「次第です」の意味と使い方
「次第です」は「物事のいきさつや経過状態」「物事の理由や事情」のほか、「順序」「意向や状況による」「動作が行われるままに任せる」「動作が済むと直ちに」といった意味を持つ言葉です。
「次第だ」が丁寧語を含まない本来の表記ですが、報告に使われることが多い言葉のため、今回は「次第です」の形でご紹介します。
「次第です」の意味をマスターして、正しく使いこなしましょう。まず、順番に一つ一つの意味を見ていきます。
順序
「次第です」の一つ目の意味は「順序」です。流れ・順番・手順と言った意味があります。例えば、催しの順番を説明するときや、計画の説明をするときなどに「こちらが式典の次第です」のように使います。
物事のいきさつや経過状態
「次第です」の二つ目の意味は「物事のいきさつや経過状態」です。ことのプロセスやあらましを言う際に用います。例えば、上司に状況を報告するときに「ことの次第をご説明します」のように使います。
物事の理由や事情
「次第です」の三つ目の意味は「物事の理由や事情」です。何らかの事態が発生した際の理由を意味します。例えば、上司に状況を説明するときに「そんな次第です」のように使います。ミスの理由を説明するときなどにも使えます。
意向や状況による
「次第です」の四つ目の意味は「意向や状況による状態」です。物事や相手の状況によって結果が異なる場合に用います。例えば、「決行するかどうかは、今日の天気次第です」のように使います。
この例のように、「~かどうかは」「~しないかは」など、選択肢となるフレーズが先につくことが多い用法です。
動作が行われるままに任せる
「次第です」の五つ目の意味は「動作が行われるままに任せる」です。「~次第に」という言い方で、連続して物事が行われる様を意味します。例えば、「手当たり次第に電話する」のように使います。
動作が済むと直ちに
「次第です」の六つ目の意味は「動作が済むと直ちに」です。ある動作が済むと直ちに一定の状態になることを表します。例えば、「数に限りがございますので、無くなり次第終了とさせていただきます」のように使います。
「次第です」の正しい文法は?
「次第です」の正しい文法は、「『次第』を名詞として使う場合」と「『次第』を接尾語として使う場合」とで異なります。「次第です」という言葉は、どの意味で使うかによって「次第」部分の品詞が変わります。
「次第です」を「順序」「物事のいきさつや経過状態」「物事の理由や事情」の意味で使う場合、「次第」は名詞になります。
対して、「次第です」を「意向や状況による」「動作が行われるままに任せる」「動作が済むと直ちに」の意味で使う場合、「次第」は接尾語になります。
「次第」を名詞として使う場合
「次第です」を「順序・物事のいきさつや経過状態・物事の理由や事情」の意味で使う場合、「次第」の品詞は名詞になります。
名詞の「次第」は、動詞の連体形・助動詞の連体形・連体詞に続けて使います。「決まり次第」「報告した次第です」「その次第です」のような使い方になります。
「次第」を接尾語として使う場合
「次第です」を「意向や状況による・動作が行われるままに任せる・動作が済むと直ちに」の意味で使う場合、「次第」の品詞は接尾語になります。
接尾語の「次第」は、名詞・動詞の連用形につきます。「成績次第」や「終わり次第」のような使い方になります。
「終了し次第」と「終了次第」どちらが正しい?
「終了し次第」と「終了次第」は文法的にどちらが正しいのでしょうか。結論をいうと、「終了し次第」と「終了次第」は文法的にどちらも正しい表現です。
「次第です」は「動作が済むと直ちに」という意味で使うとき、「名詞+する」という形の動詞と接続します。「終了する」の場合、「する」の連用形「し」を用いて、「終了し次第」という形で「次第」とつながります。
しかし、「し次第」という言い方は「し」が重なり、日本語としては言いづらくなります。その場合は「し」を省略し、名詞部分のみでつなぐ場合があります。それが「終了次第」です。
違和感がなく、言いやすい方を使うと良いでしょう。
「次第です」の例文6選
「次第です」の例文をご紹介します。今回は、シーン別に「感謝する次第です」「お願いする次第です」「変更した次第です」「このような次第です」「あなた次第です」の6つを例として挙げました。実際に「次第です」という言葉はどのように使われているでしょうか。
感謝する次第です
「次第です」の例文一つ目は「感謝する次第です」です。お礼のときに使う表現です。「ご指導してくださった先生のご厚意に感謝する次第です」のように、感謝するに至った経緯や理由を言うことが多いです。
「感謝を申し上げる次第です」という言い方もありますが、冗長で分かりづらいため、「感謝する次第です」または「感謝申し上げます」を使いましょう。
お願いする次第です
「次第です」の例文二つ目は「お願いする次第です」です。何か相手にお願いがあるときに使う表現です。「壊れやすい品のため、ご注意のほどをお願いする次第です」のように、お願いする理由を説明します。
「お願い申し上げる次第です」という言い方もありますが、これも冗長で分かりづらいため、「お願いする次第です」または「お願い申し上げます」を使いましょう。
変更した次第です
「次第です」の例文三つ目は「変更した次第です」です。ビジネスでは、発表やミーティングなどで変更の報告があるときに使います。「雨天のため、会場を変更した次第です」のように、変更理由を述べます。
お恥ずかしい次第です
「次第です」の例文四つ目は「お恥ずかしい次第です」です。自分を謙遜する表現です。「お恥ずかしい次第ですが、道に迷ってしまいました」「存じなかったことはお恥ずかしい次第です」のように使います。「お恥ずかしいことに」などに言い換えられます。
このような次第です
「次第です」の例文五つ目は「このような次第です」です。「このような次第で、私が担当させていただくことになりました」「報告書をご覧ください。予算の内訳はこのような次第です」のように使います。先に経緯や理由を述べたあとに用います。「ということで」「そういうわけで」と同じような意味があります。
あなた次第です
「次第です」の例文六つ目は「あなた次第です」です。「ここで行動するかしないかはあなた次第です」「あなた次第で日程が決まります」のように、決定や選択を相手に迫るときに使います。マーケティングの文言にも応用できるでしょう。
「次第です」の敬語表現は?
「次第です」は敬語の中でも丁寧語に属します。「次第です」は「次第だ」が元の形です。「だ」を「です」に置き換えることで、初めて敬語になります。「次第」という言葉自体に敬語の意味はありません。
「次第です」が属する丁寧語って?
「次第です」が属する丁寧語は、「話し手が聞き手に対して敬意をはらい丁寧に話す」ための敬語です。言葉尻に「です」「ます」を付けることで丁寧語にすることができます。「でございます」はさらに上位の丁寧語です。
似たものに「尊敬語」と「謙譲語」がありますが、尊敬語には「相手を高める」効果があり、謙譲語には「自分をへりくだる」効果があります。丁寧語にはどちらかを高めたり低めたりする効果はありません。あくまで「相手に失礼のない丁寧な言葉遣い」というポジションです。
「次第でございます」は過剰な敬語?
「次第でございます」は、「次第です」よりも上位の丁寧語です。二重敬語(=「おっしゃられる」や「ご参上する」のような同じ種類の敬語を重ねて使う間違った用法)ではありません。しかし、「次第でございます」という言い方は、過剰な敬語として違和感を感じる人が多い傾向にあります。
「次第です」だけでも丁寧な言い方ですが、さらに相手に敬意を示したい場合は、丁寧語の「次第です」を無理矢理変形させるより、別の謙譲語や言い換え表現を使ったほうがすっきりします。例えば「感謝する次第です」を「感謝申し上げます」「このたびは誠にありがとうございました」に言い換えます。
「ご連絡を差し上げた次第です」のように、「次第です」以外の部分を謙譲語や尊敬語にしてもよいでしょう。
「次第です」は書き言葉?
「次第です」は話し言葉でしょうか、書き言葉でしょうか。「次第です」は「です」を話し言葉とする場合は話し言葉、「です」を単なる文末表現とする場合は書き言葉として使用できます。「です」を使わず、「次第だ」「次第である」と表記する場合は書き言葉です。
というのも、話し言葉と書き言葉を分ける際、厳密な基準では「です・ます」を話し言葉と分類することがあるためです。
敬語の「です・ます」を話し言葉ではなく、単なる文末の表現(=敬体)とする場合は、「次第です」も書き言葉として許容されます。特に、メールやWEBサイトではこの「文章は書き言葉・文末はですます調」という例が多くあります。
話し言葉と書き言葉の違いって?
話し言葉は「口語」とも呼ばれます。対して、書き言葉は「文語」です。一般的に、話し言葉は「口頭で話すときの言葉」、書き言葉は「文面で記すときの言葉」と言われています。
話し言葉は、感動詞や疑問詞を織り交ぜた柔らかい表現です。たとえば、この項目の見出しである「話し言葉と書き言葉の違いって?」はまさに話し言葉です。語順のばらつき・省略などが許容され、自由度が高い言葉です。例えば、「でも」「あんまり」「すごく」「いっぱい」「みたい」は話し言葉です。
書き言葉は公的な文章に使います。新聞の文体をイメージすると良いでしょう。である調で書かれた文章が一般にいう書き言葉です。話し言葉より決まりが多く、文法に沿った文章であることが重視されます。例えば、「だが・しかし」「あまり」「とても・非常に」「たくさん・多くの」「ようだ」は書き言葉です。
「次第です」はメールで使える?
「次第です」はビジネスメールで使うことができます。メールや手紙は論文や新聞に比べると公的な文章ではありません。文末の「ですます」は許容される傾向にあります。
むしろ、ビジネスメールでは相手へのマナーとして敬語表現が推奨されます。「次第です」は丁寧語のため、ビジネスメールの表現としても適切です。
「次第です」の類語と言い換え表現5選
「次第です」の類語・言い換え表現には「経緯」「いきさつ」「プロセス」「流れ」「わけ」などがあります。
「次第です」は漢字を用いており、比較的堅い表現です。「次第です」と同じようにビジネスで使える堅めの言葉には「経緯」「いきさつ」「プロセス」があります。表現を柔らかくしたい場合は、「流れ」「わけ」が候補にあがります。
なお、上記はいずれも「物事の理由や事情」という意味の「次第」の類語ですが、「動作が行われるままに任せる」という意味の「次第」の類語として「如何」などもあります。
経緯
経緯は「けいい」と読みます。経緯は「物事の事情や経過、込み入った状態」を表します。「ことの経緯を説明します」「という経緯です」のように使います。
元は織物のたて糸とよこ糸を表す熟語です。転じて、たて糸とよこ糸のように複雑に絡まった事情を意味します。
いきさつ
いきさつは「物事の経過や込み入った事情」を表します。「いきさつを説明します」「ことのいきさつを聞く」のように使います。
いきさつは漢字で書くと「経緯」です。「けいい」と同じ漢字です。「経緯」は他に「たてぬき」とも読みます。こちらも「詳しい事情」の意味があります。
プロセス
プロセスは「進める方法や手順、過程や経過」を表します。「作業のプロセスはこちらです」「今回のプロセスについて説明します」のように使います。
英語では「process」です。過程、経過、成り行き、手順などを表します。The process of~で「~の経過」、The process for~で「~の手順」という意味です。
流れ
流れは「時間の経過や移り変わり、続いていく状態」を表します。「今回のミーティングの流れを説明します」「流れとしてはこうです」「~という流れになりました」のように使います。
次第でいう「順序」の使い方に近い言葉です。例えば、「式の次第」を「式の流れ」と言い換えることができます。
わけ
わけは「物事の理由や根拠、そこに至ったいきさつ」を表します。「というわけで」「そんなわけで」のように使います。漢字にすると「訳」です。比較的柔らかい表現のため、堅い文章にしたい場合は他の表現にするといいでしょう。
「次第です」の意味を理解して正しく使おう!
いかがでしたでしょうか。今回は「次第です」の使い方、文法、例文、類語などについてご紹介しました。
「次第です」には、「順序」「物事のいきさつや経過状態」「物事の理由や事情」「意向や状況による状態」「動作が行われるままに任せる」「動作が済むと直ちに」など、さまざまな意味があります。敬語としての使い方も、過剰にならないよう気を付ける必要があります。
「次第です」を使うときは、それぞれの意味を理解した上で、場面に合わせて正しく使いましょう。