「お待ちしております」の例文
相手の連絡や訪問を心待ちにしている気持ちを丁寧に表すとき、または目上の方に対するときやビジネスの立場上で敬う気持ちを伝える場合、私たちは「お待ちしております」という言葉を使います。
どんな場面で使うことが多いのか、例文を挙げてみましょう。
・接客業などで使用する場合 「またのお越しをお待ちしております」
・目上の親戚や知り合いに使う場合 「お会いできる日をお待ちしております」
・仕事上の連絡などで使う場合 「ご連絡をお待ちしております」
などがあるでしょう。
上記の例の中の二つは仕事上で使いますが、一つはこじん的なつながりのある相手に対して使っています。
プライベートな関係があれば、さらに気持ちを素直に伝えてみるのも相手の方に喜ばれるでしょう。「心待ちにしております」などに変えて、楽しみに待っている気持ちを伝えてみるのも良いでしょう。
「心よりお待ちしております」の使い方は?
また接客業など仕事上で使う場合なら、「お待ちしております」をさらに丁寧に伝える言葉として「心よりお待ちしております」でも構いません。
より深みのある表現になって、上品さも加わり、聞いた相手に細やかな気遣いを感じてもらえるでしょう。
「お待ちしております」こんな使い方をしてみては?
待っている気持ちを伝える「お待ちしております」ですが、本心が伝えにくい場合、相手に不快な思いをさせないためのテクニックとしても使うことができます。
「お待ちしております」を待っているというストレートな意味だけではなく、確認の意味で使ってみます。また「お待ちしております」の前後にソフトな言い回しを使うことでトラブルを避けることも可能です。
いろんな状況での「お待ちしております」
ここでは色々な場面で使える「お待ちしております」をケースごとに紹介しましょう。
次回につなげる言葉として使う
こちらからの依頼や誘いを相手から断られた場合でも、「お待ちしております」を次回につなげる言葉として相手に伝えるとコミュニケーションが途切れずに済みます。
また丁寧な言葉を入れることによって相手に好印象を与えることができ、次回につなぎ易くなります。
①相手から断られた後は、肯定形で返します。
例 今回はご都合がつかないということで、承知いたしました
②次につなげる言葉で結びます。相手に好印象を与える肯定形として伝えて終わらせます。
例 またの機会をお待ちしております
催促での場面で使う
言い方によって相手との関係が気まずくなる場合もありますから、ビジネス上でも協力や確認を求める形で伝えるのがコツです。 催促を「お待ちしております」の言葉でソフトに伝えることができます。
①お願いや問い合わせの形で切り出してみます。○○を早くしてくださいなどの厳しい伝え方は相手を不快にさせます。おたずねする形が良いでしょう。
例 先日の件でおたずねしたいことがあるのですが。
②自分にとっての不都合を冷静に説明してみましょう。相手に共感する姿勢をとって伝えるとソフトになります。
例 何かのまちがいでは ご事情はおありでしょうが
③こちらの要望を具体的に示しますが、依頼の形をとってみます。よろしくお願いいたしますも良いですが、他にも、こちらの待つ姿勢を伝えてみるのも良いでしょう。
例 恐れ入りますが、○○の件でのご連絡をお待ちしております
相手を誘うときに使う
相手を乗り気にさせるためには、「お待ちしております」を使う前にアピールが必要です。強引な伝え方ではなく、相手にメリットや楽しさを伝えてみます。
①なんの誘いかをまず伝えます。
②いつどこで、誰がなぜどのように、費用や人数などの詳細な内容を伝えます。
③相手にとってのメリットや楽しみを伝え、行こうかな、と思えるようにアピールします。
④気持ちを込めて誘います。心から願う気持ちを伝えれば喜ばれるでしょう。「心よりお待ちしております」も良いでしょう。
例 ご参加を楽しみにお待ちしております。ご多忙とは存じますが、ご都合はいかがでしょうか。
このように実用的にさまざまなシーンで使ってみることもできます。コミュニケーションを円滑にするためにも場面に合った言い方や伝え方が大切です。
メールでの使い方
メールでは敬語は必須です。顔が見えないのでちょっとしたニュアンスで相手に誤解を与え、不快な思いをさせてしまいかねないからです。
SNSでも言えることですが、記録されて後にいつまでも残るものなので、使い方を間違えると恥をかいたりトラブルのもとになってしまいます。相応しい場面で適切に使いましょう。
「お待ちしております」もよく使われる言葉ですから、場面に合った使い方を心がけましょう。
ビジネスでの使い方
まちがった敬語を使うと、会社のイメージダウンにもつながってしまいますし、社会人としての常識を問われる場面ですから、正しく使う必要があります。
「お待ちして申し上げおります」を使うと相手に丁寧でソフトな印象を与えることができますから、次回につなげるときなど有効に使えるでしょう。
「お待ちしております」の敬語での使い方
「お待ちしております」は待っているこちらの気持ちを相手に丁寧に伝えるための敬語の表現です。
敬語とは
敬語は人間の上下関係に関わる言葉遣いです。親と子、教師と生徒、上司と部下など身近な上下関係で使われます。
例えば「お待ちする」「待っています」だけでは完全な敬語と言えず、「お待ちしております」と「お」や「ですます」を付けることで敬語になります。
敬語の目的
適切に正しく敬語を使うことで、人間関係を良くし、コミュニケーションがスムーズになります。
敬語の種類
敬語には3種類あります。①尊敬語②謙譲語③丁寧語の3つです。
またこの3つを組み合わせた形もあり、敬語を含んだ日本語が難しいと言われる所以です。それぞれ簡単に特徴をあげてみましょう。
①尊敬語
目上に対する敬語であり、話し手である伝える側と、相手との上下関係だけに従うのが尊敬語です。 それ以外の要素はありません。
形式としては語頭や語尾に「お」や「ご」をつけたり、「おん」や「み」をつけることもあります。「お待ちしております」の「お」がそれであり、尊敬語になります。
例 ・考え→お考え
・ゆっくり→ごゆっくり
・会社→御社、貴社
・むすめ→むすめご
②謙譲語
謙譲語とは話し手や書き手の話の中で、話題となった人同士に上下関係がある場合、相手を高めることでその関係を表現するときに使う敬語のことです。 3つに分けられます。
(1)語をそえる場合
語頭、語尾に一定の語を添えますが、必ず自分の側のみに使います。「小」「幣」「愚」「祖」などです。
例・会社→小社、弊社
・息子→愚息
・品→粗品
(2)「お~する」の形式の場合
「お(ご)~する(いたす)」の形式をとります。待つのばあいであれば、待つ→「お待ちする、お待ちいたします、お待ちしております」も謙譲語になります。自分側の動作に伴うところが特徴です。
例・迎える→お迎えする→お迎えいたします
・届ける→お届けする→お届けいたします
・協力する→ご協力いたします
(3)特別な語を用いる場合
特別な語を用いる形です。例を挙げると、「いたします、おります、うかがいます、うけたまわります、まいります、申します」などがこれに当たります。
③丁寧語
丁寧語とは、話し相手、聞き手に対して直接敬意を表現する言葉です。 「です」「ます」「ございます」がこれに当たります。
間違った敬語
敬語を使うことによって、職場でも近所付き合い、親戚付き合いでも、人と仲良くすることができます。敬語抜きではコミュニケーションが成り立たないシーンもあります。しかし敬語は難しく、間違えて使い易いとも言えます。 相手に不信感や不快感を与えかねませんから、注意しましょう。
場面に合わない丁寧すぎる言葉遣いや、逆に簡略化した使い方、丁寧なのに間違った使い方で無礼になる場合などがあります。
中でも間違えやすいのが、謙譲語を含んだ場合です。身内には使わないことが原則なので、身内の者に対していただく、申し上げる、存じ上げるを使うのは相応しくありません。
敬語を使うのは大人である証
「お待ちしております」のような敬語を使い始めるのは高校卒業後と言われています。子供は基本的には敬語は使いません。中学生で「ですます」の使い分けが始まります。
相手を敬い、相手とのちょうどよい距離感を保つために必要なコミュニケーションツールでもあります。
敬語は、社会生活の中で徐々に身につけていくものですから、年代が上がるにつれ、習得していきます。
特に使い方が難しい謙譲語などは使いこなせるようになるまでに時間がかかります。時には間違えて注意を受けたり、恥をかくこともありますが、こうした経験を重ねていくことで少しずつ身につけることができます。
「お待ちしております」と「お待ち申しております」
どちらも「お~する」と「申す」の謙譲語であり、「お~おります」「申します」を使っていますが、聞いた時のイメージに違いが出ます。
「お待ち申しております」は「お~する」に「申す」をさらに付け加えているので、謙譲語が重なっています。
少しまわりくどく、丁寧すぎる印象を持つのではないでしょうか。待たれている相手の立場としては少し重荷に感じる丁寧さとして感じられます。また「お待ち申しております」は聞き取りにくく、かえって失礼になりかねない、取り扱い注意が必要な伝え方です。
「お待ち申し上げております」であれば丁寧さが問題なく聞こえるので、こちらの方が無難でしょう。
「お待ちしております」の言い換えは?
人を待つことを表す「お待ちしております」も、言い換えることで相手に与える印象が違ってきます。
「お待ち申し上げております」は、「お待ちしております」をさらに丁寧に伝える場合の表現になります。
二重敬語と批判される向きもありますが、よく使われる言葉遣いとしてビジネスシーンで定着しています。申し上げる、と謙譲語での特別な形を取り入れることで、上品さが増し、お客さまに対して、もてなしの気持ちが伝わるのではないでしょうか。
「お待ちしております」の返し方
状況によって違いはあっても、相手を待たせている状態ですから、「お待ちしております」と伝えられたら、まずはお礼を述べる形がふさわしいのではないでしょうか。
こじん的な要件での「お待ちしております」の場合は、待ってもらう形ですから、ありがとうございます、や恐れ入ります、で柔らかく返していくと好感度も上がり、相手の方に失礼な印象を与えなくて済むでしょう。
接客業などビジネス上で「お待ちしております」を伝えられた場合も、快く次回の訪問の旨を伝えてみてはどうでしょう。「また伺います」や「また参ります」「またおじゃまします」と返せばお互いに気持ちの良いコミュニケーションが取れます。
「待つ」ことを視点を変えて考えてみる
「お待ちしております」を考えるとき、当然のことながら待っている状況の違いによって言葉遣いも変わってきます。
視点の変化から見えてくるものもあるので、色々な例文で違いを比べてみましょう。
1)相手を待たせるとき
あらかじめ相手を待たせることがわかっている場合は、先に断りを入れたり、謝罪することで相手に承認を得ておきます。
「お待ちいただけますか?」や「申し訳ございません、少々お待ちください」などの言葉を使うことになるでしょう。
2)相手がすでに待っているとき
相手を自分が待たせた後で使う敬語は「お待たせいたしました」になります。
相手を待たせてしまったことからお詫びや謝罪も付け加えて相手に不快な思いをさせないように配慮することが必要です。
3)こちらが迎え入れたとき
あらかじめわかっていた来客の場合の答え方として、「お待ちしておりました」「お待ち申して上げておりました」など謙譲語を過去形で相手に伝えることになります。
このとき歓迎の気持ちを表すことが相手に対する心遣いになるのではないでしょうか。
4)次回の迎え入れを伝えるとき
1)~3)の比較で考えられることは次のような視点ではないでしょうか。
「お待ちしております」や「お待ち申し上げております」は次回の訪問での歓迎を予感させる言葉になります。相手に対して次回を楽しみにしています、期待していますという気持ちを伝えるので、肯定的な印象を与えることができます。
「お待ちしております」は大切な言葉
「お待ちしております」を使うことは、接客業やビジネスシーンで「次回も喜んでお迎えします」「どうぞおいでください」という気持ちを相手に伝えることになります。
ですから次の約束に結び付ける大切な一言と言えるでしょう。
「お待ちしております」は人をもてなす言葉
「お待ちしております」が人を大切にする気持ちを伝える言葉だと考えれば、どう使っていけばいいかの答えが出るのではないでしょうか。
「お待ちしています」だけでも敬語として十分気持ちが伝わる言葉です。ビジネスシーンだからといって文法が正しければいいというわけでもなく、相応しいシーンで相応しい使い方をしてこそ相手に気持ちが通じます。
言葉を重ねすぎるとかえって聞き取りづらくなってしまう場合もあるので、相手や状況によって 「お待ちしております」を臨機応変に伝えてみましょう。