「わざわざ」の敬語・例文・失礼になるのか・メールでの使い方

ビジネススキル

日本語とは

日本語をきちんと把握する場合には、まず「その日本語(言葉)の成り立ちから関連語までを隈なく覚えること」が大切で、そうすることによって「その覚えるべき言葉がどのような場面でどのように使われているのか」ということについて、さらに深く吟味する形で把握することができるでしょう。

日本語のむずかしい点は「場面や状況によって、同じ言葉でも使い方や意味合いが変わってくる」というところで、たとえば今回ご紹介します「わざわざ」という言葉にしても、場面によって「その言葉のニュアンス」が変わってきます。

関連語と一緒に覚えること

日本語に限らず「言葉を覚える・学習する際」には「その覚えるべき言葉と一緒に関連語もマスターしておくこと」が大切で、そうすることによってその覚えるべき言葉を多角的に理解することができ、さらに「自分の言葉」として自由に使い分けることが可能となるでしょう。

どんな国の言葉を覚える場合でも「その言葉を実際に使って覚えなければ身に付かない」という学習法への理解と同じく、この「わざわざ」という言葉1つを覚える場合でも「その言葉を自分の主張として使うこと」によって確実に知識として具わることになります。

日本語の敬語表現

日本語には「敬語表現による言葉や言い方そのものの使い分け」があり、これはたとえば英語圏内で使われる敬語表現の使い分けの場合よりも「遥かにその敬語表現の種別が多くてむずかしい」と言われます。

敬語表現というのは先述のように、「その場の状況によって簡単に使い分けられる、非常に日常的なニュアンスを含めた慣用句的な言葉」として認められるため、普通に使用する言葉を敬語表現として使い分けることは「どんな言葉にしても必須の知識」として受け止めておく必要があるでしょう。

敬語表現というのは日本語を学ぶ上では「それだけ頻繁に使われる言葉」であり、特にビジネスシーンでなくても、日常的に敬語が使用される場合が普通にあります。このような場合を踏まえ、敬語表現もしっかり確認しておきましょう。

「わざわざ」とは

「わざわざ」という言葉の基本的な意味合いは、「本来ならしなくてもよいことを、その人の善意によってしてくれた際、または予期しない善行や世話をしてくれた場合などに使われる言葉」として認められています。

そのため「わざわざ」という言葉が使用される場合にはたいてい「すみません」や「こちらから伺いましたのに」などの「相手に対する謝意の言葉」が付随します。つまり「わざわざ」という言葉の使用は「相手がした特定の行動に謝意を投げ掛け、その上で相手への配慮を同時に伝える場合」に認められることが多くなります。

「わざわざ」の敬語

よく「わざわざ」を敬語に置き換えるとベストの表現になるということが聞かれますが、結論から言いますと、敬語表現によって「わざわざ」を使用する場合も相手にそれなりの不快感を与えてしまう場合が多々あります。

・わざわざお越しくださいませんでもよろしかったですのに
・わざわざの足のお運びをありがとうございます
・今日のためにわざわざ資料を整えてくださりありがとうございます

上記3点の例文を見てもわかるように、「わざわざ」という言葉の影響力はその文意は全体にまず広がり、その上で「してくれなくてもよかったのに」や「普通ではしないことをあなたはどうしてしたのですか」などの、相手に対する非難のニュアンスが多少入り交じります。

目上の人に対しては失礼になる場合もある

先述の続きとなりますが、「わざわざ」という言葉は相手に対して「しなくてもよかったのに」という気持ちを全面に押し出す形の表現ともなり兼ねないため、場合によっては相手にとって特別な不快感を与えてしまう場合があります。

この場合は「わざわざ」という言葉の類義語を使用することによってその「不快感」を抑えることができ、またこうした「別の言葉の言い換え方法」はビジネスシーンでは特に必要なスキルとして認められます。

ビジネスシーンではあまり向かない言葉

「わざわざ」という言葉がなぜビジネスシーンでは向かない・不適切な言葉になるかと言えば、先述のとおり「わざわざ」という言葉が「相手への非難を先に伝える言葉のニュアンスを持っているため」となります。

ビジネスシーンでは特に「上司と部下の関係」や「先方・お得意先と自社との関係」が重要視され、可能な限り失礼のない態度を取ってコミュニケーションを図ることが強調されます。その場合に、この「わざわざ」という言葉の「相手への相応の非難」が先行してしまうとかえって「礼儀を失すること」になり兼ねません。

「わざわざ」という言葉の成り立ち

今回ご紹介する「わざわざ」という言葉の使い方・敬語表現において特におすすめしたいテーマがこの「言葉の成り立ちから理解する」ということです。「わざわざ」という言葉の成り立ちをまず覚えておき、「なぜこの言葉が相手への非難になってしまうのか」について真剣に考えることが必要です。

「わざわざ」という言葉は日本でも古くから使われてきた言葉で、その出典は明治時代の文学作品や近現代小説、新聞などでも一般的に広く取り扱われています。そうした「わざわざ」という言葉の使われ方・表現法をその「言葉の成り立ち」から見詰めて覚え直すことにより、さらに「わざわざ」という言葉をどのように使用すべきかが見えてくるでしょう。

態々(わざわざ)

「わざわざ」という言葉を漢字表記すると「態々」となります。この「態々」という言葉は多くの場合「態(わざ)と○○した」という表現によって使用されているため、「わざわざ」という言葉を使う場合でもこの「態とあなたは/わたじは○○をしました」とそのまま伝えてしまうことになります。

この「態と○○した」というニュアンスが、先述しました「しなくてもよいのに、それをあえてしました」や「意図的にしなくてもよいことをした」という感じで相手に伝わってしまうため、「わざわざ」という言葉が場合によっては「失礼に当たる言葉」として認められることになります。

嫌味に聞こえる場合もある

この場合も先述の続きのようになりますが、「わざわざ」という言葉が「態と・意図的に」という言葉のニュアンスを持ち合わせるため、「なぜあなたはそれをワザとしたのか」や「しなくてもよかったことをなぜしたのか」という、まるで話者の本音をそのまま言い表したような表現に直結する場合があります。

この本音を表すような言葉のやり取りによって「わざわざ」という言葉が相手にとっては「なぜ意図的にそれをしたのか」という責め言葉に聴こえてしまう場合があるため、特に部下から上司に対する場合や、先方会社に意見表明する場合の使用では、この「わざわざ」という言葉が「嫌味を示す言葉」にそのまま変わってしまうことになります。

「しなくてもいいことをする」という意味

そもそも敬語表現をする場合に、相手に対して「しなくてもいいのになぜそれをするのですか」という表現は普通しません。この常識的な言葉の使い方を習う形で、「わざわざ」という言葉の使用法でも「敬語表現において使うことはかえって無礼になる」という認識をきちんと持っておくことが大切です。

「わざわざ」の主体を自分に置き換えた場合

これは発想の転換として認められますが、「わざわざ」という言葉を言うその主体を「相手から自分に置き換えた場合はどうなるか」ということについても検討しておくことが必要でしょう。

「わざわざ」という言葉を敬語表現において使用するときは、一般的に「相手に対して、わざわざそんなことをしなくてもよろしかったのに」などと、相手の言動に対する謝意の形で使われます。

・今日のためにわざわざ資料をご用意させていただきました。
・わざわざ足を運ばせていただきまして、申し訳ございません。

上記2点の例を見てもわかるように、「相手」から「自分」に話者の主体を置き換えてみてもさほど敬語表現としての効果はありません。やはり「わざわざ」という言葉を敬語表現として使用するのは場合によっては不適切となるでしょう。

敬語表現としては「わざわざ」は不適切

先述のように「わざわざ」という言葉を敬語表現において使用するのは場合によっては失礼に当たるため、特に改まった場面を迎えることが多いビジネスシーンでは、「わざわざ」という言葉の使用は避けることが賢明となるでしょう。

敬語表現を使用する状況というのは特に「どこからつつかれても敬語として認められること」が必須の条件ともなるため、この場合のように「少しでも相手に対して失礼に当たる場面が認められる場合」にはその言葉の使用は見合わせることが肝心です。

「わざわざ」敬語での例文

日本語を覚える際の注意点でもご紹介しましたが、この「わざわざ」という言葉を自分の言葉として覚える際には必ず「実際にその言葉や表現を使って覚えること」が大切です。そうすることによって「いつでもその言葉の意味合いや用法を理解して使用する」ということが可能となるため、場違いな言葉の使用が大幅に減ることになるでしょう。

ありがとうございます

「わざわざ」という言葉を使用する場合には先でもご紹介しましたように、相手の言動に対する慰労を示すニュアンスがあることにより、「相手に対する謝意の言葉」が付随してきます。

・わざわざのご足労を、大変申し訳ございません。
・わざわざ資料をご用意いただきまして、大変ありがとうございました。
・わざわざここまでしていただき、大変恐縮です。

ご連絡

「わざわざ」という言葉を使用する上では、特に「相手の善意による言動への謝意」が非常に多く認められ、その善意に対する話者からの特別な感謝の気持ちが伝えられます。

・わざわざお電話をいただきまして、誠に感謝申し上げます。
・わざわざメールをお送りいただきまして、非常に恐縮です。
・会議の開催日時につきましてわざわざご連絡をしていただき、誠にありがとうございます。

すみません

「すみません」という言葉は「相手に対する謝意を述べる場合に使う言葉」としてはまさに打ってつけの言葉として認められるため、この「わざわざ」という言葉を使用する場合でもかなり多い頻度で使われるでしょう。

・わざわざお送りいただきましてすみません。
・この度はわざわざお電話をいただき、誠に申し訳ございません。
・わざわざお届けくださいまして本当に助かりました、すみませんでした。

「わざわざ」と「せっかく」の違い

「せっかく」という言葉の基本的な意味は「何らかの目的を持ってその目的を達成するために努力したのにもかかわらず、その成果が実らなかった際に使う言葉」として認められます。

この場合、「わざわざ」という言葉を使用する場合は「努力に対する成果を残念がる気持ち・ニュアンス」は含まれないため、「せっかく」と言う場合のニュアンスとはまったくその表現のあり方が違ってきます。

「せっかく、わざわざ○○したのに」という言い方もされる場合がありますが、この場合では「せっかく」という言葉本来の意味合いと「わざわざ」という言葉本来の意味合いとが別々に掛け合わされて使用されていることになるため、使用法によってはその意味は似てきますが、言葉そのものの用法は明確に違います。

「わざわざ」は敬語につけても失礼なのか

先述のように「わざわざ」という言葉のニュアンスが「相手に対する謝意」を伝えると同時に「相手への非難」も重ねて伝えてしまうことがあるため、敬語表現を使用しなければならない場面(ビジネスシーンなど)で使用することは、あえて避けることが賢明と言えるでしょう。

先でもご紹介しましたように「せっかく○○したのに」という言葉のニュアンスも、人によっては捉えられてしまう場合があるため、話者にそうした気持ちがなくても相手にとっては「失礼な言葉」として受け取られる場合があります。

「わざわざ」の類義語から敬語表現を探す

日本語を覚える際には「その覚えるべき言葉の関連語も一緒に覚えること」が大切であり、その関連語のうちに「類義語や反対語」があります。

特別に/特に/せっかく/格別に/あえて/別に/意図的に/意識的に/ことさらに/さらに/恣意的に/遠回りして/念入りに/深入りして/わざと/知っていながら/十分に

上記の言葉が「わざわざ」の類義語としてピックアップされますが、どの言葉にしてもその根本的な意味合いには「意図的に○○した・してあげた」というニュアンスが含まれます。敬語表現として適切な言葉を見付ける際にも、この類義語の中から敬語として認められる言葉を探してみましょう。

「格別の」として敬語表現に

先述で「わざわざ」という言葉の代わりの言葉を敬語表現に置き換えてみる工夫が必要、ということをご紹介しましたが、その場合に置き換えるべき都合のよい言葉の1つとしてこの「格別の」という言葉があります。「格別に」という言葉の意味は「特にご配慮くださって」という、相手に対する最上級の敬語表現として認められます。

・この度は格別の(わざわざの)ご配慮をいただき、誠にありがとうございます。
・前年から進めて参りました企業案への格別の(わざわざの)ご尽力をいただき、誠に感謝申し上げます。

このようにさらに多くの場面は想定されますが、「格別の」という言葉は「わざわざ」という言葉のように「相手への非難」を示すニュアンスはまったくないため、どんな場合でも快く使用できる敬語表現・言葉として認められるでしょう。

「わざわざ」のメールでの使い方

「わざわざ」という言葉のメールでの使い方・敬語表現についてですが、これはメールで使用する場合も口頭(口述)で使用する場合でも同じです。「わざわざ」という言葉のニュアンスにはどうしても「あえて○○した」、「しなくてもよいのにそれをした」などという相手への一定の非難が含まれるため、この場合も別の表現を取ることが賢明です。

・この度は格別の(わざわざの)ご配慮をいただき、誠に感謝申し上げます。
・この度は取り立てて(わざわざ)ご連絡をいただきまして、誠に恐縮です。
・ご連絡をくださり、誠に感謝申し上げます。

3つ目の例のように、ビジネスシーンなどでの「メールのやり取り」においては特に「わざわざ」や「格別の」という言葉を用いず、そのまま「ご連絡をくださり」と冒頭を始め、文末において「感謝申し上げます」などの敬語表現を置く工夫ができます。

「わざわざ」の英語表記と意味

「わざわざ」という言葉を英語に直す場合、その言葉の意味合いや用法に配慮する上で、以下のようにピックアップされます。

・bother(わざわざ、世話を焼く)
・trouble(トラブル、支障、わざわざ)
・on purpose(わざと、意識的に、わざわざ)
・meddle(世話焼き、あえて、わざわざ)
・dare(あえて、わざと、わざわざ)
・defiance(あえて、わざわざ)
・intentionally(意図的に、わざわざ)
・exceptionally(格別に、わざわざ)
・exceedingly(ことのほか、わざわざ)

「わざわざ」の英語表現と意味

先でもご紹介しました「わざわざ」の英語表記を参考にして、「わざわざ」の意味合いを含めた英語の例文をご紹介します。

・Thank you very much for your inquiry.
「わざわざご連絡をくださり、誠に感謝申し上げます。」
・Thank you very much for your cooperation on purpose.
「わざわざご協力くださり、ありがとうございます。」
・Thanks for your cooperation intentionally, I am very concerned.
「わざわざご協力くださり、大変恐縮です。」

「わざわざ」の意味と用法を把握しましょう

いかがでしたか。今回は「わざわざ」の敬語・例文・失礼になるのか・メールでの使い方と題して、「わざわざ」の敬語・例文についての詳細情報のご紹介をはじめ、さまざまな場面において使用される「わざわざ」の用法についてご紹介しました。

「わざわざ」という言葉はビジネスシーンでも日常生活でも非常に多く使われている言葉であるため、かえって「敬語表現によって使用してよいのかどうか」が曖昧になってしまうニュアンスを持ち合わせます。

そのため、日本語を覚える際には「その言葉の成り立ちから覚えること」をはじめ、「自分で実際にその言葉を使用して覚え、さまざまな場面・状況を想定した上で敬語を使うこと」を踏まえてその言葉の基本的な用法について学ぶことが大切です。

タイトルとURLをコピーしました