「申し上げます」の意味と使い方
日本人であっても日本語の敬語の活用に頭を悩ませることがあります。敬語は普段から使っていないといざというときに誤って使ってしまうことがあります。何となく耳にしたことがあるフレーズを、何となく使ってみたら大きな間違いを犯していた、ということにならないようにもきちんと意味と使い方を理解しておく必要があります。
誰でも一度は耳にしたことがある「申し上げます」というフレーズもその一つで、雰囲気で何となく使っていると適切な使い方ができていないということにもなりかねません。そこで、今さら人には聞きづらいという方にも改めて「申し上げます」の意味と使い方をご紹介しますので、ぜひともご参考にしてください。
意味
そもそも「申し上げます」という意味は、「言う」ということを表しています。相手が何かを伝えるときに「言う」ということを敬語表現にしています。何かをお願いするときや自分の意見を伝えるときの末尾に「申し上げます」という言葉で自分の立ち位置を低く伝えることができる言葉です。
ビジネスシーンでもよく「申し上げます」と言われることがありますが、相手が自分を敬ってくれていることがわかります。
使い方
「申し上げます」の使い方としては、大前提に相手の方が立場が上であることがポイントです。自分の意見を述べる際に相手に失礼にならないように、自分の立場をわきまえるために使う表現であり、上司や取引先やお客様といった方に使われることがとても多いです。
自分をへりくだる言い方
「申し上げます」は自分をへりくだる言い方です。自分の意見や主張をするときに、控えめに見せることができます。自分をへりくだる意味がある「申し上げる」に対して、「申す」という表現はただ単に丁寧に言うときに使う言い方なのでうまく使い分けましょう。
例えば自分の名前を述べる際には「私はxxと申します」と言います。「私はxxと申し上げます。」とは誤った表現なので間違った理解をしないように気をつけましょう。
「申し上げます」の例文
ビジネスシーンや挨拶文章などあらゆる場面で「申し上げます」というフレーズが使われていますが、よりわかりやすくするために例文を使って確認してみましょう。
例文は実際に日常で起こりえるシーンにあてはめることができるため、そのまま使うこともできるので覚えておくことをおすすめします。スピーチや謝罪、感謝を伝える文書にもあらゆるシーンで「申し上げます」は大活躍です。
暑中お見舞い申し上げます
季節の挨拶でよくみかける「暑中お見舞い申し上げます」は夏場に使われるご挨拶です。これはお正月に明けましておめでとうございます、と申し上げることと同じような文章です。夏の暑いときに相手の体調や状況を気づかう意味が込められています。お中元を送る際にに一言添える場合にもとても多く使われる表現です。
御礼申し上げます
「御礼申し上げます」とは社会人としては常識であり感謝を伝える表現です。意味としてはありがとうございますという意味になります。感謝という意味がある礼を丁寧に御礼と言い換え、言いますという意味も相手を敬って自分をへりくだる言い方です。
申し上げますと組み合わせることで、最上級に相手を立てた敬語表現での感謝を表す言い方になります。「心から御礼申し上げます」と付け加えるとさらに感情がこもった表現となり、相手に感謝の気持ちが伝わりやすいです。
謹んでお悔やみ申し上げます
お葬式や不幸なことは人生にとってはつきものです。不幸の際に相手を察する敬語表現として「謹んでお悔やみ申し上げます」という文章はよく使われています。お悔やみという単体の意味としては、誰かの死をとても悲しんでいるいう意味になります。
本当に悲しんでいることを伝える、という内容は相手を敬った言い方となります。お葬式のシチュエーションとしては、その他にも「ご愁傷様です」や「ご冥福をお祈り申し上げます」や「心中お察しします」なども適切な文章です。
よろしくお願い申し上げます
ビジネスシーンでもよく使われる「よろしくお願い申し上げます」は、例えば見積もり依頼を出した際や、何かを検討してもらいたいときの最後に使うことが多々あります。取引先や目上の人に対して何かをお願いするときなどに「よろしくお願い申し上げます」と使います。
しかし、同僚や親しい仲の方にお願いするときには申し上げますという表現は少しやりすぎと感じることも多く、普段の表現としては「よろしくお願いします」という言い方で十分です。同じ意味であっても相手によって使い分けましょう。
「申し上げます」の敬語表現
「申し上げます」は相手を敬う敬語表現ですが、これは自分が主語であるときにのみ使うことができます。敬語で丁寧に言いたいあまりに相手が主語のときに「申された」や「申し上げられた」という表現は日本語として存在しません。
申し上げるは時と場合により敬語であっても意味は同じであっても変化する言葉ですが、お決まりのフレーズがありますので、その他の敬語表現も一緒に覚えておくとレパートリーも広がり正しい日本語を使うことができるようになります。
丁寧語
申し上げますの本来の言葉や意味は「言う」という言葉です。言うという言葉を丁寧語にした場合「言います」と変化します。その他にも「来る」という言葉を丁寧語にした場合は「来ます」と変化し、「食べる」という動詞の丁寧語は「食べます」と変化します。
これらのことからわかるように丁寧語とは最後に「ます」とつくということがわかります。それと同様に、語尾が「です」や「ございます」も丁寧語になります。丁寧語の目的は相手に対して丁寧に伝えることです。
尊敬語
尊敬語は相手を立てる言い方であり、目上の人に使う敬語表現です。尊敬語での「言う」は、「おっしゃる」という表現が最も一般的な言い方です。
その他にも「言われる」という言い方も誤りではありません。尊敬語での「来る」という動詞は、「いらっしゃる」となり、「食べる」の場合は、「召し上がる」と言い換えることで相手への尊敬を表します。完全に元の動詞の原型がなくなるため、日本語はその他の言語に比べると難しいといわれる要因の1つです。
謙譲語
「申し上げます」は「言う」の謙譲語に値します。相手を立てるがゆえに自分をへりくだっていう言い方です。謙譲語での「来る」は「参る」や「伺う」という言い方に変化し、「食べる」の場合は、「いただく」や「頂戴する」という言い方となります。
丁寧語、尊敬語、謙譲語を操れなければ一人前の社会人になることは難しいので、意味と使い方を理解してシチュエーションの応じた言葉を使いましょう。
「申し上げます」の言い換え方
日本の文化として何かをお願いしたり否定したりすることはあまり好まれません。そのため、お願いするときにも「申し上げます」と自分は伝えます、つまりは言いますということでお願いすることになるのですが、さらにオブラートに包むような柔らかい言い換え方があります。
それは「幸いです」という言い方です。「幸いです」とは嬉しい、ありがたいという意味がありますが、「ご確認いただけると幸いです」など、相手がその動作をしてくれたら私はとても助かります、ありがたいですというニュアンスになります。
「ご確認いただけますよう、お願い申し上げます」と似た意味があり、言い換えの言葉として使うことができます。
「申し上げます」と「お願い致します」の違い
ビジネスでEメールが主流となりましたが、ビジネスメールで「お願い申し上げます」と「お願い致します」というフレーズをよく目にします。「お願いします」と「お願い致します」はとても似ているように感じますが、全く違う意味を持っています。その意味を理解してきちんと使い分けをしましょう。
申し上げます
「申し上げます」はこれまでも解説してきたように、「言う」という言葉の謙譲語です。そのため「申し上げます」は自分が発言するときに使います。
お願い致します
「申し上げます」と「お願い致します」の根本的に違う点は、致しますには「言う」という意味はなく「する」という意味があるということです。「致す」という言葉は「する」の謙譲語であり、申し上げますとは同じ敬語表現に分類されます。
申しあげますは平仮名でもいいのか
申し上げますの「上げます」を平仮名にすることは好ましくありません。これは助動詞であるかどうかで漢字と平仮名を使い分けることが必要となりますが、漢字でも平仮名でも間違いではありません。
そのため、読み手は誰であるかによって使い分けることも1つの方法です。正式な文章で固いシチュエーションであれば漢字を使う方がふさわしいです。
申し上げると似た表現
申し上げると似た表現や言葉使いをご紹介します。言葉が変わると少し意味も異なります。似ているようで全く違う「申す」についてご紹介しますので、正しいシチュエーションで使うようにしましょう。
少し言葉を変えるだけでニュアンスがとても変わることがあるので要注意で、ある似ている言葉も含めご紹介しますので、言葉のレパートリーを増やし状況の説明をするスキルも身に付けましょう。
申し立てる
「言い立てる」の敬語表現が「申し立てる」となります。言い立てるとは、はっきりと物事を言うという意味があり、あまり使用する機会がないようにも感じますが、絶対的に主張するときなどに言い立てるという表現を使うこともあります。
例えば、「苦情を申し立てます」などと使うことがあり、どちらかというと反対意見や不満などを主張するときに使います。誓約書のような文面でよく見かけることがあります。
申し出る
「申し出る」には、「届け出る」に近い意味があり、意見や希望などを伝えるという意味があります。使い方としては、お客様からの意見などをお申し出ということがあります。相手に対して敬いがある方に対しては、申し出の前に「お」をつけて丁寧な言い方にします。
自身で使う場合には、援助を申し出るなどと使うことがあります。カスタマーサポートなどで、「お手伝いの必要な方は、ご遠慮なくお申し出ください」などとよく耳にします。
申し伝える
申し伝えるとは伝言するという意味があります。ビジネスシーンでは電話口などで、不在の人の取次ぎの際に、「折り返しお電話するように申し伝えます」などというフレーズが主流です。このときに、「言っておきます」などという表現は不適切なため、申し伝えますという文を活用しましょう。
申し上げるの英語バージョン
英語では日本語のように敬語という表現がなく、外国人が日本語を学ぶときに苦労することがあります。しかし、通訳や翻訳の世界では、「申し上げます」という表現を英語に訳すこともあります。
そんなときに適切な英語をご紹介しますので、ぜひともご参考にしてください。英語はに通訳する場合は100%同じニュアンスでの言い換えは不可能に近いですが、申し上げるの意味として成り立つ言葉はいくつかあります。ケースバイケースで使い分けてみましょう。
speak
「speak」は一般的に日本語では「話す」という意味です。「Can you speak Japanese?」と尋ねた場合、「あなたは日本語を話せますか」という意味になります。申し上げますを言うという意味に捉えた場合、話すということも伝達するという一種から「speak」と訳すことも可能です。
tell
「tell」は1番多く認識されている意味は「伝える」「言う」「教える」などがあります。ここでの「教える」は勉強を教えるというニュアンスではなく、何か情報を教えるというようなニュアンスとなります。申し上げますとという意味を知らせるという意味でとる場合は、「tell」と訳すことが相応しいです。
say
英語で「say」はまさに言うという意味で使われることが多いので、申し上げますに1番近い言葉です。例えば「Please say hello to your co-workers from me」を訳すと「同僚の方によろしくお願い申し上げますとお伝えください」という意味になります。
英語のイディオムとして「Say hello to」はよろしく伝えてほしい、つまりは申し上げますという意味が込められているため、あらゆるシチュエーションで使われることがあります。
申し上げますを使いこなしてビジネスでも活用しよう
申し上げますについてのご紹介はいかがでしたか。申し上げますはビジネスシーンでも頻繁に使われる言葉であり、活用方法もとても豊富です。ビジネスシーンだけでなくても、人間付き合いや円滑にコミュニケーションをはかるためにも欠かせないワードです。
社会人になると敬語を使うことはマストであり、正しい言葉使いは必須です。社内や社外を問わず謙譲語を使うシーンは若手であればあるほど多いため、社会人デビューする前にきちんと把握してすぐに実践で使えるように身に付けておきましょう。これからの自身の成長とスキルアップにも言葉使いは必ず必要となります。