「となります」は正しい敬語なのか・「になります」との違い

ビジネススキル

「となります」は正しい敬語?

「となります」は正しい敬語です。「となります」は「となる」に「です」という助詞を付け、丁寧語に変化させた敬語です。

ここでは、「となります」の文法と丁寧語についてご紹介します。

「となります」の文法

「となります」を文節で区切ると、「と/なり/ます」です。「と」が格助詞と呼ばれる助詞、「なり」が「なる」が変化した動詞、「ます」が丁寧な断定を表す助詞です。それぞれの品詞と意味を詳しく見てみましょう。

「と」は格助詞

「となります」の「と」は格助詞です。格助詞は体言(名詞など主語になれるもの)について、他の語とどのような関係なのかを示す助詞です。「となります」の直前は必ず体言なので、例えば「美しいとなります」とは言いません。

「と」は連用修飾語の一部を構成します。連用修飾語とは用言(動詞・形容詞・形容動詞など、単独で述語になるもの)を修飾する部分のことです。

用言は物事の動作や性質や状態を述べます。「と」の直前の体言(名詞)は「なり」という用言(動詞)を修飾しています。

「なり」は動詞

「となります」の「なり」は動詞「なる」の連用形です。「ます」という助詞へ接続するため、連用形になっています。

「ます」は助詞

「となります」の「ます」は助詞です。丁寧な表現をするときに使います。動詞または動詞型に活用する助動詞の連用形に付きます。ここでは「なる」という動詞の連用形と接続しています。

この「ます」が付くことで「となります」は敬語になります。

「となります」は丁寧語

「となります」は丁寧語です。丁寧語とは「聞き手に対しての敬意を表す言葉」です。丁寧な表現をする言葉なので「丁寧語」と言います。

敬語には他に尊敬語と謙譲語があります。尊敬語には相手を高める効果があり、謙譲語には自分を謙遜する効果があります。丁寧語には相手を高めたり、自分を謙遜したりする効果はありません。

「となります」の意味と用法

「となります」は、「(直前の語の)結果に至ること」を表します。「なる」にはさまざまな意味がありますが、「となります」の「なる」は主に「状態が変わる」「至る・達する」「作用する」の意味で使われます。

「なる」の意味って?

「なる」は、「物事が実現する」「状態が変わる」「至る・達する」「作用する」「許す」「作られる」「構成される」「恩恵を受ける」「尊敬語」などを表します。

以下は「なる」の意味ごとに分けた例文です。

「なる」の意味例文
物事が実現する連覇がなる
状態が変わる水の泡になる
至る・達する夜になる
作用する議論の元となる、ためになる話
許す我慢ならない
作られる芸術家の手になる絵
構成される三部からなる舞台
恩恵を受ける世話になる
尊敬語お休みになる

「となります」と「になります」の違いって?

「となります」と似た言葉に「になります」があります。「となります」と「になります」の違いは助詞の「に」と「と」です。「に」も「と」も格助詞と呼ばれる種類の助詞です。

「となります」の「と」の意味

「となります」の「と」は結果、対象、引用、共同の相手、並列を意味する格助詞です。「となります」の「と」は「結果」の意味で使われます。

以下は「と」の意味ごとに分けた例文です。

格助詞「と」の意味例文
結果合格となる
対象母親と会う
引用「さようなら」と言った
共同の相手友達と出かける
並列砂糖と塩を並べる

「になります」の「に」の意味

「になります」の「に」は結果のほか、状態、相手、目的、理由、時間や場所などを意味する格助詞です。「になります」の「に」は「結果」または「状態」の意味で使われます。

以下は「に」の意味ごとに分けた例文です。

格助詞「に」の意味例文
結果再試験になる
状態真っ直ぐに進む
相手父親に会う
目的涼みに行く
理由暑さに喘ぐ
時間や場所12時に集合する

「となります」と「になります」の使い分け方

「となります」の「と」は「結果」を、「になります」の「に」は「結果・状態」を表します。「状態」など、片方にしかない意味が出たとき、「となります」と「になります」には違いが生まれます。実際の例文から「となります」と「になります」の使い分けをみてみましょう。

最後になりますが

「となります」と「になります」の使い分け方一つ目は、「最後になりますが」です。格助詞の「に」は「結果」を表します。動詞「なる」は「状態が変わる」または「至る・達する」ことを意味します。「最後に至りますが」という意味です。

「最後になりますが」は「最後となりますが」に言い換えることができます。「と」も「結果」を意味する格助詞だからです。

ごちそうになります

「となります」と「になります」の使い分け方二つ目は、「ごちそうになります」です。「ごちそうになります」は食事などを振る舞われ、もてなしを受けることを意味します。敬語「です」をとると「ごちそうになる」です。

「ごちそうになります」の格助詞「に」は「状態」を表します。動詞「なる」は「恩恵を受ける」という意味です。合わせて、「ごちそうという恩恵を受ける状態になる」ことを表します。

「ごちそうになります」は「ごちそうとなります」に言い換えることができません。「となります」の格助詞「と」は「状態」を表さないからです。格助詞「と」は「結果」を表します。「ごちそうとなります」というと、自分が「ごちそうそのものになる」という意味に聞こえます。

「ごちそう」は「馳走」の美化語(丁寧に言った言葉)です。「馳走」をしてくれた人を敬います。「馳走」は名詞で、料理を出すなどして相手をもてなすこと、またその料理を表します。

お世話になります

「となります」と「になります」の使い分け方三つ目は、「お世話になります」です。「お世話になります」は面倒をみてくれた相手に対し感謝の表現をするときに使います。敬語「ます」をとると「お世話になる」です。

「お世話になります」の「に」は「状態」を表します。「なる」は「他からその恩恵を受ける」という意味です。合わせて、「お世話を受ける状態になる」ことを表します。

「お世話になります」は「お世話となります」に言い換えることができません。格助詞「と」は「状態」を表さないので、「お世話となります」では意味が通じません。「ごちそうになります」と同じです。

「お世話」は「世話」の美化語です。「世話」をしてくれた人を敬います。「世話」は名詞です。

こちらが弟になります

「となります」と「になります」の使い分け方四つ目は、「こちらが弟になります」です。「こちらが弟になります」は自分の弟を他人に紹介するときに使います。「こちらが弟になります」は「こちらが弟となります」に言い換えることができません。

「こちらが弟になります」の「になります」は、本来誤用だったものが繰り返し使われた結果、定着した表現です。本来は「こちらが弟です」が正しい用法です。

「なる」には「お(ご)~になる」という形で、尊敬語の用法があります。例えば「お休みになる」などです。「になる」はこの尊敬語のイメージから、丁寧な言葉として浸透し、「になります」の誤用を生み出したと考えられます。

百円になります

「となります」と「になります」の使い分け方五つ目は「百円になります」です。「百円になります」は店で支払いをするとき、店員が値段を提示する際に使います。「こちらが百円になります」は「こちらが百円となります」に言い換えることができません。

「百円になります」は「こちらが弟になります」と同じく、「になります」の誤用から広まった表現です。「百円になります」を正しい表現に直すと、「百円です」「百円でございます」です。

「となります」の例文

「となります」の例文を7つご紹介します。「終了となりますのでご了承ください」「いつ頃の配送となりますでしょうか」「ご迷惑となりますため」「運びとなりました」「幹事となりまして」「有効となります」「必要となります」です。それぞれの意味を見てみましょう。

終了となりますのでご了承ください

「となります」の例文一つ目は「無くなり次第、終了となりますのでご了承ください」です。

この「となります」の「なる」は「至る・達する」ことを意味します。「と」は「結果」を表す格助詞です。「終了となります」は「終了状態に至る」という意味です。

いつ頃の配送となりますでしょうか

「となります」の例文二つ目は「いつ頃の配送となりますでしょうか」です。

この「となります」の「なる」は「至る・達する」ことを意味します。「と」は「結果」を表す格助詞です。「いつ頃の配送となりますでしょうか」は「いつ頃、配送の時間(状態)に至るでしょうか」という意味です。

ご迷惑となりますため

「となります」の例文三つ目は「他のお客様のご迷惑となりますため、ご遠慮ください」です。

この「となります」の「なる」は「作用する」ことを意味します。「と」は「結果」を表す格助詞です。「ご迷惑となりますため」は「ご迷惑という作用を引き起こすため」という意味です。

「ご迷惑になる」と言い換えることもできますが、尊敬語「ご~なる」の用法と混じる恐れがあります。

運びとなりました

「となります」の例文四つ目は「結婚する運びとなりました」です。

「運び」は「ある段階に至ること」や「段取り」を表す名詞です。「と」は「結果」を表す格助詞です。「なる」は「至る・達する」ことを意味します。「結婚する運びとなりました」は「結婚するという段取りに至りました」という意味です。

幹事となりまして

「となります」の例文五つ目は「私どもが幹事となりまして、懇親会を開催いたします」です。

「と」は「結果」を表す格助詞です。「なる」は「物事の実現」や「状態が変わる」から転じて「任命される」ことを意味します。「幹事となりまして」は「幹事という職務に任命されまして」という意味です。

有効となります

「となります」の例文六つ目は「フリーパスは一年間有効となります」です。

「と」は「結果」を表す格助詞です。「なる」は「作用する」ことを意味します。「一年間有効となります」は「一年間有効に作用します」という意味です。

必要となります

「となります」の例文七つ目は「マイナンバーの提示が必要となります」です。

「と」は「結果」を表す格助詞です。「なる」は「至る・達する」や「作用する」ことを意味します。「マイナンバーの提示が必要となります」は「マイナンバーの提示が必要な状態です」という意味です。

「となります」の類語と言い換え表現

「となります」の類語と言い換え表現をご紹介します。「となります」の類語には「です」「とします」「相成ります」があります。それぞれ「だ」「とする」「相成る」の丁寧語です。

です

「となります」の類語一つ目は「です」です。「です」は「だ」の丁寧語です。体言や助詞、単語の語幹、終止形につけて丁寧さを表現します。「となります」に比べて簡潔な表現です。「になります」の置き換えとしても使います。敬語の分類では「ます」と同じ丁寧語です。

とします

「となります」の類語二つ目は「とします」です。「とします」は「とする」の丁寧語です。仮定や判断を意味します。例えば「無くなり次第、終了とします」という風に使います。「となります」の言い換えとして使う場合は「判断」を意味します。

相成ります

「となります」の類語三つ目は「相成ります」です。「相成ります」は「相成る」の丁寧語です。「相成る」は「なる」の格式ばった表現です。例えば「結婚と相成りました」という風に使います。フォーマルな席や手紙で使うと良いでしょう。

「となります」の英語

「となります」の英語表現をご紹介します。「となります」の英語表現には「it will be」「can be」「become」があります。それぞれ「(~に)なるだろう」「なりうる」「ある状態になる」という意味です。

it will be

「となります」の英語表現一つ目は「it will be」です。「(~に)なるだろう」という意味です。「We will be as one.(私たちは一丸となります)」のように使います。

「will」は未来のできごとを表します。「it will be」を使う場合は、既に結果が出たできごとに対してではなく、今後予想される結果や意気込みを言うときに使いましょう。「be」が「なる」の部分を表します。

can be

「となります」の英語表現二つ目は「can be」です。「なりうる」「~の場合がある」ということを意味します。「can be」のあとに名詞を続けることで「その名詞になりうる」という意味を表現します。

「can」は可能性を表します。状態が変化するときに使い、「なるだろう」という予想を含みます。

become

「となります」の英語表現三つ目は「become」です。「ある状態になる」ということを意味します。「She became an actress.(彼女は女優となりました)」のように使います。

「become」を「となります」の代わりに使う場合は、例文のように「became」とし、過去形で使うことが多いでしょう。

「となります」を正しく使い分けよう

今回は「となります」の敬語表現、用法、「になります」との違い、例文、類語、英語をご紹介しました。

「となります」という表現は知っていても、詳細な文法の意味までは触れる機会がなかったのではないでしょうか。この機会に「と」や「に」など助詞の意味も押さえておきましょう。

「となります」と「になります」の違いについて正しく理解し、正確な日本語表現を目指しましょう。

タイトルとURLをコピーしました