「助かります」の敬語
大人として、社会人の一人としてコミュニケーションをするときに不安な要素があるとしたら、言葉使いではないでしょうか。自分では、正しい言葉を使っているつもりでも上手に敬語が活用できていなかったり、いざとなると、これで本当に正しかったのかどうか心許ないこともあるでしょう。
今回は敬語の中でも、特に迷いがちな「助かります」の使い方についてや、正しい表現方法などを、具体的な例文を踏まえて、わかりやすくご紹介します。
「助かります」例文
友人や仲間、会社の同僚との間柄で、何かを頼むときに「~してもらえたら助かります」と言う表し方をする場合があります。また、ビジネスマンではフォローしてもらったお礼など感謝の気持ちを表現するときにも「おかげさまで助かりました」などと使うときもあるでしょう。
[その他の例文]
・「家まで送ってくださり、助かりました」
・「お忙しいところ申し訳ありませんが、メールして頂けると助かります」などがあります。
しかし、「助かります」という表現は、確かに敬語(丁寧語)ではありますが、上司などに使う場合には注意が必要ですので気をつけましょう。
「助かります」意味
「助かります」という言葉は、相手の助力に対して、(わたしが)ありがたいと思った感情を表現するときに使用します。
主体が相手ではなく、わたしであることから、相手を下に見ているようなニュアンスで伝わってしまう場合があります。したがって、目上の人に使用する敬語としてはふさわしくないと捉えられてしまう可能性があるため注意しましょう。
「ありがたいです」は敬語?
「ありがたいです」は、相手に感謝の気もちを伝える言葉ですが、正式な敬語ではありません。普段から親しくしているような気心の知れた上司なら笑って許してくれる場合もあるでしょう。
しかし、たいへんカジュアルな敬語のため、相手との関係性においては、失礼にあたる場合があります。もちろん、気にされない心の広い方もいらっしゃいますが、不適切だと言う意見がある以上は別の言い方に変えた方が良いでしょう。
「ありがたいです」使い方
「ありがたいです」という敬語を目上の人に使う場合には、つけ加えて感謝を伝える言葉を添えると良いでしょう。たとえば「ありがたいです。とても感謝しております」のように、適切な言葉をひとこと添えるだけで相手に対しての敬意や感謝の気持ちを表現することが可能です。
使い方に迷ってしまう場合には、「ありがたいです」ではなく「ありがとうございます」とストレートに言う方が良い印象を与えるでしょう。
「大変助かります」
「大変助かります」または「とても助かります」などという言葉も、ビジネスや日常でよく使われます。しかし、「助かります」と同じように、主体が自分自身であることも含めて考慮すると一般的には上司や目上の人、取引先の相手などには、不適切な敬語だと言えるでしょう。
本来は、助かるという言葉はねぎらいの言葉として使用されるも多いです。したがって、ねぎらいの言葉は上から下にかける言葉という捉えかたが残っているために、上司に対してはふさわしくないと認識されています。しかし、友達や家族間では問題なく使える言葉でしょう。
シーン別「助かります」の敬語での使い方
敬語を適切に使えるようになると、周りの人とのコミュニケーションがスムーズになります。なぜかと言うと、敬語は相手の立場を尊重しながら、相手を気持ちを思いやる言葉だからです。
正しい敬語を使えるようになれば、円滑な人間関係を築けると同時に、相手に好印象をもってもらえて、評価も上がるというメリットがあります。ここでは、シーン別に「助かります」の敬語での使い方を考えていきましょう。
依頼するときの敬語の使い方
何かを依頼するときや、一人では解決できそうもなくて補助を必要とする際、「~してもらえると助かります」という表現を使う方も多いでしょう。しかし、「助かります」という敬語は、ビジネスシーンで使うと失礼になることも多いため、使い方には注意しなくてはなりません。
ここでは、ビジネスシーンで使用する「助かります」の注意点や、実際に代用できる言葉をご紹介します。
「~していただけますでしょうか」
たとえば、プレゼンテーションの資料作成のお手伝いを頼む場合で考えていきましょう。「助かります」での表現では「資料作成をお手伝いしていただけたら、私としては大変助かります」となりますが、これでは主体が私になるため、相手次第では失礼に当たってしまうでしょう。
相手への敬意を込めて表現するならば、「(おそれいりますが)資料作成のお手伝いをしていただけますでしょうか」と置きかえられます。この言い方は、相手の都合を考慮する形になるため、目上の人に対しても最適な表現です。
「幸いです」
何かをお願いしたい場合、「助かります」の代わりに「幸いです」を使用するテクニックもあります。この場合は、「(お手数をおかけしますが)資料作成をお手伝いしていただけたら幸いです」となります。
ほかの人に何かを依頼する場合、相手が目上の人や取引会社などである場合には特に、慎みの心が大切です。したがって、これからの信頼関係を形成するという意味でも、節度のある敬語の表現が好まれるでしょう。
「幸いです」をもう少していねいな言葉で使用したい場合には、「幸いに存じます」や「幸いでございます」に置き換えることもできます。
お礼を言う場合の敬語の使い方
「助かります」という言葉は、相手の協力や助言に対して「~してくれて助かりました。ありがとうございます」といった感謝の気持ちやうれしい気持ちを表現するときにも使用します。
ここでは、感謝やお礼を伝えたいときに「助かります」の代わりに使用できる言葉をいくつかご紹介します。
ありがとうございます
お礼の気持ちを伝えたい場合には、「助かります」の代わりに「ありがとうございます」という言葉が使えます。素直な気持ちを伝えるための最もポピュラーな敬語で好感度がアップします。
「おかげさまで助かりました。ありがとうございます。」などという伝え方もあります。また、言葉の「ありがとうございます。」の前に「まことに」や「心より」と付け加えると、より感謝の気持ちを表現することができるでしょう。
感謝申し上げます
「感謝申し上げます」という敬語も、「助かります」の代わりの言葉として最適です。「御礼申し上げます」でも良いでしょう。「申し上げます」は「言う」の謙譲語なので、お世話になった目上の人や上司には、最もふさわしい表現方法と言えるでしょう。
たとえば「ご支援いただいたみなさまに感謝申し上げます」「〇〇さんのご親切に、心より御礼申し上げます」などと言う使い方ができます。
厚く御礼申し上げます
「助かります」の敬語は、「厚く御礼申し上げます」と置きかえることも可能です。目上の人に口頭でお礼を言う場合には、一般的には「ありがとうございます。」と素直な気持ちを伝えることが最も喜ばれるでしょう。
しかし、改まったあいさつや文面で気持ちを伝える場合は、「厚く御礼申し上げます」とすることが一般的です。
「助かります」の敬語での使い方
「助かります」は「~してくれると助かるのでお願いしたい」といった依頼や「~してくれて助かりました。ありがとうございます」などと感謝やお礼を表現する場面で使用されるラフなスタイルの敬語です。
たとえば、何かをお願いする場合に「~してもらえますか」と聞くよりも「~してもらえたら助かります」と言った方が、やわらかなイメージになりますし何よりもさりげなく、こうしてもらえたらありがたいと言う気持ちを伝えられます。
しかし、上司や取引先のお世話になった方にメールや電話で「助かります」と伝えたい場合はどうでしょうか。ここでは、カジュアルな敬語で使う助かりますという言葉の、フォーマルな表現方法をいくつか紹介します。
ビジネスメール
メールでは顔が見えない、声も聞けないため、受け取った相手の方が気持ちのいい印象をもっていただけるような敬語の表現を意識するように心がけると良いでしょう。それでは、ビジネスなどでお世話になった方へメールをする場合どのような文面にすれば良いでしょうか。
[具体例]
・「先日は、お忙しい中書類の評価をしてくださりありがとうございます。おかげさまで無事に仕事を完了することができました」
・「先ほどはご多忙中にもかかわらず、メールの返信をしてくださいましてありがとうございます。」
上記のような形で伝えれば「助かります」と同じ意味で、より丁寧に気持ちを伝えることができます。
電話
「助かります」は、ややカジュアルな敬語になるため、取引先の相手や上司に使う場合は注意が必要です。したがって、恐縮するような相手との会話には使用しない方が賢明でしょう。
電話の場合は、「助かります」の代わりに「お願い申し上げます」「お願いいたします」という敬語が使えます。取引先やお客さまに対して感じの良い対応ができれば、仕事の可能性も広がります。ぜひマスターして使用してみましょう。
はがき・手紙
「助かります」という敬語は、使う相手やシチュエーションによって、幾つかの言葉に言い換えられます。ここからは、はがきや手紙で、感謝の気持ちを伝えたい場合の表現を紹介していきましょう。
書面にする場合「幸いに存じます」や「幸甚に存じます」などの敬語を使うと相手への敬意を表しながら、感謝の気持ちを表現できます。
幸甚は堅苦しい敬語のため、口語には向きません。主に手紙やメールなど、書面で広く活用することが多く、自分よりも目上の人に対してのお礼の言葉に最適です。「幸甚に存じます」という形で定型文として覚えてマスターしましょう。
幸甚の意味
幸甚という言葉には、この上ない幸せな気持ちという意味があります。したがって、感謝の気持ちを表現するときに使用しますが、少し固い敬語になるため重複して使った場合、言葉だけが先走り、形式だけで心がこもっていないと捉えられるため、注意が必要です。
また、上司でも親しくしている間柄の人に使用すると、親近感がないなどと捉えられてしまう可能性もあります。相手との距離感や人柄を見て判断しましょう。
幸甚を使用した敬語・例文
「助かります」という敬語は、「幸甚に存じます」または「幸甚の至りです」という言葉と置き換えられます。ここからは、幸甚を使用した具体的な例文を紹介します。
例としては「先日は、お世話になり本当にありがとうございます。~の件についてもご教示頂ければ幸甚に存じます」「先日送っていただいたメロンを家族皆でおいしく頂きました。幸甚の至りです」のような使い方ができます。
幸甚は、なかなか耳慣れない敬語ですが、使用方法を覚えて、目上の方やお世話になった方へのメールや手紙の中で使ってみましょう。使いこなせれば、ビジネスマンとしてステップアップすることにつながるはずです。
相手別「助かります」の敬語での使い方
ビジネスの世界においては、年齢層も広く、上司と部下など、仕事を通じた関係が生まれます。これによって、相手への言葉遣いにおいても、上司や、取引先の相手、また同僚や部下など関係性によって節度をわきまえた話し方をすると、人間関係が円滑に進むでしょう。
ここでは、相手別「助かります」の敬語の使い方や、言い換えの方法をご紹介します。
取引先
ビジネスのシーンで取引先に依頼をするときに、まず基本になる形は「~してもらう」の謙譲語の「していただく」と組み合わせます。
たとえば、相手から連絡が欲しい場合には「ご連絡していただければと存じます」「ご連絡していただけたら幸いです」などが使用できます。
また、相手の都合を優先すると言う意味で「お手数をおかけしますが、ご連絡していただけるでしょうか」と尋ねる形でも良いでしょう。
部下・同僚
「助かります」を使用する場合は、相手に何かをお願いしたいときや、感謝の気持ちを伝えたいときです。部下や同僚の協力や助言に感謝したい場合に使用することは、信頼関係を築く意味でもとても良いでしょう。
たとえば、「君が手伝ってくれたおかげで助かったよ」「先にコピーを取ってきてくれると助かるよ」などと、ひとこと「助かる」と付け加えるだけで、温かみのある言葉になります。
目上の人
目上の人に「助かります」という感謝の気持ちを伝えたいときには、どのようなトーンで、またどのような敬語で伝えれば失礼にならないのでしょうか。意外と難しいことのように感じますが、うれしかった気持ちをストレートに伝えるのが一番です。
「この度はおかげさまで無事に仕事を完了することができました。ありがとうございます。」や「先日貸していただいた資料は大変勉強になりました。感謝しております」などと使用することができます。
助かりますの敬語をじょうずに使い分けよう
お世話になった相手に「助かりました」という感謝の気持ちを表現するときには、相手や状況に合わせた敬語に置き換えることが大切なポイントです。気持ちのいい敬語を使えるようになると、自分も気分がいいですが、その言葉を受け取った相手も幸せな気持ちになります。
ビジネスのシーンでは特に「助かります」という敬語の表現をじょうずに使い分けられるようになれば、人間関係も仕事も円滑に進むでしょう。