「ご査収」の例文にはどのようなものがあるの?
「ご査収」はどのように使われる言葉なのかを知るために、よく使用されている「ご査収」の例文を紹介します。以下に挙げる例文を目にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。目にする場面はメールや郵送物であることが多いと考えられます。「ご査収」は主に文語として使われるためです。
ご査収の程
例文1.売上データを添付ファイルにて送付いたします。ご査収の程お願い申し上げます。
「売上データを添付ファイルで送ったので、受け取ってもらうようお願いします」という意味です。語尾の「お願い申し上げます」は「よろしくお願いいたします」や、「よろしくお願い申し上げます」などに変更可能です。
ご査収ください
例文2.売上データを添付ファイルにて送付いたします。ご査収ください。
「売上データを添付ファイルで送ったので、受け取ってください」という意味です。「ご~ください」という言い方は命令を丁寧に言い表した言葉です。
例文3.売上データを添付ファイルにて送付いたします。ご査収くださいますようお願い申し上げます。
「売上データを添付ファイルで送ったので、受け取ってもらうようお願いします」という意味です。例文2.より少し丁寧なお願いのしかたになるでしょう。
ご査収願います
例文4.売上データを添付ファイルにて送付いたします。ご査収願います。
「売上データを添付ファイルで送ったので、受け取ってもらうようお願いします」という意味です。
例文1、例文3、例文4は同じような意味で使うことができるでしょう。また、例文2は敬語の度合いが低いため、なるべく「お願い申し上げます」「願います」を使うようにしましょう。
その他の「ご査収」を使った例文
上記の例文よりさらに丁寧さや細かなニュアンスを含ませたいときは、以下の例文のように使います。
例文5.ご査収いただけますと幸いです。
「受け取ってもらえたらうれしいです」という意味なります。
例文6.ご査収いただきたく存じます。
「受け取ってもらいたいと思います」という意味になります。「存じる」は「思う」の謙譲語です。
例文7.ご査収いただければ幸甚に存じます。
「受け取ってもらえたらとてもうれしく思います」という意味になります。「幸甚」は「こうじん」と読み、「幸いです」よりもさらに丁寧さを感じられる言葉です。
例文8.ご査収いただけますか。
「受け取ってもらえますか?」という意味になります。会話のシーンで使われる事が多い言い回しです。
上記では「受け取る」ことを強制せず、受け取るかどうかを相手に委ねた「ご査収」を使った例文を紹介しました。相手に委ねることで、さらに敬語の度合いが高くなります。
そもそも「ご査収」の意味って?
「ご査収」の意味は引用した部分のとおり、「調べて受け取ること」となっています。「ご査収」を分解してみると意味がわかりやすいでしょう。
「ご査収」の「査」には調べる、「収」には収める、という意味があります。「査」は検査や審査、監査、考査などの熟語があります。このことからも、調べるということがわかります。また、「収」は収納、回収、徴収、収集などの熟語があります。このことからも、収めるということがわかりやすいでしょう。
上記のことから、「ご査収」は「調べて収める」、つまり「確認して受け取る」ということがわかります。難しい言葉が出てきたときは、漢字ごとに分解してみると意味がわかる場合があります。
さ しゅう-しう [0] 【査収】( 名 ) スル金品・書類などを調べて受け取ること。 「御-ください」
「ご査収」の類語は?
「ご査収」のメインの意味は「(確認して)受け取ること」です。ご査収は主にビジネス書類やメール、添付ファイルなどをお受取りください、というときに使います。すなはち、「ご査収」はなにか渡すものがある前提で使う言葉です。そのため、類語として次のものが挙げられます。
「ご査収」の他の言い方
ご確認
「ご確認」はわかりやすい言葉ですので、ご査収の代わりに使われることが多い言葉です。「ご査収」を使ったり目にしたりしたことのない方は、「ご確認」を使ったり目にしたりすることはあるでしょう。
かく にん [0] 【確認】( 名 ) スルはっきり認めること。たしかめること。 「相手の意思を-する」 「安全の-」
ご検収
「ご検収」は、送り届けた品を点検し受け取ることなので、どちらかと言うと郵送物の添付書に使うことが適切でしょう。
けん しゅう-しう [0] 【検収】( 名 ) スル送り届けられた品を、数量・種類などを点検して受け取ること。
ご確認の上お納めください
「ご確認の上お納めください」は「ご査収」の意味をそのまま言い表した言い方です。口語でよく使われる言い回しです。
お受け取りくださいという意味の他の敬語
「ご査収」は「確かめてお受け取りください」という意味でしたが、「お受取りください」を意味する敬語表現がいくつかあります。
ご笑納
読み方は「ごしょうのう」です。お中元や祝儀、贈答品などをお受取りください、というときに使われることが多いです。
しょう のう せうなふ [0] 【笑納】( 名 ) スル贈り物をするとき,つまらない物ですが笑ってお納めください,の意でいう語。 「 -下されば幸いに存じます」
領収
読み方は「りょうしゅう」です。製品やサービスの代金をお受取りくださいというときに領収を使います。主に金銭を受け取ってほしい場合です。
りょう しゅうりやうしう [0] 【領収】( 名 ) スル金などを受け取ること。 「 -証」
受領
読み方は「じゅりょう」です。受領は領収と同じ意味ですので、主に金銭をお受取りくださいというときに使います。
じゅ りょう-りやう [0] 【受領】( 名 ) スル① うけおさめること。うけとること。領収。 「代金を-する」 「 -証」
受理
読み方は「じゅり」です。受理は役所などへの申請の際にお受取りくださいというときに使います。
じゅ り [1] 【受理】( 名 ) スル書類・届け・願い事などを受けつけること。 「辞表を-する」 「請願を-する」
「ご査収」の読み方は?
「ご査収」は「ごさしゅう」と読みます。査収に尊敬語または謙譲語の「お(ご)」が付け加えられた状態です。ご査収は、お受け取りくださいよりもより丁寧な言葉です。「お(ご)」は、尊敬語(相手を敬う言い方)と謙譲語(自分がへりくだることで相手を敬う言い方)両方で使う接頭語ですから、誤用しないよう気をつけましょう。
「ご査収」の使い方はどんなもの?
「「ご査収」の類語は?」でも触れましたが、意味は確認をして理解し、受け取ることです。確認して理解した後に受け取ってもらうものなので、「ご査収」は金銭、物品、書類、メール、FAXなどを受け取ってもらいたいときに使うのが一般的でしょう。
具体例としては見積もりなどのビジネス書類や文書、製品カタログ、ビジネスメール、添付ファイル、履歴書や職務経歴書、ビジネス上の郵送物や製品サンプルなどが挙げられます。添付ファイルなどがないメールや、同封物のない郵送物の内容を確認してほしいときは、「内容に関してご不明な点などございましたら、ご連絡ください」といった添え文をつけると良いでしょう。
「ご査収」が適切でない場合もあるの?
「お受け取り」いただく同封物や添付ファイルなどがあっても、「ご査収」が不適切な場合もあります。「ご査収」が不適切な場合を以下で紹介します。
相手が確認済みのもの
相手がすでに確認しているもの、たとえば契約書の控えなどを送付する場合は、「ご査収」を使うよりも「ご確認」を使ったほうが良い場合もあります。
確認する箇所が多いもの
また、手紙やメールで同封・添付するものがある場合でも、「ご査収」が不適切なときもあります。同封物や添付物が多い場合、また確認してほしい点が複数ある場合は、単に「ご査収ください」と書かれてもどれを確認すればいいのか、全部確認しなければならないのかわからず、混乱させてしまう可能性もあります。
したがって、確認してほしい箇所を文面で指定したり、同封物の確認してほしい部分に付箋などを貼ったりしてわかりやすくした上で、「付箋を貼った箇所についてご確認のほどよろしくお願いいたします。」などと書いた方が良いでしょう。
敬語での「ご査収」
「ご査収」は尊敬語です。つまり相手に敬意を払って、相手側に属する人や物事を持ち上げて話したり、文章にしたりするときの使い方がこの使い方です。例文は、「「ご査収」の例文にはどのようなものがあるの?」にて紹介しています。
上司や目上、取引先の方から受け取った旨の返信をいただいたときの敬語での返信の例文もご紹介します。
・「ご査収いただきありがとうございます。」
・「ご査収くださいましてありがとうございました。」
さらにかしこまった場合は「賜る」を使うといいでしょう。「賜る」は「たまわる」と読み、「~してくださる(広辞苑第6版 株式会社岩波書店)」という意味です。
・「ご査収賜りましてありがとうございました。」
上記の例文は、返信メールの書き出しの挨拶として書くと丁寧さが出るでしょう。
敬語表現を正確に使うことの意味
敬語表現を正確に用いることは、「行き届いた配慮」や「きちんと整っている」という印象を与えます。また、敬語は話し相手を含めた他者への尊敬の念のもとで成り立っているため、「社会の潤滑油」ともいわれます。では敬語表現をふんだんに使えばよいかと言うとそうではなく、心のこもらない敬語や過度の尊敬・謙譲表現はかえって逆効果を生むこともあります。
慇懃無礼(読みは「いんぎんぶれい」)という言葉もあります。慇懃無礼には「うわべではていねいなようで、実は尊大であること」、「ていねいすぎて、かえって失礼になること」という意味があります。「ご査収」という言葉も正確に用いていきましょう。
慇 懃 無 礼(いんぎんぶれい)丁寧すぎて、改まった感じが、かえって無礼になること。言葉や物腰など表面は丁寧であるが、その裏は、大変尊大であること。丁寧な様を装い、その実相手を小馬鹿にする事。
「ご査収」と「ご査証」の違いって?
ご査収を使う場合は確認して受け取ってほしいというときに使い、ご査証を使う場合はよく確認した上で調査して、証明してほしいというときに使うという違いがあります。
簡単に言うと、「ご査収」は「(確認して理解した上で)お受取りください」、「ご査証」は「(確認して理解した上で)調査して証明してください」ということです。「ご査証」は「ご確認ください」とは別の言葉だと認識していたほうが妥当でしょう。
ご査収の意味は確認して受け取ることであるのに対して、ご査証の意味は調査して確かめることです。したがって、ご査収は確認の後受け取っているのに対して、ご査証は調査した後の確認、証明をするということです。
すなはち、ご査収は確認しておいてくださいと要求する際に使われるべき言葉であり、ご査証は厳しい審査と証明を要求する際に使われるべき言葉であると言えます。
「ご査収」と「ご査証」は誤用されやすい?
「ご査収」と「ご査証」は誤用されがちな言葉といえます。「ご査証」は「ごさしょう」と読み、「調査して証明すること」という意味です。「ご査収」と打つつもりが「ご査証」と打ってしまう打ち間違いもしやすいでしょう。
取引先からのメールなどでご査証くださいと書かれていた場合には、本当に調査や審査をして証明をしなければならないためにご査証という言葉が使われているのか、それともご査収と書くべきところを間違えてしまったのかを見極めなければなりません。
たとえば、お客様からの製品クレーム対応のために送られてきたメールであれば、ご査証で正しい可能性が考えられます。しかし、データファイルを送付された場合などはご査収のほうが適切である場合も考えられます。「ご査証」を使う頻度は「ご査収」と比べると低いでしょう。
さ しょう [0] 【査証】( 名 ) スル① 調べて証明すること。
こちらが「ご査収」や「ご査証」を使うときも注意を
同じように、こちらから取引先などにメールを送る場合も気をつけなければなりません。「ご査収」と「ご査証」を間違えることは相手に誤解を与えてしまうことがあるからです。「ご査証」をあえて使うのは、厳しい状況の際であると言えるでしょう。
誤解を防ぐためにも、この場面では「ご査収」と「ご査証」どちらを用いるのが正しいのか、一度検討してから言葉を選ぶべきでしょう。
「ご査証」の例文
・「ご査証をお受けください。」
・「ご査証を免除いたしました。」
・「この度貴社製品についてのクレームが寄せられました。添付書類の赤丸部分に不具合があるとのことを弊社で確認いたしました。つきましては、この製品の不具合についてご査証のほど、よろしくお願いいたします。」
以上の例文を見ると、深刻な場合に使われがちであると言えるでしょう。
「ご査収」の対義語は?
対義語としては、受け取りましたということを表す謙譲語が考えられます。ご査収のメインの意味は「受け取ること」なので、「受け取りました」の謙譲語が相当するでしょう。
・拝受いたしました。
・拝受しました。
・受領しました。
・受理しました。
・領収しました。
データや書類、物品などには拝受や受理を使い、金銭には領収や受領が使われることが多いでしょう。
【例文】
・メールを拝受しました。
・申請書を受理しました。
・代金を領収いたしました。
拝受の意味は受け取ることの謙譲語で、領収の意味は(金銭などを)受け収めることです。受領と受理の意味は「お受け取りくださいの他の敬語は?」にて紹介済みですので省略します。
正しく「ご査収」を使おう!
ここでは、ご査収という言葉について紹介しました。ご査収は相手に対して尊敬の念を表しながら「確認して理解した上でお受け取りください」というときに使う言葉です。近年ではわかりやすい「ご確認ください」が使われやすくなっていますが、「ご査収」も使われているので覚えておいて損はない言葉といえるでしょう。
言葉は常に変化するものですが、正しい日本語を使えるとスマートな印象を受けますし、細やかな心遣いなどを感じ取れます。日本語は細かなニュアンスを表すため言葉が多く、また似たような意味の言葉も多いです。
知らないままにしてなんとなく使うよりも、正しい意味を知り、正しい用法で用いることが大切だと言えるでしょう。背伸びをして難しい単語を使おうとはせずに、きちんと意味を調べてから使うくせをつけると良いでしょう。