まずは敬語表現の種類を復習しよう!
「受け取る」の敬語の説明の前に、まずは敬語の種類についておさらいしましょう。そもそも敬語には、大きく分けて「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つの敬語があります。それぞれ使うべき相手、使い方、表現の仕方が異なります。
中学校で習ってる内容なので、もうすでにご存知の方もいるでしょうが、自分の知識が正しいかどうかをチェックする意味でも、ぜひ一度目を通してみてください。
尊敬語とは?
「尊敬語」とは、相手に対して敬意を払った表現の敬語です。
尊敬語の使い方、表現にはルールがあり、「目上の方の行動」を述べる歳に用いられるのが尊敬語です。「〜なさる」「お〜なる」の決まった型に当てはめるタイプのものと、「いらっしゃる」「お召し上がりになる」などの単語が変形するタイプの2種類があります。
たとえば、決まった型に当てはめるタイプの尊敬語は「聞く」の「お聞きになる」や「会う」の「お会いになる」などがあり、単語が変形するタイプには「行く、来る」の「いらっしゃる」や「食べる」の「お召し上がりになる」、「見る」の「ご覧になる」などが挙げられます。
謙譲語とは?
「謙譲語」とは、自分を下に置くことで間接的に相手を立てた表現になる敬語で、俗に言う「へりくだった表現」です。謙譲語にもルールがあり、謙譲語は「自分(身内)の動作」を目上の人に表す際に用いられる敬語になります。
表現方法としては、「お〜する(いたす)」「〜させていただく」の型に当てはめるタイプのものと、単語が変形するタイプのものの2種類あります。たとえば、「聞く」の「お聞きする」や「利用する」の「利用させていただく」、「言う」の「申し上げる」や「行く、来る」の「参る」などが挙げられます。
丁寧語とは?
「丁寧語」は、文末に「です」「ます」や「ございます」がついた丁寧を表す敬語です。一番馴染みのある敬語ではないでしょうか。
尊敬語や謙譲語のような細かなルールはなく、誰に対しても使うことができ、目上の方にも目下の人にも、自分の行動を表す際にも用いて大丈夫です。ビジネスにおいては尊敬語や謙譲語、丁寧語をしっかり使い分けた方が好まれますが、普段の生活においては丁寧語を押さえておけば、ひとまずOKだと言えるでしょう。
「受け取る」の敬語表現はどうすればいい?
では、本題の「受け取る」の敬語表現について詳しくご説明します。
前述の敬語の種類の説明で述べたように、「受け取る」の言葉も、尊敬語、謙譲語、丁寧語でそれぞれ表現方法や使い方、使う相手が異なります。
尊敬語は「お受け取りになる」
「受け取る」を尊敬語で表現するには、「お〜なる」の型に当てはめて「お受け取りになる」になります。前述したように、尊敬語は目上の方の動作を表しますので、自分より目上の方が「受け取る」という動作をした場合に用いられる敬語表現です。
たとえば、「社長が受け取った」「田中くんのお父さんが受け取った」というような、自分より年上であったり、身分が上の人が「受け取った」動作をした時に「お受け取りする」、過去形なら「お受け取りになった」と表現します。
謙譲語は「お受け取りする(いたす)」
「受け取る」の謙譲語も、「お〜する(いたす)」「〜させていただく」の型に当てはめることができるので、「お受け取りする」「お受け取りいたす」「受け取りさせていただく」などと表現できます。
前述したように、自分の行動を表すのが謙譲語です。自分や身内の行動について目上の方に向けて話す場合に用いられる敬語表現だということを覚えておいてください。
たとえば、「私が受け取る」「弟が受け取る」「部下が受け取る」という内容を上司や年配の方、取引先に対して述べる際には、「私がお受け取りします」「弟がお受け取りいたします」「部下が受け取りさせていただきます」などと表現します。過去形にしたい場合は「お受け取りしました(いたしました)」「受け取りさせていただきました」になります。
謙譲語では「頂く」「頂戴する」の方が好ましい!
前述した「お受け取りする(いたす)」「受け取りさせていただく」は型に当てはめた表現になりますが、「貰う」の謙譲語の「頂く」「頂戴する」でも謙譲語としての表現ができます。
「頂く」「頂戴する」は「物を貰う」という意味で、「受け取る」も「(物を)自分の手で取って持つ」なので、同様の意味として使えます。したがって、「受け取る」の謙譲語として「頂く」や「頂戴する」は正しい敬語表現と言えます。
「お受け取りする」でも表現として間違いではないですが、「頂く」や「頂戴する」の方が日常的にもよく使われている表現なので、「受け取る」の謙譲語を使いたい場合は「頂く」「頂戴する」の方が好ましいと言えるでしょう。
丁寧語は「受け取ります」
丁寧語文末に「です」「ます」を付け加えたら良いだけなので、「受け取る」の丁寧語は「受け取ります」になります。過去形にしたい場合は「受け取りました」です。
前述したように、丁寧語は目上の人だけでなく、自分と同等の人や目下の人に対して使っても大丈夫です。
「受け取る」の類語は?
「受け取る」の類語にはどのようなものがあるのでしょうか。「受け取る」の言葉の意味を考えると分かりやすいです。「受け取る」とは、「手に取って持つ」「理解する」というような意味があるため、「物を貰う」や「読み取る」という意の単語が「受け取る」の類語にあたります。
以下で「受け取る」の類語の例を挙げます。
・貰う
・得る
・受ける
・貰い受ける
・理解する
・読み取る
依頼文では「納める」を使ってもOK!
相手に物を受け取ってほしいと依頼することもあります。その場合は、「受け取る」に要求・依頼の尊敬語「ください」を付け加えて「お受け取りください」や「受け取ってください」という表現ができます。もう少し丁寧に表現したいなら、「お受け取りくださいますか」「お受け取りいただけませんか」などのように、疑問形で表現するとなお丁寧な敬語表現になります。
「受け取る」に要求や依頼の尊敬語「ください」を付け加えただけの表現でも良いですが、「取って自分の物にする」という意味の「納める」を用いて表現してもOKです。したがって、「受け取る」依頼をする場合には、「お受け取りください」「お受け取りいただけませんか」以外にも、「お納めください」と表現しても問題ありません。
「受け取る」の敬語の使い方は?
「受け取る」の敬語について、メールや手紙での使い方をご説明します。
メールや手紙などのような文章で表現する場合には、くだけた表現より堅苦しい表現の方が好まれます。なので、話し言葉のような表現は控えるようにしましょう。
メールで「受け取る」は「受領」を使おう!
メールで「受け取る」を使いたくなるシーンは以下のような場合です。
・自分が確かに物を受け取ったことを述べたい時。
・相手に受け取ってほしいと依頼する場合。
・相手が受け取ったかどうかを確認する場合。
相手に「受け取る」の依頼をする場合や、受け取ったかどうかを確認する場合には「お受け取りください(お納めください)」「お受け取りいただけましたか」などと表現できますが、自分が受け取ったことを相手に述べる際に「確かに受け取りました」という表現はあまりふさわしくありません。
メールで自分が受け取ったことを述べたい場合、「受け取る」の意味を持つ「受領」という言葉を用いて「受領いたしました」と表現しましょう。前述した謙譲語の「お受け取りいたしました」「頂きました」ではなく、よりかしこまった表現の「受領いたしました」の方が好まれます。
手紙での使い方!
手紙で「受け取る」を表現したい場合も、前述のメールと同様に堅苦しい表現の方が好まれます。
自分が受け取ったことを述べたい場合は「受領いたしました」、相手が受け取ったかどうかを確認したい場合は「お受け取りいただけましたか」、相手に物を受け取る依頼をする場合には「お受け取りください」「お納めください」以外にも「ご査収ください」「ご確認ください」と表現しても同じような意味になります。
このように、「受け取る」という言葉一つでも、別の言葉で色々と表現することができますので、ぜひ「受け取る」と同じような意味を持つ単語もチェックしてみてください。
ビジネスにおける敬語の使い方の注意点!
ビジネスにおいて敬語表現は必須です。「受け取る」という言葉の正しい敬語表現を身に着けましょう。
以下で、シーン別で「受け取る」の敬語表現についてご説明しています。
ビジネスシーンでは誰を立てるのかを考えよう!
ビジネスシーンにおいて一番重要なのは、「誰を一番に立てるのか」を考えて適切な敬語表現をすることです。
社長が受け取ることについて課長とお話ししたり、自分の上司が受け取ることについて部下と話をすることもあるでしょう。このような「誰が受け取ることをし、そのことについて誰と会話しているのか」、この場合の敬語表現には注意が必要です。
間違った表現をしてしまうと、間接的に社長を下げた表現になってしまったり、部下を立てた不適切な表現になってしまうことに繋がりますのでご注意ください。「動作をしている人」を立てるのか、「話をしている人」を立てるのかに着目すると分かりやすくなります。
「話し手」を一番に立てる場合!
話し手を一番に立てる場合は謙譲語を用いましょう。
話し手を一番に立てる場合とは、たとえば、課長が受け取った動作をしたことを社長と話しているような場合です。この場合は「課長」が受け取る動作をし、そのことについて「社長」と会話をしています。「課長」と「社長」とでは、「社長」を一番に立てなくてはいけないため、この場合では話ししている人(話し手)である「社長」を立てた表現をしましょう。
このような、話し手である社長に「課長が書類を受け取った」と述べたい場合、謙譲語の「お受け取りしました(いたしました)」もしくは「受領いたしました」と表現します。課長が受け取った動作について「お受け取りになった」などと尊敬語を用いてしまうと、課長を一番に高めた表現になり、間接的に社長を下げるようは表現になってしまいますので、ご注意ください。
「動作をしている人」を一番に立てる場合!
動作をしている人を一番に立てたい場合は尊敬語を用います。
例を挙げると、部長が受け取ったことを先輩と話しているような場合がこれに当たります。この場合では、受け取る動作をしているのが「部長」で、話をしている人(話し手)は「先輩」になり、一番立てるべき相手は動作をしている「部長」です。
「先輩」と「部長」では、「部長」を一番に高めた表現をしないといけないので、尊敬語の「お受け取りになる」を用いましょう。前述しように、尊敬語は目上の方の動作を表す敬語なので、何らおかしな点はありません。
以上のことから、動作をしている人を一番に高めるなら、尊敬語の「お受け取りになる」を用いてください。
相手を立てる必要がない場合!
相手を立てる必要がない場合には、丁寧語の「受け取ります(ました)」でOKです。たとえば、部下に自分のことを述べる場合などがこれに当たります。自分より目下の人(もしくは同等の人)に対してはへりくだる必要がないため、謙譲語の表現も必要ないですし、尊敬語は目上の人の動作にしか使えないので、尊敬語も使えません。
以上のことから、自分より目下の人や同等の人に対して、自分の動作のことを述べる場合には丁寧語の「受け取ります(ました)」を用いて表現しましょう。
「受け取る」の敬語表現の例文
では、「受け取る」の敬語表現を使った例文について、尊敬語、謙譲語、丁寧語に分けてご紹介します。
前述したように、目上の人の動作を表すのが尊敬語、自分の動作について目上の方に向かって述べる場合や話し手を立てたい場合は謙譲語、立てる必要がない相手には丁寧語を用いて表現します。
尊敬語を使った例文!
尊敬語は、目上の方の動作を述べる際に用いましょう。
以下、例文です。
「田中様が商品をお受け取りになりました」
「佐藤先輩、人事部の林部長は例のサンプルをお受け取りになりましたか」
謙譲語を使った例文!
自分の動作を目上の方に向かって述べる場合や、話し手を立てたい場合に謙譲語を用いましょう。
以下、例文です。
「先日お話していた書類、本日確かに受領いたしました」
「その時間帯は母が不在ですので、父がお受け取りいたします」
「部長、お忙しいところ申し訳ございません。次の会議で使う予定の商品サンプルですが、林先輩はまだサンプルを企業様からお受け取りしていない模様です」
丁寧語を使った例文!
ビジネスでは、尊敬語と謙譲語をしっかり使い分けるほうが好まれますが、丁寧語は誰に対して使っても問題ない敬語表現です。ビジネスにおいては相手を立てる必要がない場合に活用しましょう。
以下、例文です。
「この書類は、先週、鈴木くんが受け取りました」
「遠藤さんは明日不在なので、代わりに鈴木くんが受け取ります」
「昨日この不良品を受け取りましたので、確認をお願いします」
「受け取る」の別の敬語表現例!
「受け取る」の敬語を別の表現で表すには、これまで説明してきたような「受け取る」と同じような意味を持つ「受領」や「頂く」「頂戴する」が挙げられます。「受け取ってください」と要求・依頼したい場合は「お納めください」「ご確認ください」などと表現しても同じような意味になります。
正しく「受け取る」の敬語を使い分けよう!
尊敬語の「お受け取りになる」は目上の人の動作、謙譲語の「お受け取りする(いたす)」「受領する」は自分の動作を目上の人に向かって述べる場合や話し手を立てたい場合に用いられ、相手を立てる必要がない場面では丁寧語の「受け取ります」でOKです。
特にビジネスにおいては正しい敬語が使えないと、相手からの印象が悪くなってしまうこともあります。したがって、「誰を立てるのか」をしっかりと見極め、相手によって正しい敬語を使いわけるようにしましょう。