日本語の覚え方
日本語を覚える際によく言われることは「その覚えるべき言葉や表現を実践的に覚えることが大切」というもので、特に「むずかしい言葉や表現」というものは、「いろいろな場面を想定した上で、自分で実際に使ってみないと覚えることができない」という状況がよくあります。
英単語にしても、特にむずかしいスペルの単語などは「何度も書いて覚えること」や、「いろいろな場面で使ううちに見慣れてきてインプットできる」といった、実践的に学習することによって把握する場合が多く見られます。
日本語を覚える際には必ずまずこの「実践的に学習する」という習慣を身に付けておき、いざその言葉・表現を使う際に「正確に使いこなせるよう努力しておくこと」が大切になります。
実践的に言葉を使って覚えること
先述しましたように、言葉というものは「使ってみて初めて覚えることができる」といった、「実践向きの学習法」によって効率的に学習することができます。簡単な言葉にしても、その言葉やその言葉にまつわる表現を「日常的に使い分けているからこそインプットしている」という状態がすべての人にあり、そうした継続的な学習を忘れてはいけません。
今回ご紹介します「ご覧ください」という言葉にして、日常的に実に多くの場面で使われていますが、その「ご覧ください」という言葉そのものの正確な表現法について再確認する形で学び直すことはとても大切になります。
「ご覧ください」の意味と使い方
さて、「ご覧ください」の意味と使い方についてですが、まず慣用句的な言葉を把握・インプットする場合には、「その言葉の根本的な意味合い・用法」をしっかり覚え直すことが大切になります。
「ご覧ください」という言葉の基本的な意味は「見る・見てください」という意味合いとなり、この「見る・見てください」という意味合いをベースにした上で「相手に語り掛ける際のいろいろな用法」に使い分けられることになります。
見てください
先述しましたように、「ご覧ください」の基本的な意味合いにはまず「見る・見てください」というベースの意味が備わっており、この「見る・見てください」という言葉の用法をもって、いろいろな場面で「相手への語り掛け」の意味合いが投げ掛けられます。
「見てください」という意味合いですから、その話者はまずその「相手に見てほしい物」を携えている状態が想定され、その内容物を相手に見てもらうことにより、それなりの満足(ニーズを満たされること)を覚える形になります。このように、この「ご覧ください」の意味合いと用法を根本的に理解しておくことが大切です。
参考にしてください
「参考にしてください」と「ご覧ください」の意味と使い方の違いについてですが、まず「参考にしてください」という言葉の基本的な意味には「話者から相手に対する事例やデータの推薦」が想定されるため、「ご覧ください」の意味合いよりもさらに「専門的な背景」が備わってくることになるでしょう。
単純に「ご覧ください」と言う場合には、「ただそこにある物を見る・景色を眺める」などといった、それほど専門的な事物への参照を促さない場面が想定されます。
確認してください
「確認してください」と「ご覧ください」の意味と使い方についてですが、「確認してください」という言葉は先述の「参考にしてください」と言う場合よりも、比較的「ご覧ください」の意味合いに近い表現となります。
「確認」というのは基本的に「改めてその物事を見て、その物事の内容をきちんと認める」という意味合いになるため、根本的には「見る」という意味合いがそのベースに認められます。
この「見る・見てもらう」という根本的な意味合いを延長する形で「ご覧ください」の意味合いにもそのまま精通する部分があるため、両者の意味合い・用法はかなり近い感覚で使用することができます。
ご覧になってください
「ご覧になってください」という表現は「ご覧下さい」の用法から見ても「ただ丁寧に相手に伝える際に使う言葉・表現」として認められます。ただ「ご覧になって」と言う際の「なって」の部分が、実際に「ご覧ください」と言う場合とどのように違った用法をなすのかが疑問点となるでしょう。
「なって」というのは「なられる」の丁寧語表現となるため、基本的には「受け身の用言」として認められます。そのため、「ご覧ください」と言う場合でも「ご覧になって」と言う場合でも、そのどちらともが用法的には間違っておらず、ビジネスシーンでも多用される場面が見られます。
ご覧いただきたいのですが
「ご覧いただきたいのですが」という表現はそのまま「いただきたい」という謙譲語表現・尊敬語表現につながる敬語表現が含まれるため、そのままどの場面で通用する敬語表現として使うことができます。
この「ご覧いただきたいのですが」という表現には2つの敬語表現が含まれており、「御(ご)」という尊敬語表現と、「いただきたい」という謙譲語表現の2種類の敬語表現となります。そのためこの「ご覧いただきたいのですが」という表現もそのままビジネスシーンで使うことができます。
ご覧になられますか
「ご覧になられますか」という表現も先述の「ご覧になってください」と同じく、「なる・なられる」という受け身の尊敬語表現が含まれているため、多くのビジネスシーンで使っても特に問題はありません。
このような「敬語表現が重複した表現」というのは、特に改まった場面で使われるのが一般的であるため、通常のビジネスシーンや日常的では「ご覧ください」や「ご覧になりますか」などと、さらに短縮した表現にしておくとベターでしょう。
御照覧あれ
「御照覧(ごしょうらん)あれ」という言葉の基本的な意味は、「(目上の人に対して)どうぞ見てください」といった、特に改まった敬語表現として認められます。
この場合の「照覧」の意味合いは古来において日本でも使われており、一般的には「(神仏や祖先に対して)どうぞご覧になってください」という神格化された言葉としてあるため、通常の会話ではほとんど使われることはありません。
古くは、日本の戦国武将・武田信玄の「戦に出る前の決まり文句」として有名ですが、「御旗楯無(みはたたてなし)、どうぞ御照覧あれ」という形で、その武田氏の祖先に対して戦勝を祈願する言葉としてありました。この場合の「御照覧」という言葉の意味にも、「見てください」という基本的な意味合いが含まれています。
「ご覧ください」の敬語
「ご覧ください」の敬語表現についてですが、先述しましたように「ご覧ください」という言葉はすでに「御(ご)」と「ください」という2つの表現によって、一般的にはそのままの活用でも敬語表現として認められます。
「御(ご)」というのは尊敬語、「ください」は丁寧語表現となり、重複する敬語表現となりますが、その言葉の聞き慣れた響きや言いやすさから、一般用語として普通に使われます。
さらに「ご覧ください」の敬語表現となると、「ご覧いただけますか」、「ご賢察ください」、「ご確認いただければ幸いです」などと、「ご覧ください」という言葉にさらに別の言葉・表現による脚色を付ける形によって、その敬語表現が一般的に示されます。
丁寧語
丁寧語というのは一般的に「です・ます調」を語尾に付ける形での「当たり障りのない丁寧な言葉遣いによる敬語表現」となるため、すでに「ご覧ください」に含まれる「ください」が「です・ます」の代わりを示しているため、丁寧語表現として認められます。
・○○さまがご覧になります。
・ご覧いただければ幸いです。
・どうぞご覧ください。
これらの表現でも丁寧語表現として一般的には見なされることになるため、特に「ご覧ください」という語形から改めて変化させる必要はありません。
「ご覧ください」の例文
先述でもご紹介しましたが、日本語を覚える際には必ず「実践的に学習する」という勉強法が効果的で、その実践的に学ぶ方法には「例文を使って覚える・会話表現の中で覚える」などといった、日常からできる方法をもって言葉を学習することができます。
・この有名な絵画をどうぞご覧ください。
・先日にまとめさせていただきました資料を、ぜひご覧ください。
・こちらの展示品を、どうぞ心行くまでご覧ください。
このように、「ご覧ください」という言葉は簡単に「見てください」という言葉の代わりの言葉として使えるもので、その場合でも特に別の語形に改めて使用する必要はありません。
こちらを
先でご紹介しましたが、「ご覧ください」という言葉の例文を作る際にはこの「こちらをご覧ください」という表現が多く出てくることでしょう。この場合の「こちらを」というのは英語で言うところの「this」に相当するもので、人や物を隔てることなく指す代名詞として使われます。
・こちらをご覧ください。こちらがかの有名な西大寺になります。
・それでは、こちらのモニュメントをご覧ください。
・こちらのアイコンをご覧ください。そしてそのアイコンに関連するサイトをご参照ください。
よろしければご覧ください
「よろしければご覧ください」という表現は「相手の許可・了解」を先に求め、その相手の了解を得た上で「それでもよければ見てください」という基本的な意味が含まれます。
・お忙しいところ恐縮ですが、よろしければこちらの資料をご覧ください。
・もしお時間がございましたら(よろしければ)、先日にお送りいたしましたメールをご覧ください。
・差し支えないようでしたら(よろしければ)こちらをご覧ください。
ご覧いただきますよう
この「ご覧いただきますよう」の表現の後には必ずと言ってよいほど「お願いします」といった「希望・懇願」の表現が付いてきます。この場合の「よう」というのは「ように」の短縮形の表現となるため、半ば相手に対する強制的な表現が含まれます。
・本日にお送りいたしました資料は、必ずご覧いただきますようお願いいたします。
・受験に際しては、事前に教室番号をご覧いただきますようお願いします。
・彼らとコミュニケーションを図る際には、先にこちらの資料をご覧いただきますようご配慮ください。
「ご覧ください」の誤用
敬語表現を使う場合に多くある誤用の例ですが、「なられて」や「いただきます」などという比較的ややこしい敬語表現を使用する場合は、言葉の文法上において「基本的なミス」をしてしまうことがよくあります。
そのミスはたいてい「受動態・能動態」の使い方のミスが多かったり、表現そのものが日本語として成立していないミスなどが目立ちます。たとえば「ご覧になられてください」という表現は、「なられる」という受動態であるに関わらずその動作の主体は相手本人である、という、矛盾した誤用が目立ちます。
さらには、「ご覧くださりますよう」などの「現代用語として使うべき日本語表現そのもののミス」などもあるため、常に文法に配慮するクセを身に付けておきましょう。
「ご覧ください」はメールでも使うのか
先述でもご紹介しましたが、「ご覧ください」という表現はそのまま丁寧語表現と尊敬語表現が含まれるため、ビジネスシーンでも多くの場面において実際に使われています。
そのため、たとえばビジネスメールで「ご覧ください」という言葉・表現はそのまま使うことができ、その場合でも「見てください・確認してください」という場合の敬語表現として認められます。
「ご覧ください」と「ご参照ください」の違い
「ご覧ください」と「ご参照ください」の違いについてですが、「参照する」という言葉は基本的に「本題について考慮する・考察する場合に、その考慮・考察の手助けとなる資料を同時に見てください」という内容となるため、「ご覧ください」という言葉がそのような意味合いで使われている場合は問題ありません。
しかし、「ご覧ください」という言葉が単純に「見てください」という意味合いとして使われている場合には、「参照してください」の意味合いとは多少ズレてくる部分があるため、場面によって使い分けておくことが必要です。
「ご覧ください」と「ご参考ください」の違い
「ご参考ください」という言葉の意味合いも先述の「参照ください」の場合とほぼ同じとなるため、「参考・参照ください」という意味合いで「ご覧ください」と言われている場合は問題ありません。しかし、単純に「○○を見てください」という意味合いで「ご覧ください」が使われる場合は、その場面ごとの使い分けが必要になります。
「ご覧ください」の英語表記と意味
「ご覧ください」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合い・用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・please look(見てください、ご覧ください)
・please take a look(視線を移してください、ご覧ください)
・please watch(見てください、ご覧ください、ご注意ください)
・please have a look(考慮してください、ご覧ください)
・please check(確認してください、ご覧ください)
・please see(見てください、知ってください、ご覧ください)
「ご覧ください」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「ご覧ください」の英語表記を参考にして、「ご覧ください」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。
・Please see this monument.
「どうぞこちらのモニュメントをご覧ください。」
・Please watch the material you sent the other day.
「どうぞ先日お送りしました資料をご覧ください。」
・Please check the brochure that you distributed.
「どうぞ配布しましたパンフレットをご確認ください。」
「ご覧ください」の英語表現と意味(2)
先述しました「ご覧ください」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「ご覧ください」の例文をご紹介します。
・In order to rebuild our management and management, please first look at the past history of deficits / surplus results that were estimated by the previous fiscal year.
「わが社の経営運営を立て直すためには、前年度までに推計された赤字・黒字実績の過去歴をまずご覧ください。」
・For the business policy from next weekend, please refer to the materials distributed today.
「来週末からの営業方針については、本日に配付した資料をご覧ください。」
「ご覧ください」の英語表現と意味(3)
先述の具体的な「ご覧ください」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で使われる「ご覧ください」の用例をご紹介します。
・In order to improve the visitor performance of this museum, please first look at the performance of other competing museums.
「この博物館の来客実績を向上させるためには、まず競合する他の博物館の興行実績をご覧ください。」
・”Please see” already contains honorific expressions of polite and respectful words.
「「ご覧ください」という事はすでに、丁寧語と尊敬語の敬語表現が含まれています。」
「ご覧ください」の正確な意味と用法を覚えましょう
いかがでしたか。今回は「ご覧ください」の敬語・例文・「ご参照ください」の違い|メールと題して、「ご覧ください」の敬語・例文・「ご参照ください」の違いについての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「ご覧ください」の用例をご紹介しました。
「ご覧ください」という言葉・表現は、基本的に丁寧語と尊敬語の敬語表現がすでに含まれているため、多くのビジネスシーンでも普通に使うことができます。もちろん日常生活でも日常的に使われているため、聞き慣れた慣用句となるでしょう。
使い慣れた言葉・表現であるからこそ、再確認する形でその言葉・表現の正確な用法を知ることが重要で、日頃から覚えるべき言葉の用法を間違わずに使いこなせるよう配慮しておきましょう。