意味は?読み方は?「幸甚」について
仕事におけるコミュニケーションや、公の場でのやり取りでは、日常生活における会話では使用しない、複雑な言葉や聞き慣れない言葉を使用するケースもあります。そのため、社会人は、自分がよく使う言葉以外にも、さまざまな言葉の意味や使い方などを理解して、ボキャブラリーを増やしておくことが大切だと言われています。
「幸甚」という言葉もまた、日常の会話ではほとんど使わないものの、ビジネスシーンや公の場においてのやり取りでは、時折使われることがある言葉の1つだと言えるでしょう。そのため、意味や使い方に自信がないという方は、多いと予想できます。
そこで今回は、「幸甚」をテーマにして、意味や読み方、使い方や例文などを考察・ご紹介していきます。
「幸甚」の意味
まずは、「幸甚」とはどのような意味を持つ言葉なのか、基本的な意味について考えていきます。
「幸甚」の意味について、「コトバンク」では以下の引用のように解説しています。引用の内容から、「幸甚」とはこの上なく幸せなことや、心の底からありがたいと感じている様を表現する言葉だと読み取れます。
(多く手紙文で用いて)この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま。
手紙などの文章で用いられることが多い
「幸甚」とは、この上ない幸せや本当に有り難いことなどを意味する言葉だと、上記でご紹介しました。しかし、会話ではあまり「幸甚」という言葉は、使用されないと考えられます。
上記で、意味を確認する際に用いた「コトバンク」の解説にも、手紙文で用いられることが多いと記載されていることから、手紙や文章でこの上なく幸せであることや、最上級の感謝の気持ちを使用する際に、「幸甚」が使われることが多いと考えられそうです。
「幸甚」の読み方
上記では、「幸甚」という言葉の意味について考察しました。続いては、「幸甚」という言葉の正しい読み方について考えていきます。正しい読み方を知らないと、会話などで使用する際に、誤った読み方をしてしまい、意味が正確に伝わらない危険性もあります。ですから、この機会にぜひ、「幸甚」の正しい読み方について確認しておきましょう。
結論から申し上げると、「幸甚」の読み方は、「こうじん」が正しいと言われています。上記で、意味について確認する際に、引用として用いた「コトバンク」にも、「こうじん」と言う読み方で掲載されています。
「幸甚」の使い方
続いては、「幸甚」という言葉の基本的な使い方について、考察していきます。
「幸甚」の意味などを理解したものの、会話や文章において、どのように使用すれば良いのか自信がないという方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
敬語
「幸甚」という言葉は、ビジネスシーンや公の場でのやり取りで使われることが多い言葉の1つです。ビジネスにおける会話などでは、敬語で話したり相手に敬意を払った言葉遣いを使用したりするのが、マナーだと言われています。そのため、「幸甚」を使用する際も、敬語として使う必要があると言えそうです。
「幸甚」を敬語へ言い換える場合、「幸甚」という言葉そのものには、敬語への言い換え表現などはないとされています。そのため、「幸甚」はそのままに、前後の文章や言葉を敬語へと言い換えるのが、基本的な「幸甚」の敬語としての使い方だと言えそうです。
お詫び
上記でもご紹介したように、「幸甚」という言葉は基本的には、この上ない幸せや最上級の感謝を表現する言葉だとされています。しかし、場合によっては、相手にお詫びをする際にも使用されます。
「幸甚」をお詫びの言葉や文章で使用する際は、「お許し頂けましたら幸いです」といったニュアンスで使用されるケースが多いと考えられます。「謝罪の気持ちだけでも、お汲み取り頂くことができましたら、幸甚に存じます」といった言い回しで使用することができると考えられます。
感謝
上記では、お詫びの言葉として「幸甚」を使用する際の使い方について、考察しました。しかし、「幸甚」という言葉は、感謝の言葉として使用されるケースも多いと言われています。そこで続いては、感謝を伝える文章で「幸甚」を使いたい場合の使い方について考えていきます。
感謝の言葉として「幸甚」を使用する場合は、「幸甚に存じます」「幸甚の至りです」といった言い回しで使用するケースが多いと言われています。
しかし、「幸甚」を感謝の言葉として使う場合は、使用頻度には注意する必要があります。「幸甚」とは、この上ない幸せを表現する言葉です。そのため、何度も使用してしまうと、言葉の重みや意味が損なわれてしまい、軽い印象になりがちです。
ですから、感謝の気持ちを伝える際の「幸甚」の使用は、ここぞという時のみにすることをおすすめします。
「幸甚」の例文
ここまで、「幸甚」の基本的な意味や読み方、使い方について考察しました。しかし、実際に会話や文章で使用したい場合は、より実践的な使い方を学ぶ必要があります。
そこで続いては、実際に「幸甚」を使用した例文をご紹介していきます。ぜひ、「幸甚」の使いどころや言い回しのバリエーションを増やすのに、参考にしてみて下さい。
幸甚です
「幸甚」という言葉を使った言い回しの中でも、特にシンプルで使いやすいのが、「幸甚です」という言い回しだと考えられます。
「幸甚です」という言い回しを使用した文章としては、以下のような例文が考えられます。
・ご連絡頂けましたら幸甚です。
・今後とも、ご指導して頂けましたら幸甚です。
・なるべくお早めにご回答頂けますと幸甚です。
幸甚に存じます
「幸甚」という言葉を使用した言い回しの中では、「幸甚に存じます」というフレーズもまた、よく使われる言い回しの1つだと言えるでしょう。「幸甚です」よりもさらに丁寧な言い回しである「幸甚に存じます」ですが、文章などでは、以下の例文のような使い方ができると考えられます。
・この度はご一緒させて頂き、幸甚に存じます。
・ご了承頂けましたら、幸甚に存じます。
・お許し頂けるようでしたら、幸甚に存じます。
幸甚でした
「幸甚」という言葉を使用した言い回しには、「幸甚でした」という言い回しも存在しています。そこで続いては、「幸甚でした」を使用した例文を通して、言い回しのバリエーションや使い方を確認してきましょう。
・この度は、大変ご丁寧にご指導頂き、幸甚でした。
・資料の件でご意見を頂くことができ、幸甚でした。
・このような賞を頂くことができ、幸甚でした。
「幸甚」の類語
続いては、「幸甚」という言葉と似たような意味を持つ、類語や同義語と呼ばれる言葉を考察・ご紹介していきます。
類語を学ぶことで、「幸甚」という言葉をより深く理解するヒントが見つかる可能性があります。また、文章の内容などに合わせて、「幸甚」から言い換えて使用できるケースもあるため、類語を覚えておくと何かと便利です。
忝い
「幸甚」と同じような意味を持つ言葉の1つとして、「忝い」という言葉が挙げられます。
「忝い」の意味については、「weblio辞書」にて、以下の引用のように解説されています。引用の内容から、「忝い」には大きくわけて、3種類の意味があることが読み取れます。
「忝い」の1つ目に意味は、相手の好意に対する感謝やありがたさを表現するものとされています。2つ目の意味は、処遇や待遇が良い場合などに対するおそれ多い気持ちを表現するものです。そして3つ目の意味は、恥ずかしい感覚や面目ない感情を表現するものだとされています。
① (身にあまる好意・親切に対して)感謝にたえない。ありがたい。 ② (分に過ぎた処遇に対して)おそれ多い。もったいない。恐縮だ。③ 恥ずかしい。面目ない。
光栄
「光栄」という言葉もまた、「幸甚」の類語の1つだと言えるでしょう。
「光栄」の意味について、「コトバンク」を参考に確認してみたところ、以下の引用のように解説されていました。引用の内容から、「光栄」という言葉には、2つの意味があることがわかります。
「光栄」の1つ目の意味は、業績などを褒められたり称えられたりして、名誉に感じることとされています。そして2つ目の意味は、栄えることや栄えさせることとなっています。
1 業績や行動を褒められたり、重要な役目を任されたりして、名誉に思うこと。また、そのさま。2 栄えること。栄えさせること。
有り難い
「幸甚」という言葉に言い換え表現として、特にオーソドックスな言葉が、「有り難い」という言葉だと言えるでしょう。
「有り難い」という言葉は、日常的にも非常に多く使われていますが、「goo辞書」では以下の引用のように解説されています。
引用の内容から、「有り難い」には複数の意味があることが読み取れますが、その中でも「幸甚」の類語の意味としては、人の好意などに対して滅多にないことと感謝する様や、物事などをまたとないくらい貴いことと捉えることなどが当てはまると考えられます。
1 人の好意などに対して、めったにないことと感謝するさま。2 都合よく事が進んでうれしく思うさま。3 またとないくらい尊い。もったいない。4 存在しがたい。珍しい。めったにない。5 むずかしい。困難だ。6 世に生きることがむずかしい。生活しにくい。
渡りに船
自分にとって有り難いことを表現する言葉としては、「渡りに船」という言葉も、「幸甚」という言葉の類語の1つだと言えるでしょう。
「渡りに船」の意味について、「コトバンク」では、以下の引用のように解説しています。解説から、「渡りに船」とは自分が望むものなどが、丁度良いタイミングで与えられることを意味する言葉だと言えそうです。
望んでいるものが、ちょうど都合よく与えられる。
「幸甚」と「幸い」の違い
続いては、「幸甚」と並んで、ビジネスシーンなどの会話でよく使われている、「幸い」という言葉をピックアップして、2つの言葉の違いについて考察していきます。
「幸甚」と「幸い」は、意味や使い方を混同しがちな言葉だと考えられます。ですから、この機会に2つの言葉の違いや使い分けについて、よく考えてみることをおすすめします。
「幸い」の意味
「幸甚」の意味については、上記で確認しましたが、「幸い」という言葉の意味については、特に確認などしていません。そこでまずは、「幸い」という言葉の意味について、確認してきます。
「幸い」の意味については、「goo辞書」にて、以下の引用のように解説されています。引用の内容から、「幸い」には3つの意味やニュアンスが含まれていると考えられます。
「幸い」の1つ目の意味は、その人にとって望ましいことや有り難いことだとされています。2つ目は、運が良かったり都合が良かったりする様という意味です。そして3つ目は、そうしてもらえると有り難いという、希望や意思を相手に伝える言葉としての意味です。
1 その人にとって望ましく、ありがたいこと。また、そのさま。しあわせ。幸福。2 運のいいさま。また、都合のいいさま。3 (「さいわいに」の形で)そうしていただければしあわせだと人に頼む気持ちを表す。どうぞ。なにとぞ。
「幸甚」と「幸い」の違い
上記で考察した、「幸い」という言葉の意味をもとにして、「幸甚」と「幸い」の違いについて、考えていきます。
結論から言うと、「幸甚」」も「幸い」も、有り難いことや幸せなことを表現する言葉だと言えます。ですから、2つの言葉は類語とも言えそうです。
強いて違いを挙げるとすれば、「幸甚」と「幸い」では、表現する幸せの度合いが異なる可能性があります。「幸甚」には、「この上ない幸せ」「大変有り難い」といった意味が含まれていることから、「幸甚」の方が「幸い」よりも、表現する幸せの度合いが大きい可能性があります。
「幸い」を使用した例文
「幸甚」と似た意味やニュアンスを持つ「幸い」という言葉は、使い方を覚えておくと何かと便利です。この機会に、「幸い」の使い方も覚えておくことをおすすめします。
・締め切りまでにご返信頂けますと幸いです。
・なるべくお早めにご連絡頂けますと、幸いです。
・お手数ですが、ご回答頂けますと幸いです。
「幸甚」の対義語
続いては、「幸甚」とは逆の意味を持つ、対義語や反対語について考察していきます。
対義語や反対語は、「幸甚」という言葉について学ぶ上で、一見すると関係がないもののように思えるでしょう。しかし、対義語について学ぶことで、新たな気付きを得られたり、ボキャブラリーが増えたりする可能性もあります。
ありがた迷惑
相手の好意や心遣いなどに対して、この上ない感謝を表現する意味を持つ「幸甚」に対して、相手の好意や心遣いを迷惑だと感じる感情を意味する「ありがた迷惑」と言う言葉は、対義語も1つだと言えるでしょう。
「あがた迷惑」という言葉の意味については、「weblio辞書」で以下の引用のように解説されてます。引用の内容から、「ありがた迷惑」とは、相手の気遣いなどはありがたいものの、効果や結果としてはありがたくなく、かえって迷惑であることを表現する言葉だと言えそうです。
他人の自分に対する行為の中でも、本来は有難いはずであるが現在の状況に照らすと有難くないもの、または気遣いは有難いが行為自体は有難くないものなどを意味する語。そうした行為を形容する際にも使われる言葉である。
よけいなお世話
「ありがた迷惑」と似ている意味を持つ「よけいなお世話」と言う言葉もまた、「幸甚」の対義語の1つだと言えるでしょう。
「よけいなお世話」の意味について確認するにあたり、今回は「コトバンク」を参考にしました。以下に引用した「コトバンク」の解説から、「よけいなお世話」には自分には必要ない相手の手出しや気遣いといった意味が含まれていると考えられます。
自分にとっては必要のない相手の手助けや差し出口をいう語。
感謝や喜びを表現するときは「幸甚」を使うと良い
いかがでしたでしょうか?今回は、「幸甚」という言葉をテーマにして、「幸甚」の意味や読み方、基本的な使い方や例文、類語や対義語などを、考察・ご紹介しました。
「幸甚」は、かしこまった形で喜びや感謝を表現したい場合に使うことができる、便利な言葉の1つです。また、切実な依頼などをする際にも、使うことができる言葉です。この機会に意味や使い方を覚えて、積極的に使用していて下さい。