「伺う」の意味と使い方
社会人になると、手紙やメール、電話などさまざまな場面で文章を作ったり会話をしたりする機会が多くなります。そういった時に、第一に気を付けなければならないことは敬語表現です。特に、上司や先輩、取引先などの外部の方へのメールや手紙に関しては、失礼に当たらないように十分に配慮することが求められます。
そのため、日常的に使用する単語や動詞に関しては、敬語表現を把握しておくことが必要不可欠です。伺うという単語は、アポイントをとる際のメールでも非常によく使われる表現ですので、この単語の使い方をしっかりと覚えておきましょう。
ここでは、数あるビジネスに関する敬語表現のうち、伺うという動詞にスポットを当てて、その概要や使い方について勉強します。
伺うは謙譲語
まず、伺うという単語は、敬語表現のうち、どういったジャンルに分類されるのでしょうか。そもそも敬語表現にはいくつかの区分が存在し、それぞれ、丁寧語、尊敬語、謙譲語といった分け方がされるのが一般的です。
これらの区分は、主に動作を行っている行動主が誰かによって変化します。場合によっては失礼に当たる表現を使ってしまうことがあるので十分注意するようにしましょう。
伺うという単語は、動作が自分自身に当たるので、謙譲語の相当するといえるでしょう。
尊敬語と謙譲語の違い
メールや会話の文面などを作製する際によく耳にする尊敬語と謙譲語についてですが、上手く使い分けをしなければ失礼にあたる場合があります。したがって、どのような単語が謙譲語や尊敬語に当てはまるかについては、事前に十分確認する必要があります。
尊敬語と謙譲語で最も異なる点といえるのが、敬意の払い方です。ここでは、伺うという謙譲語の詳細を掘り下げるまえに、尊敬語と謙譲語の違いについて再確認します。
尊敬語は相手の動作に敬意を払う表現
尊敬語は、自身の振る舞いにではなく、相手の振る舞いを修飾することで敬意を払う表現だといえます。そのため、相手に何かしてもらった時などに対して使う敬語表現になります。
典型的な例としては、先輩や上司からアドバイスや指導をもらった時です。相手からしてもらったことについては、例えば、ご指導といった表現を使って敬意を表します。ご指導ご鞭撻といった表現はよく見かけることがありますが、これは相手が行ったことなので尊敬語に相当します。
このような基準の観点から伺うという表現をみると、伺う動作の対象は自分になりますので、尊敬語ではないということがわかります。
謙譲語は自分の動作に対して使う表現
一方、謙譲語は尊敬語とは全く逆の形で相手に敬意を払う表現です。謙譲語は主に自分自身の動作に対して使われることが一般的であり、自分をへりくだせることで相手に敬意を払う、という形で敬語表現をとります。
謙譲語は自分の動作や行動に対して使われるという性質から、主にメールなどのアポイントを取る際などではかなり多く使われる表現です。伺うという動詞は、こういったメールや電話でのコミュニケーションでは耳にしたり、自分自身の動作で使うことが多いことから、伺うは謙譲語の相当するということがわかります。
実際のメールの文面における伺うという表現
ここまでの説明で、伺うという単語が謙譲語の表現であるということがわかりました。では、実際のメールなどのコミュニケーションの場面で、どのように使用されているのでしょうか。
多くの場合には、自分が誰かの所に行くといった場合に、行くという表現を伺うという表現に変えて使用することが一般的です。例えば、○○時に伺います。といった表現は日常のビジネス場面で、よく使用する表現だといえます。
特に、他社や上司のオフィスに行く際には、必ず使用する表現だといえます。大学生の場合でも、ゼミの先輩や教授とのやり取りでも使える表現になるので、社会人になる前の早い段階から使いこなせるようになっていたい文面だといえます。
伺うを使った例文
ここでは、伺うという謙譲語を使用した例文を紹介します。例文のシチュエーションとしては、上司やゼミの先生との打ち合わせのアポイントを取る場合です。例文としては以下の文章が挙げられます。
「平素よりお世話になっております。○○科の○○です。この度□□の件について、相談させて頂きたく連絡致しました。つきまして、○○時頃に先生のオフィス(若しくは研究室)に伺わせて頂きたいのですが、ご都合はいかがでしょうか。」
実際に会って話がしたい時に、伺うといった表現が多く使われます。他の謙譲表現と併せて使いこなせると便利な謙譲語だといえます。
お伺うという表現
敬語表現になれていない人の場合には、動詞の前に「お」という単語を付け加えがちになります。こういった敬語表現は簡便に敬意を表すことができる一方で、過剰に使用すると日本語としておかしな表現になってしまうため注意が必要です。
伺うという表現についても、お伺いします、お伺いさせて頂きます、といった用いられ方がありますが、厳密にはベターではありません。伺うという表現のみで十分敬語表現となっているので「お」を付け加えることで過剰な敬語表現となってしまうからです。くどい言い回しだと捉えられてしまうことがあるので、注意が必要になります。
伺うと聞く・参る・行くの違い
敬語表現や動作を表す表現の中には、似通った表現がいくつか存在します。伺うという動作表現においても、よく似た表現はいくつも存在し、敬語表現を紛らわしくしている要因の一つとなっています。そのため、敬語表現を上手に使用するためには、こういった伺うとよく混同されがちな表現の理解が求められます。
ここでは、伺うによく似た表現として、聞く、参る、行くといった動作表現について紹介します。
伺うと聞くとの関係
伺うという動作表現の場合には、誰かのところに行くといったニュアンスの他にも、要件や意見を聞くといった表現が含まれます。そのため、メールで上司や先輩にアドバイスを受けたい場合などにおいても、伺うという単語を使えます。
表現の例としては「○○の件についてご意見を伺いたいのですがよろしいでしょうか」といった表現はメジャーです。また要望や注文を聞く際にも、伺うという表現を使うため、メールのみならず、口頭での会話場面などでも用いやすく、特に接客業などの場合には、この表現を使いこなせるようになっておきましょう。
参ると伺うの違い
参るという表現も、伺うと同じように、行くといたニュアンスでよく使われる動詞だといえます。これら二つの表現はよく似ていますが、実際にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、これら二つの表現の特徴や意味の違いについて紹介します。
どちらも謙譲表現
伺うと参るとの間で共通しているのは、どちらも謙譲語であるという点が挙げられます。そのため、ビジネスの場面において、上司や先輩、他社の人とのメールや会話のやり取りなどでも用いることが可能な表現です。
参るは伺うよりも広く使える
参ると伺うはどちらも同じく、行くの謙譲語であるため、広く使うことができる表現ではありますが、両者の単語を比べたときには、参るの方が使いやすい単語だといえます。
その最たる理由としては、参るは伺うとは異なり、場所が目的語の時にも使うことができるからです。例えば、オフィスに参る。東京へ参る。といった感じで敬うべき相手がいない場合で使用することが可能です。
一方で、伺うという場合には、敬意を払う相手が目的語にない時に違和感のある表現となってしまうことがあるので注意が必要になります。
伺うは行くの謙譲語
伺うという単語は、行くの謙譲語に相当します。そのため、ビジネス場面でのメールや会話の場合には、相手が目上の際に行くの部分を参るや伺うといった謙譲語に置き換えることによって敬語表現に変換することが可能になります。
家族や友人などの親しい間柄の場合にはついては、逆に参るや伺うといった敬語表現よりは、行くという表現をそのまま使うのが望ましいでしょう。
伺うの敬語
伺うは、行くや聞くといった動作表現の謙譲表現となっており、伺うにさらに敬語表現を重ねることによって、過剰な敬語表現となってしまいますので注意が必要です。
そのため、伺うにさらに敬語表現を加えるということは基本的には少ないと考えても問題ないでしょう。
ここでは、伺うの元単語に相当する、行く、聞くといった単語の尊敬語や丁寧語について簡単に紹介します。
行くの尊敬語
尊敬語を使う場面は、動作主が敬意を払う相手の場合です。そのため、自分が行く場合に尊敬語を使うのは間違いです。
行くの尊敬語に相当するのは、いらっしゃるやおいでになるといった表現になります。例文といては、○○様がいらっしゃいます、といった表現になります。
聞くの尊敬語
聞くの場合には、尊敬語はお聞きになる、聞かれるといった表現が尊敬語に相当します。お聞きになるという表現は誤用が多く、自分が聞いている場面では使わないようにしましょう。
例文としては、○○様が発表を聞かれる。などといった感じで使用されます。
行くと聞くの丁寧語
行くや聞くの丁寧語は語尾に、です、ますを付けるのが一般的です。よく使われる表現としては「行きます」「聞きます」といった表現がメジャーになります。
尊敬語は○○れるといった変換が多い
尊敬語の場合には、○○れるといった感じで変換されるものが多いです。行くや聞くの場合には行かれる、聞かれるといった感じの表現になります。
しかしながら、中にはこういった変換をして違和感が生じる場合があるので、尊敬語に変換する場合には、相当する別の単語がないかを事前に確認しておく必要があります。
伺うの類語
伺うは行く、聞くの謙譲表現に相当することから、多くの類語が存在します。ここでは、伺うの類語表現についていくつか簡単に紹介します。
参る
参るは行くの謙譲表現の一つであり、伺うの類語に相当します。こちらは伺うよりもいろいろな場面で使用することが可能なことから、非常に便利で使いやすい動詞だといえます。また墓参りなど、もはや一つの熟語として成り立っている表現もあります。
お目にかかる
伺うという表現には、目上のだれかに会うというニュアンスが含まれます。そのため、お目にかかるという表現も類語に相当します。
例文としては「お目にかかれて光栄でございます」「お目にかかれることを心待ちにしております」といった表現がメールや会話の場面では多く用いられます。
この表現は、アポイントとったあとの結びの一文としても使えるので、使い勝手の良い表現だといえます。また、懇親会などで目上の人に会ったあとのお礼のメールなどでも使うことができる表現です。
拝聴する
伺うには、聞くというニュアンスも含まれており、聞くの謙譲表現でもある、拝聴するといった敬語も類語に相当します。
伺うについては、要件や用事を聞くといった意味合いが多く含まれます。それに対して、拝聴するというのは、講演会などの権威のある人の話を聞くといった感じの意味が含まれるので、同じ聞くという動作であっても微妙に違うニュアンスです。実際に使用する際には、それらの単語の使用が適切かどうか事前に判断する必要があります。
お伺いを立てるの意味と使い方
伺うという単語が含まれた熟語には、お伺いを立てるという表現があります。お伺いを立てるの意味としては、判断を上司や先輩に確認するといった意味合いが含まれます。そのため、社内のメールなどでよく使う表現です。特に新人を持った教育担当の人にとっては使いやすい表現であるともいえます。
例えは、「○○の件について、課長にお伺いを立てておいてください」「○○の件について、部長にお伺いを立ております」というように使われます。自分の直属の先輩や上司への報告の際に、さらなる上役の人に確認していただいているといった旨を伝える表現です。
なお、他社とのメールのやり取りの場合には、あまり使われません。なぜなら、他社とのメールの場合には、自社の先輩や上司には敬語表現を使わないことが多いからです。そのため、この表現を使用する場合には、自社内の連絡だけに留めておくことが無難です。
敬語表現は難しい
敬語表現に関しては、慣れるのが非常に難しいです。特に最初は、相当する敬語表現を調べることから始まるので、一つのメールを作製するのにも時間がかかり、面倒に思うこともあります。
しかしながら、伺うなどといった頻出の敬語表現を少しずつ使えるようになってくると、メールや会話で悩むことも少なくなり、ストレスも少なくなります。また、上手に敬語表現を使うことは、目上の人とのコミュニケーションをトラブルなく進める上でも、非常に役立ちます。
伺うなどの基本的な敬語表現から学習を深め、目上の人から目をかけられる文章表現をマスターしましょう。