「がございます」について
「(予定や用事、物体など)がございます」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。何かしらの物や用事、意見、もしくは用事などが「ある」ということを敬語で伝えるときに使用することが多い言葉です。
また、使用範囲も広く会社などのビジネスの現場などはもちろんのこと、学校やプライベートでもよく使ったり聞いたりする言葉なので、使いこなしておきたい言葉と言えるでしょう。
「がございます」の意味と使い方
「がございます」は簡単に言うと「ある」の丁寧語表現となります。そのため意味は「ある」と同じになります。漢字を当てはまれば「有」や「在」が当てはまるでしょう。
意見や質問と言った目に見えない形のない物、もしくは車やノートと言った物体などが存在しているという意味で使用します。また「がございます」は敬語に属している言葉なので、何かしらが存在していることを目上の人や敬語を使う必要のある場面で伝える場合に使用します。
「ある」について
「がございます」は「ある」の丁寧語表現です。しかし当てはまる漢字が「在(る)」や「有(る)」の2種類あります。どちらも日常的によく見る漢字ではありますが、それぞれの意味についてもご紹介します。
「在(る)」について
「がございます」の元である「ある」に当てはまる漢字の1つ「在」の読みは音読みがザイ、訓読みが、ある・いる・いますなどです。存在や所在など、そこにいる、もしくはあると言った意味や在住などのどこかしらに住んでいるという意味があります。また田舎を表す言葉として在郷という言葉があります。
小学校で習う漢字であり、日常でも使われることが多いです。単語の例としては在宅・現在・自由自在・実在・不在・在庫などがあります。人名にも使われることがあります。
「有(る)」について
「在」と同じく「がございます」の元である「ある」に当てはまる漢字の1つ「有」は、音読みがユウやウ、訓読みがあ(る)などがあります。
何かしらがある、存在しているという意味や何かしらを持っている、保有している、持ち続けているといった意味を持つ漢字です。また仏教などでも使われる言葉です。
こちらも小学校で習う漢字であり、日常的に使われています。名前にも使用されることがあり、有一文字で「たもつ」と読む名前などがあります。単語の例は有数・有無・所有・有限・有名などです。
「がございます」と敬語の種類
「がございます」について詳しくご紹介する前に敬語についてご紹介します。まず、「がございます」が属している言葉を、丁寧に言うことで相手への敬意を表す「丁寧語」、自身を下げることで相手への敬意を表す「謙譲語」、相手を持ち上げることで敬意を表す「尊敬語」があります。
そして2007年ごろから増えた謙譲語に属する言葉で、自身を下げることは変わらないものの、それによって持ち上げる対象のない「丁重語」、今まで丁寧語の中にあった言葉のまえに「お」や「ご」を付けた「美化語」が存在します。以上が敬語の種類です。
丁寧語
「がございます」も属している敬語で、言葉そのものを丁寧に言うことで相手への敬意を表すものとなります。また、「謙譲語」や「尊敬語」とは異なり上下関係ない場合でも使用可能であるのも特徴です。
文の最後を「です」や「ます」で終える「ですます調」も丁寧語になります。
美化語
元々丁寧語のカテゴリーに入っていた言葉で、「お話」のように「お~」と言った、言葉の頭に「お」を付けたものや「ご」をつけた「ごはん」などが美化語に入ります。
謙譲語
謙譲語は一言でいえば、敬語を使う側(自分自身)を下げることで使われる側である、相手への敬意を表す敬語です。部下と上司ならな部下の方を下げることで、上司への敬意を表します。
「がございます」は丁寧語なので、直接関係はありませんが、立場や状況により謙譲語をあわせて使うことが多いでしょう。よく聞く謙譲語としては、行くの謙譲語表現である「伺う」などがあります。
「がございます」と合わせて使う場合は「係りの者が伺う場合がございます」のような使い方をします。また、「がございます」のもとである「ある」には謙譲語表現はありません。
謙譲語Ⅱ
丁重語とも呼ばれています。名前のとおり謙譲語に属する敬語ではあるのですが、謙譲語と異なり自身を下げたものではあるものの、それによって相手を上げようとするものではないのが特徴です。
よく聞く謙譲語としては、言うの謙譲語表現である「申す」などがあります。
尊敬語
尊敬語は謙譲語とは反対に、相手を持ち上げることで敬意を表す敬語です。そのため持ち上げる対象は敬語を使われる側になり、例として上司と部下であれば上司を持ち上げることで敬意を表す表現ということになります。
こちらも丁寧語の「がございます」とは直接関係していませんが、合わせて使うことがあります。よく使う尊敬語の例は言うの尊敬語である「おっしゃる」や行くの尊敬語である「いらっしゃる」などです。
「がございます」と合わせて使う場合は「社長がいらっしゃる可能性がございます」のような使い方をします。また、「がございます」の元の言葉である「ある」については尊敬語表現が存在しています。あるの尊敬語表現は「おありになる」です。
「がございます」の敬語
「がございます」は言葉そのものを丁寧に表現することで敬意を表す、丁寧語に属しています。もっと正確に言えば「ある」の丁寧語は「ござる」てそのござるに同じく丁寧語の「ます」を付けたものとなっています。また、「がございます」を尊敬語にした場合は「おありになる」などに変化します。また「ある」には謙譲語は存在しません。
「がございます」と「があります」の違い
「がございます」と非常に似た言葉で「があります」が存在します。「がございます」のほうがより丁寧な言い回しではあるものの意味としては両方とも「ある」の丁寧語であり、意味としては違いはありません。ですので、状況で使い分けるのが良いでしょう。
例えば、会社などのビジネスの場面では「がございます」を使用し、気心の知れた先輩などのように多少フランクに接して良い相手には「があります」を使用する、といった具合です。
例として比べてみると「資料がございます」と「資料があります」のような違いです。並べてみるとそこまで違いがあるようには見えません。
「がございます」の例文
簡単に「がございます」についての使い方を説明してきましたが、具体例がないといまいちわかりにくいでしょう。いくつかの例文をご紹介しますので、「がございます」の使い方の参考にしてください。
ご質問がございましたら
「ご質問がございましたら」これは相手に対して質問があったらと言う意味で良く使われる表現です。会社などのビジネスの現場で取引先に対してのメールや、もしくは自分自身がお客として店員から言われたりすることがあるでしょう。
シチュエーションや状況によって異なりますが「ご質問がございましたら」はそのあとに言葉が続きます。例としては「ご質問がございましたらこちらまでお電話ください」や「ご質問がございましたらお気軽にお申し付けください」といったものがあります。
ご不明な点がございましたら
「ご質問がございましたら」によく似た言い回しに「ご不明な点がございましたら」というものがあります。意味合いとしては特に変わりません。「ご質問がございましたら」の例に当てはめると「ご不明な点がございましたらこちらまでお電話ください」や「ご不明な点がございましたらお気軽にお申し付けください」と言った言い回しになります。
資料がございますので
例文としては「資料がございますのでご確認ください」と言った言い回しができます。状況としては会議などで資料の確認を促すときに使用するような言い回しになります。
質問がございます
「質問がございましたら」はもしも質問があればという意味でしたが、「質問がございます」は自身が何かに対して質問があるときに使います。例文としては「先ほどの件で質問がございます」のような文になります。シチュエーションとしては何かしらの説明を受けた時や会議などで使う言い回しになるでしょう。
お時間がございましたら
時間があったらということを丁寧に伝えるときに使う使い方です。例文としては「お時間がございましたら、あちらもご覧ください」と言ったような言い回しができます。使い方としては「ご質問がございましたら」と同じような使い方になります。
ペンがございます
使い方の例文としては「あちらにペンがございますので、ご自由にお使いください」などです。あちらの方にペンがあるということを伝えるのを丁寧に表現しています。使い方としては「資料がございますので」と同じようにものがあることを丁寧に伝える文章になります。
「がございます」の間違った使い方
「がございます」について説明してきましたが、「がございます」の使い方で間違いだったり、間違いではないがもっと適した言葉があるものがあります。そこで、「がございます」の間違った使い方について例文を交えてご紹介します。
社長でございますか
その人物であるかを丁寧に聞くときの言い回しですが、この場合は「社長でございますか」よりも「社長でいらっしゃいますか」という言い回しの方が良いとされています。なぜならいらっしゃるは尊敬語に属する言葉なので、社長のように目上の人に使う場合は丁寧語より適しているからです。
また、「社長でございますか」そのものは悪い言い回しではありません。しかし、尊敬語の方が良いだけではなく、不自然さもあるので「いらっしゃいますか」のほうが良いでしょう。
棚に入ってございます
「ペンは棚に入ってございます」と言った使い方も良くありません。ペンが棚の中にあるということを丁寧に表現したい場合はこの言い回しよりも、「ペンは棚に入っております」のような表現が良いでしょう。「おります」は「いる」がもとになっている敬語ですが「ある」と同じ意味を持っています。
類似の敬語
「がございます」の間違った使い方において、「ございます」の代わりに「おります」や「いらっしゃる」を置き換えましたが、それぞれの言葉の意味も軽くですが紹介しておきます。
いらっしゃる
「いらっしゃる」は尊敬語、相手を持ち上げることで敬意を表す敬語になります。また元となる言葉は「来る」や「いる」、「ある」といった言葉です。
尊敬語なので目上の人の行動をさします。先生がや上司が来る場合は「先生(上司)がいらっしゃる」、部屋などに居る場合は「先生(上司)が部屋にいらっしゃる」、その人本人であるのか聞く場合は「先生(上司)でいらっしゃいますか」というような使い方をします。
おります
「おります」は謙譲語、自身を下げることで相手への敬意を表す敬語に属する言葉となっています。「いる」の謙譲語ですが、正確にはいるの謙譲語は「おる」に「ます」が付いたもので、敬語の中でも「丁重語」と呼ばれるものになります。
また、現在では敬語は尊敬語、謙譲語、丁寧語、丁重語、美化語の5つです。尊敬語は変わらず、謙譲語は丁重語、丁寧語は美化語に分かれた形になります。
謙譲語は自身を下げることで相手への敬意を表す言葉ですが、丁重語は自身を下げるのは同じですが、それに伴ってあげられる対象(目下の人物)がいない言葉です。
「おありになる」について
「ある」の尊敬語は「おありになる」とご説明しましたが、日常ではあまり使う機会のない表現です。なぜなら大体が「ございます」で済んでしまうからです。
また「ございます」が不自然な状況の場合、例えば「社長でございますか」を目上の人だからと「おありになる」で置き換えると「社長でおありになりますか」と言った不自然な文になるため「社長でいらっしゃいますか」というような別の言葉に置き換えてしまったほうがより自然な敬語になるためです。
「がございます」を使いこなそう
「がございます」は、「ある(有、在)」の丁寧語表現です。丁寧語は、言葉そのものを丁寧に言うことで相手への敬意を表す言葉で、目上や目下と言った上下関係なしに使うことが可能です。
また、「がございます」は人やモノ、意見と言った何かしらが存在しているということを丁寧に言った言葉になります。具体的な例としては「ご質問がございましたら」や「ご不明な点がございましたら」、「資料がございますので」、「質問がございます」などがあります。
「社長でございますか」は完全な間違いではありませんが、目上の人に話すときなどは居るなどの尊敬語表現である「いらっしゃる」を使い、「社長でいらっしゃいますか」の方が良いので、注意が必要です。
「がございます」はビジネスや学校、プライベートなど幅広いシチュエーションで使ったり使われたりする言葉なので、正しく使いましょう。