「そもそも」の意味と用法
「そもそも」の意味と用法についてですが、皆さんは「そもそも」という言葉を実際に使ったり聞いたりしたことがあるでしょうか。最近では国会中継やニュース番組などでもこの「そもそも」という言葉が頻繁に使用されている場面を見掛けることでしょう。
「そもそも」という言葉の基本的な意味合いは、「その物事の発端・始め・根本的な原因」などを表す際に用いられる言葉としてあるため、何らかのテーマを話題にあげて話している際に「そもそも○○というのは」などの形で、相手にその話題が持ち上がった発端について説明する形となります。
「そもそも論」とは
「そもそも論」というのも先述と同じく、「その話題や問題提起が持ち上がった発端となった理由や経緯」を指し示す場合に使われる「原点論(その話題・疑問の原点に回帰するための論)」の形で使われます。
特にずっと継続して談論が交わされてきた話題やテーマについて、改めてその物事についての問題提起や核心部分を再確認するために「そもそも論」というものが使われます。そうすることによって話者も相手も「いま自分たちが何について話しているのか」を再確認することができます。
このように「その話題が持ち上がった経緯を再確認するために用いられる言葉」として「そもそも論」があり、よく議論・ディベートの場面で使用されています。
場面による「そもそも」の使い分け
「そもそも」という言葉は先述のように、「何らかのテーマについてずっと継続して話し続けられている場面」などにおいて使用されます。たとえば物理化学について話している場合は、「その科学技術がそもそも(根本的に)何のために作られたのか」について話し合うことになります。
どんな場面において「そもそも」が使われる際でも必ずその根底にあるのは、「その問題やテーマについての再確認」であるため、話者や話し相手をはじめ、その談話に関わっているすべての人に対して「その根本的な物事の発端を確認させるための言葉」として用いられます。
「そもそも」の類義語
日本語を覚える際でも外国語を学習する場合でも、その「覚えるべき言葉の関連語を一緒に学習すること」は非常に大切です。そうすることによって「その覚えるべき言葉を多角的に見極めること」ができ、さらには「自分の言葉」としてその覚えるべき言葉を流用・応用することができるようになります。
元から/元来/初めから/最初から/根本的には/基本的には/古来は/それ自体は/基礎的には/もともと/本来は/当初は/根っから/真髄的には/本来的には/純粋に/根源的には/本質的には
「そもそも」の類義語は非常に多く、上記にあげた言葉の他にもいくらでもピックアップすることができます。すべての言葉に共通してある意味合いは「その物事の基本的・根本的な発端は」という、「その物事の発端への再確認」が示されることになります。
「そもそも」と「もともと」
「そもそも」と「もともと」についてですが、「もともと」という言葉の基本的な意味合いは「元来、元の性質から見て、本質的には」などという「その物事の性質の基本的な部分を指し示す言葉」としてあるため、この「そもそも」とほぼ同じ意味合いになります。
・もともとあの人は音楽がイヤだから
・もともと彼は数学が苦手な性質だから
・もともとこの機械ではその計算はできないから
この上記の例文にあります「もともと」をすべて「そもそも」に置き換えても、文意上ではまったく同じ意味合いになります。
「そもそも」と「初めから」
「そもそも」と「初めから」についても先述と同じく、「初めから」という言葉の意味は「基本的には・根本的には」などの「元来は」と同じ意味合いになることから、「そもそも」が持つ意味合いと同じに扱われます。
・初めからあの人は国語が苦手なので
・彼女の論文は初めからそのことについては述べていません
・彼が未熟なのは初めからです
この場合でも「初めから」の部分を「そもそも」に置き換え、その「そもそも」の形に合わせるように文章を変えることによってまったく同じ意味合いを持つ文章になるでしょう。
「そもそも」と「古来」
「そもそも」と「古来」についてですが、「古来」という言葉の基本的な意味合いは「ずっと昔から○○である・従来それはそのようになっている」などと「歴史的観点から見てずっと変わっていないこと」を指し示す直接的な言葉になります。この場合でも「そもそも」とほぼ同じ意味合いの言葉として用いられます。
・古来、英文法を学習する際には単語の知識が必須とされます。
・古来、このコンピューターでは台風予測がなされていません。
・古来、十分な地下組織はありませんでした。
すべて「古来」の意味合いは「昔から今まで」という背景的意味を持たされながら、「その物事がずっと継続してある」ということを読者へ伝えています。
「そもそも」と「根本から」
「そもそも」と「根本から」についてですが、「根本から」というのは通常「根本的に」と置き換えても問題ありません。「根本から・根本的に」という言葉の意味合いは、「その物事・事物が初めから持っている性質や傾向」をそのまま指す語意としてあるため、この場合でも「そもそも」と同じ意味合いの言葉として扱われます。
・そのコンピューターは根本から微分積分ができません。
・この問題は根本から解決法が示されていません。
・この課題は根本的に解決できません。
この場合でも「根本から・根本的に」という言葉をすべて「そもそも」に置き換えておき、さらに文章をそれに見合う形に変形することによって文意は同じになるでしょう。
「そもそも」と「本質的に」
「そもそも」と「本質的に」についてですが、「本質的に」という言葉の意味合いは「根本的」の場合と同じく、「その物事・事物が初めから持つ(生来持ち合わせた)性質や傾向」のことを示すため、「そもそも」の意味合いとほぼ同じ意味を持つ言葉として扱われます。
・その物事には本質的に解決策が示されません。
・数学の問題は本質的に解決するのがむずかしいです。
・彼の実力では、その物事を本質的に解決することはまだ不可能です。
「そもそも」の例文
日本語や外国語を覚える際には、まず「覚えるべき言葉を自分の言葉として使うべく、その言葉をさまざまな場面を想定した例文で使うこと」が重要になるでしょう。そうして実際に使い分けていくことによって、すべての言葉を柔軟かつ正確に把握することができるようになります。
・この経済発展についての議論は、そもそもA国の経済水域を向上させるために始まった。
・そもそもあなたの言うことは、国語について学ぶ上で間違っています。
・いろいろな物を買いましたが、そもそもあなたが欲しかった物は何でしたか。
このように、「そもそも」の働きは文意上で「もともとは○○」や「基本的には○○ということが言える」、また「初めから○○だったのは何か」などという、「その物事が始まった経緯の原点」を示す言葉として認められます。
「そもそも」の使い方
「そもそも」の使い方についてですが、基本的に「そもそも」の正確な使い方としてあげられるのは「その物事について述べる場合に、その物事に関係する根本的な意味合いから脱線しないこと」が必須とされます。つまり、その物事・事物の根源的な理由や経緯を示す内容でなければ「そもそも」を使うことはできません。
・そもそもあなたの望みは何でしたか。
・そもそも凶器を使用することは違反です。
・そもそもハンバーガーは美味しくありません。
上記3点についてですが、一番最後の文章は「そもそも」を使用する上では不適切と言えます。その理由は「ハンバーガーは美味しくない」というのは基本的にそれぞれの人の「主観によって変化する」ため、「そもそも」が本来示す「根源的な理由や経緯」には当てはまりません。
レポート
上記でご紹介しました「そもそも」の使い方の延長のようになりますが、「そもそも」を使用する場合には必ず「その根源的な理由や経緯が個別の主観によって変えられる状況」を作ってはいけません。
そのためレポートを作成する場合でも、「基本的な物事を万人に説明できること」をまず念頭に置き、「そもそも」が指している理由や経緯について「すぐに人から突っ込まれる内容(人から間違っていると言われる内容)」を書いてはいけないということになります。
・そもそも人は水の中では呼吸ができないため
・そもそも地球には草木があるため
・そもそも彼の言い分は間違っているため
上記3つの例でも、最後の「そもそも彼の言い分は間違っているため」というのは他人の判断によって変わってきます。そのため、この場合は「そもそも」が指し示す内容にはなりません。
敬語
さまざまな場面で使用される「そもそも」ですが、この「そもそも」という言葉を敬語表現ではどう言うのかについてもきちんと把握することが大切です。敬語表現というのは基本的に「目下の者から目上の者に対して使われる言葉」や「公式の場面において相手に礼儀を示す際に使われる言葉」として認められます。
この場合、まず「そもそも」という言葉そのものは敬語表現として扱うことはできません。文章や主張においてどうしても「そもそも」を使いたい場合には、あらかじめ「そもそも」に代わる言葉を用意しておくのが賢明でしょう。
「物事の初めは」、「それは○○のため」、「従来、それは○○だったため」などと、きちんとその物事の事の起こりを言葉で説明する形が望ましいでしょう。
「そもそも」は敬語表現では向かないのか
先述の続きとなりますが、国会中継やニュース番組などでは頻繁に「そもそも」という言葉が使われていますが、実際に会社で「そもそも」という言葉を使って上司に経過を説明したりする場合には、やや相手に対して「失礼な態度を示してしまうこと」があります。
・そもそもこの貴社さまのご提案は間違っております。
・そもそも今回のプロジェクトには賛同できません。
・そもそも本社の運営方針は的確な判断として認められていました。
これらの例にしても「そもそも」という言葉の意味合いは、その文意全体への影響力が普遍的に伝わる形となります。「そもそも」という言葉は「物事の発端を示す言葉」として認められるため、相手にとっては何らかの過失を責められる気分になってしまうことが多々あります。
「そもそも」の漢字表記
「そもそも」という言葉を漢字表記にした場合、「抑・抑抑」という形で示されます。この「抑・抑抑」という言葉はそれぞれ「物事の起こり・その物事がこれまで認められてきた経緯」について根本的な側面から見た認識を伝える形となるため、先述しました「そもそも」の意味合いとして「根源的な理由」を述べる際に使用されます。
「そもそも」と「基本的に」の違い
先述で「基本的に」という言葉と「そもそも」の意味合いが非常に近いことについてご紹介しましたが、「そもそも」と「基本的に」という言葉の正確な意味合いが微妙に違ってきます。
「基本的に」という言葉の意味合いは、「その場に限って言われる、その物事・事物の根本的な理由や原因」について示すことになるため、「根源的な理由」を述べるための言葉としては認められません。
・基本的に現在では、そのようなことは行なっていません。
・そもそもそのようなことは行なっていません。
上記2例において見てもわかるように、「基本的に」が持つ意味合いでは「今は行なっていない」と伝えることに対し、「そもそも」の意味合いでは「初めから行なっていないこと」を伝えています。そのため、「基本的に」と言う場合には「そもそも」の意味が持つ「初めから」という意味は原則的にありません。
「そもそも」は失礼なのか
先述でもご紹介しましたが、礼儀をわきまえなければならない公式の場面などで「そもそも」という言葉を使う場合、相手にとっては「何らかの理由で自分が責められているような錯覚した感覚」を受けてしまうことが多くあります。
その理由の1つとしてあげられるのは、「そもそも」という言葉がやや「主観的に述べられている場合」を想定した場合に、相手の言い分を否定した上で話者が自分の論を正論にする物言いが認められる側面が見られる点にあります。
そのため、「そもそも」という言葉を正確に使える場合は失礼にはなりませんが、少しでも話者が自分の主観を交えて「そもそも」を使った場合には、相手にとっては単純に「自分の論こそ正しい」と相手が言っているように聞こえてしまいます。
論文で使われる「そもそも」
論文で使われる「そもそも」についてですが、論文作成時には非常に多くの場面でこの「そもそも」が使用されています。論文で「そもそも」を使用する場合は一向にかまわず、むしろ「長文による説明」などが文章上に出てきた場合などには「そもそも」を使用することが望ましくなるでしょう。
論文では「何らかの特定のテーマ」について延々説明するための文章が記されます。そのため、その説明において「あれもこれも述べる必要がある」となった場合には、非常に長文によるパラグラフ・センテンスが目立ちます。
そうした「長文による説明文」において読者が「いったいこれは何について述べているのかわからない」となるのを防ぐために「そもそも」という言葉が使用され、その論文で主張すべき「骨子の内容」を再確認させるために使われる形になります。
元を正すために使われる「そもそも」
先述でもご紹介してきましたが、「そもそも」という言葉が使われる場面では「非常に複雑な論や説明になった場合に、そのテーマについて相手(読者)に再確認してもらうために使われる言葉」として認められます。
つまり「いま話題に掲げているテーマがなぜ必要なのか・なぜそのテーマについて話しているのか」という、「そのテーマを述べている・選んでいることの発端」を示す場合に使われます。
理由を問い正す際に使われる「そもそも」
「そもそも」という言葉は多くの場合、長く論議されてきた主題を再確認し、「いま述べている・交わしている談論や疑問提起の根源的な理由を再確認すること」に重点を当てて使われます。
・いま議題にあげられている問題や課題は、そもそもA方策によって解決が図られていたはずです。
・そもそもこのような制度について議論する場合は、人権問題について考慮する必要があったはずです。
この2例のように継続して論議されてきた内容を再確認し、その上でいろいろなテーマや課題が飛び交う場合に「初めからこの問題は過去にこういう事例によって認められており、それらの問題はこのような方法によって解決策が図られてきたはず」といった「経緯の再確認」を示す場合に使われる形になります。
「そもそも」の英語表記と意味
「そもそも」という言葉を英語に直す場合、それぞれの言葉の意味合いや用法に配慮する上で以下のようにピックアップされます。
・in the first place(まず第一に、そもそも)
・first of all(まずもって、第一に、そもそも)
・to start with,(まず、そもそも)
・anyway(とにかく、そもそも)
・nearly(まず、そもそも)
・almost(ほとんど、まず、そもそも)
・for the time being(とりあえず言えるのは、そもそも)
・at once(とりあえず、そもそも)
・initially(まず、最初に、そもそも)
・to begin with(まず初めに、そもそも)
・for the time being(とりあえず、初めに、そもそも)
「そもそも」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「そもそも」の英語表記を参考にして、「そもそも」の意味合いを含めた英語の例文をご紹介します。
・In the beginning, that problem is impossible for him in that situation.
「そもそも、その状況において彼にその問題解決は不可能です。」
・Initially, the national budget is in the red.
「そもそも、国家予算は赤字です。」
・In the first place, you said that you are not good at mathematics.
「そもそも、あなたは数学が苦手と言っていました。」
「そもそも」の英語表現と意味(2)
先述しました「そもそも」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「そもそも」の例文をご紹介します。
・Various discussions have been made on “entrance examination system”, but Harvard University does not have any plans to change the entrance examination system in the first place.
「「入試制度」についてさまざまな議論の展開がなされてきましたが、そもそもハーバード大学では入試制度の変更予定がありません。」
・When considering the national budget, this method is impossible in the first place.
「国家予算について検討する場合、そもそもこの方法では無理です。」
「そもそも」の英語表現と意味(3)
先述の具体的な「そもそも」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で使用される「そもそも」の例文についてご紹介します。
・The differences become conspicuous in the words “primitive” and “basically” when describing the “root cause”.
「「そもそも」と「基本的に」という言葉には、「根源的理由」を述べる場合に相違が目立ってきます。」
・The word “originally” is often used to indicate “the fundamental origin of that thing or object”.
「「そもそも」という言葉は多くの場合、「その物事・対象の根本的な発端」を示す場合に使用されます。」
「そもそも」の正確な意味と用法を把握しましょう
いかがでしたか。今回は「そもそも」の類語・例文・使い方・漢字表記・失礼なのか|敬語と題して、「そもそも」の類語・例文・使い方・漢字表記についての詳細なご紹介をはじめ、いろいろな場面で使い分けられている「そもそも」の根本的な用法についてご紹介しました。
「そもそも」という言葉は基本的に「話題にあげられている内容や、その物事がどうして起こったのかということについての根源的な理由や経緯」を示すために使われます。この場合に、少しでもその「根源的な理由や経緯」に話者の主観的な意見が入ることは、「そもそも」が示す根本的な意味合いから逸れる可能性があります。
「そもそも」の使用例を具体的に再確認し、どのように「そもそも」を使用することが正確な用法に見合うかについてきちんと理解しておきましょう。