「当方」の読み方・反対語・類語・使い方・貴方のと違い|敬語

ビジネススキル

「当方」正しい使い方できてる?

ビジネスシーンにおいて、「当方」という表現を使ったことがある人、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。同じような意味で使用される、「弊社」や「当社」と比べると、出番の少ない表現ではありますが、口頭でも文章でも、時折使われる表現です。実は「当方」という言葉は、間違いやすいポイントがたくさんある表現の1つです。

知らず知らずのうちに、誤った使い方をしてしまっている方も多くいます。

しっかり意味を知り、正しく使えるようにしましょう。

「当方」読み方は?

読み方は「とうほう」と読みます。

どちらも音読みをします。

「当方」意味は何?

「当方」は「自分の属している方。自分の方。こちら。」という意味です。ビジネスシーンにおいては、自分の所属する会社や団体、部署、グループなどを表しています。プライベートシーンで使用される場合には、自分の家族や所属するクラブ、サークル、グループなどの団体を表す表現として使われています。

つまり「当方」は、一個人を表す表現ではなく、集団を表す表現として、「私たち」という意味で使用されます。詳しくは「当方を使うときは注意が必要」で後述します。

自分の属している方。自分の方。こちら。

https://dictionary.goo.ne.jp/jn/156838/meaning/m0u/

「当方」の類語にはどんなものがあるの?

ビジネスシーンにおいて「当方」と同じように、自分の会社を表す言葉はたくさんあります。「当社」「弊社」「我が社」「私共」「手前ども」「自社」などが「当方」の類語です。

実際のビジネスシーンで自分の会社を表す場合には、「当方」よりもこれらの言葉を使う機会のほうが格段に多くあります。なぜなら、「当方」はある限られた場合にのみ使用できる表現だからです。「当方」の使い方を下で見ていきます。

「当方」はどう使うの?

「当方」を使うことができる場面は、担当者が決まっていない場面やまだ正式に交渉や取り引きが始まっていない段階、自社以外にも他の企業が関わっているような場合などの限られた場面です。つまり、「誰が、とははっきり言えないが、自社または他社の誰かしら」というようなニュアンスを伝える場合に使用される言葉となります。

「当方」を一人称として使用する例

「当方」は少し曖昧なニュアンスを含んだ表現です。それぞれどんな場面で使用されているのか、例を見ていくことで分かりやすくなります。それぞれ使用例をあげていきます。

担当者が決まっていない場面

「当方」は「担当者はまだ決まっておらず、誰とは明確に言えないが、私たちの会社のうちのだれかが」ということを表す表現として使用されます。

・配属替えによって担当者の変更があり、後任担当者がまだ確定していない状況で、取引先に配属替えの報告をする場面
「異動に伴い担当者が変更となります。後任担当者が決まり次第、当方よりご挨拶申し上げます。」

・担当者が確定していない事業などに対してお客様や取引先からの問い合わせがあった場面
「担当者が決定次第、当方よりご連絡いたします。」

・張り紙などで「私たちの会社の誰か」を表す場面
「当方では一切の責任を負いかねます。」
「見つけ次第、当方で処分させていただきます。」

正式に交渉が始まる前段階での場面

「当方」は、まだお互いに取り引きをするかどうかは不明の状態で、特定の担当者や部署などは指定せず、漠然と「私たちの会社」を表す表現として使用されます。

・取り引き先へ、アポイントメントを取り付けるためのメールを送る場面
「ご都合のよろしい日時をご指定いただけましたら、当方よりお伺いいたします。」
「当方では、以下のような事業も対応しております。」

・応募書類の到着後に、担当者より直接連絡をすることを伝える場面
「応募書類の到着が確認でき次第、当方担当者よりご連絡させていただきます。」

自社以外にも他の会社もかかわっている場面

「当方」は、他社も関わる事案などにおいて、自分の会社だけでは無いため「弊社」や「当社」という言葉は使用できない状況で、「自分の会社か他の会社、またはその両方」を示す表現として使用されます。

・複数の企業で連携して、事業に対応できることをPRする場面
「当方では、グループ会社や協力会社と連携して、映像の企画、制作、撮影、編集まで対応することができます。」

・他企業や機関と協力をして原因を究明する作業をしている場面
「現在当方にて、専門機関と協力をしながら原因究明のための調査を行っております。」

「当方」を使うときは注意が必要!

ここまで、「当方」は自分の所属する会社や部署などの集団を表すことを説明してきました。時折、自分個人を表す言葉として「当方」を使用したり、社内や部署内で「当方」を使用している人が、意味合い的には間違った使い方であるため、注意が必要です。

個人をあらわす言葉としては使わない

「当方」を自分個人を表す「私」として使用している人を、時折見かけることがあります。前述してきたように「当方」は「私たち」という、自分の所属する団体を表しています。一個人を表す一人称として使用することは、本来の意味を考えると誤った使い方です。

誤った使い方の例
・自分個人の意見を「当方の考えでは」と伝える
・自分自身のこれまでの業績を「当方はこれまで○○に携わってきました」などと伝える
・自分自身の名前を「当方は○○と申します」と伝える

自分個人を表して「当方」を使用すると、相手の誤解を招く可能性があります。特にビジネスシーンにおいては、本来であれば「会社」を表して使用される言葉であるため、個人の意見や業績として伝えたつもりが、会社全体のこととして相手に伝わり、大きな問題につながる危険性もあります。そのため、特にビジネスシーンでは注意が必要です。

自分個人のことを表したい場合には「私」を使用します。

社内や部署内では使わない

社内で、自分の部署やチームを表して「当方」を使用している人も時折見かけます。確かに「自分の属する集団」を表している、という点では正しいように思いがちです。しかし、社内で使用すると、その相手方も同じ「会社」という集団に属しているのに、お互いが遠くかけ離れているような、大きな隔たりがあるようなニュアンスになります。

誤った使い方の例
・社内メールにて「当方で回収を行っています」など、自分の部署を表す
・社内の他部署とのミーティングにて「当方の見解としましては」と部署の意見を示す

社内や部署内で「私たち」を表したい場合には、「当部」や「私ども」を使用します。

「当方」と類語の使い分け

ここまでで「当方」の使い方について、少しイメージが持てたでしょうか。前述したように、「当方」の類語で、自分の会社を表す言葉はたくさんあります。同じように「自分の会社」を表している言葉ではありますが、それぞれ使われ方に微妙な違いがあるので、どんな違いがあるのか、その使い分けについて解説していきます。

「当方」

前述してきたように、担当者が決まっていない場面やまだ正式に交渉や取り引きが始まっていない段階、自社以外にも他の企業が関わっているような場合などの限られた場面で自分の会社を表すときに使用します。

「当方」は、相手に対して上下関係があったり、へりくだったりするニュアンスはありません。同じ意味合いとニュアンスで、主に口語では、「こちら」という言葉で使われることがあります。

「弊社」

ビジネスシーンでは最もよく使用される言葉です。「弊社」は、自分の会社を、相手よりも下の位に位置づけて、へりくだった表現です。特に相手がお客様の場合や、取り引き先への営業や打ち合わせの際などによく使用されます。

自分の会社をへりくだって表現する言葉ではありますが、立場が下の相手に対して使用しても間違いではありません。

「弊社」と同じ意味、ニュアンスの言葉として「小社」があります。しかし、「弊社」を使用するのが一般的で、「小社」はあまり使われない言葉です。

「当社」

「弊社」と同様に頻繁に使用される言葉です。「弊社」との違いは、相手と上下関係がなく、対等な立場にたって自分の会社を表現するときに使用する言葉である点です。「当社」は、社外に対してだけでなく、社内で自分の会社のことを示す場合にも使用することができます。論文や報告書、社内での文章、他社と比較をする場合などによく使用されます。

取り引き先やお客様を相手に使用する場合は、失礼に感じ取られることもあるため、このようなときには「弊社」が一般的に使われます。

同じ意味、ニュアンスの言葉として「我が社」「自社」があります。

「私共」

「私」「私たち」の謙譲語です。つまり、「私共」は、「弊社」と同じように自分の会社をへりくだった表現の言葉となります。「弊社」との違いは、「弊社」と比べると少しカジュアルで柔らかい印象の言葉であるということです。そのため口語としての使用や、長年の取り引き先とのやり取りなどの際に使用されることがあります。

同じ意味、ニュアンスの言葉として「手前ども」があります。

「当方」を使った例文を見てみよう!

当方を使用した具体的な例文を見ていきます。

「当方」を使って都合を伝える

平素より並々ならぬご尽力を賜り、感謝申し上げます。

さて、○月〇日が期日となっておりました書類が、貴社より未だ到着しておりません。
当方、他会社への連絡や依頼などの手続きの都合がありますので、ご多忙のところ恐れ入りますが、至急ご連絡をいただきますようお願い申し上げます。

なお、本メールと行き違いでご発送いただいている場合には、何卒ご容赦ください。

「当方」を使ってアポイントメールを送る

先日はお忙しい中、弊社の展示会ブースへお立ち寄り頂き、誠にありがとうございました。

展示会では○○についてご説明させていただきましたが、当方では貴社で取り組まれております、○○などの事業にも対応致しております。差支えなければ、ご挨拶も兼ねて、是非一度貴社にお伺いさせていただきたくメールを差し上げました。

ご都合のよろしい日時をご指定いただけましたら、当方よりお伺いいたします。お忙しいところお手数をおかけいたしますが、ご確認の程よろしくお願いいたします。

「当方」の反対語は何?

「当方」の反対語は「先方」という言葉です。読み方は「せんぽう」と読みます。意味は「相手の人。相手方。」を表しています。

同じく「先方」と書いて、「さきがた」と読む場合には、「さっき。時間的に少し前。」という、違った意味を表す言葉であるため、注意が必要です。「さきがた」と読む場合には、「当方」の反対語ではありません。

「先方」の使い方を確認しよう!

「先方(せんぽう)」は「当方」と反対語ではありますが、「当方」のように、限られた場合のみにしか使用できない言葉ではありません。「当方」は担当者が決まっていない場面やまだ正式に交渉や取り引きが始まっていない段階など、使用できる機会が限られていました。しかし「先方」は、社内で「相手の会社」を表す場合には「当方」を使用する場面以外でも、いつでも使用できます。そのため、「当方」よりも格段に使用する頻度が高い言葉です。

「先方」は、社内や身内の中で、第三者を指し示す際に使用します。個人を指す場合、集団を指す場合の両方の場面で使用することができます。

「先方」の使い方にも注意が必要!

使用する場面が、「当方」のように限られていない「先方」という言葉ですが、重要な注意点があります。「先方」は、社外や身内のやり取り以外では使用できないということです。

「先方」は敬語表現ではなく、客観的に第三者を指し示している言葉です。そのため、社外や「先方」で指し示す相手の目の前で使用すると大変失礼にあたります。

「先方」で指し示す相手の目の前で使用する場合には、口語であれば「御社」、文章であれば「貴社」、個人を指し示す場合には「○○様」を使用します。「先方」は社内や身内の中で、第三者を示す場合にのみ使用します。


・「先方にスケジュールの確認が取れ次第報告をします。」
・「既に先方からの許可はいただいています。」
・「先方に確認のメールを送っておいて。」

「当方」と「貴方」の違いとは?

自分の会社など、自分側を表す「当方」に対して、同じ「方」という漢字がつく「貴方」という言葉ですが、これは相手側を表す言葉です。

「あなた」と読む場合には、二者間において、相手に敬意をこめて丁寧に呼ぶ際に使用します。対等の立場か、目下の人に対して使用する表現です。「きほう」と読む場合には、男性が対等の立場の人を敬意を込めて呼ぶ場合や、文章などで使用します。

ビジネスシーンでは、個人の相手を指し示す場合に、「様」をつけて「貴方様」として使われることがあります。

「当方」敬語での使い方は?

「当方」自体はただ単に、「私たち」「こちら」など自分の会社を表している言葉であり、敬語表現ではありません。同じように自分の会社を表す類語の中で、「弊社」「私共」は自分の会社のことをへりくだった謙譲語です。

「当方」自体は謙譲語などの敬語表現ではありませんが、敬語と一緒に使用することができます。

謙譲語

へりくだった表現をして、相手方を立てる一文となります。


・当方より伺います
・当方が申し上げます

尊敬語

相手方に敬意を払い、相手を立てる一文となります。


・当方からご連絡いたしますので、お待ちください
・当方担当者へお聞きください

丁寧語

相手方を立てるニュアンスはありませんが、丁寧な一文となります。


・当方では一切の責任を負いません
・当方で警察に連絡します

「当方」を正しく使って周りと差をつけよう!

「当方」の意味や使い方、類語との使い分けなどについて解説しました。間違いやすいポイントが多く、これまで知らず知らずのうちに間違えて使っていた方も多いのではないでしょうか。

「当方」は、間違いやすい言葉であるからこそ、きちんと使用できていると、相手にしっかりした印象を与えることができます。「当方」を正しく使いこなして、周りと差をつけましょう。

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