「慣れる」の意味と使い方
「慣れる」という言葉は、日常の会話でも良く聞かれる言葉です。良く使う言葉だけれど、「慣れる」という言葉を知り尽くして使っている人はそれ程多くないでしょう。ここでは「慣れる」という言葉の意味や使い方を、とことん掘り下げていこうとおもいます。
「慣れる」の意味
「慣れる」は、使う時(T)・所(P)・場合(O)によって微妙にニュアンスが違ってくる言葉ですが、次のような意味があります。
1.一つの事案に対して時間をかけて違和感を無くしていく状態を表す。
2.経験を重ねることによって、あることに熟練するという意味。
3.道具などを何年も使って使いこなせた状態を表す。
4.人が人と多く接して、その人の癖や性格に違和感を持たなくなること。
5.人が動物に対して、或いは動物が人に対して、警戒心を持たなくなる状態を表す。
などの時・所・場合に使われる言葉です。
「慣れる」の使い方:時(T)に関する例文
「慣れる」を時(T)を意識して使う場合の例文です。
例文1:通勤時間が長いので、最初の頃はどうやって長い時間を過ごしたらよいのか戸惑いましたが、あれから3年、時間を上手く使うコツが身に付き、遠距離通勤にも慣れました。
例文2:限られた時間内で、これだけのノルマをこなせるかと不安でしたが、「慣れる」って凄いです。繰り返しの中でちゃんとノルマを達成できるようになりましたよ。
例文3:早起きは苦手でしたが、「慣れる」って凄いです。最近はちゃんと起きられるようになりました。
「慣れる」の使い方:所(P)に関しての例文
「慣れる」を所(P)を意識して使う場合の例文を紹介します。
例文1:郵便配達員になりたての頃は、分りにくい番地には苦労しましたが、地域に「慣れる」とそういう苦労も今は嘘みたいです。
例文2:引っ越したばかりの頃は、隣近所とも余り交流もありませんでしたが、すっかり「慣れた」今は、結構仲良くやれています。
例文3:昔ながらの「お祭り」離れが心配されましたが、ちょっとした切っ掛けで楽しさを知り、地域にも「慣れる」と、リピーターが増えて、地域出身者以外の若者の参加が急増しました。
「慣れる」の使い方:場合(O)に関しての例文
「慣れる」を場合(O)を意識して使う時の例文を紹介します。
例文1:新しい機種のパソコンにも「慣れて」きたので、作業がはかどります。
例文2:母の小言も「慣れる」と、「カラスの勝手」といった感じで聞き流せています。
例文3:新しい仕事も大分「慣れて」きました。
「慣れる」と「馴れる」の違い
「慣れる」と「馴れる」は、漢字で書いてみると違いが分りますが、話し言葉では同じ発音ですから、なかなか区別することの難しい漢字です。ここでは「慣れる」と「馴れる」について、意味や使い方をいろいろの角度から検証します。
「馴れる」の意味
ここまで「慣れる」についてはいろいろと説明してきましたが、では「馴れる」にはどんな意味があるのだろうか。
「慣れる」と比較しながら「馴れる」の意味を解説します。
「慣(かん)」という漢字は、「継続して同じことを繰り返すことで、何かが身に付く」という意味を持っています。2字熟語には「慣用」「慣例」などがあり、3字熟語には「慣用句」「慣性力」が、4字熟語には「慣性運動」「慣性能率」「慣性誘導」があります。
一方「馴(じゅん)」という漢字は、「少しずつ従順になる」と言う意味を持っています。2字熟語には「馴化」「馴鹿」が、3字熟語には「場馴れ」「不馴れ」が、4字熟語には「顔馴染み」「昔馴染み」があります。
こうしてみると、「慣れる」と「馴れる」は見た目だけでなく、漢字のもつ意味も微妙に違う事がわかります。
「馴れる」の使い方
「慣れる」が人や動物以外の対象物に対して、徐々に違和感を無くしてゆく過程を表すのに対して、「馴れる」は人や動物に対して段々に親しくなり、違和感を無くしてゆくことを言い表す言葉です。
ここでは「馴れる」を使った文章をいくつか紹介します。
例文1:愛犬は息子によく「馴れている」。
例文2:動物は優しく世話してくれる人に良く「馴れる」。
例文3:あの子は人見知りする子だが、担任には良く「馴れている」。
例文4:インコは人に「馴れる」と口真似をします。
「慣れる」の類語
「慣れる」には、何かを成就するために、少しずつ技術を身に付けて行く過程を言い表す場合と、同じことを繰り返すことで、一つの技術を習得する過程を言い表す場合の2とおりありますが、「慣れる」ではなく、似たような別の言葉(類語)で表す場合もあります。
ここでは「慣れる」の類語として、「順応する」「適応する」「馴染む」「耐性が付く」「把握する」などを例文を使ってを紹介します。
「慣れる」の類語:順応するの例文
「慣れる」の類語に「順応する」があります。「順応」の意味は、環境や境遇などに逆らわず、自分の考え方や行動を変えることです。つまり「順応する」は、環境や人にうまく対応できるという意味で使われる言葉です。
どんな風に使うか、例文をいくつか紹介します。
例文1:彼の職場での評判は良いです。短期間に「順応した」のは努力だけでなく、性格の良さもあるのでしょう。
例文2:捨て犬は警戒心が強く、新しい環境に「順応する」のが下手ですが、一度心を開くと、飼い主との絆はより強いものになるといわれています。
「慣れる」の類語:適応するの例文
「慣れる」の類語「適応する」の「適応」の意味は、環境や人に対して、自分の意志や行動で慣れるようにすることです。「順応」が、環境や人に対して、徐々に(自然に)慣れていく意味でしたので、この点で異なります。
例文は次のようになります。
例文1:外来植物のたくましい生命力は、日本の風土に「適応する」ことで身に付けてきたものでしょう。
例文2:あの頑固な性格では、新しい規則に「適応する」のは大変でしょう。
「慣れる」の類語:馴染むの例文
「慣れる」の類語に「馴染む」がありますが、「馴染む」は「ぴったり感」を実感できるという意味で使われます。あるものに「慣れて」違和感が無くなることでもあります。
例文には次のようなものがあります。
例文1:彼女とは良い友達です。「幼馴染み」ということもありますが、彼女性格が良いですから、誰からも好かれています。
例文2:このお店は「馴染み」のお店なので、私の好みも良く分かってくれています。
例文3:あのオブジェは、この風景によく「馴染んで」います。
「慣れる」の類語:耐性が付くの例文
「慣れる」の類語として「耐性が付く」という言い方もできます。「耐性」の意味は、
1.生物などが、環境の変化に対して適応していく能力のこと。
2.病原菌などが、一つの薬物などに対して対抗する力を持つことです。
「耐性が付く」ことは、「適応する」や「順応する」のと同じように、「慣れる」ことによって強くなることです。例文は次のようなものがあります。
例文1:インフルエンザの予防注射は効かないという人もいますが、菌に対する「耐性が付く」ことは確かです。
例文2:除草剤も「耐性がついてしまった」雑草には効き目がありません。
「慣れる」の類語:把握するの例文
「慣れる」の類語として「把握する」という表現の仕方もあります。「把握」の意味は、何かを「つかむ」「握りしめる」という他に、何かを「理解する」という意味もあります。良く理解するには、理解する対象に対して「慣れる」ことも大事です。
「つかむ」や「握りしめる」を広角に考えると、「把握」は「慣れること」に通じるところがあるという解釈によります。例文は次のようになります。
例文1:ヨガの指導者になるには、ヨガの極意を「把握する」ことと、日頃の鍛錬が大事です。
例文2:数学の応用問題は、基本となる公式を「把握する」ことが先決です。
「慣れる」の言い換え例文:順応する
「慣れる」の言い換え方の例文を紹介します。
慣れる例文:新しい職場に「慣れる」には、少し時間がかかりそうです。
順応する例文:新しい職場に「順応する」には、時間と努力が必要でしょう。
「慣れる」の言い換え文例文:馴染む
「慣れる」の言い換え方の例文を紹介します。
慣れる例文:早くこの環境に「慣れる」ことが、この地で生きて行く第一条件でしょう。
馴染む例文:早くこの環境に「馴染む」ことで、この地で生きて行く活路が見出せるでしょう。
「慣れる」にも敬語はある?
「慣れる」の敬語はあるのか、あるとしたらどんなものか、その点を知りたい人もいるでしょう。ここでは「慣れる」の敬語についてお話します。
「慣れる」の敬語
「慣れる」の敬語は「慣れる」に「丁寧語」や「謙譲語」を付け加えることが、相手に対して敬う気持(敬語的表現)を伝えるのに一番自然な表現方法です。、
どうしても「慣れる」を敬語に変えたい時は次のような表現もあります。
例文1.このお仕事にもう「お慣れになりましたか?」
例文2.あの気難しい方に「お慣れになるの大変でしょう」
「慣れる」の丁寧語例文
「慣れる」を敬語的に表現するには、「丁寧語」と合体させることが一番自然でベストな表現方法です。
「丁寧語」とは「お」「ご」の接頭語や、「です」「ます」「ございます」「いたします」の助動詞を加えた表現になります。
例文は次のようになります。
例文1.職場復帰「され」、早くもお仕事に「慣れた」とお聞きしており「ます」。
この例文では、「職場復帰し、早くも仕事に慣れたと聞いている。」を「おしごと」「お聞き」と「復帰され」と「聞いております」の丁寧語で敬語的表現になっています。
「慣れる」の謙譲語例文
「慣れる」を敬語的に表現する方法として、「丁寧語」と合体させることもありますが、「謙譲語」との合体で表現する方法もあります。
謙譲語とは自分をへりくだって表現する言葉のことを言います。例文は次のようになります。
例文1.この仕事は少し難しいとおもいますが、なるべく早く慣れていただくようお願いします。
この例文では、「この仕事は少し難しいと思うが、なるべく早く慣れてください。」を、慣れて「いただくよう」とお願い「します」の謙譲語を加えることで、敬語的表現になっています。
「慣れる」に関することわざ
「慣れる」についていろいろ検証してきましたが、ここでは「慣れる」に関することわざをいくつか紹介します。頭に入れておくと役に立つものもあるかも知れません。挨拶する時などの参考にしてください。
習うより「慣れろ」の意味
「慣れる」に関することわざに「習うより慣れろ」というのがあります。このことわざの解釈は、
「何事も、特別に人から教えてもらうより、苦労して経験を積んだり練習を重ねることで、じっくり体で覚えていく方が、確実に自分のものにできる」という意味です。
「慣れは」怖いの意味
「慣れる」に関することわざとして知られるものに「慣れは怖い」、があります。このことわざは、
「慣れる」ことで初心を忘れてしまい、改善の余地が出てきても「まあいいや」という決断を下してしまう事がある、それは本当に怖い事なのだ、ということを言っています。
「習慣」は第二の天性なりの意味
「慣れる」の意味を持つことわざには、上記の他に「習慣は第二の天性なり」というのがあります。
「習慣」とは、一つのことが何度も何度も繰り返されるうちに、そのことが当たり前になることですが、このことわざの解釈は次のようになります。
あることを繰り返し繰り返し行っていると、その事をうっかり行わなかったりすると、生活のリズムが狂ったり、違和感を感じるもので、習慣として身に付いたものは、生まれながらに持っているもの(天性)と同じになる、という意味です。
習うより慣れろに似たことわざは?
「習うより慣れろ」と類義的ことわざに、「亀の甲より年の功」というのがあります。この意味は次のようになります。
亀は万年も生きると言われる長生きの生物として知られていますが、万年生きても亀はただの亀に過ぎないけれど、人間の年長者は、そこ迄に経験して得た知識や技術は、尊敬に値するものであり、決して侮れないという意味です。
「慣れる」の反対語
ここまで「慣れる」について、「意味」や「使い方」・「類語」・「丁寧語」・「謙譲語」・「ことわざ」などを紹介してきましたが、ここでは「反対語」についてお話します。
「慣れる」⇔「不慣れ」につて
「慣れる」の反対語は「不慣れ」です。意味は文字どおり「慣れないこと」です。例文は次のようなものがあります。
例文1:初めての一人暮らしなので、料理も掃除も洗濯も、何もかも不慣れで戸惑う毎日です。
例文2:先日歯医者に行ったのですが、新人の歯科衛生士が不慣れな手つきで治療してくれ、こちらの方がドキドキでした。
例文3:タクシードライバーになったのですが、なにしろ不慣れなもので、お客さんへの応対にも戸惑っています。
「慣れる」にもTPOがある
「慣れる」という言葉は、普段の会話でも良く聞かれ良く使われる言葉ですが、使う場所・対象によって微妙にニュアンスが違う言葉でもあります。
パソコンなどで検索すると、同じ「なれる」でも「慣れる」と「馴れる」という2種がでます。その上いろいろ調べてみると、「慣れる」には、時(T)・所(P)・場合(O)によって、使い方が違う事が分りました。これは日本語の妙でもあり、難しさでもあります。
「慣れる」についていろいろ説明しました。今後の参考にしてください。