「ご承知おきください」の意味と使い方とは
「ご承知おきください」という言葉を使ったことがあるでしょうか。もしくは耳にしたことがあるでしょうか。ちょっと丁寧な言葉で、大人の社会で使う機会の多い言葉のひとつであり、一般にビジネスシーンでよく聞くことの多い言葉です。
この「ご承知おきください」の本当の意味と、その適切な使い方は意外と知られていません。そして間違った使い方をしているという方も多く見かけます。ご承知おきくださいは、尊敬語ではなく謙譲語です。きっと知らなかったという方も多いことでしょう。
そこで、この「ご承知おきください」の本当の意味と、正しい使い方を紹介します。今日から上手に使いこなして、キレイな日本語を話しましょう。
「ご承知おきください」の意味とは
「ご承知おきください」の意味は、「把握しておく」とか「認識しておく」ということです。
この「把握」や「認識」とは、「ただ知っている」ということではなく、どういうことかまで理解していることを含めて「知っている状態」を意味します。例えば「見たことある」とか「見かけた」程度のことでは足りません。ある程度、その事象に関して道筋なり内容などを理解していることを必要とします。
「ご承知おきください」の使い方
「ご承知おきください」の正しい使い方としては、例えば講師が教え子たちに丁寧な言葉を使い「把握しておいてね」とか「理解しておいてね」という場合に使用します。
目上の人に使う言葉ではなく、完全に自分より立場が下の者に対して用いられる表現です。謙譲語はへりくだった表現です。自分より立場が下といっても、使い方では相手に大変失礼な言葉になることもあります。
つまり、使い方を注意すべき言葉といえます。
「ご承知おきください」は正しい敬語なのでしょうか
まず「ご承知おきください」という表現自体は間違った言葉ではありません。言葉自体は存在している表現です。
ただし、これは尊敬語ではなく謙譲語です。存在している言葉ではありますが、使う相手を選ぶ言葉です。使い方を間違ったら恥ずかしい思いをします。
謙譲語は敬語ではありませんから、目上の人に使うと失礼にあたります。
目上の人に使っていいの?
「ご承知おください」は、どんな場合に使うでしょう。例えば使ったことが無いという方でも、言葉の印象からなんとなく「知る」とか「わかる」というフレーズに関係することは想像つくことでしょう。
「ご承知おきください」とは、「ひきうける」とか「わかる」という意味です。尊敬語ではありませんので目上の人には使えない言葉です。
「ご承知おきください」とは謙譲語
「ご承知おきください」は尊敬語ではなく、謙譲語です。つまり目上の相手に使うということは失礼にあたる言葉ということです。
ここでは、遠い昔のことで意味合いを覚えていないという方に尊敬語と謙譲語の違いを簡単に説明します。
尊敬語とは?
日本語には、言葉の意味だけでなくその言葉のもつ表現も理解しなければならないという難しいさがあります。尊敬語や謙譲語はその一例といえます。
尊敬語は、目上の相手に対してその相手を立てる表現のことをいいます。また、目上の人の動作を表現する場合に使用します。例えば「言う」なら「おっしゃる」と表現します。
謙譲語とは?
謙譲語は、動作の対象となる人を持ち上げて、自分を下げる場合に使用します。その動作を行う相手が目上の場合、動作を行う側の表現はへりくだった表現をしますが、これを謙譲語といいます。ちなみに目上の人に対して自分がとる動作を謙譲語と思われがちですが、他人の動作でも謙譲語に該当します。例えば「言う」なら「申す」になります。
丁寧に聞こえるけど謙譲語はへりくだった表現
丁寧な言葉だと、目上の人に使えそうに聞こえます。しかし、「ご承知おきください」は謙譲語だと説明したとおりへりくだった表現です。
へりくだった表現というのは「他人をうやまい自分は控えめにすること」です。謙遜するときに使う言葉です。ですから、謙遜するときの言葉を自分の動作を表現する場合なら使って問題はありません。しかし目上の人に使うことは良くありません。
「ご承知おきください」の言いかえ方法とは
「ご承知おきください」は、謙譲語ということは目上の人に向けて使うのが失礼な言葉です。ということであれば、別の言葉に言いかえなければなりません。この際「ご承知おきください」の意味が大切になってきます。
意味から言いかえる
「ご承知おきください」は「知っておいてください」という意味合いです。「承知」とは「理解する」という表現の謙譲語になります。この「理解する」や「引き受ける」という表現を尊敬語にしたものが「ご承知おきください」の言いかえ言葉となります。
「ご承知おきください」の表現を言いかえるのに適切な表現は「お含みおきください」や「何卒よろしくお願いします」が宜しいでしょう。
「ご承知おきください」の相手別の使い方とは
「ご承知おきください」について紹介してきましたが、このご承知おきくださいを上手に使うタイミングや適切な使い方は、意味を知っていてもよくわからないところでもあるでしょう。
そこで、相手別に上手な使い方と使うタイミングを紹介します。上手に使いこなせば、スマートで知的な社会人に見せることができるでしょう。
幹部など自分よりも目上の人の場合
目上の方には「ご承知おきください」を使う場合はないと考えておいた方が良いでしょう。
「ご承知おきください」は謙譲語です。へりくだった表現です。これを目上の人使うということは、相手に命令しているようにも聞こえてしまう可能性があるということです。表現を知らない幹部なら何も言いませんでしょう。しかし、言葉を知っている方からは「失礼な表現だ」と指摘されることがあるでしょう。
目上の方には同じ意味合いの尊敬語で「お含みおきください」と言いましょう。むしろこう表現できれば「社会人としてのマナーを知っている」と株が上がる可能性もあるでしょう。
自分よりも部下に使う場合
自分よりも部下に使う場合には「ご承知おきください」を使うことは問題ありません。ただし、この表現は少し命令口調に聞こえがちなことを忘れないようにしましょう。
そもそも謙譲語はへりくだった表現ですから、目下に使うことには問題はありません。とはいえ、日本語の美学は緩急や間合い、相手への配慮というところにもあります。目下だからと堂々とへりくだった表現をするのは美学に反するところでしょう。
「ご承知おきください」と自分よりも部下に使う場合には、言い方に配慮が必要です。「ご承知おきください」よりも、「承知しておいてね」くらいに柔らかい表現を用いるようにしましょう。
同僚に使う場合
同僚と仕事の最中「ご承知おきください」を使う場合、これは問題ないでしょう。相手の役職も階級も自分とさほど変わらない場合でしたら、失礼には当たりません。しかし「ご承知おきください」は謙譲語ですので、失礼にあたらないとしてもあまり相応しい表現とは言えません。
同僚といってもまったく歳も一緒なら良いですが、中には年上の方もいるでしょう。そうした相手には適切な使用とは言えません。
同僚に「ご承知おきください」くださいという表現を使う場合は、「何卒お願いします」の方が良いでしょう。
「ご承知おきください」は堅苦しい表現?
「ご承知おきください」は丁寧な言葉に聞こえるので、大人っぽい印象で使ってみたいと考えることもあるでしょう。ただ、堅苦しい雰囲気もありますので気をつけるべきです。堅苦しく聞こえる表現はかしこまった表現に聞こえがちです。
使い方や意味をなんとなく知っている表現は注意しましょう。
かしこまった表現は使い方に注意
「ご承知おきください」だけでなく、かしこまった表現は使い方に注意しましょう。尊敬語だと思い使っていたら、実は謙譲語だったという場合はたくさんあります。それは知っている人から見るとちょっと恥ずかしいシーンだったりします。
博学なように見えるのに、おもいっきり間違った表現をしているのは見ていられません。
「ご承知おきください」の例文として
それでは、「ご承知おきください」を使う場合について例文をあげて紹介します。ビジネスシーンだけでなく、日常にも「ご承知おきください」を使うポイントがあります。
実際の使い方を知ることで、より「ご承知おきください」を効果的に使うこともできるでしょう。
ビジネスシーンでは?
お仕事の場合では「ご承知おきください」は比較的使う頻度が多いイメージがあります。ですが、謙譲語であることを忘れないようにしましょう。
例えば上司に呼ばれました。何か指示を受けます。その際の返事はどうでしょう。「わかりました」と答えるのは悪くありません。しかし幼稚な表現ですので、社会人としては良い評価できません。
次に「了解です」ので場合ですが、これは適切ではありません。了解は本来、目上の人がその権限の範疇で許可する場合に使う言葉です。つまり失礼な表現となってしまいます。「承知しました」が最も適切な返答です。
ママ友交流会などの地域交流では?
地域の集まりや子供のスクールイベントでのママ友会などでも「ご承知おきください」を使う場合があるでしょう。例えばイベントの開催広報を任されたとき、文面に「ご承知おきください」と書いてみたいという場合もあるでしょう。適切な表現であるかは、その集まりにもよるでしょう。
年上の方も多く参加を募っている場合、謙譲語である「ご承知おきください」を使うのは失礼です。しかしそれが気心しれた仲なら、問題にはならないと言えます。
では、どのような言葉が良いのでしょうか。例えばバザーの開催で「雨天の際には延期となります。ご承知おきください」とするよりも、「雨天時は延期になります。何卒宜しくお願い致します」の方が良いでしょう。
学生さんが使う場合には?
学生さんも大学のサークル活動やゼミナールなど、オフィシャルな場面はあるでしょう。そして大学の講師や教授、OBさんと出会うこともあるでしょう。ですから丁寧な言葉を使いたくなるでしょう。
「ご承知おきください」は謙譲語です。OBさん、教授、講師にお願いする場合は適切な表現ではありません。ここは確実に失敗しないように尊敬語を使うようにしましょう。
例えば、ゼミナールの集まりの際に「先生方の控室は講堂を借りていますのでご承知おきください」は悪い例です。「控室として講堂を借りています。カギは開けています。お含みおきください」この方が良いでしょう。
「ご承知おきください」の漢字は?
ここまで説明したとおり「ご承知おきください」は謙譲語です。目上の人などに使えません。聞くと丁寧な言葉を使っているように聞こえるのですが、適切ではありません。
なんとなく分かったけど、どうして失礼にあたるのか理解できないという場合は、この言葉の漢字の意味から調べてみるとわかりやすいです。
「ご承知おきください」の漢字について、その意味を紹介します。
承知に登場する「承る」とは
「ご承知おきください」の承知に登場する「承る」の意味は、「謹んで受ける」とか「拝聴する」という表現になります。この「承る」はそもそもが謙譲語です。この言葉が含まれるということは、その意味合いが謙譲語となるということです。
「承知」は謙譲語ということは前述しましたが、「承る」の影響だということです。
「うけたまわる」には別の漢字もある
「承る」は「うけたまわる」と読みます。この「うけたまわる」には「承る」以外に別の漢字があります。それは「受け賜わる」です。ちなみみにこの「受け賜わる」について「賜わる」も謙譲語です。
「承る」と「受け賜わる」の違いとは
「承る」と「受け賜わる」の違いですが、使い方のニュアンスが違います。
「承る」は「引き受ける」という意味合いです。例えば、ウェーターさんがお客様から注文をうけたときは「承る」です。一方「受け賜わる」の方は、目上の人になにか頂くという意味です。例えば、会社の社長から報奨を受けたなどの場合は「受け賜わる」のほうです。同じ言葉ではありますが、使うシーンにより異なります。
適切な日本語は品格をあげる!
耳馴染みがなく難しい表現だと、丁寧な言葉に聞こえて相手を敬う表現にも聞こえます。そのため、意味を正しく把握していないのにもかかわらず使ってしまうということもあります。実際にこうして使っている人も多いです。
「ご承知おきください」は間違った使い方をすると失礼にあたる言葉です。目上の人に命令しているような言葉です。なかには多少失礼にしたくなる態度の目上の人もいることでしょう。しかしだからといって使ってはいけません。
日本語の良さは、相手を思いやり配慮する心のこもったところにあります。多言語にはなかなかない文化です。何度も説明していますが、尊敬語や謙譲語はその最たる例です。そして、これ以外にも丁寧語など多くの表現方法も存在しています。
相手を敬う心を込めて言葉を使うと、相手への配慮だけでなく使う人の良質なマナーを感じさせるという効果があります。