誠に勝手ながらの意味
ビジネスにおいて特によく使われる言葉の一つに「誠に勝手ながら」があります。「誠に勝手ながら」は、こちら側の自己都合ではあるけれど、社会人として円滑にコミュニケーションをとる過程において、相手に配慮する意思があるという意味合いで使用されています。
「誠に勝手ながら」という言葉は、どんなシーンで使われるものでしょうか。例文を交えながら、みてみることにしましょう。
休業での「誠に勝手ながら」の使い方
コンビニやレスラン、ガソリンスタンドなど24時間営業の店舗が多い一方で、24時間営業ではない店舗は現在も圧倒的に多いのが現状です。24時間営業のお店はシフトなどを組んで、正社員、パート、アルバイト、派遣社員などで支えられていますが、24時間ではない店舗では営業時間も休業も定まっているのが通常です。
定休日や営業時間を定めていても、お店などに来るお客様が必ず把握されているとは限りません。むしろお客様自身の都合でお店を利用される場合が多いため、お店側もお客様へ休業の理解を伝えたいことでしょう。
お店は人が運営しています。運営している以上、定休日など決まった休日ばかりでなく、急用で休む場合もあります。この休業はお店や会社などの自己都合としてお客様が受け取られやすくなってしまいます。
店側の事情をお客様へ理解していただくためにも、「誠に勝手ながら」の一文を添えて理解していただけるようにしましょう。
お休みのお知らせ表現
お休みのお知らせは、例えば夏季休暇や社員旅行などの定休日以外で、2日以降のある期間の休業を前もってお知らせする際に、単に「お休みします」より、「誠に勝手ながらお休みします」と記したほうが、相手の気持ちをくみながらも休日したいという柔らかな表現になります。
臨時休業
臨時休業は、定休日と違いほとんどのお客様が把握していない場合が多いのが実状です。1カ月前から決まっているものもあれば、直近の日に急に決める場合もあります。どちらの場合でも、お客様が知らずに、わざわざ来ていただく可能性があります。そのような場合には、なるべく可能な範囲で短めでいいので、休む理由を書き添えるようにしましょう。
また、臨時休業には振替営業としてのお知らせがあれば、あるいは振替営業日があったので臨時休業となったなどの理由を添えるとよいでしょう。
例文としては、「いつもご愛顧頂きまして有難うございます。誠に勝手ではございますが本日は在庫整理のため臨時休業させていただいております。明日からは通常どおり営業させていただきます。ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。」
閉店および店舗移動
会社や店舗のほとんどが、創立または開店すると営業利益の向上または衰退で、移転したり閉店したりします。これは、ある意味の事業主側のさまざまな事情による判断です。お客さまには、これからのご愛顧を、または今までの取引を感謝しつつ、簡単に事情を伝えることにしましょう。
移転の例文としては、「平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。この度弊社では、誠に勝手ながら事業拡大のために社屋を移転することとなりました。今後ともなお一層のお引き立てを戴きますようによろしくお願いいたします。」
閉店の挨拶の例文としては、「平素はお引き立ていただきまして、ありがとうございます。誠に勝手ながらこの度、閉店をする事となりました。長年のご愛顧を賜り感謝申し上げます。」
悪天候などでの対応に
悪天候などによる交通事情で店のスタッフや会社員などが出勤できず、当日の定時もしくは当日そのものの業務に支障がでてしまうことがあります。これは天候によるものですが、そんな中でも来店しようとしてくださる顧客の側にとっては、お店や会社の独自の判断だと受け止められやすい状況のこともあるでしょう。
こんなときの例文としては、「日頃よりご愛顧賜りましてありがとうございます。本日は誠に勝手ながら○○時からの営業(もしくは休業)とさせていただきます。御理解のほど何卒よろしくお願いします。」となります。
店舗改装のお知らせ
主に店舗などのイメージを変えたいときにあらかじめお知らせすることで、改装するのはこちら側の都合となりますが、工事期間にお客にご不便をおかけするという意味で、「誠に勝手ながら」という言葉を使ってみましょう。その際に仮店舗での営業のご案内のお知らせも可能です。
例文としては、「いつもご愛顧ありがとうございます。この度当店では〇月〇日~△月△日まで誠に勝手ながらリニューアル工事をさせていただくこととなりました。この期間中はみなさまにご不便をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。なお、この期間中は仮店舗にて営業致しておりますので、よろしくお願いいたします。」
工事現場で
工事中は車や人の出入りが頻繁となり、歩行中の人の進行の妨げになることが多々あります。工事中の騒音やほこりも近隣住民や歩行者にも迷惑となることでしょう。しかし、周囲の人々の理解なしでは工事は進みません。工事に対する協力を「誠に勝手ながら」という言葉でお願いしてみましょう。
例文としては、「近隣の皆様、誠に勝手ながら〇月〇日~△月△日まで新築工事をいたします。工事中はご迷惑をお掛けするかと存じますが、よろしくお願いいたします。」
本日は誠に勝手ながら
事業主の都合により、定休日以外に急に休業しなければならないことがあります。休業であることを知らない人たちにお詫びの意味を込めてお知らせしましょう。
例文としては、「本日は誠に勝手ながら休業させていただきます。〇日からは通常どおり営業いたします。御足労をおかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。」
メールで使う「誠に勝手ながら」
メールでの文章は、直接本人と会って話をするわけではありませんので、誤解が生まれる場合もあります。メールでは特に文章に気を遣って「誠に勝手ながら」と依頼や願望を表すほうがビジネスにおいても容易に進行しやすいことでしょう。
日程の変更・調整
日程調整はビジネスにおいても重要な項目です。日程調整をする場合、相手が一人だとは限りません。お互いの都合のつきやすいところで、あなたから日程を提案するときに「誠に勝手ながら」というフレーズで進行していくようにしてみましょう。
例文としては、「いつもお世話になっております。□□様のご都合が〇日ならよいとお伺いいたしましたので、誠に勝手ながら〇日の△時に訪問させていただきたいと存じます。」
お願い
上司などの目上の人に対してもお願い事がある場合に「誠に勝手ながら」というフレーズを使うとへりくだった印象を持ってもらうことで、依頼しやすくなります。
例文としては、「本日振替休日のため休ませていただいておりますが、○○商店の納期が今日中となっております。誠に勝手ながらお願いでございます。納期の確認をお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。」
退職
会社を務めている間に、さまざまな事情で辞めなければならない場面もあります。辞める理由を伝えた上で、「誠に勝手ながら」と添えると相手に意志を伝えやすくなります。
例文としては、「この度、結婚を機に引っ越しをすることになりました。誠に勝手ながら〇月△日をもって退職させていただきたいと存じます。」
お断り
ビジネスにおいて顧客のニーズは、他社との比較からみても応えていきたいところです。しかし、実際には実現できそうもない可能性のある場合があります。
例えば、通販などで海鮮など新鮮さが要求される商品の返品などは、あらかじめお断りをしておきましょう。例文としては、「この商品に限り、誠に勝手ではございますが返品はご容赦くださいませ。」
「誠に勝手ながら」の例文
「誠に勝手ながら」という言葉は、ビジネスシーンでは使用すると便利な言葉です。本来の「自分勝手で恐縮ですが」の意味も含め、さまざまな場面で使えます。それでは、どのような場面で使用されているのか例文を見ることにしましょう。
葬儀の挨拶文
葬儀などの際に、参列者などの故人に対する香典などを遺族側から辞退される傾向が増えてきています。この時の挨拶文に、よく使用されるのが「誠に勝手ながら」という言葉です。
香典などの辞退は、喪主側である遺族の都合あるいは故人の生前の意思となりますが、せっかくの参列者などのご厚情なれどお許しいただきたいときに使うとよいでしょう。
例文としては、文末で「なお、誠に勝手ながら献花ならびに香典はご遠慮させていただきます。」
ご了承
ご了承という言葉は、これから始まることで、まだ始まってはいないことに対して、目上の人や取引先に対して許していただきたいという場合の強めの意味も含まれることがあります。
ビジネスシーンにおいて、強めの表現を使うと悪い結果を招く恐れがあります。この「了承」という言葉に丁寧な言葉を足すとよいでしょう。
例文としては、「誠に勝手ながら今回の案件は不採用とさせていただきます。ご了承のほどよろしくお願いいたします。」
ご理解のほど
「ご理解のほど」は相手にこちらの事情や心情をくみとってもらいたいときに使用すると便利な言葉です。説明や許しを得たいときなどに使用するとよいでしょう。
例文としては、「誠に勝手ながら、悪天候のため商品の到着予定は約3日遅れになるかと存じますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。」
請求および期限の催促
ビジネスにおいて取引が成立して、受注を受けた商品を納品または納品予定である段階で請求書の発行がされます。このとき、請求書は自社の月の決算日によって発送されることでしょう。しかし、それは社内での便宜上の決め事なので取引先が直接関与しているわけではありません。取引先に理解してもらえるようにしましょう。
また、取引先との取引がいつも順調とは限りません。支払いの遅延をしている取引先にもスムーズな支払いをしてもらうためにも、「誠に勝手ながら」を使って、こちらが指定した期日までに支払いを促してもらう手段としても使ってみましょう。
例文としては、「いつもお世話になっております。今月は決算月となっておりますので、誠に勝手ながら20日までにお振込み頂きますよう、よろしくお願いいたします。」
誠に勝手ながらではございますが
「誠に勝手ながらではございますが」を使う場合は、相手に辞退の意志を伝える言葉として使うと便利です。
ビジネスの例としては、「今回のプロジェクト私にとってもチャンスであると考えますが、この時期は地方に出張しております。誠に勝手ながらではございますが、今回は辞退させていただきたくお願い申し上げます。」とするとより丁寧な印象を与えます。
「誠に勝手ながら」の敬語
「誠に勝手ながら」という言葉は敬語ではありません。しかし、相手にへりくだった印象を与えますので、目上の人にも使用できる言葉です。
例文としては、「誠に勝手ながら、本日は体調不良のため早退させていただきます。」といえば相手に対して柔らかな印象となります。
「誠に勝手ながら」の類似語
「誠に勝手ながら」という言葉は、全体の強めのイメージである文章をやわらかく印象づけるためのクッション言葉です。主にビジネスシーンでよく使用されますが、「誠に勝手ながら」という言葉によく似た言葉としてどのようなものがあるでしょうか、見てみることにしましょう。
誠に恐縮ではございますが
「恐縮」という言葉には、相手の厚意を受けたことや相手に迷惑をかけてしまって申し訳なくおもい、身をすくむほど恐れいるという意味があります。「誠に恐縮ではございますが」となると後の文(言葉)に対する相手への願望の意味が強くなります。使い方は少し違いますが、意味は「誠に勝手ながら」という言葉に似ています。
例文としては、「ご多忙の中、恐縮でございますが今月30日までにご連絡いただけますよう、よろしくお願いいたします。
お手数をおかけしますが
「お手数をおかけしますが」の意味は、相手が労働力や時間にともなう面倒なことをしてくれることへのお詫びと感謝の意の言葉です。
例文としては、「お手数をおかけしますが、資料をご覧いただいたうえでアンケートにご協力くださいませ。」
私ごとで恐縮ですが
「私ごとで恐縮ですが」は、ビジネスでのあいさつや連絡などにも使用できる言葉です。文字どおり私ごと、つまり自己都合の事情を説明し、相手に理解を求めるときに使うと便利な表現となります。
例文としては、「私ごとで恐縮でございますが、この度結婚することとなりました。〇月〇日~〇月△日まで引っ越しのため休暇を頂戴します。ご理解のほどよろしくお願いいたします。」
「誠に勝手ながら」という言葉で
「誠に勝手ながら」という言葉は、自己都合などによるお願いやお断りなどを表現する前に、失礼のないように丁寧な、印象を悪くさせないためのクッション言葉として、ビジネスなどの場面で使用されているフレーズです。
取引先あるいは上司などの目上の人たちとのコミュニケーションをとるとき、または多忙な時期には特に利用すると便利な言葉です。「誠に勝手ながら」という言葉を適度に使って、あなたのビジネスシーンの幅を広めるようにしましょう。