられた場合は「了解しました」も適した表現です。
「分かる」の類語「通じる」
「通じる」は、「意思や考えが相手に伝わる」「詳しく知っている。精通する。」の意味を持つ、「分かる」の類語です。例えば「この話を彼は分かっている」という文を「この話は彼に通じている」と言い換えることが可能です。
他にも、パソコンに詳しい人について「彼はパソコンが分かる」と言いますが、「彼はパソコンに通じている」と言い換えることができます。
「分かる」「解る」「判る」の違い
ここからは、「分かる」「解る」「判る」の違いを解説します。
「解る」
「解る」は、物事の意味・内容・価値などが理解できるという意味です。例をあげると「私にサッカーの面白さは解らない」「彼はドイツ語が解る」などです。「数学の問題の解き方が解った」「説明されたことが解った」など、よく理解できた、というニュアンスを出したい時に使います。
「判る」
「判」には、物事をそれと判別・判断するという意味があります。よって「判る」は、「クロかシロかが判る」「先のことは判らない」「味の違いが判る」などに使われます。
いつでも使える「分かる」
「分かる」は、「わかる」の漢字表記で唯一、常用漢字表に載っている漢字で、どんな場合の「わかる」にも、使える漢字です。どの漢字を使用すればいいのか迷ってしまう時には、「分かる」を使えば間違いありません。
「解る」にも「判る」にも当てはまらない場合は「分かる」を使うといいでしょう。物事が明るみに出る、知られるようになるという意味だと、「解る」も「判る」もしっくりこないので、「明日の試合のスターティングメンバーが分かった」「謎に包まれていた真相が分かった」というように、「分かる」を使うといいでしょう。
「分かる」の敬語表現
敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類あります。
尊敬語は、目上の人を立てて使う言葉で、目上の人の動作・様子などに使います。「言う→おっしゃる」、「美しい→お美しい」などです。謙譲語は自分がへりくだることで相対的に相手を立てる時に使います。「言う→申し上げる」「もらう→いただく」などです。丁寧語は丁寧な言い方、美しい言い方ですで、「~だ→~です」などです。
「分かる」は仕事上でも頻繁に使う言葉なので、正しい敬語表現をしっかり覚えておくといいでしょう。
「分かる」の尊敬語
「分かる」の尊敬語は「お分かりになる」ですが、「ご存知です」「ご理解されています」なども「分かる」の敬語表現として使えます。
客や目上の人に、理解できたかどうか尋ねる時、「お分かりになりましたか?」と聞くと、少し上から目線のような印象を与えてしまう可能性があるので、「お分かりいただけましたか?」など、謙譲表現も加えることで、印象を和らげることができます。
では客や上司に、複雑な物事を説明している場合、「分かりづらくてすみません」を敬語で言うとどうなるでしょう。主語が「私の説明」なら敬語は必要ありません。「(私の説明が)分かりづらくて申し訳ありません」になります。主語が目上の相手なら「(あなたが)お分かりになりにくいかと思いますので再度説明します」など、敬語を使いましょう。
「分かる」の謙譲語
「分かる」の謙譲語は「かしこまる」「承知する」です。職場でのカジュアルな場面なら「わかりました」でもいいですが、客や取引先などに対しては「かしこまりました」「承知しました」を使います。
「了解しました」は、目上の人に使ってはいけないと言われることがあります。しかし物事を筋道立てて理解するという意味の「了解」を使いたい場合もあるでしょう。そんな時は「了解いたしました」というように、「する」の謙譲語である「いたす」を加えることで、相手を立てる表現になります。
「分かる」の丁寧語
「分かる」の丁寧語は「分かりました」になります。丁寧語の「分かりました」はどのような場面で使えばいいでしょう。丁寧語には、目上の相手を立てる意味が含まれていないので、主語が目上の相手でも自分でもない時に使います。
はっきりしなかった物事が明らかになった時に使う場合「分かった」は、主語が目上の人でも自分でもなく「物事」が主語なので、尊敬語や謙譲語は不要です。例えば「詳細な情報が分かりました。」「入荷の予定日が分かりました」などです。
「分かる」「解る」「判る」の使い分け方
ここからは様々な例文を紹介し、漢字によって意味がどう変わるのかを解説します。「分かる」「解る」「判る」の使い分けをしたい方は参考にしてください。
気持ちが分かる
「あなたの気持ちが分かる」「あなたの気持ちが解る「あなたの気持ちが判る」の意味の違いはなんでしょう。
「分かる」を使う場合
「分かる」は、「解る」よりも包括的・全体的な意味合いなので、「あなた」の普段の生活や事情、背景を知った上で、「あなた」の今の状況が分かる、という意味になります。例えば厳しい上司の元で働いている人に、「上司があの人じゃ大変だね。あなたの気持ち分かるよ」というニュアンスです。
「解る」を使う場合
「解る」は、筋道だてて理解するという意味なので、何か具体的な出来事があり、その出来事の経緯を知った上で「あなた」の心情が理解できる時に使うことができます。例えば「いろいろ辛いことがあってあんなことをしてしまったんだね。あなたの気持ちが解るよ」というニュアンスです。
「判る」を使う場合
「判る」は判別・判断のように、区別して理解すると言う意味があります。「あなたの気持ちが判る」という場合、「喜怒哀楽のどの感情を持っているか判る」というニュアンスになります。
例えば、「明日のスピーチ、目立ちたがり屋のあなたなら緊張よりもワクワクしてるでしょ。あなたの気持ち判るよ」いうように「緊張」か「ワクワク」かの判別ができるので「判る」を使うことができます。
アートが分かる
美術や芸術作品に対して造詣が深い人に「あの人はアートが分かる」と言うことがあります。「アートが分かる」「アートが解る」「アートが判る」の意味はどのように違うのでしょうか。
「分かる」を使う場合
「分かる」は、対象となる物事を包括的・全体的にとらえるので、「アートが分かる」と言う場合は、アート全般についてよく知っているというニュアンスになります。
「解る」を使う場合
「解る」は筋道だてて理解するという意味なので、「アート」という広い意味を持つ対象よりも、特定の作品やジャンルについて、それが生まれた経緯や時代背景などを理解している時などに使う方が適しています。
例えば「彼はポップアートが解る」「彼はルネッサンス建築が解る」などです。「アートが解る」も間違いではありませんが、「分かる」よりさらにマニアックで詳しいイメージになるでしょう。
「判る」を使う場合
「判る」は、二つのものを区別したり優劣がわかる、という意味なので、「アートが判る」は、作品の優劣を判定できる、絵画などが本物か贋作かを判別できるという場合に使うのが適しています。
使い分けが難しいなら「分かる」か「わかる」
「分かる」という言葉は、使う人が伝えたい意味や背景によって、どの漢字が適しているのかが決まります。発信者側が、漢字の違いによる意味をよく理解して使う必要があるのはもちろんですが、読む人にも漢字の違いから意味の違いを理解する想像力・知力が必要です。
この記事では、「分かる」「解る」「判る」の文例をいろいろ紹介しながら解説していますが、それでも「このケースはどれを使うのか」と迷うこともあるでしょう。また受け取る相手によっては、意味の違いを分かってもらえない場合もあります。
そのような場合は、「わかる」「分かる」を使えば間違いありません。公共性の高い文書や、広い層の人たちに向けた文章なら「わかる」「分かる」を使いましょう。
「分かる」「解る」「判る」を正しく使い分けよう
「分かる」の意味・「解る」や「判る」との違い・使い分け・敬語表現など解説してきましたがいかがでしたか。普段よく使っている「分かる」がいろいろな意味を持ち、使う漢字によって微妙な意味の違いを表せることがおわかりいただけたでしょう。
言葉の細かな違いを理解して正しく使うことで、より細かなニュアンスを伝えられたり、あなたの印象をよくすることができます。「分かる」はビジネスでも日常生活でもよく使う言葉なので、ぜひ、この記事を正しい言葉選びに役立ててください。