「さしあたって」の意味と使い方・例文・類語・漢字・敬語・対義語

ビジネススキル

「さしあたって」の意味と使い方

ビジネスシーンでも良く使われる、「さしあたって」という言葉の意味をきちんと理解していますか。何気ない言葉でも意味を間違えると失礼になったり、誤解を招いたりしてしまうことがあります。

みなさん、知った気になって「さしあたって」という言葉をつかっていませんか。「さしあたって」の意味と使い方を一度しっかり確認してみましょう。

「さしあたって」の意味

「さしあたって」とは、将来のことは考慮せずに、今現在のことに限って問題に対応するという意味です。つまり、「将来は変わるかもしれないが、現在は」といった意味で使います。また、当面、今のところといった、短いスパンといった意味でも使われます。

このように、少し曖昧な意味を含んでいるのが「さしあたって」です。この曖昧さを知らずに使ってしまうと、相手に誤解をさせたり、失礼になってしまうこともあるので気をつけましょう。

「さしあたって」の使い方

「さしあたって」は、「さしあたり」の連用形で副詞として使われます。実際の使い方としては、次のようなものがあります。ビジネスシーンで多い「さしあたって」の使い方をいくつか見てみましょう。

・さしあたって、問題はありません。

・さしあたって、ご報告申し上げます。

・さしあたって、求人を続けます。

「さしあたって」の例文

ビジネスや普段の会話で使える、「さしあたって」を使った例文をいくつかご紹介します。

・新店舗オープンにあたり、さしあたってスタッフを募集します。

・本来であれば、直接お会いしてお礼を述べるところですが、さしあたって書面にて暑くお礼申し上げます。

・さしあたって、履歴書の提出をお願いいたします。

・もしかしたら、日程が変わるかもしれませんが、さしあたってご報告いたします。

・今の暮らしには十分満足している。さしあたって、生活に困るようなことはないかな。

・万が一の時に備えて、さしあたって必要なものを買い揃えておく。

・今の経営状態だと、さしあたって人員を増やす必要はない。

・予約が取れるかはわからないが、さしあたって電話してみる。

・スケジュールが定かではないため、きちんとした返事はできないが、さしあたってメールの返信だけでもしておこう。

「さしあたって」の類語・言い換え表現

「さしあたって」の類語にはどんなものがあるのでしょうか。また、どんな言葉で言い換えることができるのでしょうか。文脈やいいまわしなど、場合によっては言いかえが必要になることもあります。「さしあたって」の類語や言い換え表現を見てみましょう。

現在のことを表現する言葉

「さしあたって」は、将来のことは分からないが現在のことについて表現する言葉なので、現在のことをストレートに表現する「さしあたって」の類語や言い換え表現には次のようなものがあります。

・今のところ

・現時点では

・現段階では

・目下

・現在のところは

すぐにという意味を表現する言葉

「さしあたって」は、使い方や文脈によっては「一時的に」や「すぐに」といった意味で使われることもあります。そのような場合の「さしあたって」の類語や言い換え表現には次のようなものがあります。

・とりあえず

・取り急ぎ

・ひとまず

・当面

・当分

・いったん

・まずは

「さしあたって」を漢字にすると?

「さしあたって」と平仮名で使うことが多いですが、漢字にすることはできるのでしょうか。「さしあたって」を漢字表記にすると「差し当たって」になります。「さしあたる」は「差し当たる」、「さしあたり」は「差し当たり」になります。しかし、平仮名で「さしあたって」と使っても問題ありません。

「さしあたって」の敬語とは

ビジネスシーンで使われることが多い「さしあたって」ですが、目上の人に対しても「さしあたって」を使っていいのでしょうか。目上の人に対しては敬語を使うのが礼儀です。「さしあたって」を敬語にするとどんな表現になるのでしょうか。

丁寧語

「さしあたって」の丁寧語は「さしあたりましては」になります。「さしあたって、ご報告いたします」を丁寧な言い方にすると「さしあたりましては、ご報告いたします」となります。目上の人に対して「さしあたって」という表現を使いたいときは、「さしあたりましては」を使うようにしましょう。

他の類語に置き換える

「さしあたって」を丁寧な言い方にすると「さしあたりましては」ですが、文章構成において「さしあたりまして」ではおかしい場合もあります。そんなときは、「さしあたって」を他の類語に置き換えて丁寧な敬語表現にしましょう。

「無事に退院したと伺い、さしあたりましては安心いたしました」よりも「無事に退院したと伺い、ひとまず安心いたしました」のほうが、文章の流れに違和感がありません。「ひとまず」や「さしあたって」をこれ以上丁寧な表現にすることはできないので、前後の文章に気を使って丁寧な表現にしましょう。

「さしあたって」とは失礼なのか

曖昧な意味のある「さしあたって」の意味を考えると、ビジネスシーンで使うのは失礼ではないのかという疑問がわく人も多いのではないでしょうか。「とりあえず」や「ひとまず」といった意味のある「さしあたって」を、ビジネスシーンで使うことは失礼なのかについて見ていきましょう。

多用するのはNG

「さしあたって」という表現はビジネスでも当たり前に使われますが、意味としては曖昧な表現です。使うこと自体はまったく問題ありませんが、真剣な商談や真面目な会議の場で多用するのは避けたほうが無難です。

あまり多用しすぎると、「いい加減な人」だったり「適当な人」、または「決断力がない人」といった印象を持たれてしまうこともあります。基本的には曖昧な表現であるということを頭に置いて、多用しすぎるのは避けましょう。

適切な場面で使う

「とりあえず」のような曖昧な意味がある「さしあたって」は、使う場面を間違えると相手に対して失礼になってしまうことがあります。

例えば上司から、「発注を検討してくれる会社があるから見積書を作成してほしい」と頼まれたら、「ではさしあたって、見積書を作成します」と答えるのは正しい使い方です。ですが、「発注があったから見積書を作成してほしい」といわれたら、「さしあたって」を使うのは間違いです。

「発注を検討してくれる」段階では結果がどうなるか分かりませんので、「さしあたって」を使っても問題ありませんが、「発注があった」は、発注が確定しているのにもかかわらず「とりあえず見積書を作成する」と答えるのはおかしな答えです。この場合は、「急ぎ見積書を作成します」や「ただちに見積書を作成します」と答えるのがベストです。

類語の「とりあえず」は要注意

「とりあえず」は「さしあたって」の類語ですが、ビジネスで使うには要注意な言葉です。「とりあえず、報告します」と言われたらどうでしょう。少しいい加減な、軽いニュアンスに聞こえてしまいます。受け取り方によっては失礼に聞こえてしまう言葉です。

「とりあえず」も、親しい相手同士で日常会話で使うにはなんら問題のない言葉ですが、ビジネスシーンでは相応しくありません。誤解を招くような表現は避けるほうが無難です。

「取り急ぎ」も要注意

類語である「取り急ぎ」も使い方によっては失礼になってしまう表現です。「取り急ぎ」とは、後できちんとした連絡をすることが大前提で、「礼儀を省略してまずは急いで一報を」、という意味です。

本来であれば、礼儀を省略した報告を目上の人に使うのは失礼に当たりますが、「失礼は承知で急いで報告します」という意味を理解して使うのであれば問題ありません。

「取り急ぎ、ご報告まで」という表現を見かけることがありますが、「取り急ぎ」がすでに礼儀を省略しますという意味です。したがって、ビジネスシーンで使用する際には「取り急ぎ、ご報告まで」で止めずに、「取り急ぎ、ご報告させていただきます」や「取り急ぎ、ご報告申し上げます」と丁寧な言葉で締めくくればビジネスでも失礼に当たりません。

「さしあたって」の対義語

「さしあたって」にこれと言った対義語はありませんが、「さしあたって」は、将来は変化する可能性がある現在の状況や、一時的にと言った意味がありますので、その逆の言葉が対義語と言えます。

「さしあたって、報告します」なら「とりあえず今の現状を報告します」と言った意味ですが、「結果を報告します」となると、確定した結果を報告すると言うことなので「さしあたって、報告します」とは逆の意味になります。

ビジネスでの「さしあたって」の例文5つ

ビジネスで使える「さしあたって」の例文を5つ、ご紹介します。このままでも使えますし、自分なりに文章をアレンジして使っても構いません。ビジネスシーンにおいて参考にしてみてください。

例文・1

相手先から資料を送ってもらったときのお礼の例文です。ひとまず、資料を送ってもらったお礼の気持ちを伝えたいときに使えます。

・お忙しいところ、資料を送っていただきありがとうございます。

・拝見させていただきましたら、またご連絡させていただきます。

・さしあたって、資料のお礼を申し上げます。

例文・2

会議で出た意見を報告する場合の例文です。まだ続く会議なので、結果は変わることもあるため「さしあたって」を使うのにぴったりです。

・このたびの会議で出たみなさまのご意見ですが、さしあたって報告させていただきます。

・明日までに報告書にまとめて、みなさまにメールにて送付させていただきますので、次の会議までに目を通しておいてください。

・ご意見などありましたら、まとめておいていただけるとありがたいです。

例文・3

お中元やお歳暮など、なにか品物を送ってもらったときのお礼の例文です。直接お礼を言うのが礼儀ですが、まずは急いでお礼を伝えたいという気持ちを表しています。

・この度は結構なお品を頂きまして誠にありがとうございます。

・お心遣いに社員一同、心より感謝しております。

・本来であれば、直接お伺いしてお礼をお伝えしたいところですが、さしあたって書面にてお礼申し上げます。

例文・4

相手先との打ち合わせや会議などで、答えを求められたときに、一存では答えられないような場合に使える例文です。検討の段階ですから「さしあたって」が使えます。

・申し訳ありませんが、私の考えだけではお答えしかねますので、さしあたって社内で一度検討をしてから、お答えしたいと存じます。

例文・5

求人に応募してくれた相手に対して、履歴書や職務経歴書を送ってほしいときに使える例文です。合否が分からない段階ですので、「さしあたって」を使うのに相応しいシーンです。

・この度は弊社の求人に応募いただき、誠にありがとうございます。さしあたりまして履歴書と職務経歴書の提出をお願いいたします。

「さしあたって」を英語表現にすると

インターナショナルな昨今では、ビジネスシーンで英語を使うことも少なくありません。英語で「さしあたって」を表現することはできるのでしょうか。「さしあたって」の直接的な英単語は存在しませんので、「さしあたって」の意味や類語を英語表現にしましょう。

「さしあたって」の英語表現は以下のようになります。

・at present(現在)

・the time being(しばらくの間、当分)

・for the moment(変化する可能性がある)

・at the moment(今の現状は長くは続かない)

・in the meantime(その間に)

「さしあたって」の英語表現の例文

実際にビジネスシーンや英文のメールで使える、「さしあたって」の英語表現を使った例文をご紹介します。日本語訳も一緒に載せているので、参考にしてください。

・There is no need to worry about shortages for the moment.
(さしあたって、不足を心配する必要はありません)

・I’ll make it do for the moment.
(さしあたって、これで間に合わせましょう)

・We must concentrate on the task at hand for the time being.
(私たちはさしあたって、今の課題に専念しなければならない)

・Mind running it for us, inspector?
(さしあたって、聞いておくことはありますか?)

上手く使ってビジネスをスムーズに

ビジネスシーン使われることが多い「さしあたって」は、上手に使えばとても便利な言葉です。急いで報告したいとき、緊急できちんとした報告ができないとき、まだ確定していないのでこれから変わる可能性があるときなど、「さしあたって、ご報告させていただきます」のひとことで済みます。長い言い訳をする必要がないので、とても便利です。

しかし、確定していないこと、将来変わる可能性があることなどから、使いすぎると「優柔不断でいい加減な人」という印象を持たれてしまう恐れもあります。便利だからと言って、使いすぎには注意しましょう。使うポイントを考えて、上手く使ってスムーズにビジネスを進めましょう。

タイトルとURLをコピーしました