「いかがいたしましょうか」はどういう敬語?
「いかがいたしましょうか」という言葉がどういう敬語なのかよく分からずに使ってしまっている人もいるのではないでしょうか。「いかがいたしましょうか」という言葉の成り立ちや、使い方についてご紹介します。「いかがいたしましょうか」という言葉を間違えずに使えるように、チェックしておきましょう。
敬語の種類
敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三種類があります。「いかがいたしましょうか」という言葉で使われているのは、「謙譲語」と「丁寧語」の二種類です。それぞれ、詳しく見てみましょう。
謙譲語とは?
謙譲語は、目上の人に対して自分がへりくだることによって、相手への敬意を表す言い方です。自分に関することや自分がする行動についてこの言葉を使います。例をいくつか見てみましょう。
謙譲語の例
謙譲語の例としては、「伺う」「いただく」「申す」などがあります。「伺う」は、「聞く」「質問する」「行く」をへりくだって言う言い方です。例えば「是非ともご意見を伺いたく存じます」「ひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」「すぐにそちらに伺います」といった使い方をします。
これらは全て、目上の相手に対して使う言葉です。例えば「是非ともご意見を伺いたく存じます」と部下に向かっては言いません。上司や取引先に対して言います。もし相手が部下であれば、「是非君の意見を聞いてみたいんだけど」といったくだけた言い方になるでしょう。
謙譲語には他に、「お聞きする」「お電話する」のように、「お〇〇する」という言い方もあります。例えば、「是非ともご意見をお聞きしたく存じます」「ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか?」といった言い方をします。こちらもやはり、目上の相手に対して使われる言葉です。
「いたす」の意味
「いたす」も謙譲語のひとつで、「する」をへりくだって言う言葉です。ちなみに、「いたす」は漢字で書くと「致す」となります。例えば、「わたくしから話をいたします」と言えば、「私から話をします」という意味になり、「精進いたします」と言えば、「精進します」という意味になります。
丁寧語とは?
丁寧語とは、話し手が聞き手に対して敬意を表して丁寧な言い方をする言葉です。文末に「です」や「ます」をつけるのが、丁寧語です。こちらも基本的には目上の相手に対して使う言葉ですが、謙譲語や尊敬語よりも少し相手の範囲が広くなります。例えば、部下に「私が指示を出しますので、その通りにしてください」と言っても、そんなにおかしくはありません。
部下に向かって「わたくしが指示をお出ししますので、その通りになさってください」とは言いません。なので、丁寧語は謙譲語や尊敬語ほど表す敬意が強くはありません。ただし、「ください」は「くれ」の尊敬語ですので、言葉によっては尊敬語でも目上の相手以外に使われることもあります。
丁寧語の例
丁寧語には「です」「ます」の他に「ございます」などもあり、また「お品書き」「お天気」「お手紙」のように「お」を付けて上品な言い方をするのも丁寧語です。また、「ご飯」も丁寧語です。「ご飯」を丁寧語でない言い方にすると「飯(めし)」ですが、相手によらず「ご飯」と言う人は多いでしょう。
また、「食べる」も実は丁寧語のひとつです。こちらは丁寧語でない言い方にすると「食う」となります。とてもフランクに「飯食いに行こうぜ」という言い方をすることもありますが、友達に対しても「ご飯食べに行こうよ」と言う場合も多いでしょう。実はこれは丁寧語が使われています。
「ます」の意味
「ます」は丁寧な言い方をすることによって敬意を表すものなので、「ます」自体に動作や状態を表す特別な意味はありません。
「いかがいたしましょうか」の意味は?
「いかが」は漢字では「如何」と書き、状態や意見などに尋ねる様子を表します。「どう」「どのように」と言った意味になります。「いかが」は少し丁寧な言い方ですが、敬語ではありません。「いたす」は上でも見たように「する」の謙譲語です。なので「いかがいたしましょうか」というのを謙譲語も丁寧語も使わない表現にすると「どうしようか?」となります。
「いたす」は自分が「する」ことについての謙譲語なので、ここでいう「どうしようか?」というのは、「(私が)どうしようか?」という意味です。「いかがいたしましょうか」というのは、「(私が)どのようにしましょうか?」という意味です。「いかがいたしましょうか」は、自分がどうすればいいのか指示を仰ぐ場合に使われる言葉です。
「いかがいたしましょうか」の使い方
「いかがいたしましょうか」の成り立ちと意味がわかったところで、実際の使われ方を見てみましょう。「いかがいたしましょうか」は目上の相手に対して使われます。ここでは電話と社外メールでの「いかがいたしましょうか」の使い方の例を見てみます。
電話で
上司に対して指示を仰ぐときに「いかがいたしましょうか」と言うことができます。例えば電話で、「取引先のAさんに〇〇の件の資料を送ってほしいと頼まれたのですが、いかがいたしましょうか?」というように使うことができます。
社外メールで
取引先の相手に対しても「いかがいたしましょうか」と使うことができます。例えば社外メールで、「〇〇の件の資料をメールかFAXで送ることができますが、いかがいたしましょうか?」といった尋ね方ができます。
「いかがいたしますか」に注意
「いかがいたしましょうか」は、「(私が)どうしましょうか」と訊ねる場合に使います。「いたす」は謙譲語なので、自分が行う動作について使います。相手が行う動作について「いたす」という言葉を使うのは敬語として間違いです。相手に「(あなたが)どうしますか」と訊ねる場合に「いかがいたしますか」と言うのは間違いなので気をつけましょう。
自分の動作について「(私が)どうしますか?」という意味で「いかがいたしますか」と言うと、少し不自然な言い方になり、正しく伝わらない場合があります。なので、「(私が)どうしますか?」と指示を仰ぐ場合には「いかがいたしましょうか」と、より丁寧な言い方をするといいでしょう。
尊敬語とは?
尊敬語は、話し手が相手に対して、相手を高めることによって敬意を表す言い方です。謙譲語が自分を下げていたのに対して、尊敬語は相手を上げるという違いがあります。尊敬語には「いらっしゃる」「召し上がる」「おっしゃる」などがあります。
例えば、「いらっしゃる」は「いる」「行く」「来る」の尊敬語です。「先生は職員室にいますか?」という意味で「先生は職員室にいらっしゃいますか?」と訊くことができます。「先生はいつ教室に来ますか?」と訊きたいときには「先生はいつ教室にいらっしゃいますか?」と言います。
「明日はどこへいらっしゃるんですか?」と訊けば、「明日はどこへ行くんですか?」と言う意味になります。また、「お呼びになる」「お食べになる」「お言いになる」といった「お〇〇になる」という言い方も尊敬語です。「来られる」「行かれる」のように「〇〇られる」「〇〇れる」という言い方をするのも尊敬語です。
「どうしますか」と聞きたいときは?
相手がどうするのかを訊きたいときは、これまで見てきたような尊敬語を使う必要があります。相手の「する」という動作について敬語で表現するには、尊敬語の「なさる」が正しい使い方です。目上の相手に対して「(あなたが)どうしますか?」と訊きたい場合は「いかがなさいますか?」と言うのが正解です。
「いかがいたしましょうか」と「いかがなさいますか」という二つの言い方は、似ているけれど意味が全く違うので、混同しないように注意が必要です。しっかりと使い分けられるようになりましょう。
例文
例えば、上司が来客として家に来たとき、「コーヒーか紅茶ならお出しできますが、いかがなさいますか?」と訊くことができます。コーヒーか紅茶を出せるけれど、あなたはどちらを飲みますか、ということです。
「いかがいたしましょうか」を使う相手は?
敬語はやみくもに使えばいいというものではなく、相手を選んで敬語を使うのかどうかを選ぶ必要があります。例えば社内での上司や、取引先の相手に対しては、敬語を使う必要があります。上司と取引先を相手に「いかがいたしましょうか」を使う例をご紹介します。
上司に対して
自分がどうすればいいか分からないときにはしっかりと訊ねることも、仕事の上では必要になります。また、上司に対して正しく敬語が使えるかどうかも信用問題の上で大切です。何か分からないことを上司に訊くときに、「いかがいたしましょうか」が使えます。
例えば、取引先の相手に資料を送るように頼まれたけれど自分の権限では決められない、という時に「いかがいたしましょうか」と使えます。「〇〇様から資料を送るように頼まれたのですが、いかがいたしましょうか?」と訊ねることができます。
「それじゃあメールで送っておいて」と頼まれる場合もあれば、「いや、それはこっちで処理するから君は何もしなくていい」と言われる場合もあるでしょう。分からないことがあったら「いかがいたしましょうか」と上司に指示を仰ぐことで、仕事も円滑に進めることができます。
取引先に対して
取引先に対してもちゃんと敬語を使えないと、会社全体の信用問題にも関わります。分からない点について訊くときにも「いかがいたしましょうか」ということができますが、相手の意向を訊ねる場合にも「いかがいたしましょうか」と訊くことができます。
例えば、後日また連絡を取らなければいけないときに、「こちらから〇〇日にお電話さしあげることもできますが、いかがいたしましょうか」と訊ねることができます。相手によっては電話をかけられるよりかけるほうが都合がいい場合もあるし、メールの方が都合がいい場合もあるでしょう。
「いかがいたしましょうか」と訊ねることで、お互いによりスムーズなやり取りへと繋ぐことができます。
「いかがいたしましょうか」を上手に使おう
敬語は間違った使い方をすると周りからの信用を失ってしまうこともあります。反対に敬語がしっかり使えれば、周りからの信頼を得やすくなるでしょう。日常的に使う場面の多い「いかがいたしましょうか」を上手に使って、仕事もスムーズにこなしていきましょう。